正義の挑戦
作者:あびす
~某月某日 ミュークト学園運動場 特設ステージ
「さぁ、いよいよ始まりました!」
「スポーツの秋ということで、今日は特別企画をお送りします!!」
運動場の一角に設けられた特設スタンドの最前線にある折りたたみ式の長テーブル。そこには3個のマイクと3人の学生がいた。
「名付けて、正義の挑戦! 彼の正義の力はどの程度なのか!! 実況は私、高等部の真田槍助と!」
「同じくハーゼ・バルクホルン! 解説は!」
「……諏訪加奈よ。早速だけど、一つ言っていい?」
「はいどうぞ!」
諏訪が深呼吸をした。まるで何かを吐き出す前の前触れのように。
「なんで生徒一人をイベントの主役に持ってくるの!? 軽くいじめじゃない!! 正義はアイドルじゃないわよ!?」
「大丈夫だ、諏訪君! 私は皆の正義を求める心さえあれば、いくらでも力を出すことができる!」
『いえー、せーいーぎーっ!!!』
スタンドを埋め尽くしている生徒達から巻き起こる正義コール。正義はそれに応えるかのように、拳を高く握り挙げた。
「なお、不慮の事態に備えるため、保健のコンドル先生と、保健委員のセイカさんにお越しいただいております」
「保健じゃなくて養護な」
「せ、正義先輩、大丈夫でしょうか……」
「まぁ何とかなるんじゃねーか? 正義だし。つーか、ぶっちゃけめんどい」
コンドルがあくびをしながら呟いた。
「ちょっとそれ、保健の先生として言っちゃいけない一言じゃない!?」
「だから養護な」
「さあ、時間も来ていますし、早速第一種目を行いたいと思います!」
「なお、種目は正義に「心・技・体」の中から選んでもらうことになってます」
「さぁ、正義はどのような種目を選ぶのか!」
「では……『技』の種目を選ばせてもらおう!」
「スポーツの秋ということで、今日は特別企画をお送りします!!」
運動場の一角に設けられた特設スタンドの最前線にある折りたたみ式の長テーブル。そこには3個のマイクと3人の学生がいた。
「名付けて、正義の挑戦! 彼の正義の力はどの程度なのか!! 実況は私、高等部の真田槍助と!」
「同じくハーゼ・バルクホルン! 解説は!」
「……諏訪加奈よ。早速だけど、一つ言っていい?」
「はいどうぞ!」
諏訪が深呼吸をした。まるで何かを吐き出す前の前触れのように。
「なんで生徒一人をイベントの主役に持ってくるの!? 軽くいじめじゃない!! 正義はアイドルじゃないわよ!?」
「大丈夫だ、諏訪君! 私は皆の正義を求める心さえあれば、いくらでも力を出すことができる!」
『いえー、せーいーぎーっ!!!』
スタンドを埋め尽くしている生徒達から巻き起こる正義コール。正義はそれに応えるかのように、拳を高く握り挙げた。
「なお、不慮の事態に備えるため、保健のコンドル先生と、保健委員のセイカさんにお越しいただいております」
「保健じゃなくて養護な」
「せ、正義先輩、大丈夫でしょうか……」
「まぁ何とかなるんじゃねーか? 正義だし。つーか、ぶっちゃけめんどい」
コンドルがあくびをしながら呟いた。
「ちょっとそれ、保健の先生として言っちゃいけない一言じゃない!?」
「だから養護な」
「さあ、時間も来ていますし、早速第一種目を行いたいと思います!」
「なお、種目は正義に「心・技・体」の中から選んでもらうことになってます」
「さぁ、正義はどのような種目を選ぶのか!」
「では……『技』の種目を選ばせてもらおう!」
~第一種目・技
「それでは、ルール説明を行います!」
「ルールは簡単、ピッチングマシンから打ち出される1000球の野球ボールを打つ、それだけです!」
「面白い、正義技術(ジャスティス・テクニック)、見せてやろう!」
正義が意気揚々とバットを握る。その先には一台のピッチングマシン。
「準備はいいですかー!?」
「いつでも来い!」
「では、スタート!!」
ピッチングマシンからボールが投げ出される。急速は大体140キロ台後半といったところか。なかなかの速球である。
「うおおお!!! 正義猛打(ジャスティス・バッティング)!」
正義はそれをなんなく打ち返した。打球はライナーとなってフェンスに突き刺さる。
「おお、さすが正義!!」
それからも正義は次々とボールを打ち返していった。打球がスクリーンに届くたびに観客席から歓声が巻き起こる。
「正義先輩、凄いんですね……。ボクにはとてもできません」
「まぁ、腐っても正義だしな」
「身体能力高いのねぇ……」
大体200球ほどを打ったのだろうか。正義は依然疲れた様子を見せず、次々とホームランを量産している。
「正義、野球部に入るべきじゃないのかしら……」
「ではここらで難易度を上げていきましょう!」
「難易度?」
真田が机の上のボタンを押す。それと同時にピッチングマシンの左右にあった壁が倒れ、2台のピッチングマシンが姿を現す。それと同時にボールを投げ出した。合計3台のピッチングマシンが正義に向けてボールを投げている。
「ちょ、マシン増えてない!?」
いきなりのボール増加に驚く諏訪であったが、正義は何食わぬ様子でボールを打ち続けている。
「おーっと、正義、何ら変化なし! 流石の身体能力です!!」
「この勢いはいつまで続くのでしょう!!」
「な、何故か、急に、ボールの数が、増えたような!」
流石に違和感に気付いたのか、だんだんとボテボテのヒットも増えていく。クリーンヒットも皆無に近い。
「さぁ、600球を超えました! 正義も疲れてきたのか、スイングにもキレがありません!」
「ま、まだまだ! 正義の力がある限り、私は何度でも立ち上がる!」
「正義の気力はまだ尽きていないようです! では、最終レベルに移行しましょう!」
「最終レベル?」
