騙し騙されかみなりさん ◆e9ZFC0cEimgS
一体何なんだこの状況は。夢でも見ているのか。
同じ疑問を何度も何度も頭の中で繰り返しながら恐竜や古生物の化石の間を歩いているのは、和服姿に頭髪の薄い頭、いかつい体格といかにも厳格そうな雰囲気を纏った老人である。
彼の名は神成。近所に住む子供たちにはかみなりさんと呼ばれている。
突然告げられた『殺し合い』なるものの開始宣言の後、彼は博物館の建物の内部に飛ばされた。周りの案内板を見てどうやらここが上野の国立科学博物館らしいことはわかったが、今の彼には恐竜の化石を見て楽しむような余裕などもちろん無い。
「殺し合いだと……ふざけたことをしおって」
周りに誰もいないことも手伝って、思わず独り言も出てしまう。混乱した頭で殺し合いというルールを理解できたのはここに来てから数十分が経過した時だった。
だが理解は出来ても納得は出来ないし、もちろん受け入れることなどできない。
なぜ平凡な隠居老人である自分がこんなことに巻き込まれたのかも疑問だったが、たとえ自分が生き残るためであっても他人を手にかけるなど絶対に従うことの出来ない指示だった。
おまけにさっき集められた場所では、ほんの一瞬だが彼の知り合いの顔を見た。家の近くの空き地でよく草野球をしている、近所の少年だ。あの軟弱な子供がこんな状況下で生き延びられるとも思えない。
しかしかといってそう簡単に逃げられるとも思えない。増してやあの男を説得するなり打倒するなりして殺し合い自体を終わらせるなど、そう簡単に出来そうも無い。
そこでかみなりさんは今後どうするべきかも決めかねて、一人博物館の展示室内を行ったり来たりしていたのだ。
なお悩んでいることの一つとして、支給された鞄を開けるかどうかということがあった。まだ鞄の中は見ていない。何しろ何が入っているのかわからない代物だ。
あの男が本当のことを言っていた保障はないし、もしかしたら開けた瞬間に爆発する仕掛けかもしれない。こんな得体の知れないものは開けようとは思えない。
だが他の場所で役に立つものを調達できるアテもないし、少し空腹なのも事実。ようやく決心がついて、イチかバチか開けてみることにした。
するとまず最初に中から出てきたのは、鏡とスプレーが紐で繋がっているという奇妙な道具だった。一体何に使うのかと首を捻っていたら、一緒に説明書が入っているのに気づいた。
同じ疑問を何度も何度も頭の中で繰り返しながら恐竜や古生物の化石の間を歩いているのは、和服姿に頭髪の薄い頭、いかつい体格といかにも厳格そうな雰囲気を纏った老人である。
彼の名は神成。近所に住む子供たちにはかみなりさんと呼ばれている。
突然告げられた『殺し合い』なるものの開始宣言の後、彼は博物館の建物の内部に飛ばされた。周りの案内板を見てどうやらここが上野の国立科学博物館らしいことはわかったが、今の彼には恐竜の化石を見て楽しむような余裕などもちろん無い。
「殺し合いだと……ふざけたことをしおって」
周りに誰もいないことも手伝って、思わず独り言も出てしまう。混乱した頭で殺し合いというルールを理解できたのはここに来てから数十分が経過した時だった。
だが理解は出来ても納得は出来ないし、もちろん受け入れることなどできない。
なぜ平凡な隠居老人である自分がこんなことに巻き込まれたのかも疑問だったが、たとえ自分が生き残るためであっても他人を手にかけるなど絶対に従うことの出来ない指示だった。
おまけにさっき集められた場所では、ほんの一瞬だが彼の知り合いの顔を見た。家の近くの空き地でよく草野球をしている、近所の少年だ。あの軟弱な子供がこんな状況下で生き延びられるとも思えない。
しかしかといってそう簡単に逃げられるとも思えない。増してやあの男を説得するなり打倒するなりして殺し合い自体を終わらせるなど、そう簡単に出来そうも無い。
そこでかみなりさんは今後どうするべきかも決めかねて、一人博物館の展示室内を行ったり来たりしていたのだ。
なお悩んでいることの一つとして、支給された鞄を開けるかどうかということがあった。まだ鞄の中は見ていない。何しろ何が入っているのかわからない代物だ。
あの男が本当のことを言っていた保障はないし、もしかしたら開けた瞬間に爆発する仕掛けかもしれない。こんな得体の知れないものは開けようとは思えない。
だが他の場所で役に立つものを調達できるアテもないし、少し空腹なのも事実。ようやく決心がついて、イチかバチか開けてみることにした。
するとまず最初に中から出てきたのは、鏡とスプレーが紐で繋がっているという奇妙な道具だった。一体何に使うのかと首を捻っていたら、一緒に説明書が入っているのに気づいた。
それを読んでみようとしたその時、かみなりさんの耳にすすり泣くような声が聞こえた。最初は空耳かと思ったが、歩みを進めるにつれて次第に声が大きくなっていく。
