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電機プラグ01&02:無機
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vipac
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その町は一面瓦礫に埋もれてて、灰色の粉塵と煙で空も曇ってしまった。
たった一人のレイヴンによってその徹底的な破壊はもたらされた。
殆どの住民は、死んでしまった。
ACに直接撃たれて飛び散ってしまった訳ではないが、彼の放った榴弾によってビルが爆発したり、その崩れたビルの下敷きになったり、
あたしは死にたくないとの、住民同士の小競り合いが大きくなって、互いに殺しあったりで、大体死んだ。
そして、ぱっと見ではたった一人の少女が生き残ってた。
生き残った彼女は、ぼうっと、して、まだほのかに熱をもっている瓦礫の上にぺたんと座って、くすんだ空を片目で見上げていた。
見上げていた空からの、かすんだ太陽の光が突然遮られて、少女は、破壊をもたらしたレイヴンの乗った、ACを見た。
真っ黒に塗装されて、その上から、真っ赤な斑が、都市迷彩パターンでべたべたと塗られていてまるで血が飛び散って、くっついた様だった。
特徴的な潰れた頭、そして逆足。腕に持つは、バルカン砲。肩に担ぐは、軽量のキャノン砲に、まだ殺すかと追加弾層。
幼い子供には、その正確な種類は分からないが、つよい印象が心に刻み込まれた。
いつか必ず殺してくれると言う憎しみの深い谷は、子供の心には大きすぎて、その身体にまで浸透して、脳髄を侵し、その先の人生を狂わせ――て、
顔面の左半分はもうわたしのじゃあなくて機械に置き換わってり。獲物に、確実に、逃さぬ刃を突き立てる為に。
金属製のペットボトルのキャップの様な、おでこのセンサ。眼底に埋め込まれたソケット。耳にもソケット。
隠してなんかいない。誇りであり、証しだからだ。
ヤツを殺して、わたしが最強になる。わたしの中の最強に、わたしはなるのだ
そ――して、少女は大人になり、復讐者になった。
戦場のハゲタカ、レイヴンらしく、殺しに巡って、金を貰う、アイツとおんなじレイヴンになった。
そして実力をつけて、アリーナに登録して、相手を叩きのめし、仇の元へ、今一歩だ。
そう、あと寸でのところだったのだ。あの事件が起こらなかったら……。
人類が、レイヤードの管理者《DOVE》の打ち立てた人類再生プロジェクト『ブライゲード以前』。
その最終段階へ移行して、地上に出て暮らすようになったのは、今より少しばかし遡る。
あくまでも人類の開放に反対する企業を打ちのめした一人のレイヴンが、管理者の中枢へ特攻して、太陽降り注ぐ大地への帰還口を開いた。
だけど、今、《DOVE》が用意し、かつてレイヴンの開いた門は、再び閉じられようとしている。
高度AIが暴走したのだ。
暴走した彼等は、企業の拘束を振り切り、サイレントラインの中心地、もう一つのレイヤード、『オールドコート』に集結した。
操られていた旧世紀の遺産の光線砲衛星はミラージュが取り押さえたが、現代の科学では到底理解出来ぬ技術と理論で作られていた為、誰もその動かし方が解らなかった。
地上では、操られた無人兵器達の攻撃は激しく、クレストは応戦するもたくさん兵士が死んで、兵器は在ったがパイロットが足りずになって防戦一方。
その戦いにミラージュが参加しても結果は変わらず、……いや違うか、もっとたくさん人が死ぬことになった。
キサラギは、その他の中小をまとめて、ネット回線での情報戦を行っていたが、相手は疲れ知らずの機械が無数、勝ち目などあるはず無かった。
あるレベルより上級の人工知能が、最早人類には無いのだから、手作業でやるしかあるまい、だったのだ。
そして、グローバルコーテックスも、抱えるレイヴンを総動員させて敵の本拠地を一気に叩くと、人類総意の依頼を受けて活動を始めた。
とても正気とは思えぬ作戦だったが、これは絶対に成功させなくてはならないのだった。
『スパークプラグ』と名づけられたその作戦は、失敗すれば、人類の滅亡を意味するのだから。
第一段階は地下トンネルを走っていた、特別頑丈なトレーラーを改造して、周囲のあらゆる所から施設に突っ込ませて侵入、第二陣の侵入口を作り出す。
第二段階は、潜航した第一陣を援護しながら、第一陣と交代して施設を一挙に占拠する。
「わたしにだって、受けるか受けないか決める、拒否権が、こんな今でもあるんだよ」
『しかし俺はお前さんは受けてくれると思うんだが、リヴェンジャー=カラードネイル?』
「どうしてなんよ」
『それはなァ、相方に、コイツがいるからさあ。ほら――ゼロがいるんだぜ』
「うお、それは本当かしら!!!!!! ちょっとその資料、こっちに送ってくれる?
