アットウィキロゴ

BBB 第13号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Bul Bous Bow BUNGEI[バルバスバウ ブンゲイ] No.012 発行:2010年2月1日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
BBBでは書き手を募集しています。 メール:[email protected]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
全文! 

▼今月号の謹賀新年ラインナップ▼
1:……『最終電車は2人で』 by 葛野葉 直
2:……『裏日本通信』 by 蛙
3:……『私立探偵おばあちゃんの知恵袋』 by 梨木湧水
4:……『スーパービジネスマン養成セミナー』 by ミスター・パーフェクト
5:……『世界ナンバーワンの仕事術』 by マーク塚原
6:……『脳内裸族』 by 電網ニート
7:……『日常に潜む魔』 by 凡布工心
8:……『大江戸フェティシズム奇譚』 by ななみ
9:……『自分さがし、はじめました』 by 三木勉三
10:……『BUNGAKU Mixer』  by BURROUGHS 広報課
※『ハンドヒーラー手塚』は終了しました

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『最終電車は2人で』  by 葛野葉 直
 ――リアル・ワーキング・ラブストーリー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【フラグメント;02 レジ打ちの天才】

そのパン屋は職場近くの駅前にあった。気弱そうな主人と明るい奥さんが切盛りするいわゆる「街のパン屋」だ。会社に食堂もあるのだが「不味い・冷たい・高い」と、社食としてあるまじき形容詞でしか形容できないその酷さゆえ、昼食はここのパンというのが日課になっていた。
ある日、いつも店の奥さんが立つレジに見慣れない女性が立っていた。歳は20代後半くらいだろうか。僕はピロシキとアンパンをトレイに載せてレジへ向かう。
「いらっしゃいませ!」
そう言うと彼女はレジを打ち始めた。これが尋常でなく速い。速すぎる。
「280円です。お客様?」
その速さに呆気にとられていた僕は財布片手に突っ立っていた。
「あ、すみません。」
慌ててお金を払い、そそくさと店を出た。

次の日も、また次の日もレジには彼女が立っていた。さすがに少し気になって聞いてみると、奥さんは近所の奥様仲間と2週間の欧州旅行に出かけていて、彼女はその間の助っ人らしい。
「なんだ、心配して損した。」
安心して呟いた僕に、彼女は軽く笑って話しかけてきた。
「そういえば毎日来てくださってますよね、いつも2つずつ。そのうち1つは必ずピロシキ。」
「ここのピロシキは絶品ですから。」
「ですよね!私もこれが一番好きなんです。でも何故かあんまり売れないんですよ。」
「僕としては売り切れなくてありがたいですけどね。」
彼女がまた軽く笑った。レジ打ちの速さとは対照的な、緩やかで優しい笑顔だった。(続)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『裏日本通信』 by 蛙
 ――厭世的な、あまりに厭世的な……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 第9回 夜明け前 】
 空気の中をかすかな高音が鳴り響いている気がする夜明け前。一月のまだ太陽を迎えていない空は肌を刺す冷気を下ろしてきている。その漆黒は冷たく重くこちらへ沈み込み、かろうじて星の鋲で天蓋につなぎとめられている。坂道を自転車で転がり落ちると吹き抜ける風が急速に体温を奪う。あまりの寒さに涙腺が馬鹿になったらしく、星がぼやけて視界の中で光の輪を描いた。指は凍え感覚が薄い。視覚以外の情報がうつろになる。あのカーブでハンドルの手を放したら、ふわっと浮きそうだ。
 いやよそう。
そんな度胸は無い。かすかなGを感じながらハンドルを切る。カラキリカラ。カーブを曲がる。畑の土塊が遠くまで続く。モノトーンの風景。瞬く星。古ぼけた映写機のような音を自転車のギアが鳴らす。その他は全くの無音の世界。じわじわぎらり。ねっとりと強烈な光が目を焼いた。カメラの絞りがバカになったかのような過露光のフィルム。マグマのようなオレンジの太陽が山の端からにじみ出る。夜明けだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『私立探偵おばあちゃんの知恵袋』 by 梨木湧水
 ――事件の解決に必要なものは、知能、勇気、そしてあなたのメールだ!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 回答受付中の事件2 トレンチコートとハンチング 】

