http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/53690/1320334801/2386-2390
「あの時に――アルテリア・カーパルスにもっと戦力を投入するべきだったのだ」
「オッツダルヴァ、リリウム・ウォルコット、ウィン・D・ファンション、ローディー、
そしてセレン・ヘイズ……。この五人を以て不足と判断できた人がここにいましたか?」
「実際に不足だったから我々は窮地に立たされている」
「それは結果論でしょう?」
「結果が全てだよ、結果が」
「あそこで片割れのオールドキングを潰せたのだから意味はあった」
「カラードの上位を一挙に失ったのが問題だ」
「ヤツを止められるリンクスは残っていないのか?」
「残っていればこんな集まりは必要ない」
「ここはラインアークに共闘を申し出てみてはどうです?」
「リンクス戦争の英雄か……」
「使えるのかね?」
「私はそう考えています」
「交渉次第だが、我々の言うことを聞く可能性は低いぞ」
「ではORCAの残党に――」
「馬鹿な! 問題外だ!」
「他に妙案でもあるのかね?」
「アームズフォートと残りのリンクスたちを集結させるのだ! 総力戦だ!!」
「物量だけではヤツを仕留められない。これは散々実証しただろう」
「それならORCAの残党と手を組んでも同じことではないのか?」
「ヤツに対抗できる戦力をORCAが保有しているとは思えませんね」
「振り出しに戻る、か……」
「無理に戦おうとせず、被害を抑えることに尽力した方が賢明かもしれない」
「戸締まりをして台風が通り過ぎるのをじっと待てというのか?」
「既に甚大な被害が出ているのだぞ!」
「たかがネクスト一機、すぐに動けなくなると言ったのは誰だ?」
「さて、誰だったか……」
「悠長な考えは捨てるべきだ!」
「ではどうするつもりなのだ!!」
いい歳をした大の男たちが問題の解決を後回しにして罵り合いを始めました。
これが世界を支配する企業、その権力者たちの実態なのだから驚きです。
情けなく思うのを通り越して、なんだか悲しくなってくるよ。
一応、この罵り合いに参加していない人も少しいます。
会議の進行役と王大人、その脇に控えている小娘のたった三人だけですが。
ちなみに最後の場違い気味な小娘が私。
簡単に自己紹介をしておくと、私は王大人に拾われた元戦災孤児で、
今は彼の鞄持ち兼ボディーガードといった感じのお仕事をしています。
リンクスとしての訓練を受けているのですが、適性は並らしくあまりぱっとしません。
でも、生身での格闘と射撃の腕には結構自信があったりするので、
それを活かして頑張っています。受けた恩はきっちり返す主義です。
さてさて、私がお仕えしている王大人はというと、何か考えがあるのでしょう。
場を制する機会を静かに待っているご様子。
何事もタイミングが重要というわけです。
皆さんが罵り合いに疲れて静かになったその時、王大人が沈黙を破りました。
「毒を以て毒を制す」
流石は王大人、絶妙なタイミングです。皆さん注目せずにはいられません。
会議場の全ての視線が集中するなか、進行役が尋ねます。
「王小龍、その毒とは?」
「囚人番号XA‐26438」
「あの男を解き放つというのか!」「ジーザス!!」「馬鹿な!」
「危険すぎる!」「正気なのか!?」「被害が増えるだけだ!」
「リスクが大きすぎる!」「無謀だ!」「あれは世界を破壊し尽くすぞ!」
瞬く間に会議場は騒然となりました。
王大人の言う囚人が何者なのか、私にはわからないけど、とても危険な存在なのでしょう。
この尋常ではない反応を見れば想像ができます。
きっと目を合わせただけで相手を失神させる悪魔のような人に違いありません。
「静粛に! 静粛に!」
進行役は皆を静めた後、改めて王大人の方に向き直りました。
「あの男を御する自信があるのというのか?」
「首輪をつければ問題ない。彼女がその首輪だ」
「えっ?」
今度は素っ頓狂な声を上げた小娘に視線が集中しました。
あれ……? すっごい見られてる……?
その小娘は他ならぬ私でした。
私が悪魔のような囚人の首輪……。
交渉係、それとも監視係ということでしょうか?