実際の所、あんたが送ってきたの全部、読まんで捨ててしまったんだわ」
『じゃああれかい、読んでなくて、死んじまうかも知れないから拒否ってたんかい」
「そういうことだね」
『まあいい。死ぬのは、俺も、ヤダモンなあ。ん……そーれっと。ほら、送ったぞ』
「……ケロリン送られたぞ」
『だが、良く読んでから決めるんだぞ。俺はお前さんが受けるだろうと踏んで依頼を持ってきたんだが、』
「カポーン」
『やっぱり、こんな作戦内容は馬鹿げてるって……な……なにしてんの」
「依頼承諾」
『やっぱりかぁああああああああああああああああ』
依頼代理人(オペレータがつかない彼女の場合、依頼をまとめて持ってきてくれる人がいる。他のレイヴンにもそんな感じでやってるのもいる。実際つけ様がつけまいが自由。レイヴンだからね)
が彼女に持ってきた依頼には、第一陣への参加依頼が書かれていた。
勿論、こんな今でもレイヴンの権利と言う物はあって、拒否は出来るが、彼女はそのミッションを受諾した。
第一陣はどうみても死ぬ確立が高い危険な仕事だ。第二陣よりか報酬は高いとしても、割には合わない。
しかし、カラードネイルには、割に合った。
このミッションには、僚機がつくのだ。
その僚機というのが、仇のゼロなのだ。
アリーナでは、彼の元へたどり着かなくては、殺すことが出来なかったが、ミッションでは別だ。
敵同士なら勿論、味方としてでも、攻撃して殺してしまえばよかった。
でも、その怨みをコーテックスに見抜かれていたので、ゼロと一緒になる依頼が、舞い込んでは来なかった。
「これは行幸だよ」
『でもなあ』
「だいじょーぶ」
『なんでだ』
「作戦が終ったら殺すから絶対に大丈夫だよ」
『最強の呪文ktkrwwwwでも失敗したら涙目wwwww』
「うん。絶対に、大丈夫だよ!!!」
彼女は指で鉄砲を作って、食卓の上の花瓶に向けてぶっ放した。
花瓶に刺された萎れた花は、動かない。動かせるのは、フェイクではない力のみなのだから。
彼女――カラードネイルは、そのまんまノートパソコンの電源を切り、放り出して、布団をかぶって寝た。
そりゃあもうぐっすりと。死んだように。ね。
カラードネイルはぶつぶつと呟きながら、ヘルメットを被り、コクピットハッチを閉鎖した。
一瞬、光が途絶えたが、すぐに緑色やら黄色やらのいろいろな計器の灯りでコクピットは一杯になった。
カラードネイルは、コンソールにパスコードを打ち込み、音声入力。それはミッション開始の一斉だ。
「発動せよ、グラッジ!!」
デジタルタコメーターの針が三回転して止まり、排気口から、重水の蒸気が吹き出る。
AC:グラッジの平べったい頭部の青い眼が、更に輝きを増す。
カラードネイルがソケットに伝達プラグを全て差し込み終えると、コクピットが一回り小さく縮小され、隙間から這い出てくるベルトに身体が拘束される。
視覚が送り込まれてくる。感情の無い、鉄の、ACが、わたしになる。感覚が、冷たい感覚が、灼熱するジェネレータによって消えていく。
感覚が、変わる。人としての、それではなくて、違う、これは、鉄の感覚に私が鉄だ。
機械の身体の一部になって、わたしはわたしを命令しているんだ。
わたしは、機械だ。兵器だ。鉄だ。
そして殺すのだ!
ゼロを!
否定してやるぞ……貴様を全部。
《作戦行動を認識:群がる敵の破壊→後続隊への引継ぎ:OK?》
「OK」
《エネルギー充填率120%オーヴァー》
《擬似プロメテ回路へ、余剰ENをバイパスします》
《武器管制システム:オールグリーン。電力入力出力テスト:突破》
「あんたの名前はグラッジ。あたしはカラードネイル。これからあんたはあたし」
《了解、マイ・マスター・レイヴン》
「システム、起動」
《メインシステム 戦闘モード起動します》
青い単眼は、隣の黒と赤の逆足ACを見やった。
彼ももう、ACに乗って、彼女と同じ状態になっている。
ただ殺すことしか出来ない、戦闘マシーンになっている。
そんな感じのヤツが、この二人以外にも、もう一人いた。
フロートタイプで、腕マシンガンと両肩にチェーンガンを装備していた。
色はキャンディーみたくカラフル。
(カラードネイルは、こんなやつが僚機で付いてくるとは知らなかったけど……。)
フロートの彼の瞳はカラードネイルにではなく、ゼロへ向けられていた。
ゼロのぼうっとした紅い瞳に、彼のEYEは向けられていた。
それには強い何かが感じられる。が、しかし、カラードネイルのような復讐心ではない。
何か……、他の、別の、……、!
