Moonlight Ray

Moonlight Ray ◆CxB4Q1Bk8I



 夜が好き。
 何も見えない闇が好き。
 遷ろう世界の中で、闇だけはずっと私を守ってくれた。
 何も変わらずに私の傍にいてくれた。
 私は闇を操る妖怪。
 人を食べ、自由に生きる、それが私。
 ――それが、閻魔が認めてくれた、私の在り方。


 ルーミアは満足げな表情で歩いている。
 空腹は満たされた。ルーミアにとって、この世の全ての苦痛は、それだけで忘れられた。

『さて、それでは3回目の――』

 だから、どんなに大きな声で、誰かが誰かの名前を読み上げてるのも、ルーミアには別世界の事のようだった。

『――もりやすわこ』
 未だ血の滴る鋸を振りながら、ルーミアは笑っている。

『――かみしらさわけいね』
 真赤に染まった唇を舐めながら、ルーミアは歩いている。

『人数的にはまずまずですわ。良い出来よ』
「ありがとー。えへへ」

 放送が終わり、森は静かになった。
 太陽が沈んで、辺りを気持ちのよい暗闇が支配していた。
 自分の足音すらも、闇に染み込んで消えていってしまっているかのように、殆ど聞こえない。
 だから、ルーミアはのんびりと散歩のような気分で歩いていた。

『警告します。禁止区域に抵触しています。30秒以内に退去しなければ爆発します』

 突然の首元からの警告に、ルーミアはビクリと身体を強張らせる。
 本能に対する攻撃のような、無視する事のできない音。
 ルーミアは小首を傾げて、回れ右、元来た方向へ一歩踏み出す。耳障りなカウントは26で止まった。

「うるさいなぁ」

 音の意味よりも、警告の意味よりも、その不快感が優先されて、ルーミアはその先に進むのを断念した。
 禁止エリアになっているのだと気付いたのは、2、3回進んでは戻るを繰り返した後だった。

「んー? もうあそこには行けないんだね」

 いくらかの試行錯誤を経て、その事実を知る。
 仕掛けた地雷を見に行くのは、間に合わなかった。だからどう、ということもない。
 どうしよう、少しだけ考えると、近くの木の枝を折って放り投げた。

「じゃあ、こっちねー」

 枝の指すほうへ。
 禁止エリアを大きく迂回して、ルーミアは進む。
 ふよふよと浮いているかのような足取りで、染み付いた血の匂いを撒きながら、暢気な散歩は続く。


 ◇


 例えば、毎日写真を撮る家族があったとしましょう。
 毎朝、玄関前に並んで、笑顔でカメラにポーズをとるのです。
 時折、寝癖のひどい人がいたり、不機嫌そうな人がいたり、目を閉じてしまったり、そんな程度の変化を繰り返しながら、毎日。
 そんな写真を見返したとき、なんだかホッとするでしょう?
 時の流れを遡り、或いは流れ流れて、時間と共に変わるものはあるけれど、その家族は写真を撮り続けるのです。
 それを見るだけで、ああ、こうでなければいけないのだと、再確認しながら家族は続いていったのです。

 でも、ある日の朝、写真に、そこにいる筈の、いるべき筈の、誰かがいなくなってしまったとしたら。
 その感覚を、どう表現すればいいんでしょうか?
 ぽっかりと空間が空いている、その余りに空虚な感情を、他の家族はどう表せばいいんでしょうか?
 その写真を、どんな表情で見ていればいいんでしょうか?