何も聞かされていなかった私は動揺を隠すのに精一杯です。
「なるほど、彼女がBFFの新しい女王か」
得心が行ったという風で一人が私を値踏みしながら頷きました。
「…………」
王大人は口元に手を当てて、否定とも肯定とも取れる仕草をしただけで何も答えません。
私の頭の中は上を下への大騒ぎ。大パニックです。
王大人の真意は分かりませんが、私は周囲からBFFの新しい女王、
もしくは女王候補と見られていることに初めて気がつきました。
よくよく考えてみると、鞄持ち兼ボディーガードの私が
この場に同席を許されていること自体、変な話だったのです。
ARMORED CORE for Answer -虐殺ルート後-
「あの時に――アルテリア・カーパルスにもっと戦力を投入するべきだったのだ」
「オッツダルヴァ、リリウム・ウォルコット、ウィン・D・ファンション、ローディー、
そしてセレン・ヘイズ……。この五人を以て不足と判断できた人がここにいましたか?」
「実際に不足だったから我々は窮地に立たされている」
「それは結果論でしょう?」
「結果が全てだよ、結果が」
「あそこで片割れのオールドキングを潰せたのだから意味はあった」
「カラードの上位を一挙に失ったのが問題だ」
「ヤツを止められるリンクスは残っていないのか?」
「残っていればこんな集まりは必要ない」
「ここはラインアークに共闘を申し出てみてはどうです?」
「リンクス戦争の英雄か……」
「使えるのかね?」
「私はそう考えています」
「交渉次第だが、我々の言うことを聞く可能性は低いぞ」
「ではORCAの残党に――」
「馬鹿な! 問題外だ!」
「他に妙案でもあるのかね?」
「アームズフォートと残りのリンクスたちを集結させるのだ! 総力戦だ!!」
「物量だけではヤツを仕留められない。これは散々実証しただろう」
「それならORCAの残党と手を組んでも同じことではないのか?」
「ヤツに対抗できる戦力をORCAが保有しているとは思えませんね」
「振り出しに戻る、か……」
「無理に戦おうとせず、被害を抑えることに尽力した方が賢明かもしれない」
「戸締まりをして台風が通り過ぎるのをじっと待てというのか?」
「既に甚大な被害が出ているのだぞ!」
「たかがネクスト一機、すぐに動けなくなると言ったのは誰だ?」
「さて、誰だったか……」
「悠長な考えは捨てるべきだ!」
「ではどうするつもりなのだ!!」
いい歳をした大の男たちが問題の解決を後回しにして罵り合いを始めました。
これが世界を支配する企業、その権力者たちの実態なのだから驚きです。
情けなく思うのを通り越して、なんだか悲しくなってくるよ。
一応、この罵り合いに参加していない人も少しいます。
会議の進行役と王大人、その脇に控えている小娘のたった三人だけですが。
ちなみに最後の場違い気味な小娘が私。
簡単に自己紹介をしておくと、私は王大人に拾われた元戦災孤児で、
今は彼の鞄持ち兼ボディーガードといった感じのお仕事をしています。
リンクスとしての訓練を受けているのですが、適性は並らしくあまりぱっとしません。
でも、生身での格闘と射撃の腕には結構自信があったりするので、
それを活かして頑張っています。受けた恩はきっちり返す主義です。
さてさて、私がお仕えしている王大人はというと、何か考えがあるのでしょう。
場を制する機会を静かに待っているご様子。
何事もタイミングが重要というわけです。
皆さんが罵り合いに疲れて静かになったその時、王大人が沈黙を破りました。
「毒を以て毒を制す」
流石は王大人、絶妙なタイミングです。皆さん注目せずにはいられません。
会議場の全ての視線が集中するなか、進行役が尋ねます。
「王小龍、その毒とは?」
「囚人番号XA‐26438」
「あの男を解き放つというのか!」「ジーザス!!」「馬鹿な!」
「危険すぎる!」「正気なのか!?」「被害が増えるだけだ!」
「リスクが大きすぎる!」「無謀だ!」「あれは世界を破壊し尽くすぞ!」
瞬く間に会議場は騒然となりました。
王大人の言う囚人が何者なのか、私にはわからないけど、とても危険な存在なのでしょう。
この尋常ではない反応を見れば想像ができます。
きっと目を合わせただけで相手を失神させる悪魔のような人に違いありません。
「静粛に! 静粛に!」
進行役は皆を静めた後、改めて王大人の方に向き直りました。
「あの男を御する自信があるのというのか?」
「首輪をつければ問題ない。彼女がその首輪だ」
「えっ?」
今度は素っ頓狂な声を上げた小娘に視線が集中しました。
あれ……? すっごい見られてる……?
その小娘は他ならぬ私でした。
私が悪魔のような囚人の首輪……。
交渉係、それとも監視係ということでしょうか?
何も聞かされていなかった私は動揺を隠すのに精一杯です。
「なるほど、彼女がBFFの新しい女王か」
得心が行ったという風で一人が私を値踏みしながら頷きました。
「…………」
王大人は口元に手を当てて、否定とも肯定とも取れる仕草をしただけで何も答えません。
私の頭の中は上を下への大騒ぎ。大パニックです。
王大人の真意は分かりませんが、私は周囲からBFFの新しい女王、
もしくは女王候補と見られていることに初めて気がつきました。
よくよく考えてみると、鞄持ち兼ボディーガードの私が
この場に同席を許されていること自体、変な話だったのです。
ARMORED CORE for Answer -虐殺ルート後-