グラップラー(ジン)
●PHASE 1
ジ:ふう、いい霊気が漂っているな……
昔、リュウガ師父が
この辺りの森に篭って修行したと聞いたが、
さすがに鍛錬に向いた環境だ。
この辺りの森に篭って修行したと聞いたが、
さすがに鍛錬に向いた環境だ。
どれ、まずは
基礎の見直しから始めてみるか。
基礎の見直しから始めてみるか。
メ:おや、こんな場所に人が……
どうやら修行をしてらっしゃるようですね。
●PHASE 2
メ:そうですか、師に倣(なら)って
この森で修行を。
この森で修行を。
ジ:ああ、師父は若いころ
あちこちで武者修行をしていたらしい。
少しでも近づければと思ってな。
あちこちで武者修行をしていたらしい。
少しでも近づければと思ってな。
まあそのついでに、
もう一つ目的があるといやあ
あるんだが……
もう一つ目的があるといやあ
あるんだが……
俺の流派は泰斗流というんだが、
泰斗流にはまだ誰にも伝えられていない
奥義があると言われている。
泰斗流にはまだ誰にも伝えられていない
奥義があると言われている。
はは、といっても
秘儀秘伝の類じゃない。
秘儀秘伝の類じゃない。
唯一の使い手だった師父のいない今、
誰も知らない幻の奥義になっちまったって
だけなんだがな。
誰も知らない幻の奥義になっちまったって
だけなんだがな。
メ:ではジンさんは、
それを独力で見出すために修行を……?
それを独力で見出すために修行を……?
ジ:はっは、まあそんな
大それたことは考えていないさ。
大それたことは考えていないさ。
奥義とは、人が一生かかって
見つけ出すものだと思っているからな。
見つけ出すものだと思っているからな。
俺はただ、鍛錬を積むだけだ。
●PHASE 3
ジ:なるほど。
召喚術ってのは中々に面白い。
召喚術ってのは中々に面白い。
幻術に近いようだが……
いや、不思議な技だ。
いや、不思議な技だ。
メ:ジンさんは大分
飲み込みがお早いようですね。
飲み込みがお早いようですね。
さすがに武術家の方は
修行に慣れてらっしゃるのでしょうか。
修行に慣れてらっしゃるのでしょうか。
ジ:ははは、まあ確かに
気功なんかの扱いには慣れているからな。
気功なんかの扱いには慣れているからな。
どうやら感覚的には似たものがあるらしい。
その辺りを足がかりにしているだけさ。
その辺りを足がかりにしているだけさ。
ああ、そうだ。
実はこれから町まで降りる用事があってな。
実はこれから町まで降りる用事があってな。
ついでだ、買出しなんかも済ませてこよう。
この辺りは
食える木の実も少ないからなぁ。
食える木の実も少ないからなぁ。
メ:ふふ、ジンさんは
山篭りにも慣れてらっしゃるようですね。
山篭りにも慣れてらっしゃるようですね。
それでは、遠慮なくお願いしましょうか。
●PHASE 4
ジ:おや……?
ほう、珍しいこともあるもんだ。
こんな街道の外れで人と出くわすとはな。
こんな街道の外れで人と出くわすとはな。
見たところあんた、修行僧のようだが……
修行僧:
ええ、お察しの通りです。
ええ、お察しの通りです。
私は諸国を渡って修行を積んでいるのですが、
この地方で開かれる
武術大会に参加しようと思いまして。
この地方で開かれる
武術大会に参加しようと思いまして。
ジ:武術大会か……
はは、確かにそいつは
いい腕試しになりそうだな。
はは、確かにそいつは
いい腕試しになりそうだな。
いや、実は俺もある修行の真っ最中でな、
そんな機会があればいいと思っていたところなんだ。
そんな機会があればいいと思っていたところなんだ。
僧:いえ、それが……
どうも妙なことになっているらしいのです。
どうも妙なことになっているらしいのです。
ジ:妙なこと……?
僧:ええ……
武術大会の主催者であるギド・カーンは、
非常に良識のある宰相として知られ
先の大戦を収めたことでも有名な人物です。
非常に良識のある宰相として知られ
先の大戦を収めたことでも有名な人物です。
しかし近頃、彼が密かに軍備を整え
周辺諸国の征服を狙っているなどという
噂があるのです。
周辺諸国の征服を狙っているなどという
噂があるのです。
私にはどうも信じられないが、
現に武術大会は中止になってしまったようだ。
現に武術大会は中止になってしまったようだ。
このまま帰るのも勿体無いで、
こうして修行しているところなのです。
こうして修行しているところなのです。
ジ:ふむ、そうだったのか……
(そういえば、修行している辺りでも、
何度かギド・カーン軍らしきものを
見かけた気もするが……)
何度かギド・カーン軍らしきものを
見かけた気もするが……)
(……ついでだ、
少し探ってみてもいいかもしれんな。)
少し探ってみてもいいかもしれんな。)
●PHASE 5
ジ:(ふむ、またしても
ギド・カーン軍の駐屯地か……)
ギド・カーン軍の駐屯地か……)
(先日から移動を繰り返しているようだが、
この動き、やはり気になるな……)
この動き、やはり気になるな……)
メ:……ジンさん?
いかがなさいましたか?
いかがなさいましたか?