肩を、固定器具でつかまれた。
腰にもそれをまわされて、動けなくなった。
フロートも、ゼロも、また、固定具に捕まって壁に押し付けれられて、そして――……。
――そして、漫画のような音を立てて、壁を打ち壊して進むトレーラーは最後の目標壁をぶち抜き終わると
荷台部分を切り離して、自分だけ勝手に通路を直進して、ガードメカをまとめて踏み潰しハイジョして、最後に爆発して粉粉になった。
鉄ホロの爆砕ボルトが弾けて、ACが三機出てくる。他の区画でも、同じ事が起きているだろう。施設壁突破以前に死んでいなければの話だが。
真っ赤なサイレンが鳴り響いてる。
カラードネイルと、ゼロと、フロートのACは、荷台を降り、トレーラーが排除した敵の残骸の山を進んだ。
フロートのACともゼロともは、話が出来なかった。通信装置は、ジャミングされていて、雑音しか聞こえなかった。
接触通信も、受け付けてくれないのだから、そうとうな電波障害なのだった。
でも彼女にとってそれは少しありがたい事だった。
通信による連携が取れない事は少し不安だったが、恨んで殺してやろうという相手と何をドウ話せばいいのか、よくわからなかったから。
真っ赤なサイレンが鳴り響いてる。
右左に曲がって降りて登って、延々と続くかのように思われる通路。
敵(操られてた、いや、もしかしたら彼等は自分の意思で行動していたんかもしんないが今ではもうわからん)でいっぱいの部屋。
グラッジとゼロのクラッキングは肩に追加弾層を装備し、フロート型は元より弾が尽きる事は無い。
バズーカで根こそぎ吹き飛んで、グレネードが弾けて粉微塵、高速鉄甲弾が蜂の巣にする。
真っ赤なサイレンがぱったりとやんだ。
ゼロが先行して入った部屋に、カラードネイルとフロートが入ったら、消えた。
真っ赤なランプは通路の向こうへ消えた。
サイレンの音が聞こえない。何も、無かったかのように……。
通信が入る。
『ゼロだ。どうやらジャミングは此処までの様だな』
「……だからなんだ?」
『此処は安全なようだが、俺は先へ進もう。先行した分だけ、報酬は上乗せだそうだからな』
「わたしも行くよ」
『そうこなくてはいかん』
ゼロが、くつくつと苦笑する。
『あんたはどうだい、テン・コマンドメンツ?』
フロートのAC――テン・コマンドメンツは、腕を、一体化した銃口をゼロの方に向けて撃った。
ダカダカダカと、鉄甲弾がゼロギリギリに通り過ぎて後ろのゲートに突き刺さり、爆発した。
爆炎が晴れると、その先には、超電磁スクリーンが貼られているのが見えた。もし進んでたら最後、黒コゲだった。
『はっはっは、なるほど……。つまり、こう行けって事だな』
ゼロはガトマシで部屋の壁を指し、トリガーを引いた……。
四角いのから、丸い透明チューブに、通路は変わった。
チューブ通路では、自走しなくても、機体は進んでいった。恐らく、歩く歩道なのだ、これは。
チューブの外は、見た事も無い、都市だった。滅びさった『オールドコート』の人々が住んでいた地下都市。
レイヤードとはかけ離れた建築構造をしているが、人間がいた世界だ。だが彼等は滅びてしまったのだ……。
ここにも管理者がいた筈だ。
管理者の存在理由、それは管理をする事。
レイヤードの人類が地上に帰る事は、彼女の決めた規定事項だった。
彼女が人類は、再び地上に出ても大丈夫なレベルに達したと判断した時、試練が下され、その試練を乗り越えれば人類は帰還を許される。
それが行われ、乗り越えられねば、箱庭で滅びるだけだ。
オールドコートの彼等はそれを行う事が出来なかったのだろうか。
それとも……彼等はもう、此処から出て行ってしまっていて……まさか、此処はもう抜け殻で――……、
「……地上に、わたし達より先に到達していた」
『お前も、そう思うか』
「聞こえてたの?」
『ああ、なんだか此処では逆に通信しない方が難しいみたいだ』
「なんて都合の良い……。でも、彼、さっきから一言も話さないようだけど」
『アイツは無口なのさ。そう。昔からな』
「知り合いなの?」
『ちょっとしたな』
テン。コマンドメンツは、瞳を下に向けていた。
蒼く光る、きのこのような、それでいて金属の質感を持つ、わたし達が見ると奇怪な都市に……。
『あんただって、知り合いくらいいるだろう。そういうことだ。……んでだ、その先に地上に出た人類は、何処に消えたと思う?』
わたし達、《レイヤード》人類がこの地上に進出したのはほんの少し前の事。
でも、それでも、地球の大部分は、海や地中は無理だとしても、地上は、空は、完全に。
このサイレントラインを残して、だったが……。
「海の中とか、また地に潜ったとか」
『海はワカラン。だが、地下に戻るんなら、此処に戻って来しやしないかい』
そうだ。これだけ保存されているのだから、此処に戻ってきてもいい筈だ。
海の中に戻るにしろ、此方に戻ってくる方が、財布にも良いのではないか。
しかしそもそも戻る必要はあったのか。地上は綺麗だったのだ。物凄く、綺麗だったのだ。
地上が、綺麗だったのは、地上に出た彼等が戦争を起こして滅びて、いなくなった訳でない事を示している。
戦争の痕跡なんて、何処にもないのだ。爆弾の一個も発見されていない。
あったのは、《DOVE》が作ってくれていた最初の町に、森に、野原に、湖に、寒い所に、あっつい所に、海、だけだ。
「……レイヤード人類が、地下の潜ったのは今から五百年以上前」
『そしてレイヤード時間を地球暦に戻したのが百五十年前だ』
「まさか! ……ってこれ、トンデモじゃん」
『はっはっは、ばれたか! ……そうさ、トンデモさ。だがそう考えても否定できるところはない』
「……」
『……ああ、ただたんに、この『オールドコート』の人類は皆滅びたんだよ。
ここの管理者は、そう判断したんだろうな。俺達は運がよかったんだ。上手く事が運びすぎているようだがな』
「……事が上手く運びすぎている?」
『そう……、そうだよ、まったくな……、ん、ああ、もうすぐチューブも終わりなようだ。この先に何があるかワカラン。注意しておけよ』
ゼロはそう言って、黙った。カラードネイルも続いて黙った。テン・コマンドメンツは最初から黙ったままだった。
沈黙は、チューブから出て、少し歩いた所まで続いた。
なんでわたしはアイツと話をしたんだ。
黙って、最初から殺しておけばよかった。
ただのレイヴンじゃあないか。
殺すのが仕事だ。
だから殺したんだ、わたしの町を全部。
わたしも、同じことをいるんじゃあないか。
気づてなかったのか。いや、気づいてた。……違う気づきたくなかったから気づかんふりしてたんだ。
わたしは……、
ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
んなこと考えて復讐なんて出来るか!
