慧音「金魚を飼い始めたと聞いたが……」
小町「里の的屋が、育ち過ぎて捨てようとした金魚を、貰って来たんだけど」
映姫「畜生といえども五分の魂を持ちます。無下に扱う事もありません」
慧音「……なんというか、どこかの親バカの目に似ているな」
小町「日頃の激務の影響なのかねぇ」
映姫「そちらもメダカを飼っているという話ですが」
慧音「私の方は、寺子屋の教材だからな……飼っているという表現が妥当かどうかは微妙なところだ」
小町「そんなわけで四季様、今日のファイトは『ギョレース』、金魚とメダカのレースです」
映姫「なるほど。受けて立ちましょう」
小町「里の的屋が、育ち過ぎて捨てようとした金魚を、貰って来たんだけど」
映姫「畜生といえども五分の魂を持ちます。無下に扱う事もありません」
慧音「……なんというか、どこかの親バカの目に似ているな」
小町「日頃の激務の影響なのかねぇ」
映姫「そちらもメダカを飼っているという話ですが」
慧音「私の方は、寺子屋の教材だからな……飼っているという表現が妥当かどうかは微妙なところだ」
小町「そんなわけで四季様、今日のファイトは『ギョレース』、金魚とメダカのレースです」
映姫「なるほど。受けて立ちましょう」
ドーナツ状になった水槽が二つ用意され、その中に金魚とメダカが各々入れられる。
小町の声と共に仕切りの板が外され、レースが開始された。
小町「やっぱり金魚よりメダカの方が圧倒的に速いかぁ」
慧音「うむ……悪いが数が居る中から一番速いのを選んで来ている」
小町「とりあえず、先に10周した方の勝ちって事で……すぐ終わりそうだけどね」
映姫「……」
既に5周を終えようとしているメダカに対し、映姫の金魚はほとんど泳いでいない。
大柄な体で、水の中をゆらゆらと往復するだけだ。
それを慈愛の表情で見守っていた映姫の目が閉じられると、
周囲は映姫が勝負を諦めたのだと理解した。
小町の声と共に仕切りの板が外され、レースが開始された。
小町「やっぱり金魚よりメダカの方が圧倒的に速いかぁ」
慧音「うむ……悪いが数が居る中から一番速いのを選んで来ている」
小町「とりあえず、先に10周した方の勝ちって事で……すぐ終わりそうだけどね」
映姫「……」
既に5周を終えようとしているメダカに対し、映姫の金魚はほとんど泳いでいない。
大柄な体で、水の中をゆらゆらと往復するだけだ。
それを慈愛の表情で見守っていた映姫の目が閉じられると、
周囲は映姫が勝負を諦めたのだと理解した。
映姫「……(金魚、金魚よ)」
金魚「……?」
映姫「(金魚よ、よく聞きなさい。お前は畜生ではありますが、
その魂が輪廻の輪の中に在る事に変わりはありません。
畜生として命を全うする事で、お前の業もいくらか薄まる事でしょう。
しかし、もしお前に心あらば、私の声に応え、全力で泳いではもらえませんか。
それが、今のお前に出来る善行です)」
金魚「……!」
慧音「あと2周だな」
小町「あっちは全然泳いでないし……えぇっ!?」
慧音「なんだ!?金魚が……淡く光っている……?」
映姫「それがこの物の魂の輝きです。畜生といえども五分の魂を持ちます。
魂魄を燃え上がらせる時、その放つ光は人も獣も変わりはしません」
小町「泳いだ!……っていうか……速っ!」
慧音「まるで水槽の水ごと流れているようだ……!」
映姫「7……8……9……10周終わりました」
小町「あ、はい……この勝負、四季様の勝ちで」
慧音「……どうした、急に動きが止まったが……?」
映姫「燃え尽きたのです、文字通り。力の限りを尽くし、畜生の領域を超えた……
その魂は、畜生の器に収まっていられなかったという事でしょう」
小町「四季様……いいんですか?」
映姫「良いのです。あの者は善行によって昇天に一歩近付きました。
次の輪廻でも、善き道を歩む事を期待しています」
慧音「なるほどな……親心も様々という事か」
金魚「……?」
映姫「(金魚よ、よく聞きなさい。お前は畜生ではありますが、
その魂が輪廻の輪の中に在る事に変わりはありません。
畜生として命を全うする事で、お前の業もいくらか薄まる事でしょう。
しかし、もしお前に心あらば、私の声に応え、全力で泳いではもらえませんか。
それが、今のお前に出来る善行です)」
金魚「……!」
慧音「あと2周だな」
小町「あっちは全然泳いでないし……えぇっ!?」
慧音「なんだ!?金魚が……淡く光っている……?」
映姫「それがこの物の魂の輝きです。畜生といえども五分の魂を持ちます。
魂魄を燃え上がらせる時、その放つ光は人も獣も変わりはしません」
小町「泳いだ!……っていうか……速っ!」
慧音「まるで水槽の水ごと流れているようだ……!」
映姫「7……8……9……10周終わりました」
小町「あ、はい……この勝負、四季様の勝ちで」
慧音「……どうした、急に動きが止まったが……?」
映姫「燃え尽きたのです、文字通り。力の限りを尽くし、畜生の領域を超えた……
その魂は、畜生の器に収まっていられなかったという事でしょう」
小町「四季様……いいんですか?」
映姫「良いのです。あの者は善行によって昇天に一歩近付きました。
次の輪廻でも、善き道を歩む事を期待しています」
慧音「なるほどな……親心も様々という事か」
結果:映姫の導きにより解脱した金魚が神の領域に至り、一瞬で泳ぎ抜いた。