ハーゼが机の上のボタンを押した。3台のピッチングマシンの両脇の壁が倒れ、さらに2台のピッチングマシンが姿を現した。これで合計5台のピッチングマシンが、正義に照準を合わせている。
「ちょ、何これ!? どう見てもいじめじゃない!?」
「な、なんだこの連射速度は!? しかーし!! 正義の力はこの程どっぱぁ!?」
正義の脇腹にボールが突き刺さった。デッドボールを受けて姿勢を崩し、倒れ込む正義に、何発ものボールが休むことなく襲い掛かる。その様子は、さながらマフィア映画のワンシーンのようだ。
「おーっと、正義ダウーーーンッ!!」
「この状態から巻き返せるかーーー!?」
「いや無理だろ」
「い、痛そうですね……」
やる気なさそうにメンソールをふかすコンドルと、心配そうに自分の両手を握って正義を見守るセイカ。
「ルールは簡単、ピッチングマシンから打ち出される1000球の野球ボールを打つ、それだけです!」
「面白い、正義技術(ジャスティス・テクニック)、見せてやろう!」
正義が意気揚々とバットを握る。その先には一台のピッチングマシン。
「準備はいいですかー!?」
「いつでも来い!」
「では、スタート!!」
ピッチングマシンからボールが投げ出される。急速は大体140キロ台後半といったところか。なかなかの速球である。
「うおおお!!! 正義猛打(ジャスティス・バッティング)!」
正義はそれをなんなく打ち返した。打球はライナーとなってフェンスに突き刺さる。
「おお、さすが正義!!」
それからも正義は次々とボールを打ち返していった。打球がスクリーンに届くたびに観客席から歓声が巻き起こる。
「正義先輩、凄いんですね……。ボクにはとてもできません」
「まぁ、腐っても正義だしな」
「身体能力高いのねぇ……」
大体200球ほどを打ったのだろうか。正義は依然疲れた様子を見せず、次々とホームランを量産している。
「正義、野球部に入るべきじゃないのかしら……」
「ではここらで難易度を上げていきましょう!」
「難易度?」
真田が机の上のボタンを押す。それと同時にピッチングマシンの左右にあった壁が倒れ、2台のピッチングマシンが姿を現す。それと同時にボールを投げ出した。合計3台のピッチングマシンが正義に向けてボールを投げている。
「ちょ、マシン増えてない!?」
いきなりのボール増加に驚く諏訪であったが、正義は何食わぬ様子でボールを打ち続けている。
「おーっと、正義、何ら変化なし! 流石の身体能力です!!」
「この勢いはいつまで続くのでしょう!!」
「な、何故か、急に、ボールの数が、増えたような!」
流石に違和感に気付いたのか、だんだんとボテボテのヒットも増えていく。クリーンヒットも皆無に近い。
「さぁ、600球を超えました! 正義も疲れてきたのか、スイングにもキレがありません!」
「ま、まだまだ! 正義の力がある限り、私は何度でも立ち上がる!」
「正義の気力はまだ尽きていないようです! では、最終レベルに移行しましょう!」
「最終レベル?」
ハーゼが机の上のボタンを押した。3台のピッチングマシンの両脇の壁が倒れ、さらに2台のピッチングマシンが姿を現した。これで合計5台のピッチングマシンが、正義に照準を合わせている。
「ちょ、何これ!? どう見てもいじめじゃない!?」
「な、なんだこの連射速度は!? しかーし!! 正義の力はこの程どっぱぁ!?」
正義の脇腹にボールが突き刺さった。デッドボールを受けて姿勢を崩し、倒れ込む正義に、何発ものボールが休むことなく襲い掛かる。その様子は、さながらマフィア映画のワンシーンのようだ。
「おーっと、正義ダウーーーンッ!!」
「この状態から巻き返せるかーーー!?」
「いや無理だろ」
「い、痛そうですね……」
やる気なさそうにメンソールをふかすコンドルと、心配そうに自分の両手を握って正義を見守るセイカ。
「「見ちゃいられねーぜ!!!」」
突如、観客席から二人、いや、二人だったものがグランドに飛び込む。
「ほ、骨君!!」
ジャージに身を包んだ二体の骨が、正義を守るかのようにバットを構える。
「ここは俺に任せて早く立ち直りな!」
「勘違いするな、お前を倒すのは俺たちなんだからな!」
「骨君……!」
突然の骨の乱入に、観客席から歓声が巻き起こった。正義の声は心なしか震えている。
「ちょ、そんなのアリ!?」
「うーん、まぁいいんじゃね?」
「面白いし」
「何でもありなのね、結局!? っていうか骨の台詞、どう聞いても嫌な予感しかしないんだけど!」
真田とハーゼがルールブックなのだろうか。この調子でこれからのことを考えると、胃が痛くなりそうな諏訪であった。
「さぁこい!!」
「俺たちの渾身の一打……括目して見よ!!」
「「骨猛打!!!(ボーン・バッティング)」」
二体の骨がバットをフルスイングする。それはボールをジャストミートし――
「「ぬわーーーーーっ!!!!」」
「骨くーーーーーんっ!!!」
その衝撃で、骨はバラバラになった。乾いた音を立てて、バラバラになった骨と、彼らのバットが地面に落ちる。
その様子をまじまじと見た正義は、やがてゆっくりと立ち上がり、毅然とピッチングマシンを睨みつける。ピッチングマシンは空気を読んで射撃を中止していた。
「……君達の願いは受け取った!!!!!」
正義はおもむろに自分を囲むように骨を地面に突き刺し、そのうちの一本を抜き取って、構える。ここでピッチングマシンからの射撃が再開された。
「さぁ来い!!! 骨君の魂と私の正義の心、この二つが合わされば……敵は無いッ!!! 超正義猛打!!!(ジャスティスアンドボーンソウル・バッティング)」
正義はそう叫ぶと、骨をフルスイングする。それはジャストミートし、見事な一打となった。