とにかく腹の虫が収まらんのだ。
それが理由なんだよ!!
カラードネイルはグレネードをクラッキングへ向けて……トリガーを引いた。
……トリガーを引いたが、何も出なかった。カチカチと軽い引き金が鳴く。残弾数〇。
『もう殺しにかかるってんかぁ。気が早い』
「……運が良かったなゼロ。弾があったらお前は死んでいたんだ」
『神様に感謝しなくっちゃなあ。俺達を地上に帰してくださった《DOVE》様に!』
「今は殺さないようにしといたる。次は無いぞ」
『わかっているさ、勿論な!』
カラードネイルはぶつぶつと毒づいた。
テン・コマンドメンツはやっぱり何も言わない。
気がつくと、非通信不可領域を抜けており、ただっぴろい部屋が連続するようになって、勿論そのような場所には敵も沢山いたわけだ。
グラッジの左腕は弾切れだが、バズーカ弾はまだたんまりあった。弾が切れても鈍器として使えばよい。
戦闘は、実に単調に続いていった。最初より、弱い、雑魚ばっかりだった。
その中、カラードネイルは考えていた。
グレネードライフル:残弾数〇。わたしはそれほどトリガーハッピーだったろうか。
ゼロを殺す為に温存しておくべき、と思っていたのだが……。いやむしろ、急になくなった様に思えてならない。
だとしたら最初のジャミングによってプログラムエラーが起きたのか。それとも……。
……だがそんな事、出来るのだろうか。人のACのFCSに勝手に介入するなんて事が……。
カラードネイルは引き金を引き、ブーストペダルを踏み、こめかみの神経接続度ダイヤルを回して、シナプス接続値を上昇させた。
燃え上がるジェネレータの熱が、身体に伝わってくる。さっきよりも熱く……。
敵が出現する。すぐにかたがつく。もうこれは敵じゃあないただの的だよ。
天井から、爆弾を積んだMTが特攻してくる。でも避ける。ジャミングMTは左手で握り潰す。ロックオンなんていらない。
眼で、わたしは、目がある。ロックオンはいらない。わたしの眼が、頭部だから、FCSだから大丈夫。
何も、イラナイ。わたしは、わたしはもうグラッジで。グラッジはわたしだからわたし。
ブーストペダルとわたしの足と、機体の挙動の境界があやふやになる。
MTを潰した左手が、なにか。むずがゆい。
ぐにゃぐにゃに、挙動が、なる。わたし。あんな事考えたからかしら。
神経接続度をMAXにする。汚い。遅い。伝達が遅い。
先より、なにかがおかしい。これはわたしではない。介入されている。
……わたしが、介入されている!
わたし=グラッジの腕が、右腕が! バズーカが! ゼロに照準する。
電気が走るよ。スパークよ。スパークする電気が信管に伝わって、弾けるよ、火薬が。
破滅的だ。一発でMTをぶっこわす破滅が。飛んでいく。
ゼロは、今、攻撃を受けた。的からの攻撃を受けた。
よろめいている。
よろめいてるときに、バズーカ弾をくらったら、倒れてしまう。
倒れたら、天井砲台の、ラインレーザーの餌食だ。
穴だらけになる。
穴だらけになって、そして……。
そして死んでしまう。殺されてしまう。
わたしの仇が。目標が。超えるべき相手を失う。
わたしが一人になる。わたしの存在理由が、わたしがわたしでなくなってしまう。
させてたまるか。
無人MT如きに。人間を殺させて堪るか!!