 この放送を境に、私達の家族の写真から、こいしと燐が姿を消します。
 かわりに心寒い広々とした無の空間が、彼女達が写る筈だった、いままで写ってきた場所に広がるのです。

 有から無へ、この変化は、写真に写った私達の姿さえも、歪めてしまうものだと思いました。

 私は、こいしに言い残した言葉を、随分と冷静に思い返しました。
 もう、永遠に届かない言葉です。
 行き場をなくした心のように、相手のいない言葉はただ私を苦しめるのです。
 あの時、私から離れていった心を、引き止める事が出来ず、彼女を遠くへと送り出してしまいました。
 家族として共に写真に写っても、彼女はずっと、そっぽを向いたまま写っていたのでしょう。
 そして、笑顔の写真を残さぬまま、彼女はそこから消えてしまったのです。
 私の隣は、いつだって空席だったのです。

 貴女の「行ってきます」に、私は「行ってらっしゃい」と声をかけました。
 私は、貴女が、また、帰ってくると、根拠も無く、信じていたのかもしれません。
 帰ってきてと私が言えば、貴女は帰ってきたでしょうか?
 私も行くといえば、貴女は私を連れて行ってくれたでしょうか?
 私は、それを、躊躇してしまったのです。
 たとえ貴女がどんなに離れていても、毎日貴女が共に写真に写るものだから、私は甘えてしまったのです。
 明日もまた、一緒に写真に写るから、今度こそ隣で笑って写真を撮ろうと、思っていたのです。

 こいし。いつも待っていたのです。
 私は、いつだって、あなたを迎えたかったのに。
 もう言えないのです。「おかえりなさい」を。
 もう聞けないのです。「ただいま」を。


 ◇


 竹林を抜け、人里を目指す。
 太陽は沈んだ。月明かりだけを頼りに、箒は静かに進む。
 とても落ち着いているとは言えない心を、赤子を守るように抱えたまま、さとりは「何かが手遅れになる前に」と先を急ぐ。
 その何かが、一体何なのか、自分でも分からないままに。

 心なしか、肌寒い。
 早苗の風邪でもうつったのかと、弱々しく笑ってみた。

 何を、弱気になっているんでしょうか、私は。

 ふと気を抜けば、すぐに心の隙間に喪失感という寒気が流れ込む。
 ただ失っただけではなく、大事に抱えていたものを取り落としてしまった時のような、恐怖のような感情が。

 ぞくり、と身を震わせる。
 冷静を装って、八雲紫と早苗を置いて出てきたというのに、既に心折れてしまいそうな、箒よりもっと細い棒の上で立っているかのような感覚。
 下を見ることも出来ず、気合を入れることも、前に進む事も出来ず、棒が揺れるのに任せていて、

 誰かが、その背中を押せば、そのまま奈落へと落ちていくだろうという――



 喪失感から逃れるようにあの屋敷を出て、幾刻が過ぎただろうか。

 空気と感情の揺らぎを感じて、さとりは箒を止めた。
 心を読む能力に掛かる強い制限のため、それも殆ど感覚といよりは直感に近い反応ではあったけれど、
 自分以外の心が近くにあり、少なくとも思考をしているということに、気付いたのだ。

 目を凝らして、闇の向こうを見る。薄らとしたシルエットを確認できる。確かに誰かがいるようだった。
 地面に降り、箒を仕舞う。
 武器として包丁では頼りない。弾幕を直ぐに生成できるよう、精神を集中させる。
 ちらちらと顔を見せる、こいしやお燐の姿に心乱されながらも、さとりはじっとその先を見据える。

「――!」

 夜の闇の中でも、見間違う筈もなかった。
 最初は突然だった。2度目は偶然で、3度目は必然。
 4度目の遭遇ともなると、運命でも操作されているかのような気分になった。

 金色に輝く髪に白い肌。
 悩みなど無いかのような無垢な笑顔。
 闇に溶け込む黒で纏められた衣服。
 そして――その小さな身体を、場所を問わずに染める、赤の斑点。
 小さな手に握った鋸は、月明かりに紅く染められていた。

 燐のように鼻が利いたのなら、その不快感にこの場を逃げ出してしまったかもしれない。
 そんなことを、頭の隅で考えた。

「――っ」

 そして残りの大部分で、彼女に対して僅か数刻前に抱いた全ての感情が、逆流してくるのを受け止めた。

 恐怖を感じた。
 殺そうと思った。
 私を認めてくれた。
 救われた気がした。
 “仲間”を殺された。
 裏切られたと思った。
 殺そうと思った。

 そんな私を、早苗は止めた。
 早苗は、その歪みだけを退治するのだと、教えてくれた。
 それでも、罰を与えるだけで、自分は彼女を許せるのか、わからなかった。

 そして、私は――

 ――私は?


