夏休みのとある日。 前編
作者:you
後編はこちら
夏休みのとある日。
私は暇を持て余す学生で溢れた街を歩いていた。
というかまぁ私もそのうちの一人なんだけど。
私は暇を持て余す学生で溢れた街を歩いていた。
というかまぁ私もそのうちの一人なんだけど。
「それにしても暑いわねー」
「そうだねー」
「そうだねー」
今日何度めかも忘れてしまった会話を、隣の仁科とかわす私。
本日の暑さはこの夏一番らしいんだけど、まだ8月も始まったばかり。
これから先、「この夏一番の暑さ」は更新され続けるに違いないわ、憂鬱なことに。
本日の暑さはこの夏一番らしいんだけど、まだ8月も始まったばかり。
これから先、「この夏一番の暑さ」は更新され続けるに違いないわ、憂鬱なことに。
「でも、お天気よくてよかったよね」
「ちょっとくらい曇ってくれてもよかったわよー」
「ちょっとくらい曇ってくれてもよかったわよー」
いいこと探しは素晴らしいことだけど、この暑さは流石にまいっちゃうわ。
早くどこかお店に入ることにしよう。
早くどこかお店に入ることにしよう。
「そだね。……あれ?」
「ん? どうかした?」
「うん、あれって、渚ちゃんとシュネーちゃんじゃない?」
「どれどれ。
あ、ほんとね」
「ん? どうかした?」
「うん、あれって、渚ちゃんとシュネーちゃんじゃない?」
「どれどれ。
あ、ほんとね」
渚ちゃんシュネーちゃんとはクラスでも仲良しなグループで、大抵は4人で遊んでるんだけど、
今日の買い物は用事があるからとか言って断られちゃったのよね。何してんのかしら?
今日の買い物は用事があるからとか言って断られちゃったのよね。何してんのかしら?
「渚ちゃーん、シュネーちゃーん」
仁科がぶんぶんと二人に手を振る。その声に向こうも気づいたようで、二人ともこちらに小走りに寄ってきた。
「あはー、加奈ちゃんに仁科ちゃん、こんにちはー。いい所にー」
ほにゃーん、とゆるみきった笑顔を見せる渚ちゃん。
その笑顔は女子の私からでもうっかり可愛いと思わせる。
いろんな女の子に可愛い可愛いと言い寄っている(?)渚ちゃんだが、本人もかなりの可愛さなのだ。
本人があんまり自覚してなさそーなのが心配だわ……
ちなみに、「加奈ちゃん」とは当然ながらこの私、諏訪加奈のことである。
その笑顔は女子の私からでもうっかり可愛いと思わせる。
いろんな女の子に可愛い可愛いと言い寄っている(?)渚ちゃんだが、本人もかなりの可愛さなのだ。
本人があんまり自覚してなさそーなのが心配だわ……
ちなみに、「加奈ちゃん」とは当然ながらこの私、諏訪加奈のことである。
「こ、こんにちはですっ」
渚ちゃんの一歩後ろから、やや遠慮がちに声をだすシュネーちゃん。
この子も渚ちゃんに負けず劣らず美少女なのだが、クラスの人間関係の中心にいるといっても過言ではないくらい誰とでも仲良しな渚ちゃんと違って、人見知りがちなのよねー。
さっき仲良し4人グループと言ったけど、どちらかというとシュネーちゃんが渚ちゃんにべったりで、その成り行きで4人グループになっている感じ。
もちろん、他のクラスメイトより仲良しなのは間違いないんだけど。
まあ、少しずつ打ち解けてきてる感じはするし、これからに期待しておきましょう。
この子も渚ちゃんに負けず劣らず美少女なのだが、クラスの人間関係の中心にいるといっても過言ではないくらい誰とでも仲良しな渚ちゃんと違って、人見知りがちなのよねー。
さっき仲良し4人グループと言ったけど、どちらかというとシュネーちゃんが渚ちゃんにべったりで、その成り行きで4人グループになっている感じ。
もちろん、他のクラスメイトより仲良しなのは間違いないんだけど。
まあ、少しずつ打ち解けてきてる感じはするし、これからに期待しておきましょう。
「こんにちはー」
「こんちは。どしたの、二人して? 用事があるとか言ってなかったっけ?」
「あ、ごめんねー。お買い物、せっかく誘ってくれたのに断っちゃって」
「こんちは。どしたの、二人して? 用事があるとか言ってなかったっけ?」
「あ、ごめんねー。お買い物、せっかく誘ってくれたのに断っちゃって」
しゅんー、としょげた表情になる渚ちゃん。
もう、そんな顔されたら何も言えないわ。