「感動の一打!! まさに正義と骨の友情といえるでしょう!」
「え、いや、これちょっと違うでしょ!? こういう場なら骨のバットを使うべきでしょ!」
しばらくそうしてバッティングをしていた正義だったが、バッティングの衝撃に耐え切れなかったのか、文字通り骨が折れて、破片が飛び散った。
「む、だがしかし、まだ骨はある!!」
正義は折れた骨を投げ捨て、地面に刺していた別の骨を抜き取る。そしてその骨でバッティングを再開した。
「なにこの画!? どこの足利将軍よ!?」
「あー、足利義輝だな」
「あ、先生、詳しいですね」
「そして――」
が、所詮は5対1。物量に押し負け、正義の体に突き刺さるボールの数が増えていく。
「ぐはっ!? うごっ!?」
「あんまし役にゃ立たん」
正義が崩れ落ちた。しかし、ボールは容赦なく正義に命中していく。
「はいはーい、これ以上はめんどいことになるから中止ー」
「ドクターストップです! ドクターストップが入りました!!」
「このチャレンジは失敗となります! 残念ッ!!!」
ピッチングマシンが止まる。後には、うずくまる正義と骨の破片。正義の様子を見るべく、セイカはぽてぽてと小走りで彼のもとへと駆け寄った。
「これ、どこの戦場跡よ……」
いきなりの展開に頭を抱える諏訪であった。予想通り胃が痛くなってきた。後で胃薬でも飲んでこよう。
「ほ、骨君!!」
ジャージに身を包んだ二体の骨が、正義を守るかのようにバットを構える。
「ここは俺に任せて早く立ち直りな!」
「勘違いするな、お前を倒すのは俺たちなんだからな!」
「骨君……!」
突然の骨の乱入に、観客席から歓声が巻き起こった。正義の声は心なしか震えている。
「ちょ、そんなのアリ!?」
「うーん、まぁいいんじゃね?」
「面白いし」
「何でもありなのね、結局!? っていうか骨の台詞、どう聞いても嫌な予感しかしないんだけど!」
真田とハーゼがルールブックなのだろうか。この調子でこれからのことを考えると、胃が痛くなりそうな諏訪であった。
「さぁこい!!」
「俺たちの渾身の一打……括目して見よ!!」
「「骨猛打!!!(ボーン・バッティング)」」
二体の骨がバットをフルスイングする。それはボールをジャストミートし――
「「ぬわーーーーーっ!!!!」」
「骨くーーーーーんっ!!!」
その衝撃で、骨はバラバラになった。乾いた音を立てて、バラバラになった骨と、彼らのバットが地面に落ちる。
その様子をまじまじと見た正義は、やがてゆっくりと立ち上がり、毅然とピッチングマシンを睨みつける。ピッチングマシンは空気を読んで射撃を中止していた。
「……君達の願いは受け取った!!!!!」
正義はおもむろに自分を囲むように骨を地面に突き刺し、そのうちの一本を抜き取って、構える。ここでピッチングマシンからの射撃が再開された。
「さぁ来い!!! 骨君の魂と私の正義の心、この二つが合わされば……敵は無いッ!!! 超正義猛打!!!(ジャスティスアンドボーンソウル・バッティング)」
正義はそう叫ぶと、骨をフルスイングする。それはジャストミートし、見事な一打となった。
「感動の一打!! まさに正義と骨の友情といえるでしょう!」
「え、いや、これちょっと違うでしょ!? こういう場なら骨のバットを使うべきでしょ!」
しばらくそうしてバッティングをしていた正義だったが、バッティングの衝撃に耐え切れなかったのか、文字通り骨が折れて、破片が飛び散った。
「む、だがしかし、まだ骨はある!!」
正義は折れた骨を投げ捨て、地面に刺していた別の骨を抜き取る。そしてその骨でバッティングを再開した。
「なにこの画!? どこの足利将軍よ!?」
「あー、足利義輝だな」
「あ、先生、詳しいですね」
「そして――」
が、所詮は5対1。物量に押し負け、正義の体に突き刺さるボールの数が増えていく。
「ぐはっ!? うごっ!?」
「あんまし役にゃ立たん」
正義が崩れ落ちた。しかし、ボールは容赦なく正義に命中していく。
「はいはーい、これ以上はめんどいことになるから中止ー」
「ドクターストップです! ドクターストップが入りました!!」
「このチャレンジは失敗となります! 残念ッ!!!」
ピッチングマシンが止まる。後には、うずくまる正義と骨の破片。正義の様子を見るべく、セイカはぽてぽてと小走りで彼のもとへと駆け寄った。
「これ、どこの戦場跡よ……」
いきなりの展開に頭を抱える諏訪であった。予想通り胃が痛くなってきた。後で胃薬でも飲んでこよう。
「さぁ、正義の具合もよくなったようです!」
「第二ステージに入りましょう!」
実況席にセイカが戻ってくるのを合図に、真田とハーゼが再びマイクを握る。グラウンドの正義は何食わぬ顔―ヘルメットで表情はわからないが―で立ち上がっていた。
「ん、ご苦労さん」
「いえ、ボクは何も……。正義先輩が頑丈というか……」
セイカは苦笑いを浮かべる。彼女が駆け寄るや否や、正義は立ち上がり、いつもどおりの調子になっていた。今なら前に先生から言われた「カートゥーン体質」というのがよくわかるなぁ、と実感するセイカであった。
「さぁ、正義は何の種目を選ぶのか!?」
「正義を果たす上で最も大事なのは、体!! 健康な体でなければ何もできない!! 私は風の子、正義の子!!」
「よく意味がわかりませんがー、体、ということですね?」
「そのとおりだ! ハーゼ君、まだまだ正義の修行が足らんな!」
「いや、別にわかんなくていいし!?」
「第二ステージに入りましょう!」
実況席にセイカが戻ってくるのを合図に、真田とハーゼが再びマイクを握る。グラウンドの正義は何食わぬ顔―ヘルメットで表情はわからないが―で立ち上がっていた。
「ん、ご苦労さん」
「いえ、ボクは何も……。正義先輩が頑丈というか……」
