晒し中
暗くなりかけの屋上から見る新宿は、本当に薄汚れてやんなってしまう。
屋上が青春の一部になるのは、人間より猿の多い地方の田舎くらいのものだ。
こんなスモッグまみれの空じゃ、一番星など、もちろん見えるはずもなく、
ただ赤が黒に変わっていく感慨も感動も何一つない空の移り変わりがあるだけ。
こうして一日が終わって、また明日が来て、その明日も終われば、明後日が。
そんな事の繰り返しで、人生は、成り立っていて、その延長に終わりがあること
を知ったのは、いつからだろう。
どんなに巨万の富を築いても、どんなに羨望の眼差しを受けたって、終わってし
まえば何も残らない。
きっと、人生の終わりは、祭りあとに近いんだろう。物寂しく、最後の花火の散
ったあと私は、正気でいられるかしら。
なんて、そんな不安は、慣れっていう便利でそれでいて残酷なツールで霧散する
のは、わかっているのだけれど。
ああ。
見逃した。
こんなステレオタイプな虚しさに苛まれる時間を与えてくれないくらい、夕陽は
、せっかちさん。
「自殺願望か」
「違うわよ」
と、私。ツンデレキャラを演じてみようと思う。
「何しに来たのよ」
「心配だったんだよ」
「え?ししし、心配されたって……」
やめた。
『一人』でこんな事やって何になるっていうんだ。
男がいる『つもり』の、立ち位置を眺める。
たしかにいない。暗闇のせいで少しぼやけた空間があるだけ。
ただ、夜風が吹いている。
季節は、いつだろうと思ってら、身震いした私の体が教えてくれた。
冬だ。
雪は、降るのかな。
いや、降らないな。
現実は、あまりに現実過ぎていると思う。
だから、ときどき嫌になる。
別に、人付き合いが苦手とかそういうのは、ない。ただ、特別な物が何一つなか
った。
無個性。そんな人は、世の中にたくさんいるはずなのだけれど、そんなことわか
っていたはずだったのだけど。
私は、自分が許せなくなった。
だから、必死に無個性であることを自分自身で許そうとした。
でも、無個性を肯定すれば、するほど世界は、どんどん色を無くしていった。
止まらない、それは、とまるどころか加速していって……
屋上に辿り着いたんだと思う。
美しさの欠片もない、無機質な東京の高層ビル群が輝くその一瞬だけが私を救っ
てくれる気がした。
気がした。気がしただけで、やっぱり救っては、くれないみたいだ。
やっぱり東京のビル群は、どうデコレートしても東京のビル群でしかない。
頭がおかしくなりそうになる。
本当に、どこまでいっても現実は、現実なんだ。
突然UFOに連れ去られることもないし、いきなり時空の波動で私が消え去ることも
ない。
何もかもある程度の想定の範囲内。はみ出す部分は、本当にごく僅か。
そのごく僅かも、本当にみみっちい。電車が一分二分遅れただの、その程度。
帰り道、唐突に旅に出たい、なんて思った。
何でもいい。私の世界をペイントしてくれる『何か』が欲しかった。
別にツラいとか、苦しいとか、そんな感情は、微塵もわかないけれど、例えるなら大根おろしかな。
私の表象的ではなくて、もっと奥深くにある知覚組織がすり減らされて、いつか消え去ってしまうんじゃないかっていう恐怖。
ああ、こうしている間にも私は、どんどんすり減っていく。
どこかへいこう。
でも、一瞬そう思ってから、お金のことが頭に過ぎった。
大丈夫。策ってのは、どこにだってあるもんだ。
パンツを売った。
生脱ぎ20000円。つくづく日本は、腐っていると思いつつも、その腐乱臭をまき散らす、欲望の権化高給サラリーマンに感謝をする。
彼に幸せな家庭は、あるのだろうか。家族の愛は、一方通行では、ないのだろうか。
売ってからそのパンツがどう使われるかを、考えると、きっと上手くいっていないに違いない。
それでも、働く彼らは何なんだ?わからないし、わかりたくもない。
彼らの世界に色は、あるのだろうか。
いや、そんなことは、関係ないのだろう。奴隷なのだ、彼らは。
働かなければいけない、そんなつまらない考えに縛り付けられた奴隷なのだ。
一方通行でしかない家族の愛のために、身を粉にするだなんて馬鹿みたいだ。
でも、馬鹿だけれど……ふと、父の顔が頭に浮かんだ。
そんな見返りのない行いに、彼らは、胸を張っている。
端からじゃわからない、芯を支えるそんな誇りを、彼らの中にたしかに感じる。
新幹線のきっぷを買おうとする足を止める。
スカートの中へと、手を入れる。
そこには、当然あるはずの白い布が当然のようになかった。
しっかりと直接伝わる陰毛の感触。それを確認してから、その真ん中を走る溝に指を這わせる。
一瞬電流のような甘酸っぱさが体中に流れて、顔を上げると顔を真っ赤にした私が、自動扉に写っていた。
まだまだ、子供だな、私も。
