●PHASE 1
メル:どうです、ビルーザさん。
ネイティアルの扱いには慣れましたか?
ネイティアルの扱いには慣れましたか?
ビル:ネイティアルの召喚術か……
俺には少々難しいな。
俺には少々難しいな。
メル:直に慣れるでしょう。
貴方には……
貴方には……
……いえ、貴方にも
十分な素質があるようですから。
十分な素質があるようですから。
メル:さあ参りましょうか。新たなる地へと……
●PHASE 2
メル:ご覧なさい。眼下に広がる大地を。
野をえぐった傷跡は、大戦が残した人々の憎悪……
野をえぐった傷跡は、大戦が残した人々の憎悪……
憎悪は何も生み出しはしない。
ただ他のものを傷つけるばかりです。
ただ他のものを傷つけるばかりです。
ビル:これが戦争の跡か。
何年か前に、人の世界で
激しい戦があったと聞いたが……
激しい戦があったと聞いたが……
メル:ええ、何年も続く激しい戦いでした。
ある人物によって収められるまで、
本当に多くの人が犠牲になりました。
本当に多くの人が犠牲になりました。
ビル:そうか……
(ギド・カーン……
あんたは人の世界でも、英雄だったんだな。)
あんたは人の世界でも、英雄だったんだな。)
●PHASE 3
シスターが一人、森の中で迷っている。
女 :あら……?
道に迷ってしまいました。
町はどちらでしょう。
町はどちらでしょう。
シスターが去っていく。その様子をメルレットとビルーザが物陰から見ている。
メル:人には、お会いにならないのですね。
ビル:俺は、こんな格好をしているからな。
人とも獣ともつかない姿……
人の前に出ても、ろくなことはないさ。
人の前に出ても、ろくなことはないさ。
二人が物陰から出てくる。
ビル:さっさとこの森を抜けてしまおう。
どうも、人里の近くは落ち着かない。
どうも、人里の近くは落ち着かない。
ビルーザ、先に歩き出す。
メル:(半獣人の姿……
人から恐れられ、忌み嫌われる存在。)
人から恐れられ、忌み嫌われる存在。)
(彼らもまた、そんな人と関わることを
恐れているのでしょうか……)
恐れているのでしょうか……)
メルレット、後を追う。
●PHASE 4
ビル:きな臭いニオイがプンプンするな。
これが戦争のニオイか?
これが戦争のニオイか?
メル:今回の件には、その大戦を収めたと伝えられる、
ギド・カーンという男が関わっているという噂です。
ギド・カーンという男が関わっているという噂です。
各地の紛争は彼が裏で糸を引いており、
いずれ彼の率いる大軍が諸国を脅かすのではないかと。
それが噂だけならよいのですが……
いずれ彼の率いる大軍が諸国を脅かすのではないかと。
それが噂だけならよいのですが……
ビル:………メルレット。先を急ごう。
二人が歩き出す。
●PHASE 5
ビル:……………………
ビルーザが崖下を見つめている。
少し離れた所からメルレットが様子を伺っている。
少し離れた所からメルレットが様子を伺っている。
メル:あれ以来、一言も口を
利かなくなってしまいましたね。
利かなくなってしまいましたね。
各地の戦場の様子を追ってきましたが、
ビルーザさんが考えに沈むのも
無理のない話かもしれません。
ビルーザさんが考えに沈むのも
無理のない話かもしれません。
ギド・カーン……各地で戦争を起こし
今や大陸の覇者と呼ばれる彼は、
いつも獅子の仮面を被っていると言われています。
今や大陸の覇者と呼ばれる彼は、
いつも獅子の仮面を被っていると言われています。
……ビルーザさんは、
その本当の理由を知っているのですから。
その本当の理由を知っているのですから。
●PHASE 6
ビル:すまない、ここのところ
修行中にも口を利かなかったな。
修行中にも口を利かなかったな。
俺は、半分獣だからな。
昂(たかぶ)ると、つい人の言葉が出ないんだ。
昂(たかぶ)ると、つい人の言葉が出ないんだ。
ビルーザ、背中を向ける
ビル:……メルレット。
あんたは初めから気付いていたんだろう?