セイカは苦笑いを浮かべる。彼女が駆け寄るや否や、正義は立ち上がり、いつもどおりの調子になっていた。今なら前に先生から言われた「カートゥーン体質」というのがよくわかるなぁ、と実感するセイカであった。
「さぁ、正義は何の種目を選ぶのか!?」
「正義を果たす上で最も大事なのは、体!! 健康な体でなければ何もできない!! 私は風の子、正義の子!!」
「よく意味がわかりませんがー、体、ということですね?」
「そのとおりだ! ハーゼ君、まだまだ正義の修行が足らんな!」
「いや、別にわかんなくていいし!?」
~第二種目・体
「第二種目の体、これもルールは簡単です! とある人に腕相撲で勝負してください!」
「なるほど! 私の正義を願う心は力につながる! さぁこい!」
いつの間にか用意された腕相撲用のテーブルに意気揚々と座る正義。その前に現れたのは――
「ぶぁーっはっはっはっはっ!! 話は聞かせてもらったぞ、正義君っ!!」
「体育の、稀石刀那先生です!!」
「いやナシでしょ!? 絶対無理ゲーじゃないの!?」
刀那がどっかりと正義の向かいに座る。戦隊物のヒーローのような格好をした正義と、白い胴着を着たガチガチの体格の刀那。傍から見ていればとてもシュールな絵である。
「審判は同じく体育のレッドアイ先生に務めていただきます」
「よしおめーら、準備はいーか?」
「いつでも来い!」
「楽しませてもらおうか、正義君!」
「レディー……ゴーッ!」
レッドアイの手が放されると同時に、握り合った二人の手に力がこもる。二人の格好を覗けば、普通の腕相撲、といった光景だ。
「むう……」
「どうした正義君、その程度か!」
正義は腕に力を込めているようだが、刀那の手は一向に動こうとしない。
「おーっと、実力は伯仲しているようです!」
「これは好勝負の予感ですね!」
「普通ねぇ……。何かありそうな気がしたんだけど」
とはいえ、何事もなく普通に終わってくれたほうが疲れなくていいのだが。諏訪は少しホッとした。
「……仕方あるまい! 正義強力!!(ジャスティス・パワーアップ)」
正義の叫びとともに、彼のコスチュームが変形していく。体の熱を逃がすかのように、ヘルメットやボディアーマーのダクトが開いた。そして、力の均衡が崩れていく。
「むうっ!! そうこなくてはな!!!」
正義の突然のパワーアップにも動じず、刀那はその手に込める力を強くする。崩れた均衡はすぐに回復した。
先程のバッティングとは打って変わっての真面目な光景だ。観客席の歓声はさらに高くなる。
「くっ……!」
正義の声は苦しそうだ。もはや正義も限界か。誰もがそう思ったとき――
「Justice!!! Justice!!!!! Uhhhh……Juuustiiiiice!!!!!!!」
正義の叫び。それとともに彼の背中からウイングが展開され、体の各所に開いたダクトから、スーツ内の熱気を放出するかのように蒸気が洩れた。
「世界中の正義の心を受け取った!! 正義超力!!!!(ジャスティス・オブ・ワールドパワー)」
正義の体が金色に輝きだすとともにオーラが発せられ、刀那の腕をしだいに倒していく。
「体の色まで変わってるじゃない!! 何処の宇宙人よ!?」
「む、むう……っ!!」
今回の腕相撲で初めて、刀那の苦しそうな声が漏れた。表情も苦悶に歪んでいる。彼のこんな表情は、この場に居る誰もが始めて見る光景だ。
そして、刀那の腕が倒れようとした時――
「おーっと、稀石先生、ついにダウンかーーーっ!?」
「……いや待て、正義の様子が……」
今まで正義の周囲にみなぎっていたオーラは消えて、彼の体色は通常のものに戻っていた。そして、体からは異様なほどの煙が出ている。
「彼に一体何が起こったのでしょうか!?」
「エネルギー切れとかじゃない? 凄く短い時間しかなかったけど」
諏訪の推測どおり、正義の上半身は上下に激しく揺れていた。息が上がっているようである。
「むううんっ!!!」
「ぐわーーーーっ!!!」
そして、その隙を刀那が見逃すはずもなかった。腕に一気に力を込め、勝負をつける。
正義の叫びとともに、彼の腕が机を貫いた。
「勝負あり! 正義、このチャレンジも失敗となりました!」
「しかし、一進一退の好勝負だったといえるでしょう! 皆様、盛大な拍手をお願いします!」
「机壊れるって、どれぐらいの力だったのよ……」
呆れる諏訪を尻目に、会場の正義と刀那に拍手が注がれる。それをBGMに、二人の漢は熱い握手を交わすのだった。
「なるほど! 私の正義を願う心は力につながる! さぁこい!」
いつの間にか用意された腕相撲用のテーブルに意気揚々と座る正義。その前に現れたのは――
「ぶぁーっはっはっはっはっ!! 話は聞かせてもらったぞ、正義君っ!!」
「体育の、稀石刀那先生です!!」
「いやナシでしょ!? 絶対無理ゲーじゃないの!?」
刀那がどっかりと正義の向かいに座る。戦隊物のヒーローのような格好をした正義と、白い胴着を着たガチガチの体格の刀那。傍から見ていればとてもシュールな絵である。
「審判は同じく体育のレッドアイ先生に務めていただきます」
「よしおめーら、準備はいーか?」
「いつでも来い!」
「楽しませてもらおうか、正義君!」
「レディー……ゴーッ!」
レッドアイの手が放されると同時に、握り合った二人の手に力がこもる。二人の格好を覗けば、普通の腕相撲、といった光景だ。
「むう……」
「どうした正義君、その程度か!」
正義は腕に力を込めているようだが、刀那の手は一向に動こうとしない。
「おーっと、実力は伯仲しているようです!」
「これは好勝負の予感ですね!」
「普通ねぇ……。何かありそうな気がしたんだけど」
