なんて精巧な姿見。等身大で、嫌になるほど似通っている。これが、同属嫌悪というものなのね……

「なんて精巧な姿見。等身大で、嫌になるほど似通っている。これが、同属嫌悪というものなのね……」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
なんて精巧な姿見。等身大で、嫌になるほど似通っている。これが、同属嫌悪というものなのね……」を以下のとおり復元します。
発言者:[[エリザベータ・イシュトヴァーン]]
対象者:[[青砥 美汐]]


&bold(){互いが互いの在り方、言動を何故か認められず、それでいて相手を否定する言葉を吐く度に己の心も軋む。}
そんな事を繰り返しながら戦う女二人の片方が、諦観とともに呟いた二人の事実。

ジュン√、天空の[[オルフィレウス]]が見降ろす中、[[凌駕>秋月 凌駕]]達は、同じく[[機構>時計機構]]の真実を知り、その上で任務を果たそうとする[[ギアーズ>戦闘実行部隊・ギアーズ]]の面々との決戦に挑む。
凌駕と[[ジュン>万里也 ジュン]]の二人が、ギアーズの指揮官・[[アレクサンドル>アレクサンドル・ラスコーリニコフ]]と支配者の猟犬・[[ネイムレス]]に立ち向かう一方、美汐が対峙したのはエリザベータであった。


練度の差から美汐は一方的に傷を受けるも、対するエリザベータも“兵士”としての自己の制御が乱れ、決定的な手を打てずにいた。彼女の一向に高まらぬ兵士としての戦意、その原因がどこにあるのかといえば……


&sizex(4){&color(darkviolet){「お互い端役であり脇役だもの。燃える舞台ではないでしょう?}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&ruby(オードブル){前菜}とすら認識されてはいないのに、あなた昂ぶることができるのね。}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){なるほど、自慰が好きなのかしら」}}

&sizex(4){&color(darkviolet){「図星でしょう? 分からないなんて言わせない。期待されていないのよ、私達は……}}
 &sizex(5){&color(darkviolet){単刀直入に言うのなら、ええ、骨の髄から舐められている。}}
 &sizex(5){&color(darkviolet){わざわざ訊ねないでちょうだい。私、改めて惨めになんて成りたくないの」}}


その言葉に怒り、突っ込んでくる相手を、普段通りならば冷静にいなすことができたはずなのに、エリザベータも自分が先程吐いた現状認識のはずの言葉で、己の心を軋ませ、結果精彩を欠いた動きが続くばかりであった。
彼女の胸には時計機構の存在意義、そしてそれによって潰され、使い捨てられるのを待つだけの[[存在>アポルオン]]の姿が思い起こされ、&bold(){“私”と“兵士”の“切り替え”も迷いと躊躇いによって半端になってしまう。}


エリザベータのそんな内心の戸惑いを見抜いたのか、今度は美汐がそれを嘲笑する。
&sizex(3){&color(navy){兵士だの、命令だの、機構がどうだの何だのと、}}
&sizex(3){&color(navy){何もかも知った風な顔で、今までよくも口にできたものだと。}}
&sizex(3){&color(navy){そんな貴様のキツい香水と厚化粧が、自分には癇に障って仕方がないんだ}}と。

&sizex(4){&color(navy){「当ててやろうか? あんた、本当は忠誠なんて誓ってないだろ」}}

沈黙するエリザベータに向けて、美汐はさらに言葉を続ける、


&sizex(4){&color(navy){「潰されるのが怖いから、大きな歯車に媚売ってるだけ。}}
 &sizex(4){&color(navy){お願いどうか潰さないで、ねえ止めてよ支配者様。ほぅら見て、私何でもしますから……と。}}
 &sizex(4){&color(navy){本心は大方そんなところ。ねえ違う、完璧で麗しい、完全無欠の兵士サマ?}}
 &sizex(5){&color(navy){――臆病者が、逃げんじゃねえぞ&sizex(4){」}}}