もう、そんな顔されたら何も言えないわ。
「別にいいわよ。それより、何してるの? 『いい所に』ってどういう意味?」
「ん? んふふー、ちょっとねー」
「ん? んふふー、ちょっとねー」
意味ありげな笑みを浮かべる渚ちゃん。その後ろでやや苦笑するシュネーちゃん。
……なんだか嫌な予感がするわね。
……なんだか嫌な予感がするわね。
「んっとね、二人にも私の宿題に協力して欲しいんだけどー」
「「宿題?」」
「「宿題?」」
私と仁科の声が見事にハモる。
「うん、すぐ済むから! お願い!」
手を顔の前で拝むようにして、小首をかしげて上目遣いで見つめる渚ちゃん。
……くっ、この表情は反則だわ。
……くっ、この表情は反則だわ。
「いいわよ、別に? 何すればいいの?」
「私も構わないよー」
「私も構わないよー」
この時私は、あまりに可愛い渚ちゃんのおねだりポーズのせいで、うっかり忘れていたのだった。
先ほど嫌な予感を感じたことを。
先ほど嫌な予感を感じたことを。
「では遠慮なくー」
「え、ちょっと!?」
「え、ちょっと!?」
突如、こちらにがばー、と抱きついてくる渚ちゃん。
渚ちゃんのクセみたいなもので、何度も目撃してきたし、私自身も経験はあるのだが、ここは街中よ!?
しかもこれからショッピングしようってんだから当然繁華街! 夏休みで暇を持て余す学生たちがわんさか!
渚ちゃんのクセみたいなもので、何度も目撃してきたし、私自身も経験はあるのだが、ここは街中よ!?
しかもこれからショッピングしようってんだから当然繁華街! 夏休みで暇を持て余す学生たちがわんさか!
「ふむふむー」
「いやふむふむじゃなくて!」
「いやふむふむじゃなくて!」
むぎゅむぎゅと抱きしめられる私。
「うん、ありがとー」
ご満悦な表情で私から離れる渚ちゃん。うぅ、なんだってのよ……
「んじゃ次はー」
「ひぅ!?」
「ひぅ!?」
すばらしい笑顔で仁科を見る渚ちゃん。
もはや私には止める力は残ってないわ。仁科、諦めなさい。
もはや私には止める力は残ってないわ。仁科、諦めなさい。
◇
「ふはー、ごちそうさま……じゃないや、協力ありがとー。
買い物楽しんでね! んじゃまた今度ねー♪」
「さようならですー」
買い物楽しんでね! んじゃまた今度ねー♪」
「さようならですー」
そんな台詞を残して、二人はまたどこかへと去っていった。
「……結局、なにしてんだろうね、あの二人」
「さあ……?」
「さあ……?」
まあ、また今度聞いてみることにしましょーか。
◇◆◇◆
夏休みのとある日。
「あ、ミナさんだー。やほー、なにしてるのー?」
「とある用事」に夢中になっていた私の背後から、そんな声がかかった。
聞き覚えのあるその声に、私はひとまず「とある用事」から視線を外し、背後に振り返った。
聞き覚えのあるその声に、私はひとまず「とある用事」から視線を外し、背後に振り返った。
「あら、渚さんにシュネーさん。こんにちはですわ」
振り返った先には、よく見知ったクラスメートが二人、不思議そうな視線をこちらに向けていた。
まぁ、無理もありませんわね。なんせ今の私の格好は――
まぁ、無理もありませんわね。なんせ今の私の格好は――
「ミナさん、すごい格好だねぇ。暑そうなのはいつものコトだけど、今日は輪にかけて黒いというかー。
下手したら通報されちゃうよー?」
下手したら通報されちゃうよー?」
ただでさえ夏に似つかわしくない厚着な上、本日は黒尽くめ装備なんですもの。
なぜこのような格好をしているかは言わずもがな、例によって、あの二人、ですわ。
なぜこのような格好をしているかは言わずもがな、例によって、あの二人、ですわ。
「あ、なるほどねー。それは楽しそうだー」
私が示した「二人」を見て、にゃはー、と笑う渚さん。
その後ろのシュネーさんも、興味津々といった顔でその二人を見ていますわねー。
その後ろのシュネーさんも、興味津々といった顔でその二人を見ていますわねー。
「そういうお二人は何してるんですの?」
「ん? あは、ちょっとねー。
あ、そだ、ミナさんもちょっと協力してくれないかなー?」
「ん? あは、ちょっとねー。
あ、そだ、ミナさんもちょっと協力してくれないかなー?」
協力?
