━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Bul Bous Bow BUNGEI[バルバスバウ ブンゲイ] No.017 発行:2010年4月4日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●
BBBでは書き手を募集しています。 メール:
[email protected]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご愛読ありがとうございます。メルマガ版『バルバスバウ』第17号です。
今月はついに4月でございます。新入生、新社会人の皆様へ、
オールジャンル文学、BBBブンゲイでフレッシュなライフをスタートさせてください!
▼今月号の謹賀新年ラインナップ▼
1:……『裏日本通信』 by 蛙
2:……『プロジェクト★スリー』 by 三木勉三
3:……『最終電車は2人で』 by 葛野葉 直
4:……『巷間奇談』 by 又異心士
5:……『スーパービジネスマン養成セミナー』 by ミスター・パーフェクト
6:……『私立探偵おばあちゃんの知恵袋』 by 梨木湧水
7:……『世界ナンバーワンの仕事術』 by マーク塚原
8:……『脳内裸族』 by 電網ニート
9:……『大江戸フェティシズム奇譚』 by ななみ
10:……『BUNGAKU Mixer』 by BURROUGHS 広報課
※『自分さがし、はじめました』は、先生が自分を見つけられたため新連載へと移行します
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『裏日本通信』 by 蛙
――厭世的な、あまりに厭世的な……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 第11回 空を飛ぶ 】
プチプチとぞんざいに突き出された黒い小枝に芽が吹く。春の大風になでられ、ありとあらゆる山の生命が目を覚ます。雑木林の小道には我一番とつつじが花を添え、桜も、みどもこそ王者と咲き誇る。うぐいすがしめやかにそれをたたえ、ひばりは喜び空高く歌い上げる。
新しい水が池に流れ込み……いや、水中の春は少し遅れてやってくる。
まだオタマジャクシは柔らかな膜の中でうたた寝をしており、水面に風が散らした塵の雲の下、日足はチラチラとゆれる。敏感な水藻は少し若緑の衣をまとう素振りを見せ始めるが、その他は何もない。冬から沈んだ黒く重い木の枝が色のない世界に黒く伸びる。ペッタリとした水底に生気なく丸石が佇んでいる。
黒と、明るい光の白、水底は水墨の世界。まだ春を待っている。
と、遠方の空より、光をかすめながら黒い影が重く静かに近づく。破れ岩のような面。鈍色の鱗をギラリと光らせ、愉快そうに、まだ何もない水底の空を、鯉が愉快そうに飛び遊ぶ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『プロジェクト★スリー』 by 三木勉三
――少年少女大活劇
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 その1 ほじくりかえすのだ 】
しばらく前から、少年が一心に土をほじくり返している。住宅街からはからは少し外れた丘というか林というか、いまいちはっきりしないこんもりと木がまとまって生えている一角である。あたりに広がる田んぼは、穏やかな春の陽気をうけ、ふんわりと肥料のやわらかな香りでおおわれている。
この少年の名前は沼田利家。芦川小学校に通う3年生である、なんともいかめしい名前である。少年も名前の通り骨太で、背は足りないものの中学生のようなガッチリとした体つきだ。腕も平均より二回りは太いであろう。親から譲り受けた体格もあるものの、これは彼のたゆまぬ筋トレによるものである。
が、一方顔の方は年相応にあどけないと言うより、コレはもう愛嬌のあると言った方がいい顔立ちで、黙々と穴を掘る姿は、ちょっとはちきれそうなアライグマがいそいそと餌でも隠していると言った風情である。
かれこれ1時間ばかり沼田少年は穴を掘っているわけだけれども、それには重大な使命が関わっているのである。
土曜の朝、新聞を読みながら沼田少年の父、勝家が「ううむ」とムツカシイ唸り声を発した。といっても、新聞相手の相槌のようなもので、日課である。
お気に入りの球団が負けてはウウムと唸り、新商品の車が発売されても桜前線が近づいても唸るのだからそういうものである。
「おい、トシくん」
沼田少年は家ではこう呼ばれている。
「これは家の近くじゃないかすごいぞ。」