「あ――」

 彼女が、こちらに気付いた。
 顔を上げ、さとりと目が合った。口元を慌てて袖で拭ったのが見えた。
 頬の辺りにまで、彼女の食料としたモノらしき残渣が広がり、耳元まで紅が散る。
 ルーミアは、あの時と同じ、ばつの悪い、そんな表情をしていた。
 悪戯を咎められた燐や空の様子を思い出し、切ない気持ちになった。

 確かに、ばつが悪い、のだ。
 しかし、それは決して、後悔でも謝罪の意思でもない。
 それをさとりは知っていた。
 ルーミアは、それが悪いことだとは知らない。
 彼女の論理の中に、それは含まれていない。
 ただ、怒られるから、という理由だけで、それを、見せたくないものと分類し、理解しているに過ぎないのだろう。

 早苗が言った『理由を退治する』こと。
 妖怪が妖怪たろうとする上で、妖怪がどうあろうとしているかを知れば、その部分だけを諌め、道を正すことが出来る。
 今で例えるなら、ルーミアの行為が怒られる理由を理解してもらい、それから遠ざけるという事を前提に、
 この状況の異常さを説明し、非日常から日常に回帰することという目的を、共有させる事。

 それが、早苗――の理想とした、方法だった。

「えへへ。お姉ちゃん、また会ったね」

 ルーミアの声は、以前より、落ち着いていた。
 慌てて口元を拭った幼さはそのままだが、妖怪らしいプライドを示そうとしているようだった。
 不気味、というよりは、そこだけが不自然に切り取られて上塗りされているような、異様な雰囲気を纏っていた。
 ルーミアは笑顔だった。ただその視線だけは、表情を伺うかのようにじっとさとりを見つめていた。
 それが、さとりの心に突き刺さるような痛みを与えた。

「お姉ちゃんと呼ばないで」

 何を考えるよりも先に、その言葉が出ていた。
 低く唸るような声を、さとりは発していた。
 棘を隠さない声だった。発してから、自分の声に動揺する。

 う、とルーミアは一瞬怯んだ様な声を出した。
 その程度こそわからないが、少なくとも彼女は完全には自分を敵視していないのかもしれないと思った。

「やっぱり、怒ってるの?」
「……はい。何故、私が怒っているか、わかりますね?」

 取り繕うように、少しだけ言葉を緩める。
 もし、早苗の言うとおり、ルーミアの歪みを退治することが出来るとすれば――
 慧音の命の代償としては足りないけれど、きっと共に行くことが出来る筈だ。
 だから、ルーミアの様子を伺うように、じっと見つめる。

 だが、心を覚る事は、無意識のうちに忌避していた。
 わかっている。少し見れば、分かる事。
 彼女はまた、誰かを喰った。今はまだ、彼女が妖怪であろうとしているのは確かだった。
 最初と同じ、カニバリズムに支配された心を読むことは、不快な感情だけを抱く事になる。
 そうすれば自分は、早苗の言葉も、彼女の理想も忘れ、許せないというそれだけの理由で、ルーミアを殺しかねない事を、自分で知っている。


