「―――ずっとそこにいたのね……あんた。二対一なんて、卑怯だわ……」
「そうだね……でも、じゃなきゃ美汐には追い付けなかったもの………」
「ま、二人がかりで負けたんなら……仕方ないわね」
抱えた想いを吐き出し切り、互いの光と影を知ることができたためだろうか。
両親を失って以後、周りと何より己を傷つけるような振る舞いしかできなかった美汐の心は、安らぎを取り戻していた。
「あたし……そろそろ限界かな」
「ちょっと、人のこと散々ぶちのめしておいて、勝手に寝るんじゃないわよ。
大体、あんた────」
……極限の集中状態を続けた為か、襲ってくる疲労感に正直に限界を告げるジュン。
そんな彼女に文句を言いながらも、その声色には不器用な優しさが混じっており、
「前からずっと思ってたんだけど……一々やかましいのよ。耳が痛くてしょうがないわ」
「あはは……ごめん。でも、そこがチャームポイントでありまして……」
「そんな大声出す必要なんか、私にはもうないでしょ……」
ジュンのそんな返しに、静かに細い指を絡ませながら……
探していたものは、こんなにも近くにあったんだということを噛み締めて。
「いい……? 私に話があるときは、これぐらい傍に来てから言いなさい……
あんたと違って……私は、はしたなく何処かへ駆け出して行ったりはしないんだから」
華奢なジュンの繊手と、同じような細い自分の手とを繋いで。
「うん……これからはそうするよ……美汐……」
「美汐、かぁ……ふん。不思議ね……
あんたに名前で呼ばれるの、そんなに嫌でもないわ……ジュン」
「それから、一緒にいるあんた……色々悪かったわね、ええと……その節は……で、いいのかしら?」
「ぷっ……知らなぁい。でも大丈夫だよ……彼女、笑ってるから。今……」
友との繋がりを確かめた美汐は、もう一人にも思いを伝えようとし、
その不器用極まりない姿にジュンは笑みをこぼす……
星明かりが瓦礫の海を淡く満たしていた。少女達の負った、全ての傷を洗い流すかのように。
そうして、二人は押し寄せる疲労感に身を委ね、穏やかな眠りに落ちようとしたが……
『では、友情の続きは硝子瓶越しにしてくれたまえ。
些細な慈悲に、隣同士で並べてあげよう』
同属以外は欲しない、どこまでも無粋な男の横槍が彼女らに迫っていた。
苦難の果てに掴みとれた宝を失うまいと、二人の少女は傷ついた互いの身体を寄せ合い……
「ああ、こんな所にいやがったかァ──随分探したぜ?」
「俺の愛しき、クソッたれな闘争相手様よぅ。
さあ───続きをやろうぜ、最期まで」
そして──足音と共に、野放図な声を響かせる戦の鬼が、そこに現れたのだった。
さあ、これにて女の友情は閉幕、ここから先は血で血を洗う死の逢瀬。
- 白馬の王子様(包帯蜘蛛戦車)登場。 -- 名無しさん (2017-07-13 01:46:18)
- このイヴァンさんの登場はかっこよすぎて惚れるわ。 -- 名無しさん (2017-07-14 13:40:45)
- 悪役になったらこういう事言ってみたい >友情の続きは硝子瓶越しにしてくれたまえ -- 名無しさん (2018-06-18 01:13:43)
- その罵り合いの続きは牢屋の格子越しにすると良い -- 名無しさん (2018-06-18 03:27:26)
- 空気が読めないのではなく、空気を読み尽くした上で一番無粋なタイミングを出待ちしてんじゃねえかこの歯車フレンズ、といいたくなるラスボスである。 -- 名無しさん (2019-05-16 01:01:16)
- 尊い…… -- 名無しさん (2019-05-16 02:13:34)
- ↑2 またしっくり来る歯車ぼっちの渾名を増やしおってからに……いいぞもっとやれ(ヲイ -- 名無しさん (2019-05-17 00:06:25)
- オルフィレウス『科学のハッテンの為にはしかたないよネ、ヤッホ!』 -- 名無しさん (2020-07-06 23:05:42)
- 百合に挟まる男は許されない -- 名無しさん (2022-09-26 16:08:03)