「私、見ての通り忙しいのですけど」
「ほんのちょっとで済むから大丈夫なのです!」
「ほんのちょっとで済むから大丈夫なのです!」
お願い、とおねだりポーズをとる渚さん。
ふむ、このパターンはきっとアレですわねー。
ふむ、このパターンはきっとアレですわねー。
「内容によっては聞いてあげますわ。なにをするんですの?」
「うん、ちょっと抱きしめさせて欲しいのー」
「うん、ちょっと抱きしめさせて欲しいのー」
あはー、と明るい笑顔でおっしゃる渚さん。ものすごく予想通りですわね。
「理由を聞いてもよろしくて?」
「それはまだ秘密ー。でも、なるべくたくさんの人に協力して欲しいんだよねー」
「それはまだ秘密ー。でも、なるべくたくさんの人に協力して欲しいんだよねー」
また妙なコトを考えてるんですのね。
抱きしめること自体はかまいませんが、こんな街中でとなると――
抱きしめること自体はかまいませんが、こんな街中でとなると――
――あ、いいこと思いつきましたわー。
「いいですわ。ただし、交換条件をのんでくれるなら、ですわ」
「交換条件~?」
「ええ、まぁ大したことではないですわ」
「交換条件~?」
「ええ、まぁ大したことではないですわ」
私は渚さんに、今思いついたその交換条件を告げる。
「あはー、それなら全然オッケー。
じゃ、二人を見失わないうちに、しつれーしまーす」
じゃ、二人を見失わないうちに、しつれーしまーす」
そう言って渚さんは私に抱きつく。
建物の影とはいえ、街中で何をやっているのやら。
まぁ、これはこれで、あったかいですし、悪くはありませんわね。
相手によってはアレですが、まぁ渚さんなら「アリ」ですわ。
建物の影とはいえ、街中で何をやっているのやら。
まぁ、これはこれで、あったかいですし、悪くはありませんわね。
相手によってはアレですが、まぁ渚さんなら「アリ」ですわ。
「ふぃー、どうもでしたー。相変わらずミナさんはひんやりしてて夏に抱きつくには最高だねー」
「どういたしましてですわ」
「どういたしましてですわ」
渚さんはご満悦なご様子。抱きついてる間、渚さんには見えなかったでしょうけど、シュネーさんがずっと微妙な顔してましわたよー?
なんてことは、わざわざ忠告しませんけども。
渚さんの場合、気づいててわざとという可能性もありますし。気づいてても、解ってない可能性も同じくらいありますけれど。
なんてことは、わざわざ忠告しませんけども。
渚さんの場合、気づいててわざとという可能性もありますし。気づいてても、解ってない可能性も同じくらいありますけれど。
「めもめも~っと」
私がそんな物思いをしている間に、シュネーさんがカバンから取り出したノートへとなにやら書き込む渚さん。
ちらっと見えたそのノートの中には、私以外にも見知った名前がちらほらと。
ああ、何してるのかだいたいわかりましたわー。
ちらっと見えたそのノートの中には、私以外にも見知った名前がちらほらと。
ああ、何してるのかだいたいわかりましたわー。
「よしっと。それじゃ早速『交換条件』のほういってきまっす!」
「お願いしますわ。許可なんか求めず、いきなりいっちゃってくださいな。そのほうが面白いですわ」
「ふぇ、だいじょぶかなー」
「私が許しますわ」
「えへへー、らじゃー!
それじゃあまたね、今度会ったときに今日の話聞かせてねー」
「もちろんですわ」
「お願いしますわ。許可なんか求めず、いきなりいっちゃってくださいな。そのほうが面白いですわ」
「ふぇ、だいじょぶかなー」
「私が許しますわ」
「えへへー、らじゃー!