「うん、わかってるよ。ごめんなさい」

 ぺこり、とルーミアは頭を下げた。
 いつか彼女が見せた仕草を思い出す。

 あの時は、自分の論理で他者を傷つけたのも、理解しようとしなかったのも、私だった。
 私は――それに対して、喪失という重い罰を受けたのだろうか。

「でもね、お姉ちゃん」

 ルーミアは少しだけ、声を大きくした。
 邪気のない子供のようだと、さとりは思った。

「私、悪いことはしてないよ」

 ルーミアは、表情を変えない。
 さとりもまた、表情を変えない。

「妖怪は人間を食べてもいいんだよ。
 妖怪は妖怪を殺してもいいんだよ。
 私は、悪くないんだって」

 そう、ルーミアは言い切った。

 ああ、やはり。
 そう、さとりは極めて冷静に、ルーミアの言葉を受け止めた。
 一度生まれた歪みは、簡単には直らない。
 覚りという歪みを持った私は、それ故に人と交わらず地下に隠れるように潜み、
 その歪みから解放されようとしたこいしは――

 それでも、理想を信じたい。早苗と同じように。
 さとりは自分の心と対話する。
 早苗のように、どこまでも無垢に相手を信じることは出来ないが、理想を追う事だけなら、出来るのだ。


「ですが、ルーミア。聞いてください。
 今、妖怪としてあるべき姿より、もっと大事なことがあるんです。
 私達は、今」

「そういえば、まだ試してなかったね」

 ルーミアは、思い出したように口にした。
 さとりの言葉を、遮るように。歪みを正そうと伸ばす手を、押さえるように。
 その手の銃を、さとりへ向けた。その行動に、何の迷いも躊躇いも感じられなかった。
 あの時、扉を開けて、慧音に対して放ったのと同じように、ルーミアは言った。

「貴女は食べられる妖怪なの?」

 ルーミアにとって、火焔猫燐――古明地さとりは、ケーキをくれた、いい人だったかもしれない。
 だが今は、それ以上に、彼女の、世界のルールを優先した。それだけだ。

 銃声が、静かな森を突き破っていった。
 さとりは、目を閉じずにそれを受け止めた。

 自分に銃を向けられたのは、初めてだった。
 不思議と、慌てる事も無く、自分が死ぬ事への恐怖も何も感じず、ただ考えたのは目の前の彼女のこと。
 彼女が、本当に、自分を殺す可能性があったのだと、ぼんやりと感じただけだった。


「やっぱり、食べられない妖怪なんだね」

 ルーミアが、それだけ言い、銃を下ろす。
 さとりの身体は、どこも傷ついていない。

 ただ事実を確認しただけ、その結果がどうあれ、ルーミアはそれに従ったのだろう。

「ルーミア。もし弾が出ていたら、私を食べるのですか」
「そうだよー。だってルールだから。閻魔様も認めてくれたの」

 純粋で、それ故に、彼女は妖怪であろうとし続けていた。
 ルーミアは、歪んだ道を、疑問を抱くことなく進んでいる。
 何がその切欠となったのか、覚る事を未だ忌避しているさとりには分かる由もない。
 ただ彼女が口にした、閻魔という肩書きが、さとりに一人の人物を想起させる。
 もし、その想像が真実ならば。そう考えるだけで絶望的な気分になった。

「ルーミア。貴女が、その巫山戯た遊びも、誰かを食うことも、誰かを殺す事もやめるならば、私は貴女を許そうと思います。
 貴女が間違っているとは言いません。
 でも、今は、少し我慢をしてくれませんか。貴女が誰かを傷つけるのも、誰かが貴女を傷つけるのも、可能ならば避けたいのです」

 それでも、自分が、最後の納得をするために、それを問う。
 理想を信じることは、それだけで罪になるはずが無い。

「私は、何にも悪くないんだよ。閻魔様の云うとおり。間違ってるのは、お姉ちゃん」
 返事は、期待外れで、予想通りだった。

「そうですか」

 ならば、多少荒っぽくても、力ずくでも、罰という痛みで、思い知らせるしかない。
 それで駄目なら――私は殺す事を厭わない。厭ってはいけない。
 罪を重ね、悲しみを重ね、この闇の世界で、ルーミアは本当の悪になってはいけないのだ。

