信じる想い
夢を見た。
父さんが居て、母さんが居た。
二人とも楽しそうに、笑っていた。
つられて、自分も笑った。
何が嬉しいのか、分からなかったが、笑った。
いや、本当は分かっていた。
一緒に居ることが嬉しいのだ。
ただ一緒にそこで居るだけで、幸せは感じられた。
それが家族なら、一層強くなるはずだった。
カイルは夢の中で暖かな空気に包まれた。
だが、突然彼の母、ルーティの姿が消え始めた。
まるで幽霊の様に、その姿が透明になっていき、やがて完全に見えなくなった。
カイルが驚き、その場に近寄る。だがそこには何も無い。
ふと足元を見ると、砕けて溶けた氷と、血痕がそこを濡らしていた。
カイルは膝を付き、泣いた。
しばらくすると、彼の父、スタンが無言でそこから立ち去ろうとした。
待って。待ってくれ。そう叫ぶも、その言葉は父に届かない。
父さん・・・父さん。
デミテルは上手く着地し、眼下の少年を見やった。
崖から転落し、この洞穴に落ちた少年の様子を観察する。
頭を打ち、気絶している。常人なら致命傷を負ってもおかしくないが、
受け身でも取ったか、それほど重傷には見えない。
しかし、少年のそんな様子はデミテルにとってはどうでもよいことだった。
彼はその少年を殺すつもりだったので。
父さんが居て、母さんが居た。
二人とも楽しそうに、笑っていた。
つられて、自分も笑った。
何が嬉しいのか、分からなかったが、笑った。
いや、本当は分かっていた。
一緒に居ることが嬉しいのだ。
ただ一緒にそこで居るだけで、幸せは感じられた。
それが家族なら、一層強くなるはずだった。
カイルは夢の中で暖かな空気に包まれた。
だが、突然彼の母、ルーティの姿が消え始めた。
まるで幽霊の様に、その姿が透明になっていき、やがて完全に見えなくなった。
カイルが驚き、その場に近寄る。だがそこには何も無い。
ふと足元を見ると、砕けて溶けた氷と、血痕がそこを濡らしていた。
カイルは膝を付き、泣いた。
しばらくすると、彼の父、スタンが無言でそこから立ち去ろうとした。
待って。待ってくれ。そう叫ぶも、その言葉は父に届かない。
父さん・・・父さん。
デミテルは上手く着地し、眼下の少年を見やった。
崖から転落し、この洞穴に落ちた少年の様子を観察する。
頭を打ち、気絶している。常人なら致命傷を負ってもおかしくないが、
受け身でも取ったか、それほど重傷には見えない。
しかし、少年のそんな様子はデミテルにとってはどうでもよいことだった。
彼はその少年を殺すつもりだったので。
この狭い空間で規模の大きい術を放つのは得策では無い。
下手をすれば地盤が崩れ、最悪生き埋めになってしまう。
それでもデミテルにとっては大した事態では無いが、無駄な労力は避けるにこしたことは無い。
彼はゆっくりとザックから鉄製のバットを取り出した。
それこそ彼の持つ最後の支給品であり、そもそも最初に彼に支給されたものであったが、
術士である彼は野蛮なその武器を嫌った。自身の得意とする術だけで充分だと判断した。
しかしこの状況において、無防備に寝転がっている獲物を仕留めるのは、
こちらの方が効率的であると彼は判断した。
それに今はあの白髪の少年から奪った、装備者の筋力を増強するフィートシンボルがある。
脳天に一撃、いや数度殴りつければ確実に死亡するだろう。
頭の中でそう結論付けると、デミテルはゆっくりと歩を進めた。
両手に持ったバットを垂直に構え、肩に引きつける。
そしてつま先が触れるほどに接近した。相変わらず少年は意識を失っている。
「馬鹿め」
つい先程言いそびれた言葉を口にする。
