夏休みのとある日。 後編
作者:you
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夏休みのとある日。
飼育係の真璃につき合わされ、俺は学校に来ていた。
飼育係の真璃につき合わされ、俺は学校に来ていた。
「よっし、エサやり終わりー」
「ん。おつかれ」
「ん。おつかれ」
エサや水を真璃が取り替える間にかまっていたウサギから手を離し、服の裾についた土を軽く払いながら、俺は立ち上がる。
「じゃあみんなを小屋に入れるから、トウマも手伝って」
「うん。って、あ、こら、逃げるな」
「うん。って、あ、こら、逃げるな」
小屋にウサギを戻せば、今日の仕事も終わりだ。
「よし、終了ー」
「どーする? またいつものトコ行く?」
「うん。その前に手を洗おうー」
「了解」
「どーする? またいつものトコ行く?」
「うん。その前に手を洗おうー」
「了解」
と、水道へと歩き出そうとしたとき、なんだか見覚えのある人影がやってきた。
笑みを浮かべ挨拶してくるのは、中等部の先輩のウインドさんだ。
とある共通の知り合いがきっかけで、校内で会えば話をするくらいには仲がいい。
とある共通の知り合いがきっかけで、校内で会えば話をするくらいには仲がいい。
「えっと、どうしたんだ? こんなトコで」
「えへ、本を借りに図書館に行く所だったんだけど、窓からトウマ君たちが見えたから」
「えへ、本を借りに図書館に行く所だったんだけど、窓からトウマ君たちが見えたから」
と、ウインドさんは笑いながら言う。
見上げれば、確かにここは図書館のある校舎のすぐ裏だ。
わざわざ降りてきて話しかけにきてくれた、ってことらしい。
別にそこまでしなくても、とは思うけど、まぁ、悪い気はしない。
見上げれば、確かにここは図書館のある校舎のすぐ裏だ。
わざわざ降りてきて話しかけにきてくれた、ってことらしい。
別にそこまでしなくても、とは思うけど、まぁ、悪い気はしない。
「トウマ、私は先に行ってるねー?」
「え?」
「ウインドさん、さようなら、また今度ー」
「え、あ、うん、ばいばい」
「え?」
「ウインドさん、さようなら、また今度ー」
「え、あ、うん、ばいばい」
にへー、なんて笑顔をこっちに見せてから、ぱたぱたとマリが去っていく。
……いらない気をつかいやがって。
……いらない気をつかいやがって。
「あ、えと、マリちゃん、何か用事でもあったの、かな?」
ほらみろ、「私何か悪いことしちゃったかな?」みたいな顔してるじゃないか。
「まぁ、一応日課みたいなモノは、あるけど。たいした用事でもないよ。
今のは単に、ヘンな気を回したんだと、思う」
「うん?」
今のは単に、ヘンな気を回したんだと、思う」
「うん?」
きょとん、と首をかしげるウインドさん。わかってないみたいだ。それはそれで、いいんだけど。
「図書館」
「え?」
「よく行くの?」
「え?」
「よく行くの?」
話題を変えるために、質問を振ってみる。
「あ、うん。本、好きだしね。
それに私、文芸部だし」
「ふぅん、そうなんだ」
それに私、文芸部だし」
「ふぅん、そうなんだ」
知らなかった。
「トウマ君達は、飼育係、だよね?」
「ん。上から見てた?」
「うん、ちょっとだけね。ウサギに構ってるトウマ君が……あ、えと、なんでもない」
「?」
「ん。上から見てた?」
「うん、ちょっとだけね。ウサギに構ってるトウマ君が……あ、えと、なんでもない」
「?」
何に照れたのかよくわからないけど、なにやら照れてうつむいてしまうウインドさん。
「……」
「……ぁぅ」
「……ぁぅ」
なんとなく話題がなくなって、沈黙してしまう。
ウインドさんと二人だと、よくこうなってしまう。えっと、何か話題、ないかな……
ウインドさんと二人だと、よくこうなってしまう。えっと、何か話題、ないかな……
なんて考えていたら、救世主が、やってきた。
「ウーイーンードーちゃんっ♪ こにゃにゃちはー!」
がばちょ、なんて効果音が聞こえてきそうな感じで、突然、ウインドさんに覆いかぶさる人影。
「ひゃ、ひゃわー!?」
悲鳴をあげるウインドさん。
