……判らないの? 今のあなたは使い物にならないと、私はさっきからそう言っているのよ

「……判らないの? 今のあなたは使い物にならないと、私はさっきからそう言っているのよ」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

……判らないの? 今のあなたは使い物にならないと、私はさっきからそう言っているのよ - (2018/11/10 (土) 11:45:33) のソース

発言者:[[ニナ・オルロック]]
対象者:[[トシロー・カシマ]]


人間社会にまでその魔手を伸ばした&ruby(トライフィンガー){[[三本指]]}の模倣犯――その討伐の報告を受け取ったニナ。
だが、彼女の心は、問題の一つが片付いたことへの安堵ではなく、&bold(){珍しく憔悴しきったトシローへの心配に傾いていた。}


&size(13){&color(#CEA36B){&bold(){今にも消えそうな虚ろの幽鬼。老衰しているようにさえ見えるその姿。}}}

&size(14){&color(#1B1947){&bold(){参っている}――かつてないほどに。}}
&size(14){&color(#1B1947){&bold(){打ちのめされている}――築き上げてきたその[[信条>目を覚ますがいい、魔人に焦がれし童たち。滅び去るがいい、怪物を気取りし愚者どもよ]]ごと。}}


ニナの目には、公務の関係で先程まで顔を合わせていた&ruby(ヒト){人間}が常識を砕かれ、
&ruby(ブラインド){[[縛血者]]}という存在を知り動揺する姿と、今目の前にいる部下の姿がひどく重なって見えた。

&color(silver){いつもの無表情で隠していても、彼女にはその裡に秘めた心の揺れが伝わっていた。}
&size(13){&color(#99ccff){――&bold(){私がどれだけこの朴訥な男を見てきたと思っているのか。}}}
&color(silver){そして、一応は気心の知れた相手に対しても、内心を隠そうとする振る舞いに、思わず溜息が零れていた。}
&size(13){&color(#99ccff){――&bold(){何かショックを受ける出来事があった。そう一言口にすればいいものを……相変わらず不器用な人。}}}


だから、ニナは命令する。&color(#BFB9BF){&bold(){――――休みなさい}}と。


&size(18){&color(#040414){「……いや、せめて待機に留めてほしい。手が足りなくなれば事だ。}}
 &size(18){&color(#040414){所詮あれは贋物、小物に過ぎん。気を抜いていいものではない」}}
 

&ruby(プリンシパル){上司}の命に、&color(#040414){&bold(){焦燥かあるいは警戒か……}}表情を硬くして異を唱える&ruby(トシロー){部下}。
その反応も予想していたニナは、今休むべき理由を、彼を従える&ruby(・・){公子}として冷静に告げる。


&size(18){&color(#BFB9BF){「人員は足りているわ。判らないの?}} 
 &size(18){&color(#BFB9BF){今のあなたは使い物にならないと、私はさっきからそう言っているのよ」}}

&size(18){&color(#BFB9BF){「つい先程、とある兵器会社と言を取り付けました。大型の猛獣用に開発された新製品、}}
 &size(18){&color(#BFB9BF){その試用名目でね。近いうち、あの怪物相手なら火器で補えるようになるわ」}}

&size(19){&color(#BFB9BF){「けれどそれらを使うのは&ruby(・・・・){権力の兵}であり、あなたは&ruby(・・・・){私の私兵}。}}
 &size(19){&color(#BFB9BF){&bold(){……これだけ言えば判るでしょう、休みなさい}」}}
 

&size(13){&color(gray){そう、公の戦力はあくまでも掃討用。}}
&size(13){&color(dimgray){権力を持つ者にとって、必須なのは自分だけの信用のおける手駒なのだから。}}

&size(15){&color(#BFB9BF){&bold(){だからこそ、トシローを失うわけにはいかない}――&bold(){&color(dimgray){理屈的にも、}&color(#99ccff){&ruby(・・・・){私個人の}心情的にも。}}}}

&bold(){公の内に“私”を秘めた言葉、それを前にトシローは、}


&size(19){&color(#1B1947){&bold(){「は、火器? 無駄だ、&ruby(・・){[[アレ>https://www46.atwiki.jp/vermili/pages/175.html]]}の前には数も質も―――ッ……」}}}