「ルーミア。こうなってしまったのは残念ですが、私達は貴女を退治しなくてはいけないのです。
 仲間を殺し、誰かを悲しませた事さえも、貴女が正しいと言うのなら――!」

 スペルカードを宣言するように、右腕を振り上げる。

 闇の向こう側でルーミアが不気味に笑うのが、見えた。

「お姉ちゃんも、妖怪だよね。やっぱり私を食べるつもりなの?」


「『想起』――ッ!」

 さとりは叫んだ。
 罪に対しての罰ならば、それが最も効果的だと、さとりは知っていた。
 相手のトラウマを呼び起こす。精神的な存在といえる妖怪に対して、それは時に凶器となることも。

 さとりが振り下ろした腕から伸びる光の矢が、ルーミアを強く照らした。


「きゃああっ!」

 滑稽なダンスを踊るかのようにその身を仰け反らせたルーミアの姿が、さとりに見えた。
 そして、彼女を、闇が包んだ。
 それがルーミアの能力だと、さとりは、知っていた。
 夜の暗闇に溶け込むように、彼女の姿が消えていった。

 光の矢が闇に消え、また、静寂だけがそこに残った。
 それは、一瞬の出来事だった。

 闇に溶け消えたルーミアの後を、さとりは追わなかった。
 足音と、時折木にぶつかる様な鈍い音が響く。
 それが遠ざかっていくのを、さとりは何もせずに待っていた。


 罰としては、酷く生温いものだった。
 ルーミアが、物理的ではない“何か”にトラウマを抱いているようだから、それを彼女に想起させた。
 少なくとも彼女にダメージを与える事はできただろうが、それはただ、ルーミアに少し不快な思いをさせただけなのかもしれない。

 さとりは、心のどこかで気付いている。 
 これは、彼女の歪みを正すには、余りに足りないものだろう。
 閻魔という存在に支えられているとしたら、確かに、彼女を殺す事しか、道は無かったのかもしれない。
 それでも、彼女を生かしてしまった。

 ルーミアは、この先も、不自然に固められた歪みを抱えたまま、悪意無く他者を殺め、喰らい続けるのだろう。
 闇に逃げ、光を絶ち、彼女は、彼女の論理のみの中で生きていく。
 そして、最後に、彼女は、“退治”される事のないまま、救われる事の無いまま、死という終点に辿り着く。
 この地に降り立ち、触れ合った者誰もが望まない結末を、与えてしまうことになるのだ。

 それを知りながら、
 さとりは――


『あの時ケーキをくれたお姉ちゃんだよね?
 ありがとう、あのケーキすっごくおいしかったよっ』

 ただ一度だけ、沈みゆく私を掬い上げてくれた事を思い出して、
 ただ一度だけ、許されるべきでない自分を許してくれた事を思い出して、

 非情にさえも、なりきれなかったのだ。


 ◇


 さとりは、暫し深く考え込んだ後、再び箒に跨った。
 泣きたい気持ちになった。それに合う感情表現は思いつかなかった。

 重石を抱いたような心のまま、再び「何かが手遅れになる前に」と前に進んでいく。
 ずっと思い返していた家族の姿が、闇の中に薄れていってしまうような感覚が、心の中でざわめく。

 例えば、毎日写真を撮り続けていた家族がいたとして、ある日、誰か一人が写るのを拒んだとき、
 その一人と誰かが心交わし新しい席を用意してあげなければ、
 家族を写すカメラは何かが欠けたままのモノを撮り続け、家族とはこんなに脆かったのかと、気付いてしまう。