そちらのほうに早足で歩み寄ってみると、展示スペースからトイレに向かう細い通路に一人の少女が座り込んでいた。顔は見えないが、肩を震わせてしゃくりあげているようだ。
「……どうかしたのか?」
見過ごすことも出来ずに声をかけたが、少女は顔を膝にうずめて泣き続けている。かみなりさんはおそるおそる少女に歩み寄っていった。
緑色の髪をツインテールに束ねているが、その髪が床に達しているほど長いのが特徴的な少女だった。
服装は上がネクタイで下がミニスカート、ニーソックスとおよそ袖としての機能を果たせるのか甚だ疑問な袖のようなものという奇抜すぎる服装をしていたが、最近の若者の間ではこんなのが流行っているのだろうか。
「何を泣いているんだね?」
肩を揺すられて、初めてかみなりさんの存在に気づいたのかゆっくりと顔を上げた。予想通り顔は涙に濡れて髪が頬に張り付いている。はっきり言ってかなり整った顔立ちだ。
「怖がらなくてもいい。ひょっとしてお前もその……殺し合いのために無理やり連れて来られたのか?」
「あ、う、その……はい」
奇怪な形状をした袖で顔を拭きながらあたふたと答える。やはり自分と同じ事態に巻き込まれて怯えていたようだ。
「ワシは神成と言う者だ。若い者にはかみなりさんと呼ばれているからそう呼んでくれていい」
「わ、私は初音ミクと言います。その、ごめんなさい、気が動転してたというかなんというか……」
泣いていた姿を見られたのが恥ずかしいらしく、顔を伏せて口ごもってしまう。
「まあ無理も無いだろう。だがここで泣いていても埒があかんだろう。とりあえずここを出てみんか?」
かみなりさんはその下がった肩に語りかける。かみなりさんとてここから出て何か事態が好転するようなアテがあるわけではない。
ただ、場所を移動するだけでもこの少女の心が少しでも落ち着くのではないかと思ったからだった。
これは自分にとってもいいきっかけになるかもしれない、と思った。いつまでも悩んでいたって何にも解決しない。一緒に行動する人間がいればそれだけで嫌でも考えることが増えるし、
それによってむしろよりよい考えが浮かぶかもしれない。
「そういえば、ワシの知っている知り合いにも一人泣き虫の子供がいてな。いつもいつも遊びグループのガキ大将に泣かされているようだが……」
そんな話を聞かせながら、少女を先導しようと彼女に背を向けた瞬間だった。
首に何かが巻きつくような感触があった、と思ったのも束の間、その何かが自分の首をきつく締め上げた。
そちらのほうに早足で歩み寄ってみると、展示スペースからトイレに向かう細い通路に一人の少女が座り込んでいた。顔は見えないが、肩を震わせてしゃくりあげているようだ。
「……どうかしたのか?」
見過ごすことも出来ずに声をかけたが、少女は顔を膝にうずめて泣き続けている。かみなりさんはおそるおそる少女に歩み寄っていった。
緑色の髪をツインテールに束ねているが、その髪が床に達しているほど長いのが特徴的な少女だった。
服装は上がネクタイで下がミニスカート、ニーソックスとおよそ袖としての機能を果たせるのか甚だ疑問な袖のようなものという奇抜すぎる服装をしていたが、最近の若者の間ではこんなのが流行っているのだろうか。
「何を泣いているんだね?」
肩を揺すられて、初めてかみなりさんの存在に気づいたのかゆっくりと顔を上げた。予想通り顔は涙に濡れて髪が頬に張り付いている。はっきり言ってかなり整った顔立ちだ。
「怖がらなくてもいい。ひょっとしてお前もその……殺し合いのために無理やり連れて来られたのか?」
「あ、う、その……はい」
奇怪な形状をした袖で顔を拭きながらあたふたと答える。やはり自分と同じ事態に巻き込まれて怯えていたようだ。
「ワシは神成と言う者だ。若い者にはかみなりさんと呼ばれているからそう呼んでくれていい」
「わ、私は初音ミクと言います。その、ごめんなさい、気が動転してたというかなんというか……」
泣いていた姿を見られたのが恥ずかしいらしく、顔を伏せて口ごもってしまう。
「まあ無理も無いだろう。だがここで泣いていても埒があかんだろう。とりあえずここを出てみんか?」
かみなりさんはその下がった肩に語りかける。かみなりさんとてここから出て何か事態が好転するようなアテがあるわけではない。
ただ、場所を移動するだけでもこの少女の心が少しでも落ち着くのではないかと思ったからだった。
これは自分にとってもいいきっかけになるかもしれない、と思った。いつまでも悩んでいたって何にも解決しない。一緒に行動する人間がいればそれだけで嫌でも考えることが増えるし、
それによってむしろよりよい考えが浮かぶかもしれない。
「そういえば、ワシの知っている知り合いにも一人泣き虫の子供がいてな。いつもいつも遊びグループのガキ大将に泣かされているようだが……」
そんな話を聞かせながら、少女を先導しようと彼女に背を向けた瞬間だった。
首に何かが巻きつくような感触があった、と思ったのも束の間、その何かが自分の首をきつく締め上げた。
(し、しまった!!)
