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Belley Star

 スルトルは南からやって来る
 枝に燃えたつ火を持って
 剣は輝き
 死者の神々の太陽は輝く
 石の頂は砕かれ
 そして女巨人たちは歩き出す
 兵士たちはヘルから続く路を歩く
 そして天は割れてしまう

 ――――巫女の予言 第50節



 雪が舞い、炎が踊り、稲妻が閃き、雷鳴が轟いた。
 致死的な熱が交差する度、耐えかねた雪がじゅうじゅうと音を立てて蒸発する。
 深夜から降り続ける雪は尚も勢いを増していたが、もはやこの場には一ひらたりとて届かない。
 歌い手の為に設けられた神聖なはずの祭壇は、しかし今や完全に戦火で塗り潰されていた。

 そう、それは地上で最も小規模な戦争だった。
 聖杯戦争。
 最高位の聖遺物、聖杯を実現させるための大儀式。
 儀式への参加条件は二つ。
 魔術師であることと、聖杯に選ばれた寄り代である事。
 聖杯は一つきり。
 奇跡を欲するのなら、汝。
 自らの力を以って、最強を証明せよ。

「せ、ぇいッ!!」
「Faaaaaaaatttttttthhhhhhhhhheeeeeeeeeeeeerrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!!」
「ハッハァッ!」

 赤黒い炎の鎧を纏った女騎士と、真紅の稲妻を帯びた狂戦士が真っ向から激突する。
 そこへ拳銃遣いが下品な笑みを浮かべながら、次々と鉛玉を叩き込む。
 赤いバーサーカーは一声喚くと、鬱陶しい雨粒を振り払うように振り回した。
 一歩退いて間合いを改め、すかさずセイバーが踏み込み、その燃える枝で斬りかかる。

「……ッ!?」

 だがしかし、かつて世界を滅ぼした魔剣は、狂戦士の父を殺めた魔剣の前に拮抗する。
 がっきと噛み合った刃と刃。セイバーが押し切らんと力を込めても、まるで微動だにしない。
 衝撃の余波を受けて整然と並べられていたパイプ椅子が、木端の如く吹き飛んだ。

「こ、の……ッ!!」

 ばかりか、雷電と生き物のように絡み合った劫火が、一瞬の内に電撃に飲み込まれる。
 両腕にかかる重量は致命的なものであり、ついにセイバーの膝ががくりと崩れた。
 バーサーカーは兜の奥でぐるぐると呻きながら、体格で勝るセイバーへ覆い被さっていく。

 ――マズい!

 このままでは剣ごと叩き切られかねない。
 セイバーの額に汗が滲んだ瞬間、一連なりの轟音が響き渡る。

「Hey! Watch Me!」

 途端に軽くなった剣を手元へ引き寄せ、セイバーは後方へと飛び下がった。
 バーサーカーの魔剣を弾いて拮抗状態を打ち崩したのは、言うまでもなくアーチャーだ。
 正確無比な射撃を放ってのけた彼女は、立ち込める硝煙を振り払って嗤う。

「困るね、雇い主さん。死ぬならせめて、報酬払った後にしてよ」

「わかっています! それより、援護を!」

「アイ、アイ」

 ――このアーチャーは!

 女の顔に貼り付いた、にやにやした笑みが妙に癪に障る。
 慇懃なセイバーにしては珍しく、その援護に礼を述べる気が失せていた。
 セイバーはアーチャーの事を努めて意識の外へ放り出し、呼吸を整え思考を走らせる。

 武具の差か? 否、そうではない。神秘の格では此方が上回っている。
 担い手の力量差か? それも違う。バーサーカーに技などありえない。
 能力差? 互角だろう。でなくば一瞬たりとて鍔迫り合いが成立することは無い。
 魔術や能力? 違う。炎も赤雷も、その本質は同じ。純粋なる魔力放出だ。

 では、何故か。

 本来セイバーがかく在るべしとする自分の枠は、従者(サーヴァント)である。
 と同時に、その心の奥底で燃え盛る愛憎の炎は、彼女を容易く狂戦士(バーサーカー)へ貶める。
 戦場経験では劣っているとしても、同じクラス適性を持つ神代の英霊である以上、それは決定的差には成りえない。