うん、なんというか、さっきから向こうのほうにまたしても見覚えのある人影が見えるなぁとは、思ってたんだけど
うん、なんというか、さっきから向こうのほうにまたしても見覚えのある人影が見えるなぁとは、思ってたんだけど
「……渚さん、何してんの?」
予想通り渚さんだったのか。
柚木 渚さん。姉ちゃんのクラスメイトにして、ウインドさんと知り合うキッカケになった人だ。
柚木 渚さん。姉ちゃんのクラスメイトにして、ウインドさんと知り合うキッカケになった人だ。
「あはー、トウマ君もこんにちはー」
「な、渚さん!?」
「な、渚さん!?」
あうあう、と顔を赤らめながら、首をひねって自分の背に覆いかぶさってきたものを確認するウインドさん。
なんだろう、もっと早く教えてあげるべきだったんだろうか。
でもなぁ、確か一瞬前まで20m先くらいに居たはずなんだよなぁ、渚さん。
深くは考えないことにするけど。
なんだろう、もっと早く教えてあげるべきだったんだろうか。
でもなぁ、確か一瞬前まで20m先くらいに居たはずなんだよなぁ、渚さん。
深くは考えないことにするけど。
「ふふー、二人がこんな校舎裏で密会するほどの仲になっていたとはー」
「ち、違います! 誤解です!」
「ち、違います! 誤解です!」
はわわわ! と慌てふためきながら言うウインドさん。
うん、誤解なのは本当だけど、それだと慌てて弁解してるようにしか見えない。
うん、誤解なのは本当だけど、それだと慌てて弁解してるようにしか見えない。
「ええー? ホントにー? あやしいなー?」
畳み掛けるように、渚さんがからかうような笑みで言う。楽しそうだなぁ。
「ほ、ホントです! だよね、トウマ君!?」
なんて、照れてるのか、そんな誤解をされることが嫌なのか、必死で否定するウインドさん。
そんな顔を見てると、なんだか、
そんな顔を見てると、なんだか、
「さあ、どうだろうね」
なんて、いじわるなことを、言いたくなってしまう。
渚さんの気持ちを一瞬理解してしまった瞬間だった。
渚さんの気持ちを一瞬理解してしまった瞬間だった。
「と、トウマ君!?」
「おぉー」
「おぉー」
そんなぁ、みたいな表情になるウインドさん。軽く涙目だ。
そしてさらに盛り上がる渚さん。楽しそうだ。
うん、いじわる言っといてなんだけど、早くもかわいそうになってきた。
そしてさらに盛り上がる渚さん。楽しそうだ。
うん、いじわる言っといてなんだけど、早くもかわいそうになってきた。
「冗談、だよ。ついさっき、偶然会っただけ」
「ちぇ、つまんないー。まぁ、そうだろうと思ってたけどねー」
「ちぇ、つまんないー。まぁ、そうだろうと思ってたけどねー」
くすくす、と笑う渚さん。ウインドさんは、誤解が解けて安堵のため息をついている。
「えとえと、渚さんは何してるんですか?」
「ん? ちょっと夏休みの宿題でね」
「た、大変ですね」
「ふふ、そんなことないよー」
「ん? ちょっと夏休みの宿題でね」
「た、大変ですね」
「ふふ、そんなことないよー」
なーんて、抱きついた姿勢のまま会話を交わす二人。
なんというか、こっちが恥ずかしくなってくる。
なんというか、こっちが恥ずかしくなってくる。
「え、えと、ところで渚さん、いつまでこうしてるんです、か?」
あうー、と顔を赤くしながら言うウインドさん。
そんな顔してたら、またいじわるされちゃいそうだな。
そんな顔してたら、またいじわるされちゃいそうだな。
「ん? 嫌、かな?」
ほらやっぱり。
「えと、そういうコトではなくてその、ほ、ほら! トウマ君も見てますし!」
「ふみゅ。トウマ君もまざる?」
「遠慮しとく」
「ふみゅ。トウマ君もまざる?」
「遠慮しとく」
これ以上、意味不明な状況にしてたまるか。
「むー、トウマ君はウインドちゃんとくっつくのなんて嫌だってー」
「え……」
「なんでそうなるの……」
「え……」
「なんでそうなるの……」
というか、なんでウインドさんも傷ついたような顔するかな。悪いこと言った気分になるじゃんか。
「あは、冗談冗談。
よっし、これ以上二人のジャマしても悪いから、そろそろ行こっかな」
「別にジャマとかでは、ないけど」
「で、ですですっ」