と、少年に広げてみせた新聞の見出しには「古戦場跡大発見」とでかでかと書かれていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『最終電車は2人で』 by 葛野葉 直
――リアル・ワーキング・ラブストーリー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【フラグメント;04 マイナス思考】
真剣な表情でパンを作る彼女の姿に、少し頭が混乱していた。この前「今日まで」って言ってなかったっけ。
呆然とする僕に店の奥さんは、彼女は元々職人見習いとして店に来ていたこと、レジ打ちの早さと愛想のよさを買って留守中のレジを頼んでいたことを教えてくれた。そういえば「レジは今日まで」って言ってたような気もする。
また会えた嬉しさを感じると同時に、僕の頭には、時間の違いを理由に別れを告げられた2年前の苦い思い出がよみがえっていた。片や早朝から働くパン職人、片や深夜残業が日常のSE。時間的なことを考えても話をする機会はもうないんだろう―。
特に親しいわけでもない。ましてや付き合っているわけでもない。ただの客と店員だ。なのに1人で勝手にそんなことを考えている自分自身に嫌気がさしていた。いい歳していつまで引きずってるんだか。自分の情けなさに苦笑するしかなかった。
「あれ?今日はピロシキ買ってかないのかい?」
気付けばトレイにはいつもと違うパンを載せていた。
その日の夜、担当しているシステムに大規模な改修が入ることが決定した。つまりそれは終電帰宅の日々がしばらく続くことを意味する。ワークライフバランスなどという言葉がもてはやされている今の時代をあざ笑うかのような毎日が始まろうとしていた。このプロジェクトが終わるときには何人辞めるのかな ―。(続)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『巷間奇談』 by 又異心士
――「それ」はいつもあなたのそばにいる……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 第二談 向かいの家 】
それは僕が小学生の頃だった。
ある日、道路を挟んで向かいの家に女の人が越して来た。
引っ越しの挨拶にやって来たそのお姉さんは、黒く艶やかな長い髪ととても優しそうな笑顔が印象的だった。
奥の部屋から顔を出している僕に気付いたお姉さんは僕に手を振ってくれた。
その日から、僕は何故かその人が気になって、たびたび向かいの家を部屋の窓からのぞくようになった。
お姉さんはよく二階の窓からぼうっと外を眺めていた。
それからしばらくたったある日、僕はその日も学校から帰って来てすぐに窓から向かいをのぞいた。
その瞬間、お姉さんと目が合った。僕が見ていることに気づいたようだ。
お姉さんはうちに来たときと同じ笑顔で、僕に向かってゆらゆらと手を振った。
その途端、僕はなんだかそれまで隣の家を見ていたことを知られてしまった気がして、恥ずかしさで顔を真っ赤にした顔を窓から引っ込めてカーテンを閉めてしまった。
そして、その日からカーテンを開けなかった。
僕が学校に行っている間にお母さんがカーテンを開けていることもあった。そんな時、僕は窓の向こうを見ないようにしてカーテンに近づき、下を向いたままカーテンを閉めた。
一週間位たったとき、学校から家に帰ると、向かいの家の前に人だかりが出来ていた。
集まっていた大人たちに何かあったのか聞いてみたが、みな一様に家に帰れというばかりだった。
その数日後、お母さんとお父さんが話しているのを聞いた。親戚の人が発見したそうだが、お姉さんは半月ほど前に亡くなっていたらしい。僕の部屋から見えるあの二階の部屋で、外に顔を向けたまま首を吊って。
あれから何年かたったが、僕はカーテンを開けていない。
窓から向こうの家をのぞいたら、そこにお姉さんがいそうだから。あのぞっとするほど優しい笑顔で、ゆらゆらとおいでおいでをしてそうだから。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『スーパービジネスマン養成セミナー』 by ミスター・パーフェクト
――謎のスーパービジネスマンが魅せる「パーフェクトな成長戦略」!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 OJT6日目 人間のスペックはひとつとこころえよ 】
《志摩乃アコ》はい、できました。
《MR.P》ふむ。律儀な字だね。(……悪くない。ミニマムに課題をえぐる良い企画書だ。)
《志摩乃アコ》よろしいでしょうか。
《MR.P》グッド。では11時からのミーティングに4部用意して。
《志摩乃アコ》ここに、用意してあります。
《MR.P》パーフェクト。……あれ?