「あー、どいてどいて。僕に見せてくれるかなぁ?」
 ん?誰あれは?トレンチコートにハンチング帽の男が、人ごみをかき分けて、焚火のあたりを覗きこんでいる。ケータイ片手に何かブツブツつぶやいているけど…。
「ガイシャは二名。外傷はナシ。おう吐物があることから毒物を経口で摂取した可能性が高い。残されていた食品は、芋とマシュマロと鳥肉…と。よし。」
 警察が来た?…にしてはやけに若く見えるし、誰だろう。村人たちも不審がってる。
「いやぁ、みなさんご挨拶が遅れました。僕はつい先日引っ越してきました探偵です。といってもまだ大学生なんですけどね。就職難の時代でしょ?だから起業っていうか、まぁ新しいビジネスモデルとして田舎に探偵事務所を構えようかと思いまして。今の時代、ネットさえあればどこでも仕事はできますからね。」
 うわぁ…うさんくさい。と思ってたらこっちに近づいて来た。げげっ。
「キミ、その赤いマフラーよく似合ってるよ。可愛いね。」
「は、はぁ。」
「ところでお願いがあるんだけど、キミの持ってるその充電器、貸してもらえるかな?ケータイの電池が切れそうなんだ。」
 なんだ、そういうことね。しょうがないので電池式の充電器をはずして手渡す。お礼の言葉と一緒にウインクを送られた。うぅ。
「さて、そろそろレスが付くころかな?みんな正月で暇してる奴らばかりだからね。こんな刺激的な現場写真と一緒にアップしたら、すぐに食いつくさ。さぁ答えておくれ、僕の可愛いワトソン君たち。」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『スーパービジネスマン養成セミナー』  by ミスター・パーフェクト
 ――謎のスーパービジネスマンが魅せる「パーフェクトな成長戦略」!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 OJT4日目 会議はまじめな顔した馬鹿をみつけるゲーム 】

《結城ショウコ》(カッカタカタッ)[……会議中のskypeすみません。あまりにヒマなものでw](ふぁ~あ。ねむ)
《MR.P》[議事録の方は順調ですか?](なかなかいい度胸だ)
《結城ショウコ》[今は脱線してるんで。ここいらないでしょ v^^;vカッツカット](ふふ)
《MR.P》(ま、そうなんだけどな)[メモをトッテ、流れをヨンデはどうでしょうか](やれやれ)
《結城ショウコ》(えっなに?この紙のメモを読めって?){skype→ログ残 mr.p}(知ってますっ)[ほんと時間の無駄ですよね、この会議もこの議事録も](紙まわすの高校以来かな。ほい)
《MR.P》{雑用やだショコ}(やる気かコイツ)[議事録は会議を再確認できるツールです]
《結城ショウコ》{再確認→支配}(そゆことー)[了解しましたv](カッカタカタッ)
《MR.P》[無駄な会議なんてないですよ](利用すればいい。単純なことだ。君にはその素質があるからやらせてるんだ)
《結城ショウコ》{無駄な人間がいるだけ}(だよねっ。うんうん)[本来の会議とは?]
《MR.P》[すべての会議は結論につながるものでなくてはなりません]
《結城ショウコ》{結論→【私たちの会社はどのようにありたいか】=これが真理}(……ゴクッ。)[つまり?]
《MR.P》[みんながもっともらしい意見を言うときは注意が必要です]
《結城ショウコ》{みんな→バカ}[なるほど。会議では「結論」に注目してみます。][それから私なりに議事録をとれば「みんな」が「再確認」できるわけですね]
《MR.P》(エクセレント)[そういうことです。そろそろ終わりそうだし君の終電を再確認したいのですが]
《結城ショウコ》{48階で}(え、ちょと)[了解しました。わたしもみんなと同じですね]
《MR.P》(グッド)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『世界ナンバーワンの仕事術』 by マーク塚原
 ――マーク塚原。後に世界を救う「特異点のビジネスパーソン」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 第10回 夢に日付を入れる 】