「そ? でもまぁ、まだやることあるしねー。
ていうかあれ? トウマ君、マリちゃんは一緒じゃないの?」
「さっきまで一緒だった。多分今は……」
よっし、これ以上二人のジャマしても悪いから、そろそろ行こっかな」
「別にジャマとかでは、ないけど」
「で、ですですっ」
「そ? でもまぁ、まだやることあるしねー。
ていうかあれ? トウマ君、マリちゃんは一緒じゃないの?」
「さっきまで一緒だった。多分今は……」
と、俺はマリが居るであろう場所を告げる。
「ん、なるほどなるほど。
――そっか、そのテもあったか。よし、私もいってみよー」
「?」
――そっか、そのテもあったか。よし、私もいってみよー」
「?」
なんだかよくわからないことを呟く渚さん。
「それじゃ、二人とも、またね。
よし、行こうシュネーちゃん」
「あ、はいです」
「「ええっ!?」」
よし、行こうシュネーちゃん」
「あ、はいです」
「「ええっ!?」」
俺とウインドさんの驚いた声が見事ハモる。居たのかシュネーさん。
驚く俺たち二人をよそに、渚さんとウインドさんは行ってしまった。
驚く俺たち二人をよそに、渚さんとウインドさんは行ってしまった。
「びっくりした。いつから居たんだろ、シュネーさん」
「あ、あはは、そだね。
……ね、えと、トウマ君」
「ん?」
「あ、あはは、そだね。
……ね、えと、トウマ君」
「ん?」
なにやら恥ずかしそうにこちらを見つめるウインドさん。
……その仕草に、思わずちょっと目をそらしてしまう。
……その仕草に、思わずちょっと目をそらしてしまう。
「その、私とくっつくの、嫌、かな」
「なんでその話を引っ張るかな……」
「なんでその話を引っ張るかな……」
しかもこのタイミングで。
「あ、そ、そうだよね。ごめん、ね?
あはは、えと、私もう行くね?」
「ちょっと待った」
あはは、えと、私もう行くね?」
「ちょっと待った」
こちらに背を向けて行こうとするウインドさんを、俺は慌てて呼び止める。
それなんか絶対勘違いしてる。
それなんか絶対勘違いしてる。
「え?」
「別に、……その、嫌だったワケじゃ、ないよ。
単に、恥ずかしかった、だけ」
「別に、……その、嫌だったワケじゃ、ないよ。
単に、恥ずかしかった、だけ」
そもそもくっつく意味がわからなかったし。
「そ、そうなんだ?」
「うん。んっと、ウインドさんのことは、キライじゃ、ないし」
「は、はぅ……」
「うん。んっと、ウインドさんのことは、キライじゃ、ないし」
「は、はぅ……」
なんていって、恥ずかしそうに俯くウインドさん。
というか俺も恥ずかしい。多分、顔、赤くなっているだろうな。
というか俺も恥ずかしい。多分、顔、赤くなっているだろうな。
「……」
「………」
「………」
なんとなく沈黙してしまう俺たち。
まあ、よくあることではあるんだけど、今このタイミングの沈黙はすげー恥ずかしい。
えぇと、話題話題――
と、そうだ。
まあ、よくあることではあるんだけど、今このタイミングの沈黙はすげー恥ずかしい。
えぇと、話題話題――
と、そうだ。
「図書館」
「ふぇ?」
「行くんでしょ?」
「あ、うん」
「宿題で思い出したん、だけど。読書感想文、まだ本読んでないんだよね」
「うん?」
「それでさ、できればお勧めの本とか、教えてほしいん、だけど。
ついてっても、いい、かな?」
「ふぇ?」
「行くんでしょ?」
「あ、うん」
「宿題で思い出したん、だけど。読書感想文、まだ本読んでないんだよね」
「うん?」
「それでさ、できればお勧めの本とか、教えてほしいん、だけど。
ついてっても、いい、かな?」
俺がそういうと、ウインドさんは、一瞬きょとんとした後、
「うんっ、いいよ」
なんて、笑顔で言った。
◇◆◇◆
夏休みのとある日。
私は飼育係のお仕事で学校に来ていました。
エサやりも終わったので、私はとある人に会いに、正面グラウンドのすみっこにやってきました。
私は飼育係のお仕事で学校に来ていました。
エサやりも終わったので、私はとある人に会いに、正面グラウンドのすみっこにやってきました。
「ん、マリか」
「えへへ、こんにちは、オルアさん」