暗くなりかけの屋上から見る新宿は、本当に薄汚れてやんなってしまう。
屋上が青春の一部になるのは、人間より猿の多い地方の田舎くらいのものだ。
こんなスモッグまみれの空じゃ、一番星など、もちろん見えるはずもなく、
ただ赤が黒に変わっていく感慨も感動も何一つない空の移り変わりがあるだけ。
こうして一日が終わって、また明日が来て、その明日も終われば、明後日が。
そんな事の繰り返しで、人生は、成り立っていて、その延長に終わりがあること
を知ったのは、いつからだろう。
どんなに巨万の富を築いても、どんなに羨望の眼差しを受けたって、終わってし
まえば何も残らない。
きっと、人生の終わりは、祭りあとに近いんだろう。物寂しく、最後の花火の散
ったあと私は、正気でいられるかしら。
なんて、そんな不安は、慣れっていう便利でそれでいて残酷なツールで霧散する
のは、わかっているのだけれど。
ああ。
見逃した。
こんなステレオタイプな虚しさに苛まれる時間を与えてくれないくらい、夕陽は
、せっかちさん。
「自殺願望か」
「違うわよ」
と、私。ツンデレキャラを演じてみようと思う。
「何しに来たのよ」
「心配だったんだよ」
「え?ししし、心配されたって……」
やめた。
『一人』でこんな事やって何になるっていうんだ。
男がいる『つもり』の、立ち位置を眺める。
たしかにいない。暗闇のせいで少しぼやけた空間があるだけ。
ただ、夜風が吹いている。
季節は、いつだろうと思ってら、身震いした私の体が教えてくれた。
冬だ。
雪は、降るのかな。
いや、降らないな。
現実は、あまりに現実過ぎていると思う。
だから、ときどき嫌になる。
別に、人付き合いが苦手とかそういうのは、ない。ただ、特別な物が何一つなか
った。
無個性。そんな人は、世の中にたくさんいるはずなのだけれど、そんなことわか
っていたはずだったのだけど。
私は、自分が許せなくなった。
だから、必死に無個性であることを自分自身で許そうとした。
でも、無個性を肯定すれば、するほど世界は、どんどん色を無くしていった。
止まらない、それは、とまるどころか加速していって……
屋上に辿り着いたんだと思う。
美しさの欠片もない、無機質な東京の高層ビル群が輝くその一瞬だけが私を救っ
てくれる気がした。
気がした。気がしただけで、やっぱり救っては、くれないみたいだ。
やっぱり東京のビル群は、どうデコレートしても東京のビル群でしかない。
頭がおかしくなりそうになる。
本当に、どこまでいっても現実は、現実なんだ。
突然UFOに連れ去られることもないし、いきなり時空の波動で私が消え去ることも
ない。
何もかもある程度の想定の範囲内。はみ出す部分は、本当にごく僅か。
そのごく僅かも、本当にみみっちい。電車が一分二分遅れただの、その程度。
帰り道、唐突に旅に出たい、なんて思った。
何でもいい。私の世界をペイントしてくれる『何か』が欲しかった。
別にツラいとか、苦しいとか、そんな感情は、微塵もわかないけれど、例えるなら大根おろしかな。
私の表象的ではなくて、もっと奥深くにある知覚組織がすり減らされて、いつか消え去ってしまうんじゃないかっていう恐怖。
ああ、こうしている間にも私は、どんどんすり減っていく。
どこかへいこう。
でも、一瞬そう思ってから、お金のことが頭に過ぎった。
大丈夫。策ってのは、どこにだってあるもんだ。
パンツを売った。
生脱ぎ20000円。つくづく日本は、腐っていると思いつつも、その腐乱臭をまき散らす、欲望の権化高給サラリーマンに感謝をする。
彼に幸せな家庭は、あるのだろうか。家族の愛は、一方通行では、ないのだろうか。
売ってからそのパンツがどう使われるかを、考えると、きっと上手くいっていないに違いない。
それでも、働く彼らは何なんだ?わからないし、わかりたくもない。
彼らの世界に色は、あるのだろうか。
いや、そんなことは、関係ないのだろう。奴隷なのだ、彼らは。
働かなければいけない、そんなつまらない考えに縛り付けられた奴隷なのだ。
一方通行でしかない家族の愛のために、身を粉にするだなんて馬鹿みたいだ。
でも、馬鹿だけれど……ふと、父の顔が頭に浮かんだ。
そんな見返りのない行いに、彼らは、胸を張っている。
端からじゃわからない、芯を支えるそんな誇りを、彼らの中にたしかに感じる。
新幹線のきっぷを買おうとする足を止める。
スカートの中へと、手を入れる。
そこには、当然あるはずの白い布が当然のようになかった。
しっかりと直接伝わる陰毛の感触。それを確認してから、その真ん中を走る溝に指を這わせる。
一瞬電流のような甘酸っぱさが体中に流れて、顔を上げると顔を真っ赤にした私が、自動扉に写っていた。
まだまだ、子供だな、私も。