俺とギド・カーンは、同じ種族だ。
あんたは初めから気付いていたんだろう?
俺とギド・カーンは、同じ種族だ。
いや、気付いていないはずがない。
ギド・カーンも、かつて
あんたの元で修行をしていたんだからな。
ギド・カーンも、かつて
あんたの元で修行をしていたんだからな。
だが奴は、ある日あんたの前から姿を消したと聞いた。
なのにどうして、俺を受け入れてくれたんだ?
なのにどうして、俺を受け入れてくれたんだ?
メル:確かに、ギド・カーンも
私の元で召喚術を学んだことがあります。
その力を使い、今度は戦争を始めた……
私の元で召喚術を学んだことがあります。
その力を使い、今度は戦争を始めた……
ですが同じ半獣人でも、貴方と彼は違うでしょう。
貴方を拒む理由はありません。
貴方を拒む理由はありません。
ビルーザさん、
貴方は彼に会ってどうするつもりなのですか?
貴方は彼に会ってどうするつもりなのですか?
一瞬沈黙。
ビル:ギド・カーンは人の世界で成り上がった。
そんな半獣人は、恐らく初めてだろう。
そんな半獣人は、恐らく初めてだろう。
奴には、聞いておきたいことがある。
……同じ、半獣人としてな。
……同じ、半獣人としてな。
●ENDING
メル:ビルーザさん。
貴方の目的は、初めから
ギド・カーンを倒すことだったのですね。
貴方の目的は、初めから
ギド・カーンを倒すことだったのですね。
ビル:……俺たち半獣人は、
人と関わらずに生きていく運命だった。
人と関わらずに生きていく運命だった。
ギド・カーンは、それを変えようとした。
人の世界を、この世界すべてを変えようとしたんだ。
人の世界を、この世界すべてを変えようとしたんだ。
そんな奴に、俺たちが
一縷(いちる)の望みを抱いていたのも事実だ。
一縷(いちる)の望みを抱いていたのも事実だ。
だがその過程で、奴自身が変わってしまった。
この通り、軍勢を率いて人の世界を荒らしまわり、
蹂躙や虐殺を繰り返した。
この通り、軍勢を率いて人の世界を荒らしまわり、
蹂躙や虐殺を繰り返した。
……多くの人間に迷惑をかけた。
そんな奴を倒すのは、
同族の者である俺の使命だろう。
そんな奴を倒すのは、
同族の者である俺の使命だろう。
そうえいば、あんたも人間だったな。
ハハ、なら人間ってやつも
案外いいものなのかもしれない。
案外いいものなのかもしれない。
メル:人といっても、色々な考えを
持っている人がいますからね。
持っている人がいますからね。
その姿を恐れず、
話をしてくれる人もいると思いますよ。
話をしてくれる人もいると思いますよ。
ビル:……あんたが言うなら、
そうなのかもしれないな。
そうなのかもしれないな。
だが、半獣人であるギド・カーンが
これほど世界を荒らしまわったんだ。
みんな、この姿に恐怖しているだろう。
これほど世界を荒らしまわったんだ。
みんな、この姿に恐怖しているだろう。
もう、俺たちが
人前に出て行くわけにはいかないんだ。
人前に出て行くわけにはいかないんだ。
メル:ビルーザさん。
どちらへ……?
どちらへ……?
ビル:また、人と関わりのない場所へ。
あんたに会うことも、もうないだろう。
あんたに会うことも、もうないだろう。
孤高の魂はいずこへと去っていった。
もう、彼の姿を見るものは誰もいない。
もう、彼の姿を見るものは誰もいない。