《志摩乃アコ》どうかしましたか?
《MR.P》4部とも手書き、というか肉筆。(これは久々にパンチのあるヤツだな)
《志摩乃アコ》生の方が伝わりますから。
《MR.P》……アコ君、ケイタイ番号教えて。
《志摩乃アコ》わたし、携帯電話は持たない主義ですから。
《MR.P》……やれやれ。キミは充分仕事が早いし、飲み込みも抜群なのは知ってる。
《志摩乃アコ》ありがとうございます。
《MR.P》だけど、そこまで強烈に機械音痴なのは知らなかったよ。
《志摩乃アコ》っ!
《MR.P》人間のスペックはひとつなんだ。
《志摩乃アコ》??
《MR.P》私は基本的に「仕事のできる人間」というのは所詮、嘘だと思っている。平等、というより、たかが知れているといった方がしっくりくる。どの仕事を誰がやっても本来的には均質なものができるはずだ。100メートルを走れば10秒とか20秒とかが人間。しかし小さなバイクでも 100Km/hはでる。マシンと人間、この組み合わせ、小さな作業の組み立てと手法の選択が大きな差になる。
《志摩乃アコ》つまり、わ、わたしに画面で作業しろ、とおっしゃるんですか。わたし手触りのない道具をつかって企画はたてたくありません。
《MR.P》いや別に機械音痴は恥ずかしいことでもないよ。問題はむしろその異常な理論武装だな。自分のやりかたに固執するのは可能性を狭めることだ。それはキミも部下をもてばすぐにわかるよ。
《志摩乃アコ》はい。
《MR.P》アコ君、ケイタイ番号教えて。実はキミが「かんたんケータイ」持ってるの知ってるから。
《志摩乃アコ》……。……明日までに私の番号を調べておきます。
《MR.P》赤外線で。
《志摩乃アコ》いえ、それはちょっと。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『私立探偵おばあちゃんの知恵袋』 by 梨木湧水
――事件の解決に必要なものは、知能、勇気、そしてあなたのメールだ!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 回答受付中の事件4 おばあちゃんともんぺ】
村人たちがいっせいに振り向いた先には、もんぺ姿のおばあちゃんがいた。うちの裏に住んでる人だ…。ちなみにあの人、すごい金持ち。ハウスで花を栽培して、ものすごく儲けているらしい。農業の中でも特にギャンブル度の高い花卉栽培のプロで、次に流行する品種をいち早く察知して出荷する能力がすごいんだとか。まぁそれはさておき…なんか事件現場のまわりをひっかきまわしてる。
「あっ、ちょっと、おばあちゃん!ゴチャゴチャにしてもらっちゃあ困るよ!触る時は僕の見てるところで、ね?」
あ、自称探偵が止めに入った。
「おめぇさん、誰かな?」
「探偵のカズヤと申します。今、毒物の付着した串を探しているところなんですよ。」
「あらぁ、探偵さんかぁ。えらい人が来たもんやさなぁ!けど串ならここにあるろ。ほれ。」
「えっ?」
おばあちゃんが差し出したのは、焦げた木の枝。確かにまっすぐで串に使いやすそうだけど。
「なぜこれがそうだと分かるんですか?」
「見てみぃさー。焦げ取るとこと焦げてないとこと、順番こになっとるろ。焦げ取らんとこは何かささっとったんやさ。」
「なるほど!これを検査してもらえば、毒物の反応が出るかもしれませんね。証拠品として保管しておきましょう。」
「そんなもん調べんでもわかるに。これは毒や。」
「いや、そう言われましても…。結果が出るまでは断言できませんからね。別の串かもしれませんし。」
「いや毒や。」
「あの…。」
「夾竹桃やさ。知らんのかぁ。」
「キョウチク…トウ?」
(つづく)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『世界ナンバーワンの仕事術』 by マーク塚原
――マーク塚原。後に世界を救う「特異点のビジネスパーソン」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 第12回 道をひらく 】
フレームワーク「トリプルシンク」で、犯人を割り出すには、現地の情報が必要でした。