とはいえ、何事もなく普通に終わってくれたほうが疲れなくていいのだが。諏訪は少しホッとした。
「……仕方あるまい! 正義強力!!(ジャスティス・パワーアップ)」
正義の叫びとともに、彼のコスチュームが変形していく。体の熱を逃がすかのように、ヘルメットやボディアーマーのダクトが開いた。そして、力の均衡が崩れていく。
「むうっ!! そうこなくてはな!!!」
正義の突然のパワーアップにも動じず、刀那はその手に込める力を強くする。崩れた均衡はすぐに回復した。
先程のバッティングとは打って変わっての真面目な光景だ。観客席の歓声はさらに高くなる。
「くっ……!」
正義の声は苦しそうだ。もはや正義も限界か。誰もがそう思ったとき――
「Justice!!! Justice!!!!! Uhhhh……Juuustiiiiice!!!!!!!」
正義の叫び。それとともに彼の背中からウイングが展開され、体の各所に開いたダクトから、スーツ内の熱気を放出するかのように蒸気が洩れた。
「世界中の正義の心を受け取った!! 正義超力!!!!(ジャスティス・オブ・ワールドパワー)」
正義の体が金色に輝きだすとともにオーラが発せられ、刀那の腕をしだいに倒していく。
「体の色まで変わってるじゃない!! 何処の宇宙人よ!?」
「む、むう……っ!!」
今回の腕相撲で初めて、刀那の苦しそうな声が漏れた。表情も苦悶に歪んでいる。彼のこんな表情は、この場に居る誰もが始めて見る光景だ。
そして、刀那の腕が倒れようとした時――
「おーっと、稀石先生、ついにダウンかーーーっ!?」
「……いや待て、正義の様子が……」
今まで正義の周囲にみなぎっていたオーラは消えて、彼の体色は通常のものに戻っていた。そして、体からは異様なほどの煙が出ている。
「彼に一体何が起こったのでしょうか!?」
「エネルギー切れとかじゃない? 凄く短い時間しかなかったけど」
諏訪の推測どおり、正義の上半身は上下に激しく揺れていた。息が上がっているようである。
「むううんっ!!!」
「ぐわーーーーっ!!!」
そして、その隙を刀那が見逃すはずもなかった。腕に一気に力を込め、勝負をつける。
正義の叫びとともに、彼の腕が机を貫いた。
「勝負あり! 正義、このチャレンジも失敗となりました!」
「しかし、一進一退の好勝負だったといえるでしょう! 皆様、盛大な拍手をお願いします!」
「机壊れるって、どれぐらいの力だったのよ……」
呆れる諏訪を尻目に、会場の正義と刀那に拍手が注がれる。それをBGMに、二人の漢は熱い握手を交わすのだった。
「さぁ、残るは1種目!」
「もはや聞くまでもありませんが、正義はどの種目を選ぶのでしょうか!?」
「正義の心は折れない心! 折れることのない心、それすなわち正義! 正義がある限り、私の心は絶対に折れやしない!」
「いや、今同じことを三回言ったよね!?」
「正義が選んだのは、『心』のようです!」
「果たして正義を待ち受ける試練とは!?」
「もはや聞くまでもありませんが、正義はどの種目を選ぶのでしょうか!?」
「正義の心は折れない心! 折れることのない心、それすなわち正義! 正義がある限り、私の心は絶対に折れやしない!」
「いや、今同じことを三回言ったよね!?」
「正義が選んだのは、『心』のようです!」
「果たして正義を待ち受ける試練とは!?」
~第三種目・心
この種目が始まる前にグラウンドに転がっていた、机の残骸やピッチングマシン、それに野球ボールなどといった不要物が全て片付けられ、グラウンドは再び何もないまっさらな状態になった。
「この種目は、とある人物と勝負してもらう。それだけです!」
「今までで最も簡単なルールと言えるでしょう!」
「なるほど。しかしそれのどこが心と……」
「相手選手の、入場です!」
ハーゼのコールとともに、選手入場口にスモークがたかれ、おどろおどろしい音楽がかかる。
「何これ、今までで一番派手じゃない!?」
「対戦相手の、骨さんです!!!」
スモークが晴れた先には、先ほどバラバラになったはずの骨コンビがいた。二体とも体色が普段の少々黄ばんだ白ではなく、漆黒となっている。
「俺達は滅ばん! 何度でも蘇るさ!」
「そう、俺達のことは……」
「「再生骨(リボーン)と呼んでくれ!」」
骨二体が観客席にアピールすると、観客席からはブーイングが飛ぶ。
「リボーン……まさか!」
「どうした、ハーゼ?」
「まさか、再生(リボーン)と、骨(ボーン)をかけてるんじゃ……」
「なるほど……! そいつぁあうめぇや……!」
「いや、全然うまくないわよ!」
なにやら二人で勝手に驚愕しているハーゼと真田をよそに、正義と骨は睨み合っていた。
「骨君……なぜだ……!」
「これが試練の内容さ。お前に正義があるのなら!」
「同志の俺達すらも倒せるはずさッ!」
言い終わると同時に、骨達は地面を蹴り、正義に詰め寄った。
「「猛骨強襲拳(ボーン・パンチ)!!!!!」」
二体の拳が正義の足下を抉る。それによって生じた猛烈な土煙が正義の視界を遮った。
「くっ、どこから……!?」
「「双骨脚(ツイン・ボーン・ライジングキック)!!!」」
「ぐあああああっ!!!」
二体の骨が、左右から正義を蹴り上げた。その蹴りによって宙に浮いた正義に、骨達は容赦なく追撃を加える。
「「双骨落(ツイン・ボーン・サンセット)!!!」」
左右からの強烈な踵落としで、正義は地面に激突する。その衝撃は観客席を大いに揺らした。
「ぐう……」
よろよろと起き上がる正義の前に、骨が悠然と着地する。
「そっちがその気なら、仕方ないッ!!」
正義の右手が銃となり、そこから弾丸が放たれた。正義の射線は骨を完全に捉えており、そして外しようのない距離である。
一発逆転か――。
誰もがそう思った時だった。