それじゃあまたね、今度会ったときに今日の話聞かせてねー」
「もちろんですわ」
そう言って、渚さんは元気よく駆け出す。その後を追って、シュネーさんもこちらにぺこりと会釈をして走り出した。
さてさて、楽しみですわねー。
さてさて、楽しみですわねー。
◇◆◇◆
夏休みのとある日。
デ……か、買い物に出ていたオレとアキラの元へ、「ソレ」は突然やってきた。
デ……か、買い物に出ていたオレとアキラの元へ、「ソレ」は突然やってきた。
「こーんにーちはっ!!」
「うぉわ!?」
「うぉわ!?」
そんな声とともに、オレの視界の端に映っていたアキラが、バランスを崩して前のめりになった。
オレはその声にビックリして、すぐにそっちを向く。
向いた先には、なんとかバランスを保って立っているアキラと、……なんというか、その、妖怪だきつき女がいた。
オレはその声にビックリして、すぐにそっちを向く。
向いた先には、なんとかバランスを保って立っているアキラと、……なんというか、その、妖怪だきつき女がいた。
アキラが首を後ろに向けながら言う。
まったくもってその通り。びっくりした。
まったくもってその通り。びっくりした。
「てへへ、ごめんなさーい。
レミング君と一緒のときのアキラさん隙だらけだから、ついついー」
「む、そりゃレミングといたら気もゆるむさ」
レミング君と一緒のときのアキラさん隙だらけだから、ついついー」
「む、そりゃレミングといたら気もゆるむさ」
くすくす笑って謝るなぎーだが、あんまり反省の色は見られない。
ていうか今なんか、すごく恥ずかしい会話が行われたような……
ていうか今なんか、すごく恥ずかしい会話が行われたような……
「あははー、レミング君赤くなってるー。照れてるー?」
「なんでレミングが照れるんだよ。あたしまで恥ずかしくなるじゃんか!」
「なんでレミングが照れるんだよ。あたしまで恥ずかしくなるじゃんか!」
そんなことを言われても恥ずかしいもんは恥ずかしいんだから仕方ないだろ。
「それより、渚さん、いつまでくっついてるんだ?」
「ん? あはは、これにはちょっと事情がありましてー」
「「事情?」」
「ん? あはは、これにはちょっと事情がありましてー」
「「事情?」」
オレとアキラの声が見事にハモる。
「うん、ちょっと夏休みの宿題カンケーでー」
「宿題かー。なぎーは偉いなぁ。私なんかまだ全然手ぇつけてないや」
「宿題かー。なぎーは偉いなぁ。私なんかまだ全然手ぇつけてないや」
いやアキラ、感心する所じゃないから。いったいこの世のどこに街中で突如他人に抱きつくような宿題があるんだよ。
「あ、レミング君、その目は信じてないなー?
ホントに宿題関係なんだもーん。ね? シュネーちゃん?」
ホントに宿題関係なんだもーん。ね? シュネーちゃん?」
え? シュネーさん、居たのか?
同じ疑問をアキラも抱いたらしく、きょろきょろと視線を辺りにやる。
同じ疑問をアキラも抱いたらしく、きょろきょろと視線を辺りにやる。
「こ、こんにちはです……」
と、渚さんが来た方向から、ぽてぽてと小走りにシュネーさんがやってきた。
「もう、遅いよーシュネーちゃん」
「な、渚さんが速すぎるんですよ。
なんというか、獲物を追うチーターみたいでしたよ」
「獲物ってあたしかぁー?」
「あははー、食べちゃうぞー」
「な、渚さんが速すぎるんですよ。
なんというか、獲物を追うチーターみたいでしたよ」
「獲物ってあたしかぁー?」
「あははー、食べちゃうぞー」
なんて、楽しくトークを展開する三人。
当然その間も、渚さんはアキラに抱きついたままだ。
アキラと二人での買い物に邪魔が入ったりだとか、なのにアキラは気にせず楽しそうに会話していたりだとか、そんなこんなで、ついうっかり――
当然その間も、渚さんはアキラに抱きついたままだ。
アキラと二人での買い物に邪魔が入ったりだとか、なのにアキラは気にせず楽しそうに会話していたりだとか、そんなこんなで、ついうっかり――
「もう、だからいつまでくっついてるんだってばさ!」
なんて、思った以上の大声がでて、自分でもびっくり。
三人がびっくりした顔でこちらを見てる。そりゃそうだ。
三人がびっくりした顔でこちらを見てる。そりゃそうだ。
「うん、そだね。アキラさん、ありがとー」
「え? あ、いや、別にお礼を言われるコトでも」
「え? あ、いや、別にお礼を言われるコトでも」
そう言ってアキラから離れる渚さん。
その表情からは、オレに怒られて反省してるのか、大声だしたオレを面白がってるのか、判断できない。
その表情からは、オレに怒られて反省してるのか、大声だしたオレを面白がってるのか、判断できない。
「これ以上二人のジャマしてもなんだし、そろそろいこっかシュネーちゃん」
「はいです」
「そいえば、この辺りで誰か知り合いに会わなかった?