&sizex(4){&color(navy){「本音を言えずに我慢して、勝手に信じて裏切られて。}}
 &sizex(4){&color(navy){自分を出す勇気がないから&ruby(かめん){化粧}に頼って偉そうに……脳味噌ないの?}}
 &sizex(4){&color(navy){気持ち悪いわ、目障りなんだよ。}}
 &sizex(4){&color(navy){あんたアレでしょ? 弱った時に優しくされたら、コロッと落ちる女の典型例。}}
 &sizex(5){&color(navy){みすぼらしいのよ、悔しかったら素顔の自分に自信を持ちなさいよ――私みたいに&sizex(4){」}}}


表面上は相手を痛めつけるための侮蔑の言葉にも見えたが、
既にエリザベータには、&bold(){彼女もまた自分と同じように、自分の吐いた言葉に傷ついているのだと理解できてしまっていた。}
そうして&bold(){この組み合わせ}になってしまったことに、苦笑を浮かべながら―――

&sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){「ええ、本当によく分かったわ。}}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){どうして私が、あなたのことが気に入らないのか。どうして私が、あなたを見ると悲しくなるのか。}}}
 &sizex(5){&color(darkviolet){&bold(){なんて精巧な姿見。等身大で、嫌になるほど似通っている。}}}
 &sizex(5){&color(darkviolet){&bold(){これが、同属嫌悪というものなのね……&sizex(4){」}}}}

&bold(){先程から相手に向けて投げつけた言葉は、その実何よりも自分に言い聞かせるもの。}
&bold(){これで納得してはどうだという行いを、どちらも現実に対しよくやってきた。}

&bold(){その敵手の言葉が、先のどの言葉よりも認めたくない事実であったがために、}

&sizex(4){&color(navy){&bold(){「――よりにも、よってッ」}}}


&sizex(6){&color(navy){&bold(){「何を口走りやがったんだ、てめぇはァァアアアアアアーーッ!」}}}


迸る激情を乗せて美汐はエリザベータを追い込もうとするが、彼女は悲しい目を向けたまま言葉を発する……

&sizex(4){&color(darkviolet){「さっきの指摘を肯定するわ。ええそうよ、全てあなたの言う通り。}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){私は、忠実な歯車を上手く装っているに過ぎなかった。}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){用意された役割を演じることが、他人より少し得意だっただけ。}}
 &sizex(5){&color(darkviolet){そして、&ruby(・・・・・・・){たったそれだけ}で……深みに嵌まった馬鹿な女&sizex(4){」}}}

&sizex(5){&color(darkviolet){&bold(){「だから望み通り、素顔を見せてあげるわ。&ruby(アオト・ミシオ){青砥美汐}。}}}
 
 &sizex(5){&color(darkviolet){&bold(){そうよ。私だってこんな現実は嫌だものーーッ!」}}}


&bold(){似た者同士の少女を見つめながら、エリザベータは役柄を捨て、己が&ruby(イド){[[真実>https://www46.atwiki.jp/vermili/pages/112.html]]}をさらけ出す――}


&sizex(6){&color(darkviolet){&bold(){「影装・&ruby(ヘヴィメタル・テンペスト){重鋼嵐弩}」}}}


影を露としたエリザベータからは殺意も敵意もない。
だが、対峙する美汐にとっては、
&bold(){弱く、脆い自身の素顔の解放と、そこに付き纏い続ける恐れ……}
&bold(){そんな一変した彼女の雰囲気を――、今までの自分の選択を強く否定する姿を見せつけられて、立ち竦むしかない。}

&sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){「私人の自分、兵士の自分。どちらも自分で、自分じゃなくて……}}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){貫くべき芯がないから、向き合うことから逃げてばかり。}}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){上手に演じているその影で、本質の変化は避けられないということを気づいていながら避けていた」}}}

&sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){「お願いお願い、こんな&ruby(かお){素顔}をどうか見ないで。}}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){私はもう冷たい兵器なの――近づけば、鉄の雨に打たれてしまう。}}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){こんな風に、こういう風に。見るも無残な傷だらけになってしまう」}}}

