「とうとうこの恐るべき勝負が開催されるときが来たのですね……あなた方も準備はよろしいですか」
神妙な表情で映姫が振り向いた先には3人の人影があった。
「そこまでよ度」見極め員のパチュリー、介護員の永琳、いざというときは全てなかったことにするために慧音。
まさに準備は万全である。
まさに準備は万全である。
「あやや、いきなり拉致されたと思ったら……せめて髪くらい乾かさせてほしいですね」
「うーん、お風呂の中で寝てたからまだくらくらするわね」
「うーん、お風呂の中で寝てたからまだくらくらするわね」
ポタポタと髪から水滴をしたたらせながら愚痴をこぼす2人。
「では早速始めましょう。勇儀さん、お願いします」
「おまかせ! うおりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
勇儀は紫の足をむんず、と掴んだかとおもうと渾身のジャイアントスイングで投擲した。
放り出された紫は放物線すら描くことなく、地面と平行に飛んでいく。
舞い上がった砂煙と一緒に、何かがひらひらと舞い降りてきた。
放り出された紫は放物線すら描くことなく、地面と平行に飛んでいく。
舞い上がった砂煙と一緒に、何かがひらひらと舞い降りてきた。
「これは、バスタオル……? パチュリーさん、さすがにアウトではないでしょうか?」
「いいえ。もう米粒ほどにしか見えないし、細部が見えなければぎりぎりセーフよ」
――数分後
「記録は2605メートル。紫選手はどうも空中で失神してたらしく、無防備に地面に落下し全身擦過傷で緊急搬送されたようです」
「まあ長風呂上がりに振り回されれば仕方ありません、八意さんの活躍に期待しましょう。さあ、次は文さんの番です」
「離してくださいー! まだ死にたくない! 書きたい記事がまだ山のように……ッ!」
勇儀に足を掴まれたままジタバタともがく文だったが、映姫は非情にも宣言をする。
「スタート♪」
「てりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「てりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「あややややややややややややーーーーーーーーーーーーーっ」
やはり地面すれすれを弾丸のように飛んでいく文。
風圧に顔は歪み、涙と鼻水とよだれまみれ。しかし文の目は死んではいなかった。
風圧に顔は歪み、涙と鼻水とよだれまみれ。しかし文の目は死んではいなかった。
「鴉の行水を甘く見るな! 自己管理もできないぐうたら妖怪とは違うんです!」
文は大きく翼を広げる。
だが今ある風に逆らうのではない。それを感じ、一体化することこそ天狗の生き様。
だが今ある風に逆らうのではない。それを感じ、一体化することこそ天狗の生き様。
文は風に乗るだけではなくさらに加速、遂に音速の壁すらを突破した。
衝撃波とバスタオルをまき散らしながら爆走する文。
衝撃波とバスタオルをまき散らしながら爆走する文。
そしてその速度のまま、文は全速力で会場から遁走していった。
「……あそこまで必死になって逃げるなんて、よっぽど怖かったのかしら」
「文選手は記録なし、勝負は紫選手の勝利ですね。さてと」
辺りに隠してあった機械を引っぱり出し、ごそごそといじり始める映姫。
「それは?」
「盗撮機です。文さんに盗撮される側の気持ちというものを、身をもって知って頂こうと思いまして」
「……まさかそのためだけに今回のファイトを仕組んだの?」
映姫はパチュリーから視線を外して微笑み、そしていたずらっぽく言った。
「さあ、どうでしょう?」
結果:文の勝負放棄により紫の勝ち