宿題に協力してくれる人探してるんだけどー」
「んー、あたしは見てないなー」
「ハーゼと真田なら、さっき向こうのコンビニで見たけど」
「はいです」
「そいえば、この辺りで誰か知り合いに会わなかった?
宿題に協力してくれる人探してるんだけどー」
「んー、あたしは見てないなー」
「ハーゼと真田なら、さっき向こうのコンビニで見たけど」
ていうか結局宿題ってなんなんだろ……
「え、マジ? あたし全然気づかなかった」
そりゃあ、アキラにもハーゼ&真田にも気づかれないようにがんばったからな。
二人を見つけたらアキラは絶対声かけるだろうし、二人に見つかったら間違いなくからかわれる。
二人を見つけたらアキラは絶対声かけるだろうし、二人に見つかったら間違いなくからかわれる。
「ハーゼ君と真田君かー。うーん、まいっか。ありがとー。
あ、それと――」
あ、それと――」
そこまでいってこっちを見る渚さん。
……あ、なんかヤな予感。
……あ、なんかヤな予感。
「このままだと不公平だよねー。交換条件のコトもあるし、ごめんねアキラさん」
「不公平? 交換条件? なんのことだ?」
「ていやー」
「不公平? 交換条件? なんのことだ?」
「ていやー」
そんな間の抜けた掛け声とともに、再び妖怪だきつき女は出現した。
今度の標的は、オレだったけど。
今度の標的は、オレだったけど。
「ちょ、な、渚さん!?」
「はい、おしまいー」
「はい、おしまいー」
動揺するオレをよそに、渚さんは思いのほかあっさりと離れてくれた。
アキラの顔をうかがうと、きょとんとした顔をしている。
アキラの顔をうかがうと、きょとんとした顔をしている。
「それじゃ、二人ともゴメンね! また今度~。ばいばーい」
「お、お邪魔しましたですっ」
「お、お邪魔しましたですっ」
そう言って二人は去っていた。
「全く、なんだったんだ……
って、アキラ? どうしたのさ?」
って、アキラ? どうしたのさ?」
やれやれとため息をついて二人を見送り、ふとアキラを見ると、さっきと同じ表情のまま、固まってしまっている。
「ん、あ、いや」
オレの声に、とりあえず動き出したものの、なにやらもごもごと言いよどんでいる。どうしたんだろ?