「えへへ、こんにちは、オルアさん」
オルアさんは、この学園の番犬……じゃ、なくて、番狼さんです。
学園を見回ったり、時々用務員さんのお手伝いをしているのも見かけます。
小等部が山に遠足とかに行くときには、ついていって引率のお手伝いをしていることもあります。
学園を見回ったり、時々用務員さんのお手伝いをしているのも見かけます。
小等部が山に遠足とかに行くときには、ついていって引率のお手伝いをしていることもあります。
「こんにちは、だ。今日も飼育係の仕事か?」
「はい! もうエサあげてきましたー」
「暑いのにいつもご苦労様だ。
ん、今日はトウマは一緒ではないのか」
「あ、はい。エサをやる所までは一緒だったんですけど、その後ちょっと――」
「はい! もうエサあげてきましたー」
「暑いのにいつもご苦労様だ。
ん、今日はトウマは一緒ではないのか」
「あ、はい。エサをやる所までは一緒だったんですけど、その後ちょっと――」
と、一瞬さっきの二人の様子を思い出して、思い出し笑いをしそうになってる間に、
「――知り合いに会ったので、気を利かせて二人っきりにしてきた、という所か」
なんて、台詞を先取りされちゃいました。
オルアさんは、どうやら人が考えていることとかを読めちゃうようです。
いつも、私はそれでびっくりさせられちゃいます。
オルアさんは、どうやら人が考えていることとかを読めちゃうようです。
いつも、私はそれでびっくりさせられちゃいます。
「えへへ、大当たりです。どうしてわかったんですかー?」
「それは――」
「それは――」
と、オルアさんが口を開いたところで、私はふと思いついて、すかさず、
「『そういう匂いがしたからだ』、ですかー?」
なんて、オルアさんの口調を真似して言いました。
「……む」
大当たりだったらしく、オルアさんは眉を寄せて、言葉を詰まらせました。
「えへへー、いっつも私が考えを読まれてばっかりなので、仕返しですよー」
「……やれやれ、一本とられたな」
「……やれやれ、一本とられたな」
なんて、オルアさんは楽しそうに笑います。ふふー、大成功ー。
それから、私達はお話をします。
どっちかというと、私が話をして、オルアさんがそれを聞いてくれる、という感じなのですが。
それから、私達はお話をします。
どっちかというと、私が話をして、オルアさんがそれを聞いてくれる、という感じなのですが。
「そういえばですね、今日の朝ラジオ体操で――」
「ふむ、それは――」
「ふむ、それは――」
けど、聞くばかりではなく、私の知らないことを教えてくれたり、アドバイスをしてくれます。
なので、私はオルアさんとお話をするのが大好きで、オルアさんのことも大好きです。
なので、私はオルアさんとお話をするのが大好きで、オルアさんのことも大好きです。
「……」
「? どうかしたんですか?」
「いや―― なんでもない」
「? どうかしたんですか?」
「いや―― なんでもない」
どーしたんでしょうか?
げふんげふん、となぜか咳き込むオルアさんを見ながら、心の中ではてなを浮かべていたとき、後ろから声がしました。
げふんげふん、となぜか咳き込むオルアさんを見ながら、心の中ではてなを浮かべていたとき、後ろから声がしました。
「マリちゃんみーっけ」
「ふぇ? あ、こんにちは!」
「ふぇ? あ、こんにちは!」
その声に振り返ると、そこには渚さんとシュネーさんが居ました。
渚さんとシュネーさんはお姉ちゃんのクラスメイトで、特に渚さんのほうはお姉ちゃんと仲がよく、時々うちに遊びにきたりします。
このお二人はとっても仲良しで、よく一緒に居るところを、学園内で見かけます。
渚さんとシュネーさんはお姉ちゃんのクラスメイトで、特に渚さんのほうはお姉ちゃんと仲がよく、時々うちに遊びにきたりします。
このお二人はとっても仲良しで、よく一緒に居るところを、学園内で見かけます。
「渚にシュネーか。こんにちは、だ」
「うん、オルアさんもこんにちはー」
「こんにちはです」
「うん、オルアさんもこんにちはー」
「こんにちはです」
お二人は確か部活とかには入ってなかったと思います。夏休みの学校で、何してるのでしょう?
