私ね………あなたが、好き

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私ね………あなたが、好き - (2020/02/28 (金) 23:50:58) のソース

発言者:&bold(){&color(#2838A9){古雅 幸}}
対象者:&bold(){[[神代 直>神代直]]}



&size(19){&color(#2838A9){「今日の放課後……屋上に来てくれる?」}}

&size(19){&color(#2838A9){「神代くんに干渉するのは、もうこれっきりにするから。}}
&size(19){&color(#2838A9){最後に、私の話を一度だけ聞いてほしいの」}}
 

&bold(){そう告げて、「空気の読めない」“お節介焼き”の先輩である彼女は、直の教室から去っていった。}



………夕陽が美しく照らす約束の場所で、古雅幸は彼がやって来る瞬間を待つ。
その姿は、「学校の皆」が個々に抱く先入観や風聞に彩られた、完璧な&ruby(アイドル){存在}ではなく……
先程自覚した衝動のままに先走ってしまったことに不安がり、
この先の己の行いで“彼”から自己自身を否定されるかもしれないことへの恐怖を抱えた、&bold(){儚げな一人の少女のそれだった。}

&size(15){&color(#2838A9){―――&bold(){好きになった年下の男の子に、告白する……}}}

&color(#2838A9){始まりはいつからだったのか――――}
&color(#2838A9){怪我を負い、短距離走者として再起は困難だという現実を思い知らされ、}
&color(#2838A9){周囲からもそれを受け入れるようにという声を何度も聞かされながら、それでも彼はその道に拘り続けた。}
&color(#2838A9){態度が荒み、誰からも相手にされず孤立していってもなお、自分を信じようとしていた。}

&color(#2838A9){そんな彼に&ruby(・・・・・){ちょっかい}をかける気になったのは、初めは部のマネージャーとしての義務感からだったのかもしれない。}
&color(#2838A9){けれど……その後からは、どうだったのだろうか。}
&color(#2838A9){反発された事への意地だったのかもしれないし、様々な大義名分を重ね続け、つい先ほどまで想いの源は自覚できていなかった。}
&color(#2838A9){&bold(){それでも確かなのは、差し伸べる手が振り払われる度、この胸に少しずつ高まってゆく想いがあったという事。}}

そうして「遠回り」をしてきた己の姿に苦笑しながら、幸は思う。
&size(13){&color(#2838A9){きっと、自分が怖れていたこととは――}}
&size(13){&color(#2838A9){&bold(){想いが通じない事で、&ruby(アイデンティティ){存在基盤}を否定されたと感じる事……}}}
&size(13){&color(#2838A9){&bold(){自分の裡にある“&ruby(ひとり){孤独}”に対する寂しさ、頼りなさだったのだと。}}}


&size(20){&color(#2838A9){&bold(){「彼も……神代くんも、きっとこんな孤独を感じて生きているのね」}}}


孤独を背負った、頑な彼の姿を思い浮かべながら……
&size(13){&color(#2838A9){古雅幸は、胸の甘い疼きを感じながら、そんな神代直という男の子を抱きしめてあげたい、そう強く願う自分を再確認する。}}
&size(14){そうして――自分自身を幾分か和らいだ心地で見つめ直し、幸は大切な想いだけを伝えられるように集中しようとする。}


&size(19){&color(#2838A9){&bold(){「あとは、彼に想いを告げるだけ……。なんだ、簡単なことじゃない」}}}


&size(14){&bold(){そう言葉に出した瞬間、ずっと待っていた彼が現れる。}}
&size(14){&bold(){俯きつつも、不機嫌そうな態度を隠そうとしていない彼が。}}


&size(20){&color(black){「古雅先輩、言われた通りにやって来たぜ……}}
&size(20){&color(black){わざわざ屋上なんかに呼び出して、話ってなんだよ?」}}





