●PHASE 1
一人佇むレーヴェ。
レー:…………
女性の声:珍しいですね。ここを客人が訪れるのは。
メルレット登場。
メル:良い霧ですね。この地方はよく霧が出ますが、
今日は特別風情があるようです。
今日は特別風情があるようです。
レー:……朝煙(けぶ)るのは山の息吹と聞いたことがある。
だとすれば、随分と薄い吐息だな。
だとすれば、随分と薄い吐息だな。
メル:ふふ、そうですね。日が昇れば見えなくなってしまう……
山の見せる営みとは、幻のようなものなのかもしれません。
山の見せる営みとは、幻のようなものなのかもしれません。
メル:どうやら同じ道を行かれるようですね。
宜しければ、ご一緒しましょうか。
宜しければ、ご一緒しましょうか。
●PHASE 2
メル:今日中に森を抜けられそうですね。
町までは、あと3、4日といったところでしょうか。
町までは、あと3、4日といったところでしょうか。
メル:私は町に寄らず、山脈を尾根伝いに進むつもりですが…
レーヴェさんはいかがなさいますか?
レーヴェさんはいかがなさいますか?
レー:俺も町に寄るつもりは無い。この道を辿るのが、
一番の近道のようだからな。
一番の近道のようだからな。
メル:そうですか。それでは、もう少し
ご一緒することになりそうですね。
ご一緒することになりそうですね。
レー:ああ、そのようだな。
レーヴェ、先に歩き出す。
メル:(レーヴェさんからは、
あまり感情が読み取れませんね。)
あまり感情が読み取れませんね。)
(そもそも、人との関わりをまるで感じさせません。)
(あの深い瞳の所為なのでしょうか……。)
●PHASE 3
メル:これは……
大規模な軍の集結のようですね。
ですが、どうしてこのような場所で……
大規模な軍の集結のようですね。
ですが、どうしてこのような場所で……
メル:(あの軍旗はギド・カーン軍のもの……
まさか、彼が何か不穏な考えを
抱いているということでしょうか。
まさか、彼が何か不穏な考えを
抱いているということでしょうか。
しかし彼は、優れた知略と良識を持ち
先の大戦を収めた人物―
そのようなことがあるとは思えませんが……)
先の大戦を収めた人物―
そのようなことがあるとは思えませんが……)
レー:…この山間に軍を潜ませるのだ、
それなりの理由があるのだろう。
それなりの理由があるのだろう。
もっとも、その犠牲になるのは
大抵は無関係な者だろうがな。
大抵は無関係な者だろうがな。
レーヴェ、言い終わると歩き出す。
メル:レーヴェさん……?
レー:少し寄る用があってな。
しばらく外させてもらおう。
しばらく外させてもらおう。
レーヴェが去っていく。
●PHASE 4
レーヴェ、一人雲海を見つめている。
レー:……確か、今日が命日だったな。
今年も墓参りには行けそうにない。
済まないな、カリン。
今年も墓参りには行けそうにない。
済まないな、カリン。
レー:だが、俺は俺の命ずるままに動くと決めた。
もはや何者にも囚われはしない。
もはや何者にも囚われはしない。
たとえそれが、
お前との過去であってもな。
お前との過去であってもな。
レーヴェ、崖から捨てるように花を手向ける。
レー:…………
レー:そろそろ出てきたらどうだ?
背後よりソードマン、シャドウが現れる。
覆面剣士:貴様か?レオンハルトというのは……
我が主の望みにより
その命、貰い受ける……!
その命、貰い受ける……!
レー:ギド・カーンの手下どもか……
フッ、丁度良い。
レーヴェ、剣を抜く。
レー:こちらから出向く手間が省けた。
●PHASE 5
メルレットとレーヴェが合流している。
メル:レーヴェさん、貴方の目的は……
そう、ギド・カーンの命を奪うことなのですね。
そう、ギド・カーンの命を奪うことなのですね。
レー:……そういえば、まだ名乗っていなかったか。
レー:執行者NO,Ⅱ、《剣帝》レオンハルト。
《身食らう蛇〈ウロボロス〉》に連なる者だ。
ギド・カーンの命は俺が預かることになっている。
《身食らう蛇〈ウロボロス〉》に連なる者だ。
ギド・カーンの命は俺が預かることになっている。
これは《結社》が下した決定だ。
メル:……そうでしたか。
レー:念のために聞いておこうか。
《紫のメルレット》
かつての弟子が斬られても不服はないか?
