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公共の福祉とグローバリズムの相克

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経済・自由・平等

公共の福祉とグローバリズムの相克


古典が既に警告していたグローバル経済は必然なのか?



幻想のグローバル資本主義(上)

アダム・スミスの誤算

佐伯 啓思
内容(「MARC」データベースより)
自由主義市場経済の父と称されるアダム・スミス。しかし彼は最初に「グローバリズム」について警告した人物でもあった。スミス、ケインズの思想を問い直し、グローバリズムの本質的矛盾と危うさを抉り出す。
2006.9.12

インターナショナルとグローバルの違いは大きい

彼の他の著書の名を見てみると、若干偏向した志向性を持つた人の様であります。然し乍ら、冒頭から、インターナショナル経済がグローバル経済とどう違うかなどと、中々に面白い観点が提供されます。

スミスとケインズの共通点。「国富論」の真の目的

若干の色眼鏡を掛けながら読み進んだのでありますが、この2巻を読む限り、説得力は十分でありました。題名から想像される様に、アダムスミス「国富論」及びケインズ「一般理論」を手掛かりに思考を巡らすのでありますが、彼が主張するのは、アダムスミスは国内経済が富む事を考え、ケインズは完全雇用を目指し、いずれも現在で言ふ処のグローバル資本主義には反対していたという事であり、アダムスミスに於いては其れが「国富論」を書く必要性の重要な部分を担つてゐたと言ふ事であります。



幻想のグローバル資本主義(下)

ケインズの予言

佐伯 啓思
内容(「MARC」データベースより)
国家と市場の相克を超え、いかなる「生」と「社会」を築いていくべきか。ケインズの思想を読み直し、グローバリズムへの幻想の超克と、新たな社会秩序の可能性を論考。

古典を謙虚に参照。「新解釈」に非ず。

名著に解釈をつける本は「彼が言ひたかつたのは実は斯々云々であつたのだ」等と、自分の解釈が世紀の大発見で在るかの様に述べがちであります。

この著者はその反対でありまして、正直だなと思えるのは、元著のテクストを参照した後、自分の解釈を述べて「・・・と読みたい。」と締めくくる処であります。亦彼は、アダムスミスなりケインズは、現代に於いて重要性を持つ「グローバリズム」の観点から見た場合には共通点を持っていたと述べているだけであって、恐れ多くも佐伯氏の解釈が彼らの思想の全てでは無いとはつきり自覚してをり、その限定が考察を素直なものにしてゐます。

処方箋の端緒を示す

グローバル資本主義を採用しないとすればどうすれば良いのか、またどの様にそれが可能となるのかと云ふ事が最終的に問題なのでありますが、今後の世界への処方箋の端緒も示されております。

アダムスミス、ケインズは一般的にどの様に理解されているのか等、経済学についての最低限の知識、用語、発展経緯は知つて読む方が良く味わえると思いますので、初学の方は下記の「経済学入門」などを読まれてから当たられた方が良かろうと思ひます。

DATA

発行
PHP新書(1999/05)



参考


国富論
国の豊かさの本質と原因についての研究 上・下

アダム・スミス

いいのが出たねえ。

2008.1
2冊で7000円ほどになりますが、決して高くない。文庫本で揃えたら各社とも3冊セットで各巻分厚く合計3000円以上。それならこちらのハードカバーの方が断然いいです。新訳、美しい活字、ゆったりした配置。読むならこちら。
  • 日本経済新聞社出版局 (2007/3)

ASINを正しく入力してください。

人間にとって経済とは何か

飯田経夫
内容(「BOOK」データベースより)
「失われた十年」は今日、依然として尾を引いている。だが、そもそもバブル経済はレーガノミックスによって誘発されたのではなかったか。ケインズ政策への懐疑、マルクス主義経済の失敗によって、いままた回帰するアダム・スミスの「自由放任」の経済―その発展型が、今日世界を席巻するアメリカ型市場経済であり、その本質は、あくなき富の追求である。貧乏を克服し、豊かさを手中にしたいま、私たちは経済の目標を何に置くべきか。新しい価値観の時代を生きる、もう一つの視座とは。

「経済学とは貧乏を無くす為の学問である」

2006.9.15
と著者は云ひます。不況だ不況だと云ってゐるが、貧乏は無くなつたではないか。もう良いではないか。と彼はいいます。彼は経済学者であります。其れでいて、日本に於いて経済学はもう使命を終えた、経済学に期待するものは何も無い、むしろ失望して仕舞つてゐると云ふのです。
  • 国際的なカネの流れは、既に貿易に必要な「実需」の何百倍にも達している。そういう膨大なカネが、ひたすらハイリターンを求めて、うなりをあげて全世界を駆け巡って・・・利用できるものを利用し尽す。
  • 金儲けには使ってはならない神聖なものの筆頭が為替レートである
  • 政府は基本的にモノをつくらないため、経済に占める政府の比率が大きくなると、経済は非効率になる
  • 赤字財政・福祉国家とは要するにタカリである。