必死に抵抗しようとするも思うようにいかない。油断していたところを突かれたためか、大の男と少女という、体格的にも体力的にも差があるはずなのにほぼ手も足も出なかった。
やがて苦しさが次第に遠のいていき、意識が混濁していく。自らの迂闊さを呪いながら、もはやこれまでかと諦めかけた時、自分が手にしたものの存在にようやく気がついた。さっき鞄から出した、鏡とスプレーが繋がった道具だ。
こんなものでも使うより仕方がないと、スプレー部分を持って鏡の部分をヌンチャクの要領で振り回した。がん、と思いのほか大きな音がしてミクの力が一瞬緩んだ。うまい具合に頭にでも当たったようだ。
その時にスプレーを持っていた手に力が入って中身がかみなりさんにかかったが、そんな些細なことには気付かなかった。
かみなりさんはそのチャンスを逃さず、渾身の力でミクを突き飛ばした。大きな音を立てて彼女は背中から床に倒れこんだ。
首もとを締めるものから開放されて安堵しながら激しく何度も深呼吸した。
振り向くと、ミクは頭を打ったせいか気を失っていた。彼女が自分を絞殺するために使用していたものを見てかみなりさんは驚く。気絶した彼女が持っていたのは自分自身の髪の毛だった。あれほど長ければ、確かに人を締めることもできるだろう。
「やれやれ、迂闊に人を信じたせいでとんでもない目にあったな。やっぱり最近の子供は信用できん」
毎日のように自分の家のガラスを割る少年の顔を思い浮かべながらかみなりさんは愚痴る。
「このまま見逃すわけにはいかんが……」
ここで殺せば、自分を殺そうとしたこの少女と同じ殺人者になる。
かみなりさんは悩んだ末、手足を縛って自由を奪った上で放置することにした。なお、ミクを縛るのに使ったのはもちろん彼女の髪の毛である。
また彼女の支給品は回収することにしたが、食料と水だけは彼女のそばに置いていくことにした。
そしてかみなりさんは博物館を後にした。
「さて……こんな手をつかう者もいるとなると、安易に誰かと組むのも危険か」
口ではそういいながらも、かみなりさんは心中では他の事を考えていた。
自分でもうっかり騙されかけた。これがもし、あの眼鏡の少年であったらどうだろうか? きっと簡単に騙されて、殺人者の手にかかってしまうだろう。
「ふ、ふん、どうしてワシがワシの家のガラスを割る子供の心配などせねばならんのか!!」
自分に言い聞かせるようにそう言いながらも、胸騒ぎは収まらなかった。
必死に抵抗しようとするも思うようにいかない。油断していたところを突かれたためか、大の男と少女という、体格的にも体力的にも差があるはずなのにほぼ手も足も出なかった。
やがて苦しさが次第に遠のいていき、意識が混濁していく。自らの迂闊さを呪いながら、もはやこれまでかと諦めかけた時、自分が手にしたものの存在にようやく気がついた。さっき鞄から出した、鏡とスプレーが繋がった道具だ。
こんなものでも使うより仕方がないと、スプレー部分を持って鏡の部分をヌンチャクの要領で振り回した。がん、と思いのほか大きな音がしてミクの力が一瞬緩んだ。うまい具合に頭にでも当たったようだ。
その時にスプレーを持っていた手に力が入って中身がかみなりさんにかかったが、そんな些細なことには気付かなかった。
かみなりさんはそのチャンスを逃さず、渾身の力でミクを突き飛ばした。大きな音を立てて彼女は背中から床に倒れこんだ。
首もとを締めるものから開放されて安堵しながら激しく何度も深呼吸した。
振り向くと、ミクは頭を打ったせいか気を失っていた。彼女が自分を絞殺するために使用していたものを見てかみなりさんは驚く。気絶した彼女が持っていたのは自分自身の髪の毛だった。あれほど長ければ、確かに人を締めることもできるだろう。
「やれやれ、迂闊に人を信じたせいでとんでもない目にあったな。やっぱり最近の子供は信用できん」
毎日のように自分の家のガラスを割る少年の顔を思い浮かべながらかみなりさんは愚痴る。
「このまま見逃すわけにはいかんが……」
ここで殺せば、自分を殺そうとしたこの少女と同じ殺人者になる。
かみなりさんは悩んだ末、手足を縛って自由を奪った上で放置することにした。なお、ミクを縛るのに使ったのはもちろん彼女の髪の毛である。
