親友や仲間との出会いにより空虚な生に誇りを抱き……
しかしその出会いも誇りも、過去の恥ずべき選択から生じたと突きつけられて絶望し……
そのまま苦悶の果てに朽ち果てるかに見えた傷だらけの男が、小さな救いを与えてくれた傷だらけの女へと告げた想い。
そんな彼女に、礼は同じ調整役を演じていた自分の正体も始めから知っていたのではないか？と問う。
それに切は肯定の頷きを返して……
「知っていたよ。だから、ワタシはキミがずっと羨ましかったんだ」
「いつまでも迷いなく全力で、本気で、巨大な敵に勝つ為にぶつかっていける……
そんな礼クンの姿が、私にはとても眩しかったんだよ」
「自分の意志で選んだ選択が、きっと何かを変えられる……そう本気で信じて生きられる姿がね」
「キミを眩しいと思う、この気持ち……これを、ワタシはどうしたらいいのか判らない」
「これはきっと、未練だから。
何もかも諦めて生きていこうとするワタシが、決して持っちゃいけない気持ちだから……」
「でも……止められない。捨てられない。キミへの、この思いを」
そして、押し寄せる感情に後押しされるように、切は礼の手を固く握りしめて願う。
「だから――君には闘い続けてほしいの。迷いなく全力で、本気で、巨大な敵に勝つ為に。
キミのその眩しさが、こんなワタシを……もしかしたら、変えてくれるかもって思えるから」
「ああ、本当に……どうしてこんな時まで、ワタシは他力本願なんだろうね？
マレーネみたいに、凌駕クンみたいに、どうしても自分じゃ一歩を踏み出せない」
「羨ましくて、恐くて、痛いよ」
ずっと本心を明かさなかった切、彼女が抱いてきた、
偽りであったとしてもがむしゃらに足掻き未来を勝ち取ろうとしてきた男への真実の想い。
「始めから偽りだった、この僕の闘いが……君の目には、そんな風に映っていたのか……」
それは、礼の心に小さな灯を灯し始め、
「これはワタシの我がまま、エゴだよ。
それでもワタシは、キミに闘いから降りないで欲しいんだ……」
逃げだしたい、その絶望への誘いを振り切るように、縋るように男は女を抱き締める。
「エゴでいい……その君のエゴが……今の僕には、掛け替えも無く大切に思える。
君がいなければ……僕は立ち上がる事すら出来なかっただろう」
「僕には、君が必要だ……」
「一緒に傷の痛みを耐えて、後ろめたさを抱えながら生きる、君のような相方が」
傷の舐め合い？ いいや違う。
一歩を踏み出せない人間は、立ち上がるためにいつだって共に歩める人が要るんだ。
それを恥じることはもうしない。
みっともなく見えるだろう、情けなく見えるだろう。
それでも、泥に塗れて血を流しても、再び歩き出すことは誰にも笑わせはしない――
そう強く、礼は誓う。
その言葉に、切の貌には満ち足りた歓びが浮かぶ。
男が再起する姿とは、傷の分だけ輝くのだな―――そう思いながら彼女は体重を預けてゆく。
「嬉しいよ、礼クン……
ワタシは弱くて愚図なくせに、強い人に手を引かれて付いていくのは嫌いでね。
傷のない相手には、心を開く事さえ出来ない……だから、一緒にいるなら」
常に強者として歩みを止めない者ではなく。
何度地を舐めようとも、その度に立ち上がれるような人がいいから。
「同じ場所から歩いていけて、同じ傷のある男がいい……キミがいい」
相身互いの似た者同士……結局はそうなるのかもしれない。
だが、礼と切、彼ら二人の立場と人生を思えば、どれだけこの出逢いが稀有なものであったのか。
こうなることが必然であったかのように、傷だらけの男女は互いを強く抱擁し合う。
そのまま、高まった想いに身を委ね、二つの影は静かに折り重なっていくのであった…………
- この後、滅茶苦茶せ（以下略 -- 名無しさん (2017-05-10 19:54:59)
- 二人は幸せなキスをして終 -- 名無しさん (2017-05-10 19:59:50)
- あ、礼さんが浮気している！ -- 名無しさん (2017-05-10 23:06:27)
- ↑凌駕もある意味浮気してるだろ。 -- 名無しさん (2017-05-10 23:24:07)
- ↑ヒロインにまで浮気を疑われてるしね。凌駕は。 -- 名無しさん (2017-05-10 23:24:52)
- ？？？「フリンなんだよ。いけないんだからね」 -- 名無しさん (2017-05-10 23:28:26)
- おいメインヒロイン浮気か -- 名無しさん (2017-05-11 00:04:09)
- ↑2 エリザベータさんどうかしたんすか……？ -- 名無しさん (2017-05-11 07:26:56)
- ↑4 ねっとり社長ボイス魔神の神殺しかな？ -- 名無しさん (2017-05-12 18:32:00)
