「今回はベーゴマ勝負です。一口にベーゴマといっても様々な遊び方がありますが、今回の勝負では樽などに布を弛ませて張ったものをフィールドとして使用し、そこに同時に独楽を放って弾き出すという遊び方をします」
「べーごま?」
「最近の騒霊はベーゴマすら知らないのですか」
きょとんとした顔のメルランをみて映姫は嘆かわしいとばかりにため息をついた。
「最近の騒霊はベーゴマすら知らないのですか」
きょとんとした顔のメルランをみて映姫は嘆かわしいとばかりにため息をついた。
「ベーゴマとは独楽の一種であり、そもそもその起源は平安時代にまで遡るとされます。そうそう当時の亡者から聞いた小話があって(中略)そうして金属製のものが出始めるなど時代とともに進化を遂げ(中略)休日にはよく宝物にしていた独楽を持って現世にお忍びを敢行し(中略)そこでわたしは言ってやったのです! お前達の企みはすべてお見通しです、と(中略)さよならえいちゃん、この独楽を私だと思って大切にしてね。それが彼女の最後の言葉で(中略)というわけでお分かりいただけましたか?」
「……えっとつまり喧嘩独楽をするわけね?」
実は九割がた聞き流していたメルランであったが、さすがに5時間に及ぶ説明をまた聞く気力は無かったので適当なことをいって誤魔化さざるを得なかった。
実は九割がた聞き流していたメルランであったが、さすがに5時間に及ぶ説明をまた聞く気力は無かったので適当なことをいって誤魔化さざるを得なかった。
「ではベーゴマを色々持ってきましたのでここから選んでください」
映姫がじゃらじゃらと布の上に小さな独楽を並べ始めると三姉妹の口から感嘆が漏れる。
「かわいい!」
「へー、形や彩色どころか材質も様々なのね」
「あ、この黒くて目立たないの……なんか親近感が」
映姫がじゃらじゃらと布の上に小さな独楽を並べ始めると三姉妹の口から感嘆が漏れる。
「かわいい!」
「へー、形や彩色どころか材質も様々なのね」
「あ、この黒くて目立たないの……なんか親近感が」
「霖之助さんは選ばないのですか?」
「ふっふ、僕にはこれがあるのさ」
霖之助が懐から取り出したのは手のひらサイズのプラスチック塊であった。
「これこそ僕の秘密兵器ベイブレード! タイムリーなことに最近漂流してきたんだよ」
「べいぶれーど、ですか? 今の若い人たちにはついていけないですねぇ……」
「ふっふ、僕にはこれがあるのさ」
霖之助が懐から取り出したのは手のひらサイズのプラスチック塊であった。
「これこそ僕の秘密兵器ベイブレード! タイムリーなことに最近漂流してきたんだよ」
「べいぶれーど、ですか? 今の若い人たちにはついていけないですねぇ……」
「閻魔様、決まりましたよ」
メルランが差し出したのは他の独楽より一回り大きなものであった。
それよりも大きな特徴は、その純白の胴体に落書きのような勿忘草が一輪だけ描かれていることだろうか。
「あ、それは……」
「どうしたんですか?」
「それは病死した親友の形見なのです。傷がつかないようにと大事に仕舞い込んでいたのですが……でも、物というのは使われてこそですからね。この独楽も喜んでくれるでしょう。では始めましょうか」
メルランが差し出したのは他の独楽より一回り大きなものであった。
それよりも大きな特徴は、その純白の胴体に落書きのような勿忘草が一輪だけ描かれていることだろうか。
「あ、それは……」
「どうしたんですか?」
「それは病死した親友の形見なのです。傷がつかないようにと大事に仕舞い込んでいたのですが……でも、物というのは使われてこそですからね。この独楽も喜んでくれるでしょう。では始めましょうか」
「さあ行くよ!」
その声と共に放たれたベイブレードが高速回転しながらフィールド上をまわり始める。
その声と共に放たれたベイブレードが高速回転しながらフィールド上をまわり始める。
メルランも紐を巻きつけた独楽を片手に構えを取った。
「いくわよ!」
映姫から教えてもらった手順通りに、上手に独楽を放ったメルランであったが次の瞬間に目を剥くことになった。なんと放たれた独楽が空中で3つに分解してしまったのだ。
「そんな!」
「物がボロすぎたようだね。これは勝負あったかな」
「いくわよ!」
映姫から教えてもらった手順通りに、上手に独楽を放ったメルランであったが次の瞬間に目を剥くことになった。なんと放たれた独楽が空中で3つに分解してしまったのだ。
「そんな!」
「物がボロすぎたようだね。これは勝負あったかな」
しかし壊れたかのように見えた独楽は、よく見ればそれぞれが独立した独楽としての機構を持ち、そのまま何事も無かったかのようにそれぞれフィールドに着地する。
「馬鹿な! 3つに分かれる仕込み独楽だって!?」
霖之助が驚愕している内にも早速その内の1つがベイブレードに衝突する。
ベイブレードはこれを易々とフィールド外に弾き出すが、霖之助の表情は曇ったままだった。
「くっ、今の一撃で回転エネルギーをだいぶ減衰させられたか……」
「馬鹿な! 3つに分かれる仕込み独楽だって!?」
霖之助が驚愕している内にも早速その内の1つがベイブレードに衝突する。
ベイブレードはこれを易々とフィールド外に弾き出すが、霖之助の表情は曇ったままだった。
「くっ、今の一撃で回転エネルギーをだいぶ減衰させられたか……」
続いて2つめが衝突、ベイブレードはかろうじてこれも弾き飛ばす。
「あと少しよ、頑張って!!」
メルランの声を聞いていたかのように、最後の独楽はフィールド上を大きく旋回しベイブレードに迫る。
「あと少しよ、頑張って!!」
メルランの声を聞いていたかのように、最後の独楽はフィールド上を大きく旋回しベイブレードに迫る。
バチン!
そして炸裂音とともにベイブレードだけが宙に舞い、地面に転がった。
「決着はつきましたね」
「そっ、そんな……僕の秘密兵器が!」
「人のぬくもりを忘れ、邪道に堕した兵器に明日はないのです」
「仕込みだよ、仕込み! どっちかというと邪道なのはそっちじゃないのかい!?」
「丹精込めて手作りされたカラクリは白ですが、工場で作られた愛の無い大量生産品は黒です」
「そっ、そんな……僕の秘密兵器が!」
「人のぬくもりを忘れ、邪道に堕した兵器に明日はないのです」
「仕込みだよ、仕込み! どっちかというと邪道なのはそっちじゃないのかい!?」
「丹精込めて手作りされたカラクリは白ですが、工場で作られた愛の無い大量生産品は黒です」
その後、映姫の愛についての説法は次の日の明け方まで続いたという。
結果:メルランの勝利