美汐が、訥々と語っていくエリザベータの姿に忌避感を感じ、身動きが取れなくなる中……
戦場に砕きばら撒かれた無数の鉄片が女の周辺の空間に引き寄せられ、陣容が整えられていく。

&sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){「それでも、どうか、この暴風を潜り抜けて。}}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){身勝手な私の弱さを、そのまま砕いて……引き上げてよ。}}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){そう怯えながら、歯車の影に寄り添い続けていたわ。}}}
 &sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){もう長い間……ずっと、ずっと。こんなところに来てしまうまで」}}}

諦観の独白に耐えきれず美汐は吼えるも……

&sizex(5){&color(navy){「私は違うっ。あんたみたいに弱さを守るために逃げたりなんて――!」}}
&sizex(5){&color(darkviolet){&bold(){「いいえ同じ。私のように、演じることで心を保とうとしたことも。}}}
 &sizex(5){&color(darkviolet){&bold(){あなたのように、本音を騙そうと強がってきたことも。}}}
 &sizex(5){&color(darkviolet){&bold(){自らを欺こうとした行動に、どんな違いがあるというの?」}}}

&bold(){兵士という役を演じきるか、強者の振りをして立つか。}
&bold(){心理学的な見方をするなら、どちらも同じく精神的な防衛行動に分類される。}
&sizex(3){&bold(){本当は脆いから、怖いから。}}
&sizex(3){&bold(){異なる理屈で困難への解決策を導き出すという辺り、二人の手段には共通している部分が多い。}}

何等反論の言葉を持たぬ美汐に対し、
&sizex(3){&bold(){&color(darkviolet){エリザベータは指揮者のように腕を上げ、多数の&ruby(レールガン){電磁投射砲}による飽和射撃の構えを完成させた。}}}
&sizex(3){&bold(){&color(darkviolet){彼女が命じた瞬間、&ruby(あざな){影装}の如く&ruby(テンペスト){暴嵐}が吹き荒れるであろう。}}}

&sizex(4){&bold(){そうして射出の直前、エリザベータは俯く少女に向け――}}


&sizex(6){&color(darkviolet){&bold(){「さあ、私は全てを見せたわよ。}}}
 &sizex(6){&color(darkviolet){&bold(){あなたもまた、その厚化粧を取りなさい」}}}


&sizex(4){&color(darkviolet){&bold(){告げた瞬間、美汐の総身を砕いてなお余りあるほどの鋼鉄雨が撃ち出されたのであった……。}}}


----
- 似てるけど2人の√の結末は………対極的だよね。  -- 名無しさん  (2017-05-21 14:58:51)
- 決して真理には到達できない二人だからこそ、人間味があっていいんじゃないか  -- 名無しさん  (2017-05-21 19:55:26)
- マレーネとジュンが凌駕を良い神に方向修正させるのに対して、リーザと美汐は凌駕を人間の位階に下げる印象。どっちも素晴らしいことだけど、俺は後者が好き。  -- 名無しさん  (2017-05-21 20:18:47)
- 人を解する神にするか、人に堕とすか……ってところかねぇ  -- 名無しさん  (2017-05-21 20:21:24)
- 形月でやったらどちらも至極のテーマになりそうだな。  -- 名無しさん  (2017-05-22 09:57:38)
- 何気に自分と似た負け犬や弱者に優しくて、同属嫌悪をしないゼファーさんの特異性を示してな、この台詞  -- 名無しさん  (2017-05-22 22:24:55)
- ゼファーさん同属にはむしろ同情・同調するからな。自分が嫌いで変わりたいと思ってるが、それを他者に押し付けない  -- 名無しさん  (2017-05-22 22:35:38)
- まあ、受け入れることが滅奏者の答えだからね。  -- 名無しさん  (2017-05-26 11:09:56)
#comment

復元してよろしいですか?