灰色の未知の世界

灰色の未知の世界 ◆J1Bh6Z1pDg



午後の日差しの中、二人は出会う。
元々知り合いではない二人。
まずは自己紹介から始まった。


急に道の脇から出てきた四季映姫・ヤマザナドゥが自己紹介をすると、
目の前の少女はびっくりしたのだろうか、動きを止めた。

しばらく続いた沈黙の後、彼女は小声でつぶやいた。

ルーミア

映姫は顔色一つ変えずに確認する。

「それがあなたの名前ですね」
「うん」

ルーミア――聞いたことのない名前だ。
配られた名簿では上のほうに書いてあったのだが、
幻想郷のパワーバランスの中ではとりわけ上にいる存在ではないのだろう。

おずおずと目の前の「ルーミア」は映姫に問いかけた。

「四季映姫・ヤマザナドゥは何の妖怪?」
「妖怪ではなく閻魔です。死者を裁いています」

「閻魔は食べてもいい存在?」
「いえ、閻魔は基本的に手を出してはいけない存在です」

どうやら目の前の「ルーミア」は私のことを知らないらしい。
まあ、普通の妖怪は長生きするので、死のことなどあまり考えないから仕方がない。
普段ならその死に関する考えを正すのだが・・・。

今はまず、幻想郷の法を説かなければなりません。

だがその前に、ルーミアの態度に気になるところがあるので確認しておきましょう。
何かに気を取られたようにふらふら歩いていたのは何か理由があるはず。
なにやら落ち込むような出来事でもあったのだろうか?

「どうしてそんなに落ち込んでいるのですか?ルーミアさん」
「・・・・・・」


返事はない。
しかし、もう一度尋ねようと映姫が口を開いたとき、ルーミアは逆に尋ねてきた。

「妖怪は人間を殺してもいいの?」
「何を言っているのですか?もちろん構いません。妖怪は人を襲うものですから。
妖怪が人を襲い、殺すのは白です。」

「じゃあ妖怪は妖怪を殺してもいいの?」
「妖怪は互いに争うもの、その争いが乗じて殺し合いになっても問題ありません。
私は白だと断言できます。もっとも、親兄弟や主人を手にかけるのは黒ですが・・」

話の意図が読めない。
ルーミアは何を知りたいのか?
なぜこんな質問をするのだろうか?
映姫にはわからない、だが彼女なりの見解で、白黒つけながら答えていく。

「それじゃあ妖怪が神様を殺すのは?」
「神は妖怪や人が崇め奉られて成り上がるもの。先ほどの答えと同様に白です」

その答えを聞くと、さらにルーミアは考え込み、言った。

「でも東風谷早苗は山の神社の神様を殺したら怒ったよ」

「・・・そうですか」

ようやく映姫にも彼女の聞きたいこと、彼女が何をしてきたのかが分かってきた。

おそらく彼女は東風谷早苗の前で彼女の祀る神(おそらく洩矢諏訪子)を殺した。
そして生き残った東風谷早苗に怒りをぶつけられたのだろう。

ただ人を喰い殺して、なにも考えず、退治されても反省してこなかった小妖怪ゆえに、
もしかしたら、その拍子に自分自身に自信がなくなってしまったのかもしれない。
映姫はそう推理し、鎌を掛けた。

「もしかしてルーミアさんは何一つ信じられるものがないのではないですか?」
「・・・!!」

反応あり。
仮説は当たっていたらしい。


驚いたルーミアが、ようやく口を開く。

「閻魔は人の心が読めるの?」
「いえ、読めません。しかし推測することはできます」

尊敬するような目でみるルーミアに閻魔――四季映姫・ヤマザナドゥは畳掛けた。

「あなたに教えてあげましょう」
「今の幻想郷では殺すことは白で、正しい行為です」
「普段忌諱されてきたことも正しいこととなっている」
「自身の祀る神を殺され東風谷早苗は怒ったが、むしろそちらのほうが黒、悪いこと」
「あなたは正しいことをしてきたのです」

次々と出てくる言葉を、ルーミアは目を丸くして聞き入っている。

「ルーミア、あなたはもっと自分に自信を持ったほうがいい。
自信過剰は危険でも、自信の喪失は自己の喪失につながる。
今は「自分のやることが正義だ」くらいに思ったほうがいいでしょう」

「そう、ルーミア。今のあなたは少し意思の力が弱すぎる」


厳かに、大きな声で。
目の前の相手に忠告をする。

息継ぎもせずに話し続けたので、息が乱れ思わず下を向く。
酸欠で薄れた意識に耳が遠くなってゆく。
歩き続けていた為に土に汚れ、紅魔館での戦闘で血に濡れた靴が視界に入る。