また彼女の支給品は回収することにしたが、食料と水だけは彼女のそばに置いていくことにした。
そしてかみなりさんは博物館を後にした。
「さて……こんな手をつかう者もいるとなると、安易に誰かと組むのも危険か」
口ではそういいながらも、かみなりさんは心中では他の事を考えていた。
自分でもうっかり騙されかけた。これがもし、あの眼鏡の少年であったらどうだろうか? きっと簡単に騙されて、殺人者の手にかかってしまうだろう。
「ふ、ふん、どうしてワシがワシの家のガラスを割る子供の心配などせねばならんのか!!」
自分に言い聞かせるようにそう言いながらも、胸騒ぎは収まらなかった。
しかしもしこの時かみなりさんが、支給品に添えられていた説明書をちゃんと読んでいれば、自身がさらに厄介な状況に置かれていることに気付いたはずだ。
彼の支給品「かわり絵ミラー」の効果は、「鏡に誰かの姿を映しながらスプレーを自分に吹きかけると、自分の姿が他人から見ると見る角度が90度変わる度に鏡に映った人のものに見える」というものである。
今博物館の外の敷地を歩くかみなりさんの姿は、正面から見れば古風な壮年の男性のそれである。しかし真横から見ると――その姿は、誰の目にも初音ミクに見えるのだ。
彼の支給品「かわり絵ミラー」の効果は、「鏡に誰かの姿を映しながらスプレーを自分に吹きかけると、自分の姿が他人から見ると見る角度が90度変わる度に鏡に映った人のものに見える」というものである。
今博物館の外の敷地を歩くかみなりさんの姿は、正面から見れば古風な壮年の男性のそれである。しかし真横から見ると――その姿は、誰の目にも初音ミクに見えるのだ。
【台東区国立科学博物館一日目・日中】
【かみなりさん@ドラえもん】
[状態]:疲労(中)、かわり絵ミラー効果発動中(初音ミク)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2(水と食料は一人分)、かわり絵ミラー、ランダム支給品2~5(未確認)
[思考]基本:殺し合いには乗らない
1・行動方針を決定するために情報収集をする
2・なんだかんだでのび太が心配
※かわり絵ミラー効果には気付いていません
[状態]:疲労(中)、かわり絵ミラー効果発動中(初音ミク)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2(水と食料は一人分)、かわり絵ミラー、ランダム支給品2~5(未確認)
[思考]基本:殺し合いには乗らない
1・行動方針を決定するために情報収集をする
2・なんだかんだでのび太が心配
※かわり絵ミラー効果には気付いていません
支給品紹介
【かわり絵ミラー@ドラえもん】
効果は作中に書いた通り、「鏡に誰かを映しながらスプレーを自分に吹きかけると、
自分の体が第三者からは90度ごとに鏡に映した誰かの姿に見える(つまり正面から見た場合と真横から見た場合とで見え方が異なる)」。
騙し絵の一種みたいな感じ。なお他人から見た場合の見え方が変わるだけなので変身とは異なり、身体能力などが変化するわけではない。
藤子・F・不二雄大全集7巻に登場。効果時間は不明。
効果は作中に書いた通り、「鏡に誰かを映しながらスプレーを自分に吹きかけると、
自分の体が第三者からは90度ごとに鏡に映した誰かの姿に見える(つまり正面から見た場合と真横から見た場合とで見え方が異なる)」。
騙し絵の一種みたいな感じ。なお他人から見た場合の見え方が変わるだけなので変身とは異なり、身体能力などが変化するわけではない。
藤子・F・不二雄大全集7巻に登場。効果時間は不明。
| 014:KAITO兄さんはCOOLに考えたい | 投下順 | 016:「帝王」はこのDIOだッ!!依然変わりなくッ! |
| 014:KAITO兄さんはCOOLに考えたい | 時系列順 | 016:「帝王」はこのDIOだッ!!依然変わりなくッ! |
| 初登場! | かみなりさん | 051:いろいろな人たち |
| 初登場! | 初音ミク | 032:成功者の苦悩 |