投機資金に成り下がった資本

世界中の国際貿易の規模に比べて、ほんの一部でしかない投機筋の動きで、何故為替レートが変わってしまうのかと常々疑問に思っていたのですが、さうですか、逆だつたのですか。世界中が賭博場になつてゐたのですね。我々が暮らしている地球は其の様な処に成つて仕舞つてゐたのですね。

一読では飲み込み切れない気迫

読了してみて、本書全体で著者が何を言わんとしたのか未だ図りかねている。学者としての論と、人間としての情が、お互いを必要としながら手を取り合えずに、一人の人間の中で煩悶している、その息遣いだけは充分に受け止めた。

詳細

新書: 209ページ
出版社: PHP研究所 (2002/06)
ISBN-10: 4569620248
ISBN-13: 978-4569620244
発売日: 2002/06
商品の寸法: 17.2 x 10.4 x 1.2 cm

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
飯田 経夫
1932年、大阪府生まれ。1955年、名古屋大学経済学部卒業。同大学教授、国際日本文化研究センター教授を経て、現在、中部大学教授。1980年、論文「高い自己調整力をもつ日本経済」で第1回石橋湛山賞受賞。




悪夢のサイクル―ネオリベラリズム循環

内橋 克人

えーっと、「世界標準」の国って、発展途上国ですよね。

2007.9
内容(「MARC」データベースより)
ネオリベラリズムはただの景気循環ではない。バブルと破綻を繰り返すなかで共同体を破壊し、人々の心を狂わせる「悪夢のサイクル」なのだ-。50年のスパン、世界史的な広がりの洞察から発見された経済のダイナミズムを紹介。

悪魔のサイクル

  1. 「構造改革」による規制緩和
  2. 海外から投機資金流入
  3. 好景気により通貨・株価が上昇
  4. 投機により実力以上に上昇
  5. 空売りによる売り浴びせ・資金引き上げ
  6. 経済崩壊・資産価値毀損(値下がりしたら買いたたく)
  7. 「構造改革」による更なる規制緩和
  8. 再び投機資金流入
  9. 好景気により通貨・株価が上昇─今の日本(出版は2006年)
  10. 投機により実力以上に上昇
  11. 空売りによる売り浴びせ・資金引き上げ
  12. 経済崩壊・資産価値毀損・社会が荒廃
  • 以下繰り返し
  • 全プロセスを通じて資産家は稼ぎ、「構造改革」で守られなくなった中間層は沒落していく

これは何も日本だけに限ったことではないようです。最初にやったのはレーガンとサッチャー。数字だけの好景気に調子づいて更なる規制緩和を求めている経団連などには筆者は眉をひそめています

近代経済学(ケインズ政策)によって経済の振幅を小さく抑え安定させると同時に保護によって中間層を厚くして行き、それによって社会も安定する、という社会から、新古典派経済学に基づく振幅の大きい経済へと「ルールは変更された」のだと著者は言います。

何のことはない、日本も世界標準=発展途上国(或いはブラックマンデー以前の世界)になるってことですな。権力者と政商は大金持ちで、殆どの人は豊かではないか貧窮してて、スラムがあってギャングがいて...

そういえばつい先日アメリカの住宅バブルがとうとう弾けてまたやや苦しい中間層がさらに貧窮層に沒落することになりましたね。「今の好景気はアメリカの住宅バブルによるものだ」ってのはネットでは常識でしたがマスコミはほぼスルー。債権が不良化してようやく「景気に影響」って、人間のこと忘れないでね。それでも日本も大したもんで、100万ドル以上の金融資産を持ってる人は100万人以上いるそうで、赤ちゃんから年寄りまで含めて100人に一人ぐらいは億万長者なんですな。ほんと?