ボクはさっそくシリコンバレー在住のIT評論家で『ウェブ新紀元論』などの著書がある望田道雄氏にアポを取ると、出張の準備に取りかかりました。
「ふう、せっかく帰国したのに、またアメリカ行きか」
カーキ色のマントをまといながらキースがつぶやきます。
「マークよ、こういう非常事態が起きると思い出さないか……。翁の下で修行した時代を」
翁! 久々に聞いたその言葉は、鮮やかに若き日の記憶をよみがえらせました。ボクとキース、そしてポールがともに学んだ師の呼び名です。
二〇年前、ボクたちは、「翁」の子供として、日本中から集められたのでした。
「なんや! おまえ、こんなこともわからへんのけ!」
翁の皺だらけの鉄拳が、ボクの頬にたたき込まれました。
ポールをはじめ、他の生徒たちは青ざめた顔をして、横目でボクを見ています。が、だれも微動だにしません。
「そんなんで道をひらけるとおもっとんのけ! 地に墜ちた神州日本は、わしら起業家が立て直すしかないんやぞ!」
当時のボクは一三歳。孤児院から突如、「樟蔭塾」に引き取られて三日目の出来事です。
それは、他人を信じられない孤独な少年、塚原雅司が、ビジネスパーソン「マーク塚原」に生まれ変わる瞬間でした。(続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『脳内裸族』 by 電網ニート
――ニート+サブカルチャー=∞ ひそかに人気の新世代エッセイ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 第11回 映画的なゲームとは何か?その1 】
ゲーム作家の中でも、映画の一場面や一風景、そこにいるキャラクター(プレイヤーの全身)を自由に動かしたいという欲求がある者達がいる。
彼らがいわゆる映画的なゲームを作る。FFの坂口氏やメタルギアシリーズの小島氏などがその代表格と言えよう。PS以降、CDーROMを媒体として使う事が一般的となり、ソフトの容量が激増した。初期の頃は要所だけポリゴンのムービーで、基本的には従来通りの2Dドット絵のゲームが多かったが、ドット絵がレンダリングCGの一枚絵に変わり、最近では全てのステージをフルポリゴンで表すのが当たり前のようになった。
そういったゲームの中でも、駄作と呼ばれる部類はムービーを観るだけのプレイヤーを置いてけぼりにしてしまう。「プレイするための映画的なゲームを作る」はずが、「ポリゴンで構成された鑑賞用の映画を作る」だけのものになってしまっている。手段が目的化するというのはありがちなことであるが、やはり望ましい事とは言えない。
だが、名作とされるゲーム達は違う。映像美と箱庭感覚と体感ツールとのそれぞれ三つの要素を両立ならぬ全立、あるいはバランス良く鼎立させるのに成功している。具体例を挙げだすと紙面がいくらあっても足りなくなる上、好みの個人差も大きい。僕としては良いサンプルの一つとして、PCゲームの「TORTALWAR」シリーズを挙げていきたいと思う。 (続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『大江戸フェティシズム奇譚』 by ななみ
――【fetishism】1. 物神崇拝 3.物に異常に愛着を示すこと。性的倒錯の一種
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 第八話 家光の刀(六) 】
調査と並行して、刀身のために白木の鞘をあつらえてもらった。漆塗りの鞘や鍔は、刀にとっていわば「よそ行きの服」である。一緒に伝来していれば、ぜひ着せてみたいところだったが、ないのだからしょうがない。どちらにしろ展示の時には裸にするのだし、保存のための普段着である白木の鞘さえあれば、博物館では十分なのだ。
鞘師の工房で、真新しい鞘におさまった龍田と、一緒に依頼していたいくつかの刀を受け取り、運搬業者の車に乗り込む。車窓を眺めながら、つい先ほどのことを思い出していた。いつもお世話になっている鞘氏の松岡さんの様子が気にかかっていたのだ。普段は陽気の度がすぎるほどの人物が、なぜか今日は口数が少なかった。いつもなら依頼した刀について、ここのつくりがよいとか、珍しい姿だとか、あれこれと熱く語ってくれるので楽しみにしていたのだが…たまたま体調でも悪かったのだろうか。