「ゼロはわたしのものだ。誰にも殺させはしない!!」
わたしは侵された左腕を強制排除した。
「いぎぃあッ」
強烈な激痛。
神経接続度をあげ過ぎたんだ。
でも止まらない……そうかFCSだ。
FCSが、狂っているんだ。
そうかそうかFCSの接続を切ればいいんだ。
切った。
そして……、
視界が真っ暗になって、彼女は意識を……。
たった一人のレイヴンによってその徹底的な破壊はもたらされた。
殆どの住民は、死んでしまった。
ACに直接撃たれて飛び散ってしまった訳ではないが、彼の放った榴弾によってビルが爆発したり、その崩れたビルの下敷きになったり、
あたしは死にたくないとの、住民同士の小競り合いが大きくなって、互いに殺しあったりで、大体死んだ。
そして、ぱっと見ではたった一人の少女が生き残ってた。
生き残った彼女は、ぼうっと、して、まだほのかに熱をもっている瓦礫の上にぺたんと座って、くすんだ空を片目で見上げていた。
見上げていた空からの、かすんだ太陽の光が突然遮られて、少女は、破壊をもたらしたレイヴンの乗った、ACを見た。
真っ黒に塗装されて、その上から、真っ赤な斑が、都市迷彩パターンでべたべたと塗られていてまるで血が飛び散って、くっついた様だった。
特徴的な潰れた頭、そして逆足。腕に持つは、バルカン砲。肩に担ぐは、軽量のキャノン砲に、まだ殺すかと追加弾層。
幼い子供には、その正確な種類は分からないが、つよい印象が心に刻み込まれた。
いつか必ず殺してくれると言う憎しみの深い谷は、子供の心には大きすぎて、その身体にまで浸透して、脳髄を侵し、その先の人生を狂わせ――て、
顔面の左半分はもうわたしのじゃあなくて機械に置き換わってり。獲物に、確実に、逃さぬ刃を突き立てる為に。
金属製のペットボトルのキャップの様な、おでこのセンサ。眼底に埋め込まれたソケット。耳にもソケット。
隠してなんかいない。誇りであり、証しだからだ。
ヤツを殺して、わたしが最強になる。わたしの中の最強に、わたしはなるのだ
そ――して、少女は大人になり、復讐者になった。
戦場のハゲタカ、レイヴンらしく、殺しに巡って、金を貰う、アイツとおんなじレイヴンになった。
そして実力をつけて、アリーナに登録して、相手を叩きのめし、仇の元へ、今一歩だ。
そう、あと寸でのところだったのだ。あの事件が起こらなかったら……。
人類が、レイヤードの管理者《DOVE》の打ち立てた人類再生プロジェクト『ブライゲード以前』。
その最終段階へ移行して、地上に出て暮らすようになったのは、今より少しばかし遡る。
あくまでも人類の開放に反対する企業を打ちのめした一人のレイヴンが、管理者の中枢へ特攻して、太陽降り注ぐ大地への帰還口を開いた。
だけど、今、《DOVE》が用意し、かつてレイヴンの開いた門は、再び閉じられようとしている。
高度AIが暴走したのだ。
暴走した彼等は、企業の拘束を振り切り、サイレントラインの中心地、もう一つのレイヤード、『オールドコート』に集結した。
操られていた旧世紀の遺産の光線砲衛星はミラージュが取り押さえたが、現代の科学では到底理解出来ぬ技術と理論で作られていた為、誰もその動かし方が解らなかった。
地上では、操られた無人兵器達の攻撃は激しく、クレストは応戦するもたくさん兵士が死んで、兵器は在ったがパイロットが足りずになって防戦一方。
その戦いにミラージュが参加しても結果は変わらず、……いや違うか、もっとたくさん人が死ぬことになった。
キサラギは、その他の中小をまとめて、ネット回線での情報戦を行っていたが、相手は疲れ知らずの機械が無数、勝ち目などあるはず無かった。
あるレベルより上級の人工知能が、最早人類には無いのだから、手作業でやるしかあるまい、だったのだ。
そして、グローバルコーテックスも、抱えるレイヴンを総動員させて敵の本拠地を一気に叩くと、人類総意の依頼を受けて活動を始めた。
とても正気とは思えぬ作戦だったが、これは絶対に成功させなくてはならないのだった。
『スパークプラグ』と名づけられたその作戦は、失敗すれば、人類の滅亡を意味するのだから。
第一段階は地下トンネルを走っていた、特別頑丈なトレーラーを改造して、周囲のあらゆる所から施設に突っ込ませて侵入、第二陣の侵入口を作り出す。
第二段階は、潜航した第一陣を援護しながら、第一陣と交代して施設を一挙に占拠する。
「わたしにだって、受けるか受けないか決める、拒否権が、こんな今でもあるんだよ」
『しかし俺はお前さんは受けてくれると思うんだが、リヴェンジャー=カラードネイル?』
「どうしてなんよ」
『それはなァ、相方に、コイツがいるからさあ。ほら――ゼロがいるんだぜ』
「うお、それは本当かしら!!!!!! ちょっとその資料、こっちに送ってくれる?