聞いてみると、渚さんは、イミありげな笑みで、
聞いてみると、渚さんは、イミありげな笑みで、
「ん? ふふ、ちょっとね。夏休みの宿題でー」
なんて答えてくれました。
「……ふむ、『宿題』、か」
そう呟いたオルアさんはなんだか呆れた感じです。多分、渚さんの考えを読んだんでしょう。
その反応に、渚さんはくすっと笑い、シュネーさんは、あはは、という感じで苦笑しています。
むむ、私も気になります。
その反応に、渚さんはくすっと笑い、シュネーさんは、あはは、という感じで苦笑しています。
むむ、私も気になります。
「ふふー、オルアさんは察しがよくて助かります!」
「どういうコトでしょーか?」
「まぁ簡単にいうとねー、ちょっとばかし抱きつかせて欲しいのだー」
「抱きつか―― ふぇ!?」
「……」
「どういうコトでしょーか?」
「まぁ簡単にいうとねー、ちょっとばかし抱きつかせて欲しいのだー」
「抱きつか―― ふぇ!?」
「……」
びっくりする私の隣で、オルアさんはため息をひとつ。
「我は構わぬが、マリのほうはやめておいてやれ」
「んみゅ。……うーん、まいっか、私もあかりちゃんパパはちょっぴり怖いしー」
「?」
「んみゅ。……うーん、まいっか、私もあかりちゃんパパはちょっぴり怖いしー」
「?」
お父さんが何の関係があるのでしょうか?
「では、遠慮なくー」
そういうと、渚さんはオルアさんにもふっと抱きつきました。
む、むむー。うらやましいです。
む、むむー。うらやましいです。
「わはー、もふもふー」
なんて言いながら、オルアさんのやわらかそうな毛をもふもふしています。
あうー、いいなぁ……
あうー、いいなぁ……
「……。
もうそろそろいいのではないか?」
「うぃうぃー」
もうそろそろいいのではないか?」
「うぃうぃー」
そういって、渚さんはオルアさんから離れ、シュネーさんから受け取ったノートになにやら書き込んでいます。
あれが「宿題」なのでしょうか?
あれが「宿題」なのでしょうか?
「ご協力ありがとうございましたー。
それではー! マリちゃんもばいばーい」
「あ、はい、さようなら」
「さらばだ」
それではー! マリちゃんもばいばーい」
「あ、はい、さようなら」
「さらばだ」
お二人は挨拶をすると、またどこかへ行ってしまいました。
「えと、結局渚さんの宿題ってなんだったのですか?」
「……気にするな。それよりマリ」
「……気にするな。それよりマリ」
やれやれ、なんていいながら質問をはぐらかした後、こちらに視線を向けるオルアさん。
「はい?」
なんだろうと思って、聞き返すと、
「お前も抱きつきたければ、構わぬが?」
なんて、言いました。
「……え、ええ!?」
私はびっくりです。た、確かにうらやましいなー、と思っていましたが……!
「って、あ、もしかして考えてるコト――」
「わざわざそんなことをしなくても、顔に書いてあったぞ」
「わざわざそんなことをしなくても、顔に書いてあったぞ」
くっく、とそう言ってオルアさんは笑います。
あう、と私は恥ずかしくなって、ちょっと俯きます。うぅー、きっと顔、赤くなってるー……
あう、と私は恥ずかしくなって、ちょっと俯きます。うぅー、きっと顔、赤くなってるー……
「どうするのだ?」
ちょっと意地悪に笑って、オルアさんはこちらを見上げてきます。
「……うー」
私はしばらく悩んだ後、結局ゆうわくに耐えられず、オルアさんのもふもふに飛び込んでいくのでした。
◇◆◇◆
夏休みのとある日。
「うん、じゃあ15分休憩。
しっかり水分とっておくんだぞ」
しっかり水分とっておくんだぞ」
私は顧問をしている陸上部の生徒達にそう言って、ぱん、と手をたたいた。
部員達は雑談をかわしながら、それぞれの方法で休憩を始めた。
私はグラウンドを後にして、一度職員室に戻る。
部員達は雑談をかわしながら、それぞれの方法で休憩を始めた。
私はグラウンドを後にして、一度職員室に戻る。
「……ん?」
はずだったのだが、その途中で、なんだか聞き覚えのある声を聞いたので、そちらに近づいてみる。
「――ましたー。
――ではー! ――もばいばーい」
――ではー! ――もばいばーい」