#region(恐らくこの時、彼の心に浮かんでいたのは……)
回想されるのは、現実に現れた怪物を前に、生存することが出来た際に漏れた……己の言葉。
&size(14){&color(#1B1947){――&bold(){何だ、何なのだ、あの男はいったい……ッ。あれでは、まるで&ruby(ヴァンパイア){吸血鬼}ではないか。}}}
&color(#1B1947){信念の外側にいる絶対者。人の延長に位置する縛血者とは一線を画した存在。}
&color(#1B1947){そして、俺の夢に美影の記憶と共に姿を見せた謎の男………}
#endregion

&size(18){&color(#1B1947){「―――判った、しばし休ませてもらおう。今の俺は、君の言う通り……使い物になりそうにない」}}


……途中で混乱から回復しきっていない言動に気づき、そして……


&size(19){&color(#1B1947){「少し、頭を冷やす…………」}}

#region(きっと、心に在った葛藤の根はもう一つ………)
そして、浮かぶのは怪物を前に吐き出した、[[かつて捨てたはずの>ならば、そのような道など……縛りなど、俺は要らぬ! 美影は美影、天にも地にも代わりなどおり申さぬ!]]「勇ましい忠義の士」としての言葉。
&size(13){&color(#040414){&bold(){――そうだ。俺は、彼女の剣でありたいのだ……!}}}
  &size(13){&color(#040414){&bold(){叶わぬなら跪けと? 無様に生を懇願し、どことも知れぬ輩に屈しろと?}}}
  &size(13){&color(#040414){&bold(){掟の秩序を守護するべく、俺は此処に居るのだ。こう在るのだ。}}}
  &size(13){&color(#040414){&bold(){お前は不穏分子であり、俺は番人……それが全ての解に過ぎない。}}}

&color(#040414){ああ――仁がある。忠がある。それは、なんて素晴らしい。俺は、迷うことなく道に殉じられる………!}
&color(#040414){避けられないだろう死を感じる中で、その身に纏った恥知らずの欲望。}
&color(#040414){内なる&ruby(いつわり){忠誠}に仕えて死にたいという、愚かな願い。}
&color(#040414){&bold(){“仕えるという形さえあればよかった”などと……彼女に対する最低の侮辱。}}
#endregion


&color(#1B1947){胸に出でた新たな葛藤を引きずり、事務所地下の寝床へと姿を消した………}


----


&bold(){&color(#1B1947){傷つき、苦味を噛み締める男の背}を黙って見送ったニナは、一人になった事務所の中、呟く。}


&size(21){&color(#99ccff){「ねえ……あなたに何があったの? トシロー……」}}


&size(14){&color(#99ccff){あの人に踏み込みたい、}&color(silver){でも踏み込めない}――&bold(){そんな&ruby(ジレンマ){葛藤}が胸を締め付ける。}}

&size(14){それでも、結局選んでしまうのは、トシローが求めている &color(silver){&bold(){“公子” という理想の君主の&ruby(かめん){姿}。}}}
&size(14){&color(#99ccff){&ruby(・・・・・){ただのニナ}として接したいという[[本心>ーーお願い。私の味方でいて。  あなただけは、私だけの拠り所で]]}を抱えながらも、心のままに生きることは&color(silver){&bold(){[[立場と彼への誓い>ならば貴方の身柄を私が買います。今日から、私だけの剣(もの)になりなさい]]が許しはしない。}}}


&size(16){相反する想いを胸に秘め、ニナは拳を握り締めながら俯く。}
&size(16){感じる想いは、中途半端な自分自身の姿への自嘲。}

&size(17){&color(#BFB9BF){――君主としても、女としても、その一歩を踏み出せない滑稽さを嗤うしかなかった。}}




----
- 改めてこうして心情を見ると、トシローさん見た目に反して心の中での愚痴がすごすぎる...。  -- 名無しさん  (2018-09-25 18:13:28)
- 二ナの方はまだ乙女心で済むが、トシローさんの場合、そこに小賢しい自己否定が入るから面倒臭い・・・ぶっちゃけあっちの天狗道に放り込んだ方がいい薬になる位  -- 名無しさん  (2018-09-28 18:00:53)
#comment