体に溜まった疲労、まだこの殺し合いが始まってから一日も経っていないとは思えない。
混沌とした意識。
だが、大きく息を吸うとともに意識は覚醒してゆく・・・・・


ふと、目の前のルーミアからの反応がないのに映姫は気が付き、顔を上げようとする。
だがそれは頭のてっぺんに突き付けられた何かに止められた。

視線を上にあげる。
目に飛び込んできたのはリボルバーを映姫の頭に突き付けたルーミアの姿だった。



そろり、そろりと引き金が絞られてゆく。
その様子を四季映姫・ヤマザナドゥはただ見ているだけだった。

同じくなんでもないような顔をして引き金を引いてゆくルーミア。


一瞬後、奥まで引かれた引き金はハンマーを開放し・・・・

――ガチャン

金属音をたてて、沈黙した。



無音に耐えられず映姫が顔をあげると、

「外れかな?やっぱり閻魔は食べちゃいけない存在なのね」

ルーミアは一言だけ呟き、
そしてそのまま走りだし、映姫の視界から消えていった。


【F-3 一日目 午後】

【ルーミア】
[状態]:懐中電灯に若干のトラウマあり、裂傷多数、肩に切り傷(応急手当て済み)
[装備]:リボルバー式拳銃【S&W コンバットマグナム】4/6(装弾された弾は実弾2発ダミー2発)
[道具]:基本支給品(懐中電灯を紛失)、357マグナム弾残り6発、フランドール・スカーレットの誕生日ケーキ(咲夜製) 不明アイテム0~1
[思考・状況]食べられる人類(場合によっては妖怪)を探す。
1.自分に自信を持っていこうかな
2.森に仕掛けたおもちゃはどうなったのかな?
3.日傘など、日よけになる道具を探す
[備考]
※古明地さとりの名前を火焔猫燐だと勘違い
※映姫の話を完全には理解していませんが、閻魔様の言った通りにしてゆこうと思っています






ルーミアの姿が消えてしばらくすると、四季映姫・ヤマザナドゥはため息をついた。

「死を恐れないと思っても、簡単にはいかないものですね」

凝り固まった肩を揉みほぐす。

「ですが、私は死ななかった」

今まで何回か死にそうな事態に陥ってはいる。
だが、まだ死んではいない。

そこで映姫は仮説を立てた。

既に半分近い命が失われている。されど、幻想郷に必要な命はまだ失われていない。
幻想郷そのもの維持している博麗霊夢、八雲紫。
死者を扱う西行寺幽々子、そして私、四季映姫・ヤマザナドゥ。

パワーバランスの上位を占める妖怪さえ死に続ける中、
幻想郷が必要とする存在が生き続けるのは意味があるのかもしれない。

「幻想郷は、私を保護してくれている」

それなら、もしそれで合っているのなら、私が死ぬことはない。
死を恐れる必要はないのではないだろうか。

幻想郷に必要な存在が死んでいないことから、この殺し合いの目的も見えてくる。

「これは増えすぎた妖怪、力を持ちすぎた人間を淘汰するための儀式なのかも」

それなら私が今まで説いてきたことは淘汰を促進させることに繋がるのだろう。
淘汰は進み、幻想郷は新しい姿で復活する。

「そう、これは淘汰の儀式。止めてはいけない儀式なのです」

彼女はそう呟くと再び歩きだした。



この仮説は根拠が薄すぎる。
まず、彼女が今までまともな仮説を立ててこなかったのは時間がなかったからではない。
根拠となるべき情報が少なかったからである。
殺し合いが始まってから半日が経ったからといって、特別有力な情報が入ったわけではない。

彼女がたいした根拠もなく仮説を立てたのはなぜだろうか。
彼女自身、自分の行動に自信がなくなってきたからかもしれない。

「あなたはもっと自分に自信を持ったほうがいい。
自信過剰は危険でも、自信の喪失は自己の喪失につながる。
今は「自分のやることが正義だ」くらいに思ったほうがいいでしょう」

これは本当にルーミアに対して発せられた言葉なのだろうか。

もしかしたら、あるいは・・・・

真実を知る者はどこにもいない。



【E-3 一日目 午後】

【四季映姫・ヤマザナドゥ】
[状態]脇腹に銃創(出血) 、精神疲労(中)、肉体疲労(中)
[装備]携帯電話
[道具]支給品一式
[思考・状況]基本方針:参加者に幻想郷の法を説いて回る
1.自分が死ぬこともまた否定はしない
2.これは増えすぎた妖怪を減らす儀式なのでは?
3.自分は必要な存在なので死ぬことはないはず

※帽子を紛失しました。帽子はD-3に放置してあります。


126:黒い羊は何を見るのか 時系列順 128:哀死来 4 all(前編)
126:黒い羊は何を見るのか 投下順 128:哀死来 4 all(前編)
120:伽藍の堂 ルーミア 134:平行交差 -パラレルクロス-
120:伽藍の堂 四季映姫・ヤマザナドゥ 146:Ipomoea nil

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最終更新:2010年09月03日 19:05
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