「ポールをなぜ誘拐した?」
「いいでしょう、目的を教えましょう」
 わずかな沈黙の中、ボクは必死に声や周囲の音から得られる情報を分析していました。
「実は、吾輩もマークさんと同じく、思考系のスキルが自慢でね……。ロジシンして、PDCAサイクルを回した結果、三つの障害が見つかった、というわけなんですよ」
「それでポールが邪魔になったのか?」
「ポールさんは壁のひとつ目でしかありません。残りの二つは、キース中本、そして……あなた、マーク塚原と出ました」
「おやおや、じゃあキミは、世界NO.1のボクと闘おうってのか?」
「さすが自信家ですな。では、少し恐怖というものを味わってもらいましょうか……」
 よく通るけれど、どこか辛辣さを感じさせるその声の主は、突然、こう切り出しました。
「いま、御社が倒産して、マークさんが路頭に迷っている姿を想像させてもらいましたよ。この意味がわかりますか?」
「……何が言いたい?」
「思考は実現化する! ナポレオン・ヒルの成功哲学ですよ」
「くだらないな。スキルがない人間のすることだ」
「さらに今、システム手帳の専用リフィルにそのビジョンを書き込んで、ちょうど1月後の日付を入れました……」
「だから、なんなんだ!?」
「夢に日付を入れると、勝手にかなうんです、知りませんでしたか? 簡単な潜在意識へのプログラミングですな。さらに今こう書き込みましたよ『マーク塚原を倒し、吾輩が世界NO.1に君臨する』とね。マインドマップで成功ビジョンまで書きました」
「おい、ポールはどうした?」
「ククク……ポールさんは誘拐されたのではありません。彼は私をメンターにすることにしてついてきたのですよ。これぞまさに『人を動かす!』」
「なん……だと?」
「わが最強の成功哲学と思考系フレームワーク『ディープスマート力』の前では、貴方のフレームワークなど児戯にも等しい。それがもうすぐわかりますよ。……おっと、もうこんな時間か、そろそろパワーランチに出かけるので失礼。今日も限定セミナーとホノルルマラソンに向けたトレーニングで大変だ……」
 電話は一方的に切られました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『脳内裸族』  by 電網ニート
 ――ニート+サブカルチャー=∞ ひそかに人気の新世代エッセイ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 第9回 「ニートvsゲーム」 その5 】

 AOEはこれで最後です。締めにローカライズ(日本語訳)というのは変かも知れないが、案外こういう所も記憶に残る思い出の一因となってくるものである。

 最近の洋ゲーの日本語版は、RPGからFPSまで、翻訳が字幕を付けるだけで吹き替えは無しという仕様で発売されている。有名な某FPSなどは翻訳を露骨にミスっているものもあるが、これは別のサイトで検索すれば見つかるので興味ある方は参照されるといいだろう。

 中古のゲームを漁っていて分かったのだが、2000年頃までの洋ゲーはボイスが吹き替えの割合が多い気がする。psのゲームになるが、クラッシュバンディク―などはいい仕事をしていたぞ。あれは洋ゲーだが、一見した所そうは見えない。バイオハザードより見えない。あれはすごい。デフォルトでの難易度調整など、とにかく日本人の好みにあうような改変が徹底されていたのだ。

 さすがに全部が全部そこまでしろとは言わない。だが、洋画のDVDのように吹き替えと字幕を選べるぐらいの仕様に仕上げて欲しかった。やはり日本語で喋ってくれないと愛着が湧き難くなるとは思わないだろうか?

 これは個人的な好みの問題かもしれない。PCゲームはネット対戦ができる物が多いので、それ用のモードでは吹き替えができないのはやむを得ないだろう。だが、一人用のシナリオモードぐらいは吹き替えが選べるようにしてくれてもいいだろうと思う。いや、思わざるを得ないだろう。

 その点、AOE2の地味な利点ではあるが、キャラのセリフが吹き替えされている事は実に好ましい。一人プレイ用のチュートリアルやシナリオモードのナレーションは吹き替えである。一方、戦闘画面で兵隊(ユニット)に指示を与える時は、英語ならぬ現地語で返ってくる。これはネット対戦が意図されているからであろう。イングランドなら「イエス!」、日本なら「おおせの通り」などという具合である。

 全部日本語吹き替えで埋め尽くさずに原作のエッセンスを残している!異国情緒および母国語の安心感。この二つを両立させた日本語版スタッフのセンスが評価される。というより、他のサイトでしてるのを殆ど見た事が無い。目ん玉どこについてるのか?

