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何気ない日常

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何気ない日常



作者:水無月五日






 私は諏訪加奈(すわかな)って言う高校二年生なんだけど、アルバイトしている場所がレストランって聞いたら何となく普通って思うじゃない? でもそれは大きな間違いよ。小野妹子を女って答えるのと同じぐらいに。
 まず、レストランなのに何にも注文しない冷やかしのお客さんが一杯居るって言うこと。まぁ、ドリンクバーを一杯だけでファミレスに私も何時間も居ることがあるから其処は文句は言わないわ。
 それでも……。
「あーあ、全くなっさけねー。まー精々がんばれよ、アリオスト
「ちょっと待て真田ぁ!? いい加減にしろよ?」
 レストランの中では到底持込が許されてる筈の無いものを持った二十代半ばの黒い髪で赤い目の男の人が最近の若者っぽい姿をした高校生ぐらいの男の子に声を荒げる。
 赤い目の人はアリオストさん。通称・蟻、有野など。なんか肉体改造を受けちゃってるみたいでサイボーグになっている人。あと付け加えるなら一番貧乏くじを引く人かなぁ。
 そんでもって、高校生ぐらいのってか、高校二年生の真田。通称さなだん。ぶっちゃけますと私の知り合いです。というか私と私の親友の仁科ちゃんが此処に来るきっかけ、働くきっかけを作ったのがこいつなわけ。関係? そんなのただの友達よ、友達。変な詮索しないでよね。
「何でも力で解決すりゃいいってわけじゃネーだろ? 力だけじゃ駄目だって、これだからアリオストは……」
 もう少し言い方があるだろう。この騒動を眺めながら私は真田が火に油を注いでるようにしか見えない。
 周囲に何人か人が居るんだけど、皆アウトオブガンチュー。もう慣れっこな事なんだろう、きっと。
 事の始まりはホント些細な突っ込みからなんだけど、いつの間にか殺傷事件が起こりそうなところまで来ている。
 そんな殺伐とした中でマイペースにこの空間に入ってくるお客様。
「こんばんやーっす」
 金髪の人で顔は悪くない。通称エーガ。まぁ、この人はなんつーか、色んな女の子を毒牙にかけるっていって弄られてる。そんでもってさりげなく行動している人。数少ない常識人なのかもしれない。
 エーガさんは一瞬やり取りを見てため息一つ。ヤレヤレって感じでやり取りをしている二人に近づいてゆく。
「うぃーっす、何やってんだ?」
 もう理由はわかっているんだろうけど、一応理由を聞くエーガさん。
『お、エーガこんばんわー』
 さっきまで殺伐としていたやり取りをしていた二人は同じタイミングで挨拶をする。実はこの二人って案外息が合ってんの?
 仲裁役の登場で何とか場は収まって、なんかレストランってか居酒屋っぽい会話が繰り広げられている。
 ねぇ、そろそろ突っ込んでもいいかな? いいわよね!
 なぁぁーーーんでレストラン来て皆注文そっちのけで会話を始めるの!? 私一応働いてるんですよ、給料貰ってるんですよ? 何にもしないでお金貰っちゃ両親がメッチャ痛いわ!
 とまぁ、口に出したいことは沢山あるけど、所詮私は雇われのしがないウェイトレス。えぇ、文句なんていいませんよーだ。
 またもカランカランと店の入り口が開かれる。おおよそ二十二時三十分を過ぎた辺りから爆発的に人が出入りしてくるの。あれ、労働基準法? あはは…えっと、時差、時差よ時差! 細かいこと気にしちゃ駄目よ。
 大体の人が開口一番挨拶をするのだが、その女の子は少し様子が変だ。キョロキョロと周囲を見渡し、がっかりしたような安心したような表情を浮かべる。
「……」
 女の子の名前はシューノ。なんというか、拒絶オーラってのが私には見えるのよね。アリオストさんとかが話しかけたりしてもそっけない態度。単にアリオストさんだからなのかもしれないけれど。とりあえずその見えない壁で周囲との繋がりをシャットダウンしているみたい。セキュリティーバリバリのコンピューターってものも逆に疲れると思うんだけれど。
「ふう…居ない……か こんばんわ」
 ヤッパリ会いたくない人物が居るような物言いだ。でもそんな個人の事情はあまり詮索しちゃ駄目よね。だって私ウエイトレスだもん。
 またも入り口のベルが鳴る。
「愛の神様に嫉妬されるハーゼさんの登場だぜww」
 金髪で、他の人と違う灰色っぽい目。そしてビミョーに似合ってるスーツ。とりあえず語尾に『w』って付いた気がするのは私だけ?
 既にレストラン内に居る人たちは一斉に挨拶を始める。唯一シューノさんを除いて。
「や、シューノちゃん、元気だったかい?」
 まるで久々に会う恋人に話しかけるような調子でハーゼさんはシューノさんの元へと近寄る。
 あー私もあんなふうに一度でいいから言われたいよなぁ。
『よう諏訪、元気だったか? 今日はよこしまか?』
 いやいやちょっとまって、私の世界! いくらなんでもそれは酷じゃない? というか想像でもパンツの色聞いてるんじゃないわよ、馬鹿!
『お、久しぶりに見た気がする。元気にしてたか?』
 いやいやいや、ちょっと待って、私の想像! いやもったいない気もするけど。彼は競争率高いし、今は金髪のあの子とビミョーな関係じゃない! うらやましくなんかないわよ、絶対!
『あはー諏訪ちゃんだー久しぶりー』
 ってこれは待たなきゃ駄目でしょ!? 私の裏の顔! いや、一緒に居て面白いけど……って、其処私をそんな目で見ないでくれる? 駄目世駄目よ、元から私の立ち位置はそっち系に行きそうな立ち位置なんだから!
 私が一人トレイを持って悶えているといつの間にか二人の世界に突入していた。
「…だから、お前が居なくても寂しくは無いと何度ッ……」
「はは、大丈夫。寂しさの神に嫉妬される俺がなんかプレゼントしてやるよ。何がいい?」
 あーあ、こうなったらもう見てるだけでお腹一杯だわ……。
 他の面々も個人個人で話を始めちゃったし、私も今日も眺めてるだけかぁ……。
「……」
 あ、今ぴきーんて来た! そろそろバイト上がりの時間だ。結局誰とも話できなかったし。
 というか注文が無いわよ、無い無い!!
「すいませーん、お先に失礼しまーす」
 厨房で何やら包丁を注文も無いのに磨いてる4メーターシェフ。本当に4メーターあるのかわからないけど、とりあえずでかい。
「あーあ、結局今日も何にもしなかったなぁ……」
 上着をハンガーにかけてロッカーの中に突っ込んで、私服に着替えて店の裏からレストランを後にする。
 レストランの脇に止めてあるマイフェラー……このネタはどっかで聞いたことあるわ。私の自転車でいいや。自転車にまたがり、暖かいお風呂とぽかぽかのご飯の待っている我が家へと急ぐ。
 裏路地から大通りに出ると、私の前を同じ顔をした人たちが三十人ほど武装して男や女などわめきながら走り去って行く姿が見えた。
「あれって……まぁいっか♪」
 私は鞄の中から音楽プレイヤーを出して再生ボタンを押した。




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