実際の所、あんたが送ってきたの全部、読まんで捨ててしまったんだわ」
『じゃああれかい、読んでなくて、死んじまうかも知れないから拒否ってたんかい」
「そういうことだね」
『まあいい。死ぬのは、俺も、ヤダモンなあ。ん……そーれっと。ほら、送ったぞ』
「……ケロリン送られたぞ」
『だが、良く読んでから決めるんだぞ。俺はお前さんが受けるだろうと踏んで依頼を持ってきたんだが、』
「カポーン」
『やっぱり、こんな作戦内容は馬鹿げてるって……な……なにしてんの」
「依頼承諾」
『やっぱりかぁああああああああああああああああ』
依頼代理人(オペレータがつかない彼女の場合、依頼をまとめて持ってきてくれる人がいる。他のレイヴンにもそんな感じでやってるのもいる。実際つけ様がつけまいが自由。レイヴンだからね)
が彼女に持ってきた依頼には、第一陣への参加依頼が書かれていた。
勿論、こんな今でもレイヴンの権利と言う物はあって、拒否は出来るが、彼女はそのミッションを受諾した。
第一陣はどうみても死ぬ確立が高い危険な仕事だ。第二陣よりか報酬は高いとしても、割には合わない。
しかし、カラードネイルには、割に合った。
このミッションには、僚機がつくのだ。
その僚機というのが、仇のゼロなのだ。
アリーナでは、彼の元へたどり着かなくては、殺すことが出来なかったが、ミッションでは別だ。
敵同士なら勿論、味方としてでも、攻撃して殺してしまえばよかった。
でも、その怨みをコーテックスに見抜かれていたので、ゼロと一緒になる依頼が、舞い込んでは来なかった。
「これは行幸だよ」
『でもなあ』
「だいじょーぶ」
『なんでだ』
「作戦が終ったら殺すから絶対に大丈夫だよ」
『最強の呪文ktkrwwwwでも失敗したら涙目wwwww』
「うん。絶対に、大丈夫だよ!!!」
彼女は指で鉄砲を作って、食卓の上の花瓶に向けてぶっ放した。
花瓶に刺された萎れた花は、動かない。動かせるのは、フェイクではない力のみなのだから。
彼女――カラードネイルは、そのまんまノートパソコンの電源を切り、放り出して、布団をかぶって寝た。
そりゃあもうぐっすりと。死んだように。ね。
カラードネイルはぶつぶつと呟きながら、ヘルメットを被り、コクピットハッチを閉鎖した。
一瞬、光が途絶えたが、すぐに緑色やら黄色やらのいろいろな計器の灯りでコクピットは一杯になった。
カラードネイルは、コンソールにパスコードを打ち込み、音声入力。それはミッション開始の一斉だ。
「発動せよ、グラッジ!!」
デジタルタコメーターの針が三回転して止まり、排気口から、重水の蒸気が吹き出る。
AC:グラッジの平べったい頭部の青い眼が、更に輝きを増す。
カラードネイルがソケットに伝達プラグを全て差し込み終えると、コクピットが一回り小さく縮小され、隙間から這い出てくるベルトに身体が拘束される。
視覚が送り込まれてくる。感情の無い、鉄の、ACが、わたしになる。感覚が、冷たい感覚が、灼熱するジェネレータによって消えていく。
感覚が、変わる。人としての、それではなくて、違う、これは、鉄の感覚に私が鉄だ。
機械の身体の一部になって、わたしはわたしを命令しているんだ。
わたしは、機械だ。兵器だ。鉄だ。
そして殺すのだ!
ゼロを!
否定してやるぞ……貴様を全部。
《作戦行動を認識:群がる敵の破壊→後続隊への引継ぎ:OK?》
「OK」
《エネルギー充填率120%オーヴァー》
《擬似プロメテ回路へ、余剰ENをバイパスします》
《武器管制システム:オールグリーン。電力入力出力テスト:突破》
「あんたの名前はグラッジ。あたしはカラードネイル。これからあんたはあたし」
《了解、マイ・マスター・レイヴン》
「システム、起動」
《メインシステム 戦闘モード起動します》
青い単眼は、隣の黒と赤の逆足ACを見やった。
彼ももう、ACに乗って、彼女と同じ状態になっている。
ただ殺すことしか出来ない、戦闘マシーンになっている。
そんな感じのヤツが、この二人以外にも、もう一人いた。
フロートタイプで、腕マシンガンと両肩にチェーンガンを装備していた。
色はキャンディーみたくカラフル。
(カラードネイルは、こんなやつが僚機で付いてくるとは知らなかったけど……。)
フロートの彼の瞳はカラードネイルにではなく、ゼロへ向けられていた。
ゼロのぼうっとした紅い瞳に、彼のEYEは向けられていた。
それには強い何かが感じられる。が、しかし、カラードネイルのような復讐心ではない。
何か……、他の、別の、……、!