聞き覚えのある声は、誰かに別れの挨拶をすると、これまた聞き覚えのある別の声と会話をしつつ、こちらに歩いてくる。
その姿が確認できる頃には、もう私にはその二人が誰なのか、すっかりわかっていた。
その姿が確認できる頃には、もう私にはその二人が誰なのか、すっかりわかっていた。
「うんうん、大分データが集まったねー」
「なんのデータだ?」
「それは勿論、自由研究の―― ってうひゃわ!? ブリッツ先生!?」
「なんのデータだ?」
「それは勿論、自由研究の―― ってうひゃわ!? ブリッツ先生!?」
大げさなまでに驚いたのは、高等部の柚木渚だ。
「おどろかすなです。こんな所で何してるんですか、ブリッツ?」
「私は陸上部の顧問だからな。部活だよ。
というか、学校では先生と呼べといっているだろう、シュネー」
「私は陸上部の顧問だからな。部活だよ。
というか、学校では先生と呼べといっているだろう、シュネー」
そして、渚と一緒に居る生徒といえば、シュネーに決まっている。
シュネーのほうとは幼馴染なため、先生と生徒というには微妙な感じだ。
そのシュネーと妙に仲がいいため、渚ともたまに学校外で会うこともある。
ちなみに、そういうときは大抵私まで学生に間違われるが、まぁ、悪い気はしない。
閑話休題。
シュネーのほうとは幼馴染なため、先生と生徒というには微妙な感じだ。
そのシュネーと妙に仲がいいため、渚ともたまに学校外で会うこともある。
ちなみに、そういうときは大抵私まで学生に間違われるが、まぁ、悪い気はしない。
閑話休題。
「自由研究か。どんな研究をしているんだ?」
「え? って、あ!」
「え? って、あ!」
私はびっくりしてる渚の手からひょいとノートを取り上げると、その中を見てみる。
「……まぁ、だいたいわかった。なんというか、渚らしい研究だな」
「あぅ……」
「あぅ……」
くす、と笑いながらノートを返すと、渚は顔を赤くして俯いてしまった。
どうもこの娘は、同い年や年下の女の子には妙に強いのだが、年上の女性には弱いらしい。
まあ、それも誰にでもというワケでもないのだが、私には「弱い」ようだ。
これもまた、悪い気はしない。というかつい意地悪でもしたくなる。
どうもこの娘は、同い年や年下の女の子には妙に強いのだが、年上の女性には弱いらしい。
まあ、それも誰にでもというワケでもないのだが、私には「弱い」ようだ。
これもまた、悪い気はしない。というかつい意地悪でもしたくなる。
「生徒がせっかく精力的に勉強をしているんだ、教員としては、協力しないとな」
「うにゃ?」
「ちょ、まさかブリッツ……!」
「うにゃ?」
「ちょ、まさかブリッツ……!」
うん、そのまさかだ。
心の中だけで返事をして、私はきょとんとしている渚に、抱きついた。
心の中だけで返事をして、私はきょとんとしている渚に、抱きついた。
「あ、あうー……」
渚は普段のアグレッシブさはどこへやら、私の腕の中で縮こまってしまっている。
ちょっとした意地悪のつもりだったが、この状態の渚は、妙にかわいいな……
ちょっとした意地悪のつもりだったが、この状態の渚は、妙にかわいいな……
「む、むむむー……」
シュネーがものすごくこちらをにらんでいるが、まぁ、それ込みで面白い。
とはいえ、本気で怒らせて暴れられても困るので、そこそこでやめておく。
とはいえ、本気で怒らせて暴れられても困るので、そこそこでやめておく。
「うん。こんなもんかな」
「あ……」
「どうだ、データになりそうか?」
「へ、あ、は、はい! どうもです!」
「……」
「あ……」
「どうだ、データになりそうか?」
「へ、あ、は、はい! どうもです!」
「……」
そう言ってぺこりと頭を下げる渚。こちらを睨むシュネー。
さて、そろそろ休憩時間も終わる頃だ。
さて、そろそろ休憩時間も終わる頃だ。
「それではな。自由研究以外の宿題も、しっかりやるんだぞ」
「はーい」
「はーい」
うん、予定とは違ったが、いい休憩になった。
◇◆◇◆
夏休みのとある日。
「あはー、おつかれさま。手伝ってくれてありがとね、シュネーちゃん」
「い、いえ! 全然です!」
「い、いえ! 全然です!」