ジ:ああ、いや……
何やら世間で
不穏な動きがあるらしくてな。
不穏な動きがあるらしくてな。
杞憂かとも思うが、
こいつはどうも気になる。
町でも噂になっているようなんだが……
こいつはどうも気になる。
町でも噂になっているようなんだが……
メ:……そうでしたか。
闇の気配が強くなっています。
その影響で、
各国の緊張も高まっているようですね。
各国の緊張も高まっているようですね。
ジ:ふむ、メルレット殿もそう見るか……
(これは近いうちに
一騒動あるかもしれんなあ……)
一騒動あるかもしれんなあ……)
●PHASE 6
メ:ジンさん、お見事でした。
ネイティアルマスターとしても
十分な実力だと思います。
ネイティアルマスターとしても
十分な実力だと思います。
ジ:いや、まだまだだろう。
俺の場合は、召喚術より
武術の割合が大きいからなぁ。
俺の場合は、召喚術より
武術の割合が大きいからなぁ。
使っているうちに分かってきたが、
やはり、召喚術というのは
気功とは異なるものらしい。
やはり、召喚術というのは
気功とは異なるものらしい。
俺は師父から、気には己を整える内なる気と
体外へ働きかける外なる気があると教わったが、
メルレット殿の話はどちらとも違うようでな……
体外へ働きかける外なる気があると教わったが、
メルレット殿の話はどちらとも違うようでな……
(いや、まて。
本当に違うものなのか……?)
本当に違うものなのか……?)
(師父はああ言っていたが、
気功にはまだ別の使い方があるのかもしれん。
もしや師父も、初めからあると知っていて……)
気功にはまだ別の使い方があるのかもしれん。
もしや師父も、初めからあると知っていて……)
(ふむ、これは是非
試してみたいところだが……)
試してみたいところだが……)
ん……?
いや、丁度適任がいるじゃないか。
いや、丁度適任がいるじゃないか。
フフ、こいつは少し
面白いことになりそうだ。
面白いことになりそうだ。
メ:ジンさん……?
何をお考えなのでしょうか。
何をお考えなのでしょうか。
ジ:ああ、いや……
奥義の話もそうなんだが、確か
近頃怪しい動きをしているギド・カーンという男、
最強のネイティアルマスターとして名高いと聞く。
近頃怪しい動きをしているギド・カーンという男、
最強のネイティアルマスターとして名高いと聞く。
修行の締めの相手に丁度良さそうだ、
などと考えちまってな。
などと考えちまってな。
メ:つまり……
ジンさんは、彼と手合わせすることで
その真意を問いただそうというのでしょうか。
ジンさんは、彼と手合わせすることで
その真意を問いただそうというのでしょうか。
ジ:幸い、ギド・カーンは
武術家好きらしいという話だからな。
武術家好きらしいという話だからな。
まあどうなるかは分からないが……
全力で挑む相手として、不足がないのは確かだ。
全力で挑む相手として、不足がないのは確かだ。
ここはひとつ、手合わせ願うとするさ。
●ENDING
ジ:ふう……
ひとまずギド・カーンの方は収まったか。
ひとまずギド・カーンの方は収まったか。
それにしても、大した男だ。
今回の修行が無ければ、危なかったやもしれんな。
今回の修行が無ければ、危なかったやもしれんな。
メ:ジンさん、
戦い振りは拝見させていただきました。
戦い振りは拝見させていただきました。
どうやら、お探しだった奥義を
見極められたようですね。
見極められたようですね。
ジ:いや……
見極めたと言えるのかどうか。
見極めたと言えるのかどうか。
この奥義を使うには、
俺にはまだ早すぎるのかもしれん。
俺にはまだ早すぎるのかもしれん。
メ:?
ジ:フフ、奥義などそんなものさ。
それを知れば一気に強くなれるものではない……
奥義を使いこなすために、
結局は地道な修行が求められる。
奥義を使いこなすために、
結局は地道な修行が求められる。
どうして師匠が
誰にも伝えなかったのか不思議だったが……
誰にも伝えなかったのか不思議だったが……
伝える必要など、
元々無かったのかもしれんなぁ。
元々無かったのかもしれんなぁ。
メ:……そうでしたか。
面白いものですね。
私もネイティアルを伝える者……
しかしその極意などは、
それぞれの人が見出すままに委ねています。
しかしその極意などは、
それぞれの人が見出すままに委ねています。
私が伝えるのは、
基礎と正しい使い方のみ……
基礎と正しい使い方のみ……
ジ:はは、弟子の出来は
弟子次第、というわけか。
弟子次第、というわけか。
確かにそれは、リュウガ師父の心に
通じるものがあるようだ。
通じるものがあるようだ。
おっといかん。
あれやこれやで長く道場を空けちまった。
早く帰らんとキリカの奴にどやされちまう。
あれやこれやで長く道場を空けちまった。
早く帰らんとキリカの奴にどやされちまう。
(うむ、それにメルレット殿のような
美人といたことがバレたら
何を言われることやら……)
美人といたことがバレたら
何を言われることやら……)
メ:?
ジ:いやいや、何でもない。
ははは、随分と世話になっちまったが、
俺はこれで失礼させてもらうぞ。
俺はこれで失礼させてもらうぞ。
隠された奥義には、師匠の心が託されていた。
ジンは己の未熟さを実感しながらも
故郷に戻ったら師父の墓前に
報告しなければと思うのだった。
ジンは己の未熟さを実感しながらも
故郷に戻ったら師父の墓前に
報告しなければと思うのだった。