肩を、固定器具でつかまれた。
腰にもそれをまわされて、動けなくなった。
フロートも、ゼロも、また、固定具に捕まって壁に押し付けれられて、そして――……。
――そして、漫画のような音を立てて、壁を打ち壊して進むトレーラーは最後の目標壁をぶち抜き終わると
荷台部分を切り離して、自分だけ勝手に通路を直進して、ガードメカをまとめて踏み潰しハイジョして、最後に爆発して粉粉になった。
鉄ホロの爆砕ボルトが弾けて、ACが三機出てくる。他の区画でも、同じ事が起きているだろう。施設壁突破以前に死んでいなければの話だが。
真っ赤なサイレンが鳴り響いてる。
カラードネイルと、ゼロと、フロートのACは、荷台を降り、トレーラーが排除した敵の残骸の山を進んだ。
フロートのACともゼロともは、話が出来なかった。通信装置は、ジャミングされていて、雑音しか聞こえなかった。
接触通信も、受け付けてくれないのだから、そうとうな電波障害なのだった。
でも彼女にとってそれは少しありがたい事だった。
通信による連携が取れない事は少し不安だったが、恨んで殺してやろうという相手と何をドウ話せばいいのか、よくわからなかったから。
真っ赤なサイレンが鳴り響いてる。
右左に曲がって降りて登って、延々と続くかのように思われる通路。
敵(操られてた、いや、もしかしたら彼等は自分の意思で行動していたんかもしんないが今ではもうわからん)でいっぱいの部屋。
グラッジとゼロのクラッキングは肩に追加弾層を装備し、フロート型は元より弾が尽きる事は無い。
バズーカで根こそぎ吹き飛んで、グレネードが弾けて粉微塵、高速鉄甲弾が蜂の巣にする。
真っ赤なサイレンがぱったりとやんだ。
ゼロが先行して入った部屋に、カラードネイルとフロートが入ったら、消えた。
真っ赤なランプは通路の向こうへ消えた。
サイレンの音が聞こえない。何も、無かったかのように……。
通信が入る。
『ゼロだ。どうやらジャミングは此処までの様だな』
「……だからなんだ?」
『此処は安全なようだが、俺は先へ進もう。先行した分だけ、報酬は上乗せだそうだからな』
「わたしも行くよ」
『そうこなくてはいかん』
ゼロが、くつくつと苦笑する。
『あんたはどうだい、テン・コマンドメンツ?』
フロートのAC――テン・コマンドメンツは、腕を、一体化した銃口をゼロの方に向けて撃った。
ダカダカダカと、鉄甲弾がゼロギリギリに通り過ぎて後ろのゲートに突き刺さり、爆発した。
爆炎が晴れると、その先には、超電磁スクリーンが貼られているのが見えた。もし進んでたら最後、黒コゲだった。
『はっはっは、なるほど……。つまり、こう行けって事だな』
ゼロはガトマシで部屋の壁を指し、トリガーを引いた……。
四角いのから、丸い透明チューブに、通路は変わった。
チューブ通路では、自走しなくても、機体は進んでいった。恐らく、歩く歩道なのだ、これは。
チューブの外は、見た事も無い、都市だった。滅びさった『オールドコート』の人々が住んでいた地下都市。
レイヤードとはかけ離れた建築構造をしているが、人間がいた世界だ。だが彼等は滅びてしまったのだ……。
ここにも管理者がいた筈だ。
管理者の存在理由、それは管理をする事。
レイヤードの人類が地上に帰る事は、彼女の決めた規定事項だった。
彼女が人類は、再び地上に出ても大丈夫なレベルに達したと判断した時、試練が下され、その試練を乗り越えれば人類は帰還を許される。
それが行われ、乗り越えられねば、箱庭で滅びるだけだ。
オールドコートの彼等はそれを行う事が出来なかったのだろうか。
それとも……彼等はもう、此処から出て行ってしまっていて……まさか、此処はもう抜け殻で――……、
「……地上に、わたし達より先に到達していた」
『お前も、そう思うか』
「聞こえてたの?」
『ああ、なんだか此処では逆に通信しない方が難しいみたいだ』
「なんて都合の良い……。でも、彼、さっきから一言も話さないようだけど」
『アイツは無口なのさ。そう。昔からな』
「知り合いなの?」
『ちょっとしたな』
テン。コマンドメンツは、瞳を下に向けていた。
蒼く光る、きのこのような、それでいて金属の質感を持つ、わたし達が見ると奇怪な都市に……。
『あんただって、知り合いくらいいるだろう。そういうことだ。……んでだ、その先に地上に出た人類は、何処に消えたと思う?』
わたし達、《レイヤード》人類がこの地上に進出したのはほんの少し前の事。
でも、それでも、地球の大部分は、海や地中は無理だとしても、地上は、空は、完全に。
このサイレントラインを残して、だったが……。
「海の中とか、また地に潜ったとか」
『海はワカラン。だが、地下に戻るんなら、此処に戻って来しやしないかい』
そうだ。これだけ保存されているのだから、此処に戻ってきてもいい筈だ。
海の中に戻るにしろ、此方に戻ってくる方が、財布にも良いのではないか。
しかしそもそも戻る必要はあったのか。地上は綺麗だったのだ。物凄く、綺麗だったのだ。
地上が、綺麗だったのは、地上に出た彼等が戦争を起こして滅びて、いなくなった訳でない事を示している。
戦争の痕跡なんて、何処にもないのだ。爆弾の一個も発見されていない。
あったのは、《DOVE》が作ってくれていた最初の町に、森に、野原に、湖に、寒い所に、あっつい所に、海、だけだ。
「……レイヤード人類が、地下の潜ったのは今から五百年以上前」
『そしてレイヤード時間を地球暦に戻したのが百五十年前だ』
「まさか! ……ってこれ、トンデモじゃん」
『はっはっは、ばれたか! ……そうさ、トンデモさ。だがそう考えても否定できるところはない』
「……」
『……ああ、ただたんに、この『オールドコート』の人類は皆滅びたんだよ。
ここの管理者は、そう判断したんだろうな。俺達は運がよかったんだ。上手く事が運びすぎているようだがな』
「……事が上手く運びすぎている?」
『そう……、そうだよ、まったくな……、ん、ああ、もうすぐチューブも終わりなようだ。この先に何があるかワカラン。注意しておけよ』
ゼロはそう言って、黙った。カラードネイルも続いて黙った。テン・コマンドメンツは最初から黙ったままだった。
沈黙は、チューブから出て、少し歩いた所まで続いた。
なんでわたしはアイツと話をしたんだ。
黙って、最初から殺しておけばよかった。
ただのレイヴンじゃあないか。
殺すのが仕事だ。
だから殺したんだ、わたしの町を全部。
わたしも、同じことをいるんじゃあないか。
気づてなかったのか。いや、気づいてた。……違う気づきたくなかったから気づかんふりしてたんだ。
わたしは……、
ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
んなこと考えて復讐なんて出来るか!