 いや、つまり、少し前の洋ゲーを日本で売っていたメーカーはローカライズが今より熱心だったのである。ちゃんと律儀に吹き替えまで入れていたのだ。安直に日本語字幕を付ければローカライズだというのは手抜きかもしれない。

 次回からは最新作のAOE3について解説……ではなく、違う作品について取り上げていきたいと思う。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『日常に潜む魔』  by 凡布 工心
 ――「それ」はいつもあなたのそばにいる……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 第6回 図々しい男(1)】
「…本日正午過ぎ、東京都練馬区○○町のコンビニエンスストアで、窃盗事件が発生しました。この時間帯にスーツ姿で60歳くらいの男がコンビニエンスストアのバックヤードに入っていくのを見たという客の証言から、警察はその男が事件になんらかの関係があると見て捜査を続けています。
また、このところ全国で同様の窃盗事件が発生していることを受け、警察では各地のスーパーや個人商店への注意喚起を強化しています。
…さて、次はスポーツの話題です…」

「また窃盗事件だ。最近多いね。」
焼酎の入ったグラスを左手に持ったまま、僕はテレビから目を話さずつぶやいた。
「えぇ、本当に。」
カウンターの男が相槌を打ってくれた。50歳くらいだろうか、濃紺の和服を着ており、その柔和な顔からは品の良さがにじみ出ている。おそらく店主だろう。

僕は今、雑居ビルの小さな飲み屋にいる。時間も遅く、客は他にひとりもいない。店はこぢんまりとしており、あるのはカウンターが5席ばかりとテレビくらいだ。
この店で飲むのは初めてである。よく行っているバーが臨時休業でどうしようか考えていたときに、同じ雑居ビルにあった店が目に入り、店のドアを開けてみた。この店も閉店作業に入っていたようだが、僕を見て店主は、その柔和な顔で迎え入れてくれたのだ。

「実は、友人のお店も最近被害にあいましてね。被害と言っても、バックヤードにあった廃棄品をいくつかやられた位だそうで大した額じゃありません。
ただね、その盗みの状況っていうんですかね、盗み方が少し面白かったんですよ。」
店主はそう続けた。(続く)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『大江戸フェティシズム奇譚』  by ななみ
 ――【fetishism】①物神崇拝③物に異常に愛着を示すこと。性的倒錯の一種
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 第六話 家光の刀(四) 】

「白髪で髭の爺さんに、無理やり連れてこられた。」
 女は確かにそう言った。白髪で髭、と言えばうちの館長である。つまり、館長に誘拐・監禁された…と理解していいのだろうか。しかも身ぐるみ剥がされて。まさかそんなことをする人だとは思わなかった。しかし、私はそれを坂崎さんにバレないようにかくまってしまったのだ。ということは、結果的に共犯者ということになるのではないか。とんでもないことに関わってしまった。
「取りあえず…。館長に電話して経緯を確認します。話してくれるか分かりませんが。」
 できるだけ冷静に対処しなければ。
「そうだ。あなたの名前は?」
「たつた。」
「タツタさんですね。ちょっと待っててください。」
 受話器を取ったところで、背後でつぶやきが聞こえた。
「眠い。」
「え?」
 振り返ると女の姿が見えなかった。しまった。あんな姿で誰かに出くわしたら大変である。
 …と、その時、キン――と金属の鳴るような音がした。刀剣類の棚の方だ。小走りで駆け寄ると、見なれない木箱が床に置かれている。蓋が「カタリ」と音を立てた。人が入れなくもない大きさの箱だが…まさかこの中にいるのだろうか。いぶかりながらそっと蓋を持ちあげる。
 …そこにあったのは一振りの日本刀だった。鞘や柄はなく、刀身だけがはだかのまま無造作に置かれている。埃っぽい木箱の中にあって、その刀身はしかし、恐ろしいほどに白く、ぬらぬらと輝いていた。茎(なかご)に刻まれた銘に、眼が引きつけられる。
 ――龍田――
 あの女と同じ名だった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『自分さがし、はじめました』 by 三木勉三
 ――SM(searching myself)歴27年のプロが語る青春の日々
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 探索4 食べるかどうか  】