「骨回避(ボーン・イリュージョン)!!!」
正義の弾丸は骨をすり抜け、骨の背後の観客席に直撃した。爆発が起こり、観客席が崩れ去る。
「え、ちょ、今爆発したわよ! 絶対死人出たでしょ、これ!」
諏訪の絶叫をよそに、正義は銃を連射する。が、弾丸は全て骨をすり抜け、観客席を破壊するのみだった。
「無駄無駄無駄無駄ァーーーッ!!!」
「まんまとかかったな! この隙間だらけの体、銃弾をすり抜けさせるなど造作も無いッ!!」
骨の片割れが、正義に飛びかかった。正義は再び、銃を構える。
「馬鹿の一つ覚えかッ!! その程度だったか、正義!!」
骨はからからと顎を鳴らし、拳を構える。猛骨強襲拳(ボーン・パンチ)の構えだ。一度は不発に終わった技であるが、地面を抉るほどの威力を持つ。
「……かかったのはお前の方だッ!!」
正義が銃を下ろす。それと同時に、肩と脚についているバインダーが開き、背中に光輪が発生した。光輪が回転をし始めると同時に、正義の胸甲が左右に開いて、そこから物凄い光が照射された。
「ジャァァァァスティィィィス……フラァァァァァッシュッ!!!!!」
「ぐわあああああっ!?」
光が落ち着いたあとにうっすらと見える景色は、体中から熱を放出している正義と、下半身を丸々失った骨の姿であった。
「相棒ッ!?」
「次はお前だ! ジャスティスブレード!!」
正義が鉈のような剣を取り出す。それは骨も見たことのある、実剣と光線剣を一体化させた剣であった。
「一気に決めるッ!! ラストジャスティス・ブレイカーッ!!!」
ジャスティスブレードの鉈部分から火柱が立ち上り、ジャスティスブレードの一撃に重みを加える。
「ワンジャスティス!!」
その一撃は骨の右腕を吹き飛ばすと共に、骨を空中に舞い上げた。正義はそれを追って飛び上がり、もう一撃を加える。
「ツージャスティス!!!」
正義の斬り下ろしで、骨は地面に叩きつけられる。
「スリージャスティス!!!!」
もう一度の斬り下ろしは、骨の左腕をもぎ取った。
「ジャスティスゥゥゥ……アウトォォォッ!!!!!」
ジャスティスブレードに込められていた推進剤を全て燃やし尽くし、骨の肋骨を薙ぎ払う。激しい火柱を噴き上げていたジャスティスブレードは沈黙し、骨は力無く崩れ落ちた。
「……終わった」
正義が膝をつく。必殺技を連続で放ったせいか、体力を消耗しきっていた。
「「それはどうかな」」
骨の声。正義はうなだれていた顔を上げる。
「流石は我らの同志。その力、潰すのは惜しい」
「だが、貴様がいては、我らの計画は完遂できぬ」
「「仕留めさせてもらうッ!! 合体ッ!!!」」
辺りに散らばっていた骨の体が一箇所に集結し、何かを形作っていく。
獣のような四本の脚。そして、四本の腕。
伝説の怪物であるケンタウロスと、破壊の神である阿修羅が融合したかのような神々しく、そして禍々しい姿。
巨大な骨の怪物である。そう、4メートルは下らない大きさの。
『我が名は超絶破壊絶対神閃光灼熱紅煉鬼天上慈愛迷宮鋼鉄唯我独尊戦神骨(ファイナルボーン)』
「いや、サイズおかしいから!!!」
諏訪はようやくその言葉を絞り出すことができた。目の前で起こっていることは、ツッコミ慣れしている諏訪をも絶句させるような、信じ難い出来事であった。
「ファイナルボーン……」
『食らうが良い!! 骨式誉落(メガトン・ボーン・プレス)!!』
骨は正義を羽交い締めにすると、回転して空中に放り投げる。それを追いかけるかのように飛び上がり、正義の足の裏と、己の足の裏とを合わせ、地上へと落下していく。
「ぐっ、だが、お前の重さはさほどでは……」
『それはどうかな? 骨硬化(アイアンボーン)!!!』
地上への激突直前、骨は全身の骨を鉄へと変え、その衝撃力を格段に増加させた。
「ぐわあああっ!!!」
『これを食らって立ち上がれた者はいない』
骨は悠然と正義を見下ろす。正義のボディスーツはいたるところが破損しており、ヘルメットのバイザーにも蜘蛛の巣のようにヒビが入っている。
「なぜだ、なぜ、骨君のような人達が……」
『冥土の土産に教えてやろう。我らは骨界(ボーン・ワールド)から八百万の骨を引き連れ、この世界を征服するのだ!!!』
「何ッ!?」
『それを阻止できるのは正義、お前しかいない。だから我らはこのイベントに乗じて、お前を抹殺するのだ!!』
骨が四本の腕で、正義の首を絞めにかかる。
「うおおおおっ!! 私は、私は、正義のために……ッ!!」
正義の脳裏に、これまでのことが思い起こされる。
「この種目は、とある人物と勝負してもらう。それだけです!」
「今までで最も簡単なルールと言えるでしょう!」
「なるほど。しかしそれのどこが心と……」
「相手選手の、入場です!」
ハーゼのコールとともに、選手入場口にスモークがたかれ、おどろおどろしい音楽がかかる。
「何これ、今までで一番派手じゃない!?」
「対戦相手の、骨さんです!!!」
スモークが晴れた先には、先ほどバラバラになったはずの骨コンビがいた。二体とも体色が普段の少々黄ばんだ白ではなく、漆黒となっている。
「俺達は滅ばん! 何度でも蘇るさ!」
「そう、俺達のことは……」
「「再生骨(リボーン)と呼んでくれ!」」
骨二体が観客席にアピールすると、観客席からはブーイングが飛ぶ。
「リボーン……まさか!」
「どうした、ハーゼ?」
「まさか、再生(リボーン)と、骨(ボーン)をかけてるんじゃ……」
「なるほど……! そいつぁあうめぇや……!」
「いや、全然うまくないわよ!」
なにやら二人で勝手に驚愕しているハーゼと真田をよそに、正義と骨は睨み合っていた。
「骨君……なぜだ……!」
「これが試練の内容さ。お前に正義があるのなら!」