 私は、自分の我侭で、ルーミアを“見殺しにしてしまった”。
 愛を持つことも、非情になる事も出来ず、半端に相手を傷つけて――

 あの時の罪を、繰り返してしまったのかもしれない。


 さとりは、罪悪感を抱いたまま、また北へと進んでいく。
 ただそれは後悔と言うには余りに漠然としていて、その重さがどこにあるのかわからないままに。


【E-5 一日目・夜】


【古明地さとり】
[状態]:健康 、動揺
[装備]:包丁、魔理沙の箒(二人乗り)
[道具]:基本支給品、にとりの工具箱
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない
1.こいしと燐の死体の探索。空の探索と保護
2.西行寺幽々子、八意永琳の探索
3.こいしと燐を殺した者を見つけたら・・・
4.ルーミアを……どうするのが最善だった?
5.工具箱の持ち主であるにとりに会って首輪の解除を試みる。
[備考]
※ルールをあまりよく聞いていません(早苗や慧音達からの又聞きです)
※主催者の能力を『幻想郷の生物を作り出し、能力を与える程度の能力』ではないかと思い込んでいます。
※主催者(=声の男)に恐怖を覚えています
※八雲紫と情報交換をしました
※閻魔を警戒
※明け方までに博麗神社へ向かう



 私は、光が嫌い。

 闇の中にいれば、光を見なくてもいい。

 だから、私は闇を纏った。


 私はおなかがすいた。

 目の前に、食べてもいい誰かがいた。

 だから、私は誰かを食べた。


 お姉ちゃんは怒った。
 お姉ちゃんは私が正しくないと言った。

 閻魔様は褒めてくれた。
 閻魔様は私が正しいと言った。

 閻魔様はきっと、えらいし、頭がいい。
 お姉ちゃんよりも、ずっと。

 だから、私が正しくて、お姉ちゃんは間違ってる。


 答えはいつだって、単純だった。
 本能と、僅かな規律に従っていれば、いつだって私は私でいられた。
 そうやって生きることは、正しい事だ。
 そう信じて、自分に自信を持って、それを疑ったりなんかしてない。


 だから、わからない。

 お姉ちゃんが叫んで、光が私を襲って、私は闇に隠れて、逃げ出した。
 光は、もう私を追ってこない。

 でも、亡霊みたいなお姉さんが、早苗お姉ちゃんが、燐お姉ちゃんが、怖い顔で追いかけてくる。
 怒って、泣いて、叫んで、私を、追いかけてくる。
 どんなに逃げても、ずっと、ずっと。
 闇の中でもはっきりと見える。
 目を閉じても、目の中で私を追いかけてくる。
 どんなに必死に走っても、ずっと、ずっと。

 どうして?
 私は正しいよ。
 怒るのは間違ってるんだよ。

 どうして?


 わからないよ。


 ――怖い。


【E-5 一日目・夜】

【ルーミア】
[状態]:懐中電灯に若干のトラウマあり、裂傷多数、肩に切り傷(応急手当て済み)、満腹、想起「自分に向けられる怒り」
[装備]:鋸、リボルバー式拳銃【S&W コンバットマグナム】2/6(装弾された弾は実弾1発ダミー1発)
[道具]:基本支給品(懐中電灯を紛失)、357マグナム弾残り6発、フランドール・スカーレットの誕生日ケーキ(咲夜製)、
    妖夢の体のパーツ
[思考・状況]食べられる人類(場合によっては妖怪)を探す。
1.自分に向けられる怒りからの逃走
2.自分に自信を持っていこうかな
3.慧音と神様のところに行ってみよう
4.日傘など、日よけになる道具を探す

※古明地さとりの名前を火焔猫燐だと勘違い
※映姫の話を完全には理解していませんが、閻魔様の言った通りにしてゆこうと思っています
※第3放送を殆ど聞いてません
※想起の状態は長くは続かないものと思われます



148:乾いた叫び 時系列順 150:いたずらに命をかけて
148:乾いた叫び 投下順 150:いたずらに命をかけて
142:It's no use crying over spilt milk 古明地さとり 151:これからの正義の話をしよう
138:Who's lost mind? ルーミア 161:最後の審判


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年05月02日 21:51
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。