「どうかした?」
「あー、なんだ、その、ごめんな、レミング」
「? なにが?」
「あー、なんだ、その、ごめんな、レミング」
「? なにが?」
何を謝るんだろう。
「んと、その、さ。さっきレミングがなぎーに抱きつかれたとき」
「とき?」
「なんというか、すげーモヤモヤしてさ。
んで、あたしがなぎーに抱きつかれてたとき、レミングもおんなじような気持ちだったのかなー、って思ったら、その……」
「え、あ……」
「なのにあたし、普通になぎーとかと喋っちゃったりしてさ。
だからその、ごめん」
「あ、いやこっちこそ……」
「とき?」
「なんというか、すげーモヤモヤしてさ。
んで、あたしがなぎーに抱きつかれてたとき、レミングもおんなじような気持ちだったのかなー、って思ったら、その……」
「え、あ……」
「なのにあたし、普通になぎーとかと喋っちゃったりしてさ。
だからその、ごめん」
「あ、いやこっちこそ……」
そう言ったきり、オレもアキラも、何も言えずに黙ってしまった。
妙に気恥ずかしい雰囲気のまま、しばらく二人で視線を合わせたり、外したりした後――
妙に気恥ずかしい雰囲気のまま、しばらく二人で視線を合わせたり、外したりした後――
「こ、こんなところで立ち話もなんだし、そ、そろそろ行くか!」
「そ、そうだね!」
「そ、そうだね!」
むやみに大きな声を出して、多少ぎこちなく、オレたちは買い物……じゃ、なくて、デートを、再開した。
◇◆◇◆
夏休みのとある日。
あまりにも暇でどうしようもなかった俺達は、コンビニの前でガリガリさんを食べていた。
あまりにも暇でどうしようもなかった俺達は、コンビニの前でガリガリさんを食べていた。
「なぁ真田」
隣で同じくガリガリさんを食べているハーゼが、空を見上げたままつぶやいた。
「どした」
「……これからどーするよ」
「……どうしようなぁ」
「……これからどーするよ」
「……どうしようなぁ」
さっきまではコンビニの中で立ち読みをしていたのだが、店員の視線が気になってきたのでアイス買って外に出たのだった。
それにしてもあちぃ。
それにしてもあちぃ。
「んお?」
「どしたハーゼ」
「あれってなぎーとシュネーじゃね?」
「どしたハーゼ」
「あれってなぎーとシュネーじゃね?」
うん、確かに。見覚えのある美少女二人が、こちらを目指してやってくる。
「やほー、真田君にハーゼ君、こんにちはー」
あはー、とゆるい笑みを浮かべるなぎーこと渚。
その笑顔にだまされる女子は数知れず。美少女と見るや凄い勢いで仲良くなり、抱きついている。うらやまし――じゃない、恐ろしい娘さんだ。
あの諏訪ですらなぎーにはなんだか甘い。なぎー、恐ろしい子!
その笑顔にだまされる女子は数知れず。美少女と見るや凄い勢いで仲良くなり、抱きついている。うらやまし――じゃない、恐ろしい娘さんだ。
あの諏訪ですらなぎーにはなんだか甘い。なぎー、恐ろしい子!
「こんにちはです、真田さん」
「俺は無視かい!?」
「はいはい、ハーゼも暇そうで何よりです」
「それは挨拶じゃないぞ!?」
「俺は無視かい!?」
「はいはい、ハーゼも暇そうで何よりです」
「それは挨拶じゃないぞ!?」
んで、なにやらハーゼと漫才を始めてるのがシュネーちゃん。
クラスメイトではあるものの、なぎーの一番の愛人で、なぎーと共に諏訪仁科と仲良し四人娘を結成してることくらいしか俺は知らない。
ハーゼとは幼馴染らしい。仲良しだなー。
クラスメイトではあるものの、なぎーの一番の愛人で、なぎーと共に諏訪仁科と仲良し四人娘を結成してることくらいしか俺は知らない。
ハーゼとは幼馴染らしい。仲良しだなー。
「まぁまぁ。それより、二人ともこんなところでなにしてるのー?」
あはは、と笑いながら二人をなだめるなぎー。
なぎーの笑顔には和みパワーが備わってるのか、二人はじゃれ合いを止める。
単にシュネーちゃんがなぎーにデレデレだからな気もするが。
なぎーの笑顔には和みパワーが備わってるのか、二人はじゃれ合いを止める。
単にシュネーちゃんがなぎーにデレデレだからな気もするが。
「別にー。暇を持て余しているのさー」
「そういうコト。そーいう二人は?」
「そういうコト。そーいう二人は?」
ぽい、とごみ箱に食い終わったガリガリさんの棒を投げ込み(はずれだった)、二人にきいてみる。
「ふふー、ちょっと夏休みの宿題に協力してくれる人探してるんだー」
宿題? 協力?
「ふっ、どうしても俺の力が必要だというのなら、ハーゼさんが協力してやらんでもないぞ」
胸を張るハーゼ。暇だからかまってもらえるのが嬉しいんだろうなー。
ハーゼが協力するっていうなら俺は様子を見ておこう。
ハーゼが協力するっていうなら俺は様子を見ておこう。
「んー? まぁどうしてもっていうほどでもないけどー、協力してくれるっていうならお願いしよっかなー?」
「なっ!? ちょ、渚さん!?」
「なっ!? ちょ、渚さん!?」
あわてた感じでなぎーを見るシュネーちゃん。
はて、どーしたんだろ。
はて、どーしたんだろ。
「ほら、サンプルは多いほうがいいじゃないー?」
「で、ですがー」
「で、ですがー」
うぅ、と涙目になりかねない勢いなシュネーちゃん。
「おーい、話が見えないんですけどー?」
「あは、ごめんごめん。んじゃちょっと協力してもらえるかなー。
ちょっと体を貸してほしいんだけどー」
「あは、ごめんごめん。んじゃちょっと協力してもらえるかなー。
ちょっと体を貸してほしいんだけどー」
複雑な表情のシュネーちゃんをほっといて話を進めるなぎー。
時々残酷だよねなぎー!