館について、収蔵庫に入る。今日も快適な温湿度だ。美術品輸送専門の運搬スタッフが手際良く梱包を開けていくと、龍田が姿を現した。状態のチェックのために鞘から抜き出す。
刀は、以前よりも艶やかさを増したように見えた。今までに数多くの刀を見てきたが…なにか、これまでにない感覚がふつふつと自分の中に沸いてくるように思えた。刃紋が目を引き付ける。まるで吸い込まれて行くようだ…。
――斬りたい。
青い作業服を着た運搬スタッフの、無防備な背中が目に入った。
(続)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 『BUNGAKU Mixer』 by BURROUGHS 広報課
――テキストミキサーで有名なバロウズ社の製品を使用したデモプレイ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 新製品3 BR-4020B×SHOWA-BUNGAKU 】
桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になるのだが、これは嘘である。なぜ嘘かと言うと、桜の花の下へ人がより集って酔っ払ってゲロを吐いて喧嘩して、これは江戸時代からの話で、大昔は桜の花の下は怖しいと思っても、絶景だなどとは誰も思わなかったのである。近頃は桜の花の下といえば人間がより集って酒をのんで喧嘩しているから陽気でにぎやかだと思いこんでいるが、桜の林の花の下に人の姿がなければ怖しいばかりなのである。
一年ほど前、俺が旅に出てこの桜の森の花の下に泊った夜のこと、一睡してから、ふと眼を覚ますと、誰かが俺の名を呼んでいるのだ。声に応じて外へ出て見ると、声は闇の中からしきりに自分を招く。
覚えず、自分は声を追うて走り出したのだった。無我夢中で駈けて行く中に、いつしか途は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地をつかんで走っていた。
何か身体中に力が充みち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えて行った。気が付くと、手先や肱ひじのあたりに毛を生じているらしい。
少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、俺は既に虎となっていた。自分は初め眼を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、俺は茫然とした。しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。自分は直ぐに死を想うた。しかし、その時、眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。再び俺の中の人間が目を覚ました時、俺の口は兎の血に塗れ、あたりには兎の毛が散らばっていた。これが虎としての最初の経験であった。
桜の森の満開の下の秘密は誰にもわからない。あるいは「孤独」というものであったかも知れない。なぜなら、俺はもはや孤独を怖れる必要がなくなったのだから。ただ、俺自らが孤独自体であった。俺は始めて四方を見廻した。頭上に花がある。その下にひっそりと無限の虚空がみちていた。ひそひそと花が降る。それだけのことだ。外には何の秘密もないのだった。
━━「バルバスバウ」より━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●編集後記
▽一銭焼きを作るのが趣味(宣)▽春からジテツウ(岩)▽はやぶさの帰還に涙(亜)▽はるですよ!(創)映画「オバケちゃん」懐かしー!(池)▽ カントリーマアムのイチゴ味は微妙(野)▽何か最近涙もろくなった(大)
最終更新:2010年05月03日 11:52