非常にクリアな見通しを与えてくれる本

海外取引による決済に必要なお金は年間で8兆円。それに対して実際に為替市場で動くお金は300兆円!毎日1兆円のお金が付け入る隙を探して世界中を驅け巡っているのです。これは大体の識者で意見が一致するところ。

更に著者は昨今のテロ戦争を「イスラム圏にも「資本家が儲ける美味しい商売」を教えてあげるべく既存の経済とインフラを壊しに行っているのだ」と位置づけています。終章あたりでは勢い余って「第三の経済」とか「トービン税」「ATTAC」なんて話で前半に比べて地に足ついてないんですがまあいいでしょう。非常に見通しの良くなる本。

各論の一つ一つも説得力あり

夕張市を始めとして、自治体の経済破綻が話題になります。原因は膨大な負債(地方債)。今となっては新規に起債しても利払いで精一杯の所が多いそうです。なんでそうなったのか?

「増税なき財政再建」の時期に「内需拡大」の一環として50兆円の公共投資を米国に約束しちゃったんだそうです。でも増税はできない。財政投融資も評判が悪い。どうしたか?地方自治体に借金で投資させたのです。「ふるさと創生1億円」の頃に地方債の借入残高は急上昇しているのです。現在では200兆円!トホホホ。

詳細

単行本: 235ページ
出版社: 文藝春秋 (2006/10)
ISBN-10: 4163684808
ISBN-13: 978-4163684802
発売日: 2006/10
商品の寸法: 19 x 12.8 x 2.4 cm





新版年収300万円時代を生き抜く経済学

森永 卓郎

ご存知モリタク先生の「年収300万円」。

2007.1
内容(「BOOK」データベースより)
小泉構造改革とは、ほんの一握りの金持ち階級と圧倒的多数の低所得層とに日本をわけるものだった!9割のサラリーマンが「負け組」に向かうなか、可能性のない「成功」をめざすか、自分にとって「幸福」な人生をめざすのか。安定が崩れ去った日本社会での「森永流前向き生き方」。ベストセラー正続を新版にして文庫化。
目次
  1. 日本に新たな階級社会が作られる
  2. 年収300万円時代がやってきた
  3. 年収300万円時代の本当に「豊かな」生き方
  4. 年収300万円時代を幸福に暮らす「知恵と工夫」
  5. 本当の幸せとは? 私自身の「年収300万円時代」

  • 光文社知恵の森文庫 (2005/5/10)




緊急版 年収120万円時代
-生き抜くための知恵と工夫-

森永 卓郎

副題の「生き抜く為の知惠と工夫」は書いてないけど...

2007.12
本書の論点はこの2つ
  • 日銀によるデフレ実行を告発
  • 金融資産課税3%を主張

年収300万円本はたくさん出てしまって食傷気味の方も多いかと思われますが、これからは120万円。でも本当の主張は金融資産課税と見た。根拠は殆ど示さず、警告と告発で一気に書き上げました。なーんも勉強してない人が読んだら「そんなことないんじゃない?」で終わってしまうので、またゆっくり続編を出して行って下さいね。

現代のお金持ちは資本家というより資産家ですな。資本を資本と思ってない。資産と思ってる。いや単に資金?お金が自己目的化してるんだから「資」もいらんな。うーんと、「お金」を増やすための「資金」を持ってる、と。そんな感じなんかな。

資本家が居なくなってるということは、言い換えれば資本主義社会は静かに終わってたってことじゃん。レーニンもびっくりですぜ将軍様。あ、先刻ご承知でしたか。確かにあなたこそ現代の偉大なる将軍様、棟梁の中の棟梁なのかも知れません。

3000万では動かない人も30億なら裏切らざるを得ない世の中

  • 道州制なんて言わず、私なら日本をA・B二つに分ける。A地域は新自由主義、お金持ちと大企業とMBAの皆さんに住んでもらう。B地域は平等を目指す。さあどうします?なんて話があった。

デフレを実行したのは日銀

日銀当座預金積み上げにかくれた金融締め付け
  • マネタリーベースで見てみると...ってデータないじゃん!既出か。
小泉さんは周りの人しか見てなかっただけの純粋な人
  • 「日本の景気は悪くないじゃないか。こないだレストランを予約しようとしたら予約で一杯だった」

禁断の金融資産課税3%論

財産権の侵害だ、という正論もあるのですが、
  • 1500万円までは非課税。
  • 100億円持ってる人は毎年3%減っていきますよ。でも利回り出せるんだから3%くらいはOKでしょ。
と言われると、うーんなるほどそんなもんかもな、とも思う。いいとこつくねえ、モリタクさん。
  • 地域通貨で減価していく紙幣ってのがあってまあ似たような話なんだが、モリタクさんの方が当面は現実的。えらい。
  • まあいずれにしても、貯金できるって、何だろね。

  • 出版社: あ・うん (2007/2/16)




乱世を生きる
-市場原理は嘘かもしれない-

橋本 治

未読です。

所謂ダメ系、負け組系からの理論提出として購入しました。



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