デミテルは両手を大きく振り上げ、一気に少年の頭目掛け叩き付けようとした時──
「う・・・」
少年が呻いた。 デミテルは瞬間的に止まってしまった。
「とう・・・さ・・・」
頭を地面にこすりつけ、体を歪ませている。そしてゆっくりと目を覚ました。
「ちぃっ!」
その面めがけバットを振り下ろしたが、少年ははっと表情を変えると咄嗟に身を転がしてかわした。
デミテルは自身を恨んだ。なぜあそこで躊躇してしまったのだ。明らかな手落ちだ。
少年は即座にこの状況を理解した、とは言いがたいが(彼の寝起きの状態をよく知るものなら納得できるだろう)
とりあえず目の前に居るのがさっき自分を殺そうとした者だとは分かったらしい。
「お前は・・・!」
「ふん、一度ならず二度までも命拾いするとはな。だがこれで最後だ!」
デミテルはそう吐き捨てると素早くバットをザックにしまい、術を放った。
ミスティシンボルによって詠唱速度は圧倒的に早くなっている。
火球が三つ、少年目掛け発射された。
だが少年は自身のザックに手を突っ込むと、円い銀色の物を取り出した。
そしてそれを前に突き出した。三つの火球はそれにぶつかると、小さな火花を残して消えた。
それは普段一般人が使う、台所に欠かせないもの、鍋の蓋だった。
下手をすれば地盤が崩れ、最悪生き埋めになってしまう。
それでもデミテルにとっては大した事態では無いが、無駄な労力は避けるにこしたことは無い。
彼はゆっくりとザックから鉄製のバットを取り出した。
それこそ彼の持つ最後の支給品であり、そもそも最初に彼に支給されたものであったが、
術士である彼は野蛮なその武器を嫌った。自身の得意とする術だけで充分だと判断した。
しかしこの状況において、無防備に寝転がっている獲物を仕留めるのは、
こちらの方が効率的であると彼は判断した。
それに今はあの白髪の少年から奪った、装備者の筋力を増強するフィートシンボルがある。
脳天に一撃、いや数度殴りつければ確実に死亡するだろう。
頭の中でそう結論付けると、デミテルはゆっくりと歩を進めた。
両手に持ったバットを垂直に構え、肩に引きつける。
そしてつま先が触れるほどに接近した。相変わらず少年は意識を失っている。
「馬鹿め」
つい先程言いそびれた言葉を口にする。
デミテルは両手を大きく振り上げ、一気に少年の頭目掛け叩き付けようとした時──
「う・・・」
少年が呻いた。 デミテルは瞬間的に止まってしまった。
「とう・・・さ・・・」
頭を地面にこすりつけ、体を歪ませている。そしてゆっくりと目を覚ました。
「ちぃっ!」
その面めがけバットを振り下ろしたが、少年ははっと表情を変えると咄嗟に身を転がしてかわした。
デミテルは自身を恨んだ。なぜあそこで躊躇してしまったのだ。明らかな手落ちだ。
少年は即座にこの状況を理解した、とは言いがたいが(彼の寝起きの状態をよく知るものなら納得できるだろう)
とりあえず目の前に居るのがさっき自分を殺そうとした者だとは分かったらしい。
「お前は・・・!」
「ふん、一度ならず二度までも命拾いするとはな。だがこれで最後だ!」
デミテルはそう吐き捨てると素早くバットをザックにしまい、術を放った。
ミスティシンボルによって詠唱速度は圧倒的に早くなっている。
火球が三つ、少年目掛け発射された。
だが少年は自身のザックに手を突っ込むと、円い銀色の物を取り出した。
そしてそれを前に突き出した。三つの火球はそれにぶつかると、小さな火花を残して消えた。
それは普段一般人が使う、台所に欠かせないもの、鍋の蓋だった。
・・・ナベのフタだと!?