「同志の俺達すらも倒せるはずさッ!」
言い終わると同時に、骨達は地面を蹴り、正義に詰め寄った。
「「猛骨強襲拳(ボーン・パンチ)!!!!!」」
二体の拳が正義の足下を抉る。それによって生じた猛烈な土煙が正義の視界を遮った。
「くっ、どこから……!?」
「「双骨脚(ツイン・ボーン・ライジングキック)!!!」」
「ぐあああああっ!!!」
二体の骨が、左右から正義を蹴り上げた。その蹴りによって宙に浮いた正義に、骨達は容赦なく追撃を加える。
「「双骨落(ツイン・ボーン・サンセット)!!!」」
左右からの強烈な踵落としで、正義は地面に激突する。その衝撃は観客席を大いに揺らした。
「ぐう……」
よろよろと起き上がる正義の前に、骨が悠然と着地する。
「そっちがその気なら、仕方ないッ!!」
正義の右手が銃となり、そこから弾丸が放たれた。正義の射線は骨を完全に捉えており、そして外しようのない距離である。
一発逆転か――。
誰もがそう思った時だった。
「骨回避(ボーン・イリュージョン)!!!」
正義の弾丸は骨をすり抜け、骨の背後の観客席に直撃した。爆発が起こり、観客席が崩れ去る。
「え、ちょ、今爆発したわよ! 絶対死人出たでしょ、これ!」
諏訪の絶叫をよそに、正義は銃を連射する。が、弾丸は全て骨をすり抜け、観客席を破壊するのみだった。
「無駄無駄無駄無駄ァーーーッ!!!」
「まんまとかかったな! この隙間だらけの体、銃弾をすり抜けさせるなど造作も無いッ!!」
骨の片割れが、正義に飛びかかった。正義は再び、銃を構える。
「馬鹿の一つ覚えかッ!! その程度だったか、正義!!」
骨はからからと顎を鳴らし、拳を構える。猛骨強襲拳(ボーン・パンチ)の構えだ。一度は不発に終わった技であるが、地面を抉るほどの威力を持つ。
「……かかったのはお前の方だッ!!」
正義が銃を下ろす。それと同時に、肩と脚についているバインダーが開き、背中に光輪が発生した。光輪が回転をし始めると同時に、正義の胸甲が左右に開いて、そこから物凄い光が照射された。
「ジャァァァァスティィィィス……フラァァァァァッシュッ!!!!!」
「ぐわあああああっ!?」
光が落ち着いたあとにうっすらと見える景色は、体中から熱を放出している正義と、下半身を丸々失った骨の姿であった。
「相棒ッ!?」
「次はお前だ! ジャスティスブレード!!」
正義が鉈のような剣を取り出す。それは骨も見たことのある、実剣と光線剣を一体化させた剣であった。
「一気に決めるッ!! ラストジャスティス・ブレイカーッ!!!」
ジャスティスブレードの鉈部分から火柱が立ち上り、ジャスティスブレードの一撃に重みを加える。
「ワンジャスティス!!」
その一撃は骨の右腕を吹き飛ばすと共に、骨を空中に舞い上げた。正義はそれを追って飛び上がり、もう一撃を加える。
「ツージャスティス!!!」
正義の斬り下ろしで、骨は地面に叩きつけられる。
「スリージャスティス!!!!」
もう一度の斬り下ろしは、骨の左腕をもぎ取った。
「ジャスティスゥゥゥ……アウトォォォッ!!!!!」
ジャスティスブレードに込められていた推進剤を全て燃やし尽くし、骨の肋骨を薙ぎ払う。激しい火柱を噴き上げていたジャスティスブレードは沈黙し、骨は力無く崩れ落ちた。
「……終わった」
正義が膝をつく。必殺技を連続で放ったせいか、体力を消耗しきっていた。
「「それはどうかな」」
骨の声。正義はうなだれていた顔を上げる。
「流石は我らの同志。その力、潰すのは惜しい」
「だが、貴様がいては、我らの計画は完遂できぬ」
「「仕留めさせてもらうッ!! 合体ッ!!!」」
辺りに散らばっていた骨の体が一箇所に集結し、何かを形作っていく。
獣のような四本の脚。そして、四本の腕。
伝説の怪物であるケンタウロスと、破壊の神である阿修羅が融合したかのような神々しく、そして禍々しい姿。
巨大な骨の怪物である。そう、4メートルは下らない大きさの。
『我が名は超絶破壊絶対神閃光灼熱紅煉鬼天上慈愛迷宮鋼鉄唯我独尊戦神骨(ファイナルボーン)』
「いや、サイズおかしいから!!!」
諏訪はようやくその言葉を絞り出すことができた。目の前で起こっていることは、ツッコミ慣れしている諏訪をも絶句させるような、信じ難い出来事であった。
「ファイナルボーン……」
『食らうが良い!! 骨式誉落(メガトン・ボーン・プレス)!!』
骨は正義を羽交い締めにすると、回転して空中に放り投げる。それを追いかけるかのように飛び上がり、正義の足の裏と、己の足の裏とを合わせ、地上へと落下していく。
「ぐっ、だが、お前の重さはさほどでは……」
『それはどうかな? 骨硬化(アイアンボーン)!!!』
地上への激突直前、骨は全身の骨を鉄へと変え、その衝撃力を格段に増加させた。
「ぐわあああっ!!!」
『これを食らって立ち上がれた者はいない』
骨は悠然と正義を見下ろす。正義のボディスーツはいたるところが破損しており、ヘルメットのバイザーにも蜘蛛の巣のようにヒビが入っている。
「なぜだ、なぜ、骨君のような人達が……」
『冥土の土産に教えてやろう。我らは骨界(ボーン・ワールド)から八百万の骨を引き連れ、この世界を征服するのだ!!!』
「何ッ!?」
『それを阻止できるのは正義、お前しかいない。だから我らはこのイベントに乗じて、お前を抹殺するのだ!!』
骨が四本の腕で、正義の首を絞めにかかる。
「うおおおおっ!! 私は、私は、正義のために……ッ!!」
正義の脳裏に、これまでのことが思い起こされる。
真田と共に正義を求める人々を助けて回ったこと。
校門で間違えて銃を発射してしまったこと。
遠足が中止になったこと。
科学博物館を友達と回ったこと。
そう、彼の守るべき正義は、どこでもない。