 では、何故なのか。

「後先を考えていない……というわけですか!」

 セイバーはキツく唇を噛み締めた。そうとしか考えられない。
 目の前でフェンリルの如く喉を唸らせ、今にも飛びかからんとするバーサーカー。
 その全身からは今も尚、赤い稲妻がバチバチと音を立てて流れ出していた。
 マスターはよほどの魔力を持っているのか、バーサーカーは枯渇を危惧する様子が無い。

 戦闘能力では完全に拮抗していながら、ただこの一点において、セイバーはバーサーカーに劣っていた。

 もしもセイバーが同様に全身から炎を噴き上げて一薙ぎすれば、バーサーカーを退ける事は容易い。
 だがそれは同時に、彼女のマスターである新田美波の全てを搾り取れば、の話だ。
 魔力が枯渇し、魂を消耗した少女の末路は想像に難くない。
 セイバーがセイバーである以上、これだけは絶対に譲れない一線だ。

 ――ミナミ……。

 叶わぬ恋、報われぬ恋に身を焦がし、けれども健気に一途な思いを胸に抱きしめた少女。
 守ってやりたい、救ってやりたい、恋を成就させてやりたい。

 ――だって私は、思い慕うことさえ許されなかったのだから。

 その瞬間、セイバーの胸の内でちくりと何かが痛んだ。
 羨ましい。そう僅かでも思いはしなかったか? セイバーは燃え上がる枝を握り直す。

 セイバー、スキールニール、スルト。
 その本質はサーヴァントであり、同時にバーサーカーだ。
 故に彼女は世界全てを焼き尽くす事よりも、ただ一人の主人を思う自分を恐れている。
 そしてその事に気づかぬまま、きっと彼女は世界を滅ぼすのだろう。

 僅かに耳に残響する道化の哄笑を振り払い、セイバーは剣戟を再開した。



 コルトM1877サンダラー。

 コルト社初のダブルアクション式リボルバー拳銃、41口径。
「ともかくダブルアクションは止めておけ」という創始者サミュエル・コルトの遺言を無視して制作された。
 そのせいかどうか、世間からは一般的に、失敗作という評価が下されている。

 そもそもダブルアクションとはなにか。
 銃爪と撃鉄が連動し、銃爪を引くだけで銃が撃てる、引かなければ撃てない仕組みの銃である。
 対してシングルアクションは撃鉄を起こした上で、銃爪を引かねばならなかった。
 そう考えればなるほど、すぐに撃てる分良い機構に思える。

 実際は、思えるだけだった。

 シングルアクションならば、シリンダーが連動しているのは撃鉄の方。
 故に銃爪を絞ったまま撃鉄を叩き続ければ、その分だけ連射ができる。
 しかしダブルアクションの場合、シリンダーが連動しているのは銃爪だ。
 銃爪を絞ったまま幾ら撃墜を叩いたところで、最初の一発以外は空撃ちになる。
 ちょっと何かが撃鉄に触れただけで暴発するかもしれないシングルアクションでも、その方が良かったのだ。
 ダブルアクションの重たい銃爪では、とても早撃ちはできないし、構造的に連射も不可能。
 成程たしかに此方の方が暴発の危険性はないが、そんなものは初弾を抜いておけば同じこと……。

 だが、コルトM1877サンダラーは幾人かの著名なアウトロー達が愛用していた事で知られている。
 その理由は定かではないが、ビリー・ザ・キッドについては一つの仮説が立てられる。
 後にパット・ギャレットが語ったところによれば、ビリーの手はかなり小さく華奢だったという。
 コルトM1877の特徴である嘴のようなグリップは、その小さい手でも扱いやすかったのではないか?

 そしてビリー・ザ・キッドとコルトM1877サンダラーを語る上で、欠かせない逸話が一つ。

 ある時、ビリーのいる酒場に一人のガンスリンガーが乗り込んできた。
 彼は銃把に真珠の装飾をつけている事を自慢にしており、ビリーは銃を借りて見せてもらった。
 やがてビリーが席を立って酒場の外に出ようとすると、男はビリーを背後から撃った。
 だが銃を借りた時にビリーはこっそり初弾を抜いており、撃鉄の落ちる音が響くのみ。
 次の瞬間、ビリーは振り返りざまに男を撃ち、男は"同時に三発"眉間に受けて斃れた。

