修羅の継承者
暗闇の中を、無我夢中で長い間走った。
自分でも何処をどう走ったか分からなかったので、もうマーテル達の元へ帰ることは不可能だろう。
ミトスに投げたナイフも、どこかへいってしまった。
一人になってしまった。本当に、一人ぼっちに。
でも、私には、お兄ちゃんが・・・
周囲を見回す。居ない。何処にも。いつも隣に居て、優しく微笑んでくれるのに、居ない。
本当に、本当にお兄ちゃんは死んでしまったの?
そんなこと無い、絶対に。きっと必ずこの島のどこかに居て私をずっと探しているに決まってる。
でも、でも、確かにあの放送で、お兄ちゃんは死んだと言った。
嘘に決まってるよね?でも何故そんな嘘をあの主催者が言うのか分からない。
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?嫌だよ、そんなの。でもやっぱりしかしそれはどうしても──
自分でも何処をどう走ったか分からなかったので、もうマーテル達の元へ帰ることは不可能だろう。
ミトスに投げたナイフも、どこかへいってしまった。
一人になってしまった。本当に、一人ぼっちに。
でも、私には、お兄ちゃんが・・・
周囲を見回す。居ない。何処にも。いつも隣に居て、優しく微笑んでくれるのに、居ない。
本当に、本当にお兄ちゃんは死んでしまったの?
そんなこと無い、絶対に。きっと必ずこの島のどこかに居て私をずっと探しているに決まってる。
でも、でも、確かにあの放送で、お兄ちゃんは死んだと言った。
嘘に決まってるよね?でも何故そんな嘘をあの主催者が言うのか分からない。
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?嫌だよ、そんなの。でもやっぱりしかしそれはどうしても──
会いたい。
会いたい。
会いたいよ。 島を全部回れば、きっとどこかに居る。
でも、もしお兄ちゃんがどこにも居なかったら?
もうこの島には、この世界には居なくなったなんて、それが現実だとしたら・・・
会いたい。
会いたい会いたい会いたい。
どこに、いるの?
きっと会いに行くから。 唐突に記憶がフラッシュバックした。
あれは、そう、この魔法陣に入る少し前のことだった・・・
会いたい。
会いたいよ。 島を全部回れば、きっとどこかに居る。
でも、もしお兄ちゃんがどこにも居なかったら?
もうこの島には、この世界には居なくなったなんて、それが現実だとしたら・・・
会いたい。
会いたい会いたい会いたい。
どこに、いるの?
きっと会いに行くから。 唐突に記憶がフラッシュバックした。
あれは、そう、この魔法陣に入る少し前のことだった・・・
「シャーリィ、大丈夫か?」
「お兄ちゃん・・・」
「心配するな。俺が必ず守ってやる。こんな理不尽なことで、シャーリィを傷つけさせたりは絶対にしない」
・・・お兄ちゃんは私を元気付けてくれて、すごく安心した気分になって・・・
「セの字の言うとおりじゃ。ワイらは家族じゃ。家族っちゅうもんは、強い絆で結ばれとる。
だからきっとワイらは会える。何が起ころうと、生きて再会じゃ」
「モーゼスさんにそう言われると、何だか不思議に説得力がありますね。
もうちょっとこの状況に対して危機感を抱いてくださいよ」
「なんじゃジェー坊、びびっとんのか?部屋の隅っこでぶるぶる震えとるか?」
「モーゼスさんこそ、禁止エリアに引っかかって死んだりしないで下さいよ」
「そこまでアホとちゃうわ」
「おや、ある程度のアホだと認めるんですか?」
「なんじゃと!」
・・・この二人は、いつもと変わらない調子で、なんだか気が随分楽になって・・・
「ふふっ・・・」
「何笑っとるんじゃ、嬢ちゃん。セの字も!」
「わ、悪いモーゼス。けどお前等、こんな時までその調子なんだな」
「モーゼスさんに緊張感が無いだけですよ」
「なあジェー坊。一足先に始めようかの」
・・・お兄ちゃんは改めて私の顔を見つめて・・・
「な、シャーリィ。俺達には頼りになる仲間が居る。
ここに居ないクロエやノーマ達にまた会う為にも、絶対生きて帰ろうな」
「・・・うん」
「お兄ちゃん・・・」
「心配するな。俺が必ず守ってやる。こんな理不尽なことで、シャーリィを傷つけさせたりは絶対にしない」
・・・お兄ちゃんは私を元気付けてくれて、すごく安心した気分になって・・・
「セの字の言うとおりじゃ。ワイらは家族じゃ。家族っちゅうもんは、強い絆で結ばれとる。
だからきっとワイらは会える。何が起ころうと、生きて再会じゃ」
「モーゼスさんにそう言われると、何だか不思議に説得力がありますね。
もうちょっとこの状況に対して危機感を抱いてくださいよ」