今日一日、私は渚さんの自由研究のお手伝いをして、スタート地点である渚さんの家に戻ってきていました。
途中、晩御飯なんかも食べたせいで、外はもう暗くなっているです。
どんな自由研究かというと……
途中、晩御飯なんかも食べたせいで、外はもう暗くなっているです。
どんな自由研究かというと……
「うん、結構いっぱい集まったねー。
あとはこれをまとめて、ランキングにするだけー」
あとはこれをまとめて、ランキングにするだけー」
そう言う渚さんの手にあるノートには、いろんな人の名前と、その抱き心地が書き込まれています。
つまり、渚さんの自由研究とは、抱き心地ランキング、というわけです。
言い出した当初は先生に怒られないか心配しましたですが、
つまり、渚さんの自由研究とは、抱き心地ランキング、というわけです。
言い出した当初は先生に怒られないか心配しましたですが、
「えー? だってほら、採点するのってシルフィーナ先生だしー」
という一言で何か色々納得して、今に至っているです。
ただ、協力して欲しい、といわれ二つ返事でOKだしたのですが、今ではちょっと、後悔してるです。
ただ、協力して欲しい、といわれ二つ返事でOKだしたのですが、今ではちょっと、後悔してるです。
「あは、それにしても、みんなの反応、人それぞれで楽しかったー」
「そ、そうですね……」
「そ、そうですね……」
人それぞれ、当然、渚さんの反応も人それぞれ。
つまり、私は一日中、誰かに抱きつく渚さんの姿を延々見なければならなかったのです。
渚さんが楽しそうにしてる姿はとってもよかったのですが、私は複雑な気分になったです……
つまり、私は一日中、誰かに抱きつく渚さんの姿を延々見なければならなかったのです。
渚さんが楽しそうにしてる姿はとってもよかったのですが、私は複雑な気分になったです……
「よっし、それじゃ仕上げにはいろっかー」
「あ、はいです」
「あ、はいです」
一人へこむ私をよそに、渚さんは元気にそういいます。
私も、へこんでることを悟らせないように、作業をお手伝いしようと、顔をあげます。
私も、へこんでることを悟らせないように、作業をお手伝いしようと、顔をあげます。
「ふぇ?」
私はびっくりしました、机を挟んで向こう側に居たはずの渚さんが、私のすぐ傍に来ていたのですから。
「な、渚さん? 仕上げ、するですよね?」
「うん。そーだよー?」
「うん。そーだよー?」
くす、と笑いながら、渚さんはさらに私に接近して――
「あぅ……」
ふわりと、わ、私を、その、抱きしめて――
「仕上げはほら、やっぱりシュネーちゃんでしょう」
なんてことを、私の耳元でささやきます。
私はなにがなんだかわからず、されるがままです。
私はなにがなんだかわからず、されるがままです。
「はうー……」
「ふふ、やっぱり、シュネーちゃんの抱き心地が一番だねー。
今日はありがと。それと、ごめんね?」
「渚さん……
ぜ、全然です! 今こうしてるだけで、私は幸せです!」
「ほんと? あは、私も、シュネーちゃんとくっついてると幸せかなー」
「ふふ、やっぱり、シュネーちゃんの抱き心地が一番だねー。
今日はありがと。それと、ごめんね?」
「渚さん……
ぜ、全然です! 今こうしてるだけで、私は幸せです!」
「ほんと? あは、私も、シュネーちゃんとくっついてると幸せかなー」
そのコトバに、私はどきり、とします。
「えへへー、シュネーちゃん、だいすきー」
なんて囁かれて、私は体の芯が熱くなって、なんだか頭がぼーっとなって……
気づいたときには、抱きついてた渚さんを、押し倒していました。
気づいたときには、抱きついてた渚さんを、押し倒していました。
「ふにゃ? シュネーちゃん?」
渚さんは、私の腕の下で、こちらを見上げています。
「渚さん、私も大好きです……」
「えへ、ありがと。
でもその、シュネーちゃん? なんか目がマジというか……」
「えへ、ありがと。
でもその、シュネーちゃん? なんか目がマジというか……」
その姿は、とっても可愛らしくて――
「渚さんっ!!」
「う、うにゃああー!?」
「う、うにゃああー!?」
そうして、私たちの夏休みのとある日は、まだまだ続くのでした。