とにかく腹の虫が収まらんのだ。
それが理由なんだよ!!
カラードネイルはグレネードをクラッキングへ向けて……トリガーを引いた。
……トリガーを引いたが、何も出なかった。カチカチと軽い引き金が鳴く。残弾数〇。
『もう殺しにかかるってんかぁ。気が早い』
「……運が良かったなゼロ。弾があったらお前は死んでいたんだ」
『神様に感謝しなくっちゃなあ。俺達を地上に帰してくださった《DOVE》様に!』
「今は殺さないようにしといたる。次は無いぞ」
『わかっているさ、勿論な!』
カラードネイルはぶつぶつと毒づいた。
テン・コマンドメンツはやっぱり何も言わない。
気がつくと、非通信不可領域を抜けており、ただっぴろい部屋が連続するようになって、勿論そのような場所には敵も沢山いたわけだ。
グラッジの左腕は弾切れだが、バズーカ弾はまだたんまりあった。弾が切れても鈍器として使えばよい。
戦闘は、実に単調に続いていった。最初より、弱い、雑魚ばっかりだった。
その中、カラードネイルは考えていた。
グレネードライフル:残弾数〇。わたしはそれほどトリガーハッピーだったろうか。
ゼロを殺す為に温存しておくべき、と思っていたのだが……。いやむしろ、急になくなった様に思えてならない。
だとしたら最初のジャミングによってプログラムエラーが起きたのか。それとも……。
……だがそんな事、出来るのだろうか。人のACのFCSに勝手に介入するなんて事が……。
カラードネイルは引き金を引き、ブーストペダルを踏み、こめかみの神経接続度ダイヤルを回して、シナプス接続値を上昇させた。
燃え上がるジェネレータの熱が、身体に伝わってくる。さっきよりも熱く……。
敵が出現する。すぐにかたがつく。もうこれは敵じゃあないただの的だよ。
天井から、爆弾を積んだMTが特攻してくる。でも避ける。ジャミングMTは左手で握り潰す。ロックオンなんていらない。
眼で、わたしは、目がある。ロックオンはいらない。わたしの眼が、頭部だから、FCSだから大丈夫。
何も、イラナイ。わたしは、わたしはもうグラッジで。グラッジはわたしだからわたし。
ブーストペダルとわたしの足と、機体の挙動の境界があやふやになる。
MTを潰した左手が、なにか。むずがゆい。
ぐにゃぐにゃに、挙動が、なる。わたし。あんな事考えたからかしら。
神経接続度をMAXにする。汚い。遅い。伝達が遅い。
先より、なにかがおかしい。これはわたしではない。介入されている。
……わたしが、介入されている!
わたし=グラッジの腕が、右腕が! バズーカが! ゼロに照準する。
電気が走るよ。スパークよ。スパークする電気が信管に伝わって、弾けるよ、火薬が。
破滅的だ。一発でMTをぶっこわす破滅が。飛んでいく。
ゼロは、今、攻撃を受けた。的からの攻撃を受けた。
よろめいている。
よろめいてるときに、バズーカ弾をくらったら、倒れてしまう。
倒れたら、天井砲台の、ラインレーザーの餌食だ。
穴だらけになる。
穴だらけになって、そして……。
そして死んでしまう。殺されてしまう。
わたしの仇が。目標が。超えるべき相手を失う。
わたしが一人になる。わたしの存在理由が、わたしがわたしでなくなってしまう。
させてたまるか。
無人MT如きに。人間を殺させて堪るか!!
「ゼロはわたしのものだ。誰にも殺させはしない!!」
わたしは侵された左腕を強制排除した。
「いぎぃあッ」
強烈な激痛。
神経接続度をあげ過ぎたんだ。
でも止まらない……そうかFCSだ。
FCSが、狂っているんだ。
そうかそうかFCSの接続を切ればいいんだ。
切った。
そして……、
視界が真っ暗になって、彼女は意識を……。