「なんじゃジェー坊、びびっとんのか?部屋の隅っこでぶるぶる震えとるか?」
「モーゼスさんこそ、禁止エリアに引っかかって死んだりしないで下さいよ」
「そこまでアホとちゃうわ」
「おや、ある程度のアホだと認めるんですか?」
「なんじゃと!」
・・・この二人は、いつもと変わらない調子で、なんだか気が随分楽になって・・・
「ふふっ・・・」
「何笑っとるんじゃ、嬢ちゃん。セの字も!」
「わ、悪いモーゼス。けどお前等、こんな時までその調子なんだな」
「モーゼスさんに緊張感が無いだけですよ」
「なあジェー坊。一足先に始めようかの」
・・・お兄ちゃんは改めて私の顔を見つめて・・・
「な、シャーリィ。俺達には頼りになる仲間が居る。
ここに居ないクロエやノーマ達にまた会う為にも、絶対生きて帰ろうな」
「・・・うん」
・・・他の参加者達が次々魔法陣に消えていって・・・
「セネルさん、どうやら次はあなたの番みたいですよ」
「分かった」
・・・私の元から離れて歩いていくお兄ちゃん・・・
「お兄ちゃん!」
「シャーリィ、心配するな。きっと、また会える。必ず会いに行く。だから待ってろ、シャーリィ」
「セネルさん、どうやら次はあなたの番みたいですよ」
「分かった」
・・・私の元から離れて歩いていくお兄ちゃん・・・
「お兄ちゃん!」
「シャーリィ、心配するな。きっと、また会える。必ず会いに行く。だから待ってろ、シャーリィ」
・・・そう言って、お兄ちゃんは魔法陣に消えていった。そして二度と会えなくなった。
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?
そういえばモーゼスさんも死んだと言われた。また会えるって言ってたのに。
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?
モーゼスさんは死んだ。じゃあお兄ちゃんも、死んだ?
死んだの?死んだ?死んだ。死んだ
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?
そういえばモーゼスさんも死んだと言われた。また会えるって言ってたのに。
やっぱりお兄ちゃんは死んだの?
モーゼスさんは死んだ。じゃあお兄ちゃんも、死んだ?
死んだの?死んだ?死んだ。死んだ
お兄ちゃんは死んだ
死んだ 死 シ
足元に何かが当たった。
見下ろすと、黒くて長い金属の箱みたいなものが落ちていた。
ほとんど無意識に、それを拾い上げる。
筒状のそれは、先端に穴が空いている。
どう扱うか分からなかったので、それをくるくると回しながら、最も落ち着く持ち方をした。
グリップに手の平を合わせ、引き金に指をかける。
そしてゆっくりと指に力を込めた。
凄まじい破裂音が響き、前方の木の幹を撃ち砕いた。
そうしてふと、茂みの奥に転がっている二つの人影に気付いた。
茂みをかきわけ、それらの元へ行った。それは二つの死体だった。
まず近くに居た男の顔を見た。心臓が冷える思いをした。
その顔は狂気に歪んで、笑い顔のまま硬直している。
眼球は白目をむき大きく飛び出しかけ、口元からはどす黒い血が凝固してはみ出ている。
足元に何かが当たった。
見下ろすと、黒くて長い金属の箱みたいなものが落ちていた。
ほとんど無意識に、それを拾い上げる。
筒状のそれは、先端に穴が空いている。
どう扱うか分からなかったので、それをくるくると回しながら、最も落ち着く持ち方をした。
グリップに手の平を合わせ、引き金に指をかける。
そしてゆっくりと指に力を込めた。
凄まじい破裂音が響き、前方の木の幹を撃ち砕いた。
そうしてふと、茂みの奥に転がっている二つの人影に気付いた。
茂みをかきわけ、それらの元へ行った。それは二つの死体だった。
まず近くに居た男の顔を見た。心臓が冷える思いをした。
その顔は狂気に歪んで、笑い顔のまま硬直している。
眼球は白目をむき大きく飛び出しかけ、口元からはどす黒い血が凝固してはみ出ている。
そしてもう一人の方、少し離れた場所に仰向けに倒れている男の方に歩み寄った。
青く長い髪を後ろで束ね、前髪の一部が特徴的に飛び出している。
こちらは先程の男とは違い、いくらか安らかな死に顔だった。
その姿を見た瞬間、不思議な気分に見舞われた。
ほんの一瞬、兄、セネル・クーリッジと似たものを感じ取った。
だがそれもほんの僅かのことで、気のせいだろうと思った。
目の前の男の姿は、全身傷だらけで、ひどい有様だった。
さっきの男と殺し合っていたのだろうか。
青く長い髪を後ろで束ね、前髪の一部が特徴的に飛び出している。