かつての弟子が斬られても不服はないか?
ギド・カーンは、
貴女の元で修行した中でも
特に優秀な弟子だったと聞いている。
貴女の元で修行した中でも
特に優秀な弟子だったと聞いている。
メル:ええ。
メル:彼には彼の信念があり、やり方があります。
そしてそれが間違っているのなら……
何者かによって、正さなければならないでしょう。
そしてそれが間違っているのなら……
何者かによって、正さなければならないでしょう。
彼には、その責任があります。
レー:フッ……
俺は正すつもりなどないがな。
俺は正すつもりなどないがな。
だが、けじめは
つけておいたほうがいいだろう。
つけておいたほうがいいだろう。
《紫のメルレット》―
世俗への不干渉を貫く貴女は、
その手で奴を止められないのだからな。
世俗への不干渉を貫く貴女は、
その手で奴を止められないのだからな。
●PHASE 6
砂漠にメルレットが一人、レーヴェはいない。
メル:……行ってしまいましたね。
彼ほどの使い手とは、
そう出会えるものではありません。
そう出会えるものではありません。
ですが、彼のそれは悲しいまでの力……
かけがえのないものを失い、
代償として手に入れた力です。
かけがえのないものを失い、
代償として手に入れた力です。
メル:それでもその力を振るい続ける。
修羅、とでも言うのでしょうか……
●ENDING
ギド・カーンが膝を突いている。
ギド:クッ、この私に
膝を突かせるとはな……
膝を突かせるとはな……
だが、この程度で
我が野望、止められるものか!
我が野望、止められるものか!
ギド・カーン、魔法を使い回復する。
ギド:私は世界を変えるのだ。
貴様ごときに邪魔をされる謂れなどないわ……
貴様ごときに邪魔をされる謂れなどないわ……
レー:闇の力、か。
フフ、どうやら思っていたより
ずっと目出度い男のようだな。
ずっと目出度い男のようだな。
レーヴェ、剣を納める。
レー:ギド・カーンよ、そのようなもので
この世が変わると本気で思っているのか?
この世が変わると本気で思っているのか?
ギド:な、なに……?
レー:お前は縋(すが)っているに過ぎない。
その力への幻想と、お前自身の希望にな。
その力への幻想と、お前自身の希望にな。
レー:人の紡ぐ世界とは、
全て虚構と幻想の産物だ。
全て虚構と幻想の産物だ。
繰り返される日常の中で
人は不都合なものは忘れ、覆い隠し、
信じたい現実で固めた世界を作り上げていく。
人は不都合なものは忘れ、覆い隠し、
信じたい現実で固めた世界を作り上げていく。
そしてその欺瞞に塗れた世界は、
虚りの繁栄と際限のない犠牲を
ただ繰り返していく……
虚りの繁栄と際限のない犠牲を
ただ繰り返していく……
レー:真に世界を変えたいと望むのならば、
人であることを捨て、修羅にでもなることだ。
人であることを捨て、修羅にでもなることだ。
それができぬのなら闇に喰われてしまうがいい。
今のお前は、力も伴わずに
醜く真実から目を逸らし続けるのみ……
斬る価値も無い。
醜く真実から目を逸らし続けるのみ……
斬る価値も無い。
ギド・カーンを残し、レーヴェが去る。
ギド:フ、フフフ……
言ってくれるな……
言ってくれるな……
ギド・カーン、再び膝を突く。空には流れ星。
哀しみを胸に、独り
修羅の道を歩むレーヴェ。
彼の魂は、どこに行き着くのだろうか……
修羅の道を歩むレーヴェ。
彼の魂は、どこに行き着くのだろうか……