と、いうより……
時々残酷だよねなぎー!
と、いうより……
「か、体!?」
「や、やさしくしてね……?」
「アホなことゆーなです!」
「や、やさしくしてね……?」
「アホなことゆーなです!」
おお、シュネーちゃんも鋭いツッコミ入れたりするんだなぁ……。
だいたい教室ではなぎーと一緒で、なぎーと居るときはそわそわもじもじしてる印象しかないから新鮮だ。
だいたい教室ではなぎーと一緒で、なぎーと居るときはそわそわもじもじしてる印象しかないから新鮮だ。
「あはは、まぁ大したことじゃないよ。ちょっとじっとしててねー」
とか言って、なぎーはハーゼに抱きついた。
なぎーは! ハーゼに! 抱きついた!
大事なことなので二回言いました!!
なぎーは! ハーゼに! 抱きついた!
大事なことなので二回言いました!!
「ぬぉぉぉ!?」
「あにゃ、じっとしててってゆったのにー。
ま、いいか。だいたいわかったしー」
「むぅぅ、です……」
「……」
「あにゃ、じっとしててってゆったのにー。
ま、いいか。だいたいわかったしー」
「むぅぅ、です……」
「……」
一瞬固まった後、凄い勢いでバックステップしてなぎーから離れるハーゼ。
腰に手を当てながらいう理不尽な文句を言うなぎー。
その後ろですげー表情でハーゼをにらんでいるシュネーちゃん。
状況についていけずにぽかーんとしてるしかない俺!!
腰に手を当てながらいう理不尽な文句を言うなぎー。
その後ろですげー表情でハーゼをにらんでいるシュネーちゃん。
状況についていけずにぽかーんとしてるしかない俺!!
「え、えぇと、何がわかったの?」
置いてけぼりなのが寂しいので、参加するためにとりあえず質問を投げかけてみた。
「ん? やっぱり、男の子に抱きついてもあんまり楽しくないなーって」
「ひどすぎる!!」
「ひどすぎる!!」
笑顔でひでー言うなぎーとくずおれるハーゼ。
そしてなぎーの後ろでこっそりガッツポーズするシュネーちゃん。
そしてなぎーの後ろでこっそりガッツポーズするシュネーちゃん。
「ていうか、それが何で夏休みの宿題?」
「ん? ふふー、ひ・み・つ♪
あ、真田君も協力してくれるー?」
「謹んでお断りさせていただきます」
「ん? ふふー、ひ・み・つ♪
あ、真田君も協力してくれるー?」
「謹んでお断りさせていただきます」
こんな扱いされた上にシュネーちゃんに無意味に恨まれるのはごめんだ。
くずれ落ちたままのハーゼを横目に見ながら俺はそう思う。
くずれ落ちたままのハーゼを横目に見ながら俺はそう思う。
「そっかー。他に協力してくれそうな人、いないかなー?」
「さーねぇ……。
あ、学校行けば誰か居るんじゃね? 部活とかはあるし」
「おお! 真田君ナイスアイディア!
よし、行こうシュネーちゃん。それじゃ、二人とも、ばいばーい♪」
「さようならです」
「さーねぇ……。
あ、学校行けば誰か居るんじゃね? 部活とかはあるし」
「おお! 真田君ナイスアイディア!
よし、行こうシュネーちゃん。それじゃ、二人とも、ばいばーい♪」
「さようならです」
元気よく去っていくなぎーとシュネーちゃん。
なんというか、ほとんど蚊帳の外だったけど、とりあえず暇はつぶせた。が……
なんというか、ほとんど蚊帳の外だったけど、とりあえず暇はつぶせた。が……
俺の扱いひどくない!? 出番これだけ!?