こちらは先程の男とは違い、いくらか安らかな死に顔だった。
その姿を見た瞬間、不思議な気分に見舞われた。
ほんの一瞬、兄、セネル・クーリッジと似たものを感じ取った。
だがそれもほんの僅かのことで、気のせいだろうと思った。
目の前の男の姿は、全身傷だらけで、ひどい有様だった。
さっきの男と殺し合っていたのだろうか。
この人はどうして死んだのだろう。
何の為に戦っていたのだろう。
ふとそんな疑問が脳裏をかすめた。
何の気なしに額に手を触れてみる。血の通った人間だったと思えないぐらい冷たかった。
そうしていて、なんだか、その人の想いや無念が自分に入り込んでくる様な気がした。
そうだ、この人は死んでいる。あっちの人も死んでいる。
これは紛れも無い現実なのだ。現実に人が死んでいるのだ。
お兄ちゃんに会いたい。その想いも、もしかしたらとうに砕かれた幻想なのかもしれない。
またフラッシュバック。
さっきのより更に少し前、あの主催者の説明。
何の為に戦っていたのだろう。
ふとそんな疑問が脳裏をかすめた。
何の気なしに額に手を触れてみる。血の通った人間だったと思えないぐらい冷たかった。
そうしていて、なんだか、その人の想いや無念が自分に入り込んでくる様な気がした。
そうだ、この人は死んでいる。あっちの人も死んでいる。
これは紛れも無い現実なのだ。現実に人が死んでいるのだ。
お兄ちゃんに会いたい。その想いも、もしかしたらとうに砕かれた幻想なのかもしれない。
またフラッシュバック。
さっきのより更に少し前、あの主催者の説明。
「・・・こればかりは、私も確約してやろう。繰り返すが、このゲームの勝者は、願い事を一つだけ叶えてやる・・・」
そうだ。そうだった。最後の一人になれば、願いを叶える事ができる。
お兄ちゃんにまた会うことができる。よかった。本当によかった
微かな光明が見え始めた。そう、そうよ、どっちにしても、また会える。
この島を回っていけば・・・お兄ちゃんに会えるまで、ひたすら探し続けて・・・
お兄ちゃん以外の人は殺して・・・出来るだけ数を減らして・・・
もし私が最後の一人になってもお兄ちゃんに会えなかったら、
残念だけどもうお兄ちゃんは死んでしまっていたことになる。でも、その時は、願いを叶えることが出来る。
頭の中で、どうやって自分が最後の一人になるか、その作戦が高速に組み立てられていった。
たった今手にしたこの武器、これを使わない手は無い。これなら無駄な力を使わずに済む。
目の前に居る二人の荷物は誰かが持っていってしまったみたいだけど、
この武器に関しては少し離れた茂みに落ちていたから気付かずに行ってしまったらしい。
回復も自分で出来る。多少の無茶は融通が利く。
そうよ、私は出来る。やれる。殺せる。お兄ちゃんにまた会う為に。
決意を表明するように、静かに、けどその心は猛らせて、言った。
お兄ちゃんにまた会うことができる。よかった。本当によかった
微かな光明が見え始めた。そう、そうよ、どっちにしても、また会える。
この島を回っていけば・・・お兄ちゃんに会えるまで、ひたすら探し続けて・・・
お兄ちゃん以外の人は殺して・・・出来るだけ数を減らして・・・
もし私が最後の一人になってもお兄ちゃんに会えなかったら、
残念だけどもうお兄ちゃんは死んでしまっていたことになる。でも、その時は、願いを叶えることが出来る。
頭の中で、どうやって自分が最後の一人になるか、その作戦が高速に組み立てられていった。
たった今手にしたこの武器、これを使わない手は無い。これなら無駄な力を使わずに済む。
目の前に居る二人の荷物は誰かが持っていってしまったみたいだけど、
この武器に関しては少し離れた茂みに落ちていたから気付かずに行ってしまったらしい。
回復も自分で出来る。多少の無茶は融通が利く。
そうよ、私は出来る。やれる。殺せる。お兄ちゃんにまた会う為に。
決意を表明するように、静かに、けどその心は猛らせて、言った。
「お兄ちゃん、心配しないで。きっと、また会えるから。必ず会いに行くから。だから待ってて、お兄ちゃん」
【シャーリィ 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン5つ付き) ????
状態:極めて冷静
現在位置:C5の橋付近
第一行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
所持品:UZI SMG(30連マガジン5つ付き) ????
状態:極めて冷静
現在位置:C5の橋付近
第一行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)