&size(15){&color(#2838A9){さあ、始めよう。ひとりとひとりがふたりになるために必要なことを。}}

&size(15){&color(#2838A9){そう……自分たちは、誰もが最初は&ruby(・・・・・・・){独りでしかない}。そして、&ruby(・・・・・・・・・・){終わる時もまた同じく}。}}
&size(15){&color(#2838A9){だから、そうなることを怖れる必要はないし、絶望することもない―――}}

&size(15){&color(#2838A9){そんなことを自身に言い聞かせつつも、小さく&ruby(・・・・・・・){足が震えている}のには気づかぬふりをして。}}


&size(15){そして、&ruby(・・・){本当は}「情にもろく、義理堅い」直の心を少しずつ解きほぐすように語り掛けて……}
&size(15){&bold(){場を整えた古雅幸は、周りなど&ruby(・・・・){関係ない}、今一番伝えたい&ruby(・・){本音}を告げる。}}


&size(28){&color(#2838A9){&tt(){「神代君。私ね…………」}}}


&size(17){&bold(){たった独りで、小さな勇気を携えながら。}}
&size(17){&bold(){虚空を踏みしめて立つ、剥き出しの“自分”自身を違う心を持つ“誰か”にぶつけるために。}}



&size(31){&color(#2838A9){&tt(){「───あなたが、好き」}}}



&size(18){&bold(){………すべての始まりとなるその言葉は、夕暮れの空に溶けていった。}}



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- 思い出すだけで涙が……  -- 名無しさん  (2018-11-19 10:12:33)
- これだけ見るとただの純愛ゲーだ  -- 名無しさん  (2018-11-26 09:49:42)
- 実際、light作品って規模と方向性がおかしいことを除けば案外普通の純愛ゲーな作品が多かったりする(トリニティ、万仙陣の信明と南天、ラスボス同士が親友とお互い殴り合うディエス玲愛√)  -- 名無しさん  (2018-11-26 10:46:44)
- この二人には幸せになって貰いたかったな・・・  -- 名無しさん  (2018-11-26 20:24:25)
- 黄「好きなだけ思い描くと良い」  -- 名無しさん  (2018-11-26 21:44:19)
- ↑この二人にはマジでアンタが必要だわ  -- 名無しさん  (2018-11-27 11:25:01)
- マリィ様、ヒルメ様、あのツガイに御身のご加護を…。  -- 名無しさん  (2018-11-27 16:18:38)
- マリィの座の下なら輪廻の先で幸せになれるんだろうけど、余りにもこの二人の運命が悲惨過ぎて今すぐ救ってやってくれって言いたい。  -- 名無しさん  (2018-11-27 21:58:11)
- これマジでキツいっすよ。本当にメンタルにくる。  -- 名無しさん  (2018-12-06 23:17:12)
- うわぁあああああああああ  -- 名無しさん  (2018-12-07 01:27:54)
- この二人はどうあがいても現実じゃ幸せになれないからな・・・  -- 名無しさん  (2018-12-16 23:12:50)
- これもし自分だったらって真剣に考えたら、指で手のひらに字を書かれても理解できないという壁に直面した。一文字終わったのかどうかも分からん。  -- 名無しさん  (2018-12-17 01:47:44)
- ↑理解できるまで何度も何度も教えるんだよ。ヴァルゼライド閣下ならできたぞ  -- 名無しさん  (2018-12-17 07:25:56)
- この二人にこそ第四の盧生が必要。おう、早く阿片を炊くんだよ  -- 名無しさん  (2018-12-17 09:41:12)
- このシーン死ねるわ  -- 名無しさん  (2019-01-25 21:47:06)
- 手に字を書いて意思疎通ってのはそらみつでもあったなぁ あっちは元々盲目だったところに聴覚喪失だけでだいぶマシだったが  -- 名無しさん  (2019-04-21 22:57:48)
- 江戸川乱歩の芋虫が最初かな?  -- 名無しさん  (2019-04-22 01:36:54)
- ↑芋虫、おおぅ、なんとなく現実の幸先輩を連想してしまう・・・・・・。  -- 名無しさん  (2019-04-22 12:37:06)
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