 目の前の男をよく観察してみる。食事に誘ってもらったことも有り、好感というより、興味をそそられたのだ。年の位は40代ぐらいだろうか、清潔な身なりをし、ぴっちりアイロンの当たったチノパンに縦縞のワイシャツを着こなしている。
 と声をかけられた。
「はは、私を見つめていても料理の献立はわかりませんよ。もう出てきます。品書きは無いので説明しましょう。」
皿が運ばれてくる、男は続けた。
「インドもベジタリアンメニューには事欠かない国でしてね。ヒンドゥー教徒も、司祭者などは肉は食さないんですよ。ヨーロッパでも古くから、精神をより純化するため肉体的なものとして退けられてきたのですよ。」
 「あらゆる肉体的な欲を排除してSATORIを得るのです。日々の摂取物、我々を作るもの、コレを積み重ねることであらゆるしがらみを離れ、欲のなき無念無想の純化された精神体になるのです。ニルヴァーナ。」
「どうです?日々修行ですよ?」
 なんだ、あらゆる欲をなくすだと?ただの自殺志願者か。無性に腹がたってきた。なんでこんなヤツばかりなんだ!
「悪いが結構だ!」
 私はそう言い放つと苛立ついでに椅子を蹴り倒し席をたった。
「Oh! KITI-guy!」
後ろで罵声が聞こえた。 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『BUNGAKU Mixer』  by BURROUGHS 広報課
 ――テキストミキサーで有名なバロウズ社の製品を使用したデモプレイ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【 新製品1 BR-3150×MEIJI-BUNGAKU 】

 こんな夢をみた。
 火鉢にあたりながら寝転んでいると、書生机に男が背をむけて坐っている。薄っぺらの文箱のようなものを開けて静かな声で妙なことを云った。これは頭のなかを映す機械だが、ひとつ試してみるかい。云われたとおり傍へ寄ってぼう、と光る箱に顔を照らされながら中を覘いてみた。自分はその当時いろいろな小説の筋を考えていたが、どうしても着想定まらずにいたところであった。

* *


 親譲りの無鉄砲な猫で名前はまだ無い。薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた時から損ばかりしている。主人の邸(やしき)の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。二階の書斎の窓から首を出していたら、たくさんおった兄弟の一疋(ぴき)が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。下女に負ぶさって帰って来た時、主人が大きな眼をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。

 親類のものから西洋製のナイフを貰って奇麗な刃を日に翳して、隣家の三毛に見せていたら、一疋が光る事は光るが切れそうもないと云った。切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。そんなら君の肉球を切ってみろと注文したから、何だ肉球ぐらいこの通りだと右の前足のひらをはすに切り込んだ。幸ナイフが小さいのと、足の骨が堅かったので、今だに肉球は足に付いている。しかし創痕は死ぬまで消えぬ。

 吾輩がこの家へ住み込んだ当時は、主人以外のものにははなはだ不人望であった。第一に逢ったのがおさんである。これは前の書生より一層乱暴な方で吾輩を見るや否やいきなり頸筋をつかんで表へ抛り出した。吾輩は投げ出されては這い上り、這い上っては投げ出され、何でも同じ事を四五遍繰り返したのを記憶している。吾輩が最後につまみ出されようとしたときに、この家の主人が騒々しい何だといいながら出て来た。下女は吾輩をぶら下げて主人の方へ向けてこの宿なしの小猫がいくら出しても出しても御台所へ上って来て困りますという。主人は鼻の下の黒い毛を撚りながら吾輩の顔をしばらく眺めておったが、やがてそんなら内へ置いてやれといったまま奥へ這入ってしまった。主人はあまり口を聞かぬ人と見えた。下女は口惜しそうに吾輩を台所へ抛り出した。かくして吾輩はついにこの家を自分の住家と極(き)める事にしたのである。



━━「バルバスバウ」より━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●編集後記
▽最近の趣味はカルシウムから骨をつくること(宣)▽現金を持たない生活をする(岩)▽いい爪切りが欲しい(亜)▽もうすみません。すみません。(創)▽余ったくさやは冷凍するか(池)▽刻みネギは冷凍するとまん丸く固まる。(野)▽最近上司と喧嘩ばかり(大)

●購読登録いただいた方にお送りしています。
購読キャンペーン実施中! 家族、友達、みんなで購読登録して『バルバスバウ』を読もう!
http://www.mag2.com/m/0000283714.html
●メルマガ版「バルバスバウ」
発行システム 『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000283714.html
●お問合せご感想は [email protected]
Copyright(C)2009 BulBous Bow 許可無く転載することを禁じます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最終更新:2010年02月06日 11:11
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。