デミテルは驚愕の余り言葉を失いかけたが、すぐに別の術を詠唱し始めた。
だが少年は瞬時にこちらに走り寄ると、そのまま鍋の蓋の一番面積が広い部分をデミテルの顔面に当てようとした。
頭を反らせ、紙一重でかわす。そこで彼は強引にでも少年を引き離すべきだと判断した。
少年の腰、鍋の蓋の死角から手を伸ばし魔力を開放した。
術とはとても言えないが、突風が起こり少年を奥の壁へ吹き飛ばした。
少年は体勢を崩している。少年が完全に目覚めた今、強引にでも勝負を決めるべきだと判断した。
デミテルは再度詠唱を開始する。
そして放った。地面が連続的に隆起し、少年の体を後方、壁側に跳ね上げた。
勢いを増すそれは、やがて岩盤を砕き、小規模な土砂崩れを起こした。
少年が崩れ落ちる砂、石、岩に埋もれていくのを見届けながら、デミテルは空気を操り飛翔した。
これで今度こそあいつは死んだだろう。死体を確認できなくなったのが残念だが。
もしまだ息があっても生き埋めだ。窒息死、あるいはいずれ禁止エリアに引っかかって死ぬだろう。
それでも生きていたら、また殺せばいい。今度はちゃんと、死を見届けれるようにしなければ。
そう結論付け、元居た場所に戻った。
当たり前だが、少女と剣士の姿は無かった。
そして歩き出した。次の獲物はどこにいるか。先程の二人が居ればいいが。
カイル・デュナミスが最初に倒れこんでいたのは、
波風が島を削り取ってできた洞穴の様だと思われていたが、正確には違っていた。
長年の時の経過により塞がっていた穴が、強い衝撃を受け開けられた。
それは洞窟であった。地下に広がる、狭い坑道の様な通路。
カイルは瓦礫を押しのけ、むくりと起き上がった。今度は気絶もせずに済んだ。
またしても助かったのは、彼の持つ残り二つの支給品のおかげだろうか、
それとも、カイルの、父スタンとの再会を信じる想いが起こした偶然だったろうか、
いずれにせよ彼は生きている。そして父も生きている。
生きている限り、また会える可能性は零では無い。
その再会が、どんな結果を生もうとも。
カイルは歩き出した。
だが少年は瞬時にこちらに走り寄ると、そのまま鍋の蓋の一番面積が広い部分をデミテルの顔面に当てようとした。
頭を反らせ、紙一重でかわす。そこで彼は強引にでも少年を引き離すべきだと判断した。
少年の腰、鍋の蓋の死角から手を伸ばし魔力を開放した。
術とはとても言えないが、突風が起こり少年を奥の壁へ吹き飛ばした。
少年は体勢を崩している。少年が完全に目覚めた今、強引にでも勝負を決めるべきだと判断した。
デミテルは再度詠唱を開始する。
そして放った。地面が連続的に隆起し、少年の体を後方、壁側に跳ね上げた。
勢いを増すそれは、やがて岩盤を砕き、小規模な土砂崩れを起こした。
少年が崩れ落ちる砂、石、岩に埋もれていくのを見届けながら、デミテルは空気を操り飛翔した。
これで今度こそあいつは死んだだろう。死体を確認できなくなったのが残念だが。
もしまだ息があっても生き埋めだ。窒息死、あるいはいずれ禁止エリアに引っかかって死ぬだろう。
それでも生きていたら、また殺せばいい。今度はちゃんと、死を見届けれるようにしなければ。
そう結論付け、元居た場所に戻った。
当たり前だが、少女と剣士の姿は無かった。
そして歩き出した。次の獲物はどこにいるか。先程の二人が居ればいいが。
カイル・デュナミスが最初に倒れこんでいたのは、
波風が島を削り取ってできた洞穴の様だと思われていたが、正確には違っていた。
長年の時の経過により塞がっていた穴が、強い衝撃を受け開けられた。
それは洞窟であった。地下に広がる、狭い坑道の様な通路。
カイルは瓦礫を押しのけ、むくりと起き上がった。今度は気絶もせずに済んだ。
またしても助かったのは、彼の持つ残り二つの支給品のおかげだろうか、
それとも、カイルの、父スタンとの再会を信じる想いが起こした偶然だったろうか、
いずれにせよ彼は生きている。そして父も生きている。
生きている限り、また会える可能性は零では無い。
その再会が、どんな結果を生もうとも。
カイルは歩き出した。
【カイル 生存確認】
状態:全身に打撲、擦り傷
所持品:鍋の蓋 フォースリング ラビットシンボル
第一行動方針:父との再会
第二行動方針:リアラとの再会
第三行動方針:ロニ、ジューダス、ハロルドとの合流
現在地:G2崖下の洞窟から地下を移動中
状態:全身に打撲、擦り傷
所持品:鍋の蓋 フォースリング ラビットシンボル
第一行動方針:父との再会
第二行動方針:リアラとの再会
第三行動方針:ロニ、ジューダス、ハロルドとの合流
現在地:G2崖下の洞窟から地下を移動中
【デミテル 生存確認】
状態:鼻強打 TP中消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティシンボル 金属バット
第一行動方針:出来る限り最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第二行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:G2の崖付近から北へ移動中
状態:鼻強打 TP中消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティシンボル 金属バット
第一行動方針:出来る限り最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第二行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:G2の崖付近から北へ移動中