ここ、ミュークト学園なのだ。
ここ、ミュークト学園なのだ。
「うおおおおおっ!!!! ジャスティィィィスッ!!!!!」
正義の体が光輝き、その姿を変えていく。
破損していたボディスーツやヘルメットは修復され、肩のバインダーは6枚になる。正義はそれを大きく広げ、骨の手を振り解いた。
「私は正義の審判者、ジャッジメント・ジャスティスマン!!」
正義はそう叫び、ジャスティスブレードを構える。
『ふん、ジャッジメントだと? そんな小細工をしても我らには勝てん!』
「正義は初めから決まっているが、勝負はやってみなければわからん!」
『いいか、貴様の強さを百万パワーとすれば、我らは一千万パワーなのだぞ!』
「策はある!」
正義はもう一本、ジャスティスブレードを構える。
『な、二刀流だと!』
「百万パワー+百万パワーで二百万パワー!」
二本のジャスティスブレードから、先ほどまでとは比較にならないほどの火柱が噴き上がる。
「普段の二倍の推進剤を使うことで、二百万パワー×2の四百万パワー!!!」
そして、正義の背後に光輪が出現し、それが回転しだすとともに、体中のダクトが放熱のために開放される。
「普段の三倍の力を出すことで、四百万パワー×3の、千二百万パワー!!!!」
正義が動く。どうやらこの一撃に全てを賭けているらしい。
『くっ、だが、我らも普段の二倍耐えれば、一千万パワー×2の、二千万……』
「そして、いつもの十倍の正義を加えれば!!!!」
正義の体が金色に輝く。
「千二百万パワー×10の!!!!!」
『ぐおおおおおお!!!!!!』
「一億二千万パワーだァァァァッ!!!!!!」
正義の一撃が、骨に叩き込まれる。
「ラストジャスティスブレイカー・ジャッジメントッ!!!!!」
破損していたボディスーツやヘルメットは修復され、肩のバインダーは6枚になる。正義はそれを大きく広げ、骨の手を振り解いた。
「私は正義の審判者、ジャッジメント・ジャスティスマン!!」
正義はそう叫び、ジャスティスブレードを構える。
『ふん、ジャッジメントだと? そんな小細工をしても我らには勝てん!』
「正義は初めから決まっているが、勝負はやってみなければわからん!」
『いいか、貴様の強さを百万パワーとすれば、我らは一千万パワーなのだぞ!』
「策はある!」
正義はもう一本、ジャスティスブレードを構える。
『な、二刀流だと!』
「百万パワー+百万パワーで二百万パワー!」
二本のジャスティスブレードから、先ほどまでとは比較にならないほどの火柱が噴き上がる。
「普段の二倍の推進剤を使うことで、二百万パワー×2の四百万パワー!!!」
そして、正義の背後に光輪が出現し、それが回転しだすとともに、体中のダクトが放熱のために開放される。
「普段の三倍の力を出すことで、四百万パワー×3の、千二百万パワー!!!!」
正義が動く。どうやらこの一撃に全てを賭けているらしい。
『くっ、だが、我らも普段の二倍耐えれば、一千万パワー×2の、二千万……』
「そして、いつもの十倍の正義を加えれば!!!!」
正義の体が金色に輝く。
「千二百万パワー×10の!!!!!」
『ぐおおおおおお!!!!!!』
「一億二千万パワーだァァァァッ!!!!!!」
正義の一撃が、骨に叩き込まれる。
「ラストジャスティスブレイカー・ジャッジメントッ!!!!!」
その瞬間、正義は人類の歴史となった。
~エピローグ~
閃光がグラウンドを包んでから、少しの時間が流れた。
辺り一面は瓦礫と化しており、その中から正義が這い出てくる。
「終わった……」
彼の大天使を思い起こさせるボディスーツは、見る影もなく破損しており、骨との激戦を物語っていた。
「流石だな、同志……」
「その声は!!」
声のした方向に駆け寄ると、そこには頭蓋骨が二つ転がっていた。
「見事な正義の心、見せてもらったぜ……」
「な、まさか……」
「何を犠牲にしても、己の信じる正義を貫く……」
「ビリーブ・ユア・ジャスティス」
骨が少しだけ顎骨を鳴らした。笑っているのか、それとも震えなのか。
「……違う!」
「何?」
「私の正義は、全てを……全てを守る正義なのだッ!!」
正義はよろよろと立ち上がると、最後の力を振り絞って背中のバインダーを広げた。
「Justice!!!! Juctice!!!!! Uhhhh……Juuuustiiiice!!!!!!!!」
正義の叫びと共に、彼の足下から緑が蘇って―――
辺り一面は瓦礫と化しており、その中から正義が這い出てくる。
「終わった……」
彼の大天使を思い起こさせるボディスーツは、見る影もなく破損しており、骨との激戦を物語っていた。
「流石だな、同志……」
「その声は!!」
声のした方向に駆け寄ると、そこには頭蓋骨が二つ転がっていた。
「見事な正義の心、見せてもらったぜ……」
「な、まさか……」
「何を犠牲にしても、己の信じる正義を貫く……」
「ビリーブ・ユア・ジャスティス」
骨が少しだけ顎骨を鳴らした。笑っているのか、それとも震えなのか。
「……違う!」
「何?」
「私の正義は、全てを……全てを守る正義なのだッ!!」
正義はよろよろと立ち上がると、最後の力を振り絞って背中のバインダーを広げた。
「Justice!!!! Juctice!!!!! Uhhhh……Juuuustiiiice!!!!!!!!」
正義の叫びと共に、彼の足下から緑が蘇って―――
「なんて脚本で体育祭やりたがってるらしいんだが、ツッコミ入れてきてくれねーか?」
「お断りします」
保健室に胃薬をもらいに行っていた諏訪は、とても、とても良い笑顔を浮かべた。
「お断りします」
保健室に胃薬をもらいに行っていた諏訪は、とても、とても良い笑顔を浮かべた。
登場人物