 事実上連射不可能なコルトM1877サンダラーで、どうやってそんな早撃ちを可能にしたのか。
 衆人環視の中で起こった出来事にも関わらず、これを説明できた者はいない――…………。



「まったく、こうも煙が濃くっちゃね」

 大嘘を吐きながらアーチャーは銃を撃ち、的確に赤雷の狂戦士へと鉛玉を叩き込み続ける。
 しかし無法者21人の命を奪い取った銃弾も、しかし英霊を斃すには至らない。
 着弾の衝撃を受けて姿勢を崩す事はあれど、バーサーカーは平然と剣を振るっていた。
 ともあれ一瞬の隙きを突き、アーチャーはウェイバーともどもパイプ椅子の列の隙間に滑り込む。
 幸いというか、バーサーカーはセイバーに一直線。
 弾き飛ばされた椅子やら稲妻やらは四方八方例外なく襲うが、遮蔽を取れば会話を交わす余裕もあった。

「あ、あの胸の傷を狙ったらどうだ? あれ、見るからに弱点だろ……よし、できたぞ!」

「狙ってるんだって。ありがと」

 ウェイバーから差し出された銃を受取り、アーチャーはくるりとそれをスピンさせた。
 手に馴染むその銃の輪胴を、まるで男根を愛撫するかのように一撫で。初弾を合わせる。
 連射についてはともかくも、右手に六発、左手に六発、こればっかりは揺るがぬ現実だ。
 自分がリロードを担当することで少しは戦いに寄与できているのか、ウェイバーは考える。

 ――っていうか、凄まじいよな。

 魔剣の類が唸りをあげて激突し、炎と稲妻が渦を巻き、魔力が嵐の如く吹き荒れる。
 そこに鉛玉だけで挑むアーチャーも大概だが、もし自分と彼女だけなら、どうなっていたか。
 あの炎を噴き上げながら戦うセイバー。彼女がいなければ、自分たちは死んでいた。
 ウェイバーはそう考えて首を振る。自分たちではない。自分"は"だ。
 英霊を前にして、人間が対等だと考えるほうがおかしい――

「見な、ウェイバー。あんだけ血がぼたぼた出てるのに死ぬ気配がまるでない。どうよ?」

「……そりゃあサーヴァントは霊核が壊されない限り、魔力があれば存在を維持できるさ」

「違うって。ほら」

 ウェイバーは溜息を吐いた。
 くいくいと彼女は小さな手で袖を引っ張ってくる。面白いものを見せたがるように。
 アーチャーが親指で示したのに従って、ウェイバーはそっと椅子の背から様子を窺った。

 ――うわぁ。

 成程。セイバーの剣戟で押し込まれている間、散々っぱら撃たれたのだ。
 バーサーカーの腹部からは、ドロドロと絵の具のように粘ついた血が滴り落ちている。
 赤い稲妻が迸り、セイバーの炎剣が襲い来る度、その血が沸々と音を立てて煮え滾る。

「Faaaaaaaatttttttthhhhhhhhhheeeeeeeeeeeeerrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!!」

 それでも咆哮を上げて躍りかかる姿は、まさしくバーサーカー。
 サーヴァントでも血を流すんだな。ウェイバーはふとそんな事を思った。

「で、どうなのさ? っと、ほら危ない!」

「わ、ぷ!?」

 吹き飛んで来た椅子を前にアーチャーからぐいと引っ張られ、ウェイバーは堪らず倒れ込む。
 柔らかな感触。肉のぬくもり。彼女の胸元に顔を押し付けていると気付き、彼は慌てた。
 ふと昨晩の夢の記憶が蘇る。女を抱いた――抱いていたらしい、おぼろげな残り香。
 それがふと彼女の汗の香りと同じと気づき、ウェイバーは転げるようにして身を離す。

「ど、どうって……!?」

「サーヴァントだよ、サーヴァント」

 そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、アーチャーの笑みは崩れない。
 彼女は僅かに濡れた音を伴わせ、獲物を狙うように赤い唇へ舌を這わせた。

「わかるんでしょ、マスターなら」

 ついとアーチャーの目線が横に流れる。ウェイバーはその瞳に映る自分を見た。

「ば、バーサーカーはさっぱりだ……! 騎士っぽいとは思うけど、視界がなんか、チラチラして……」

 唾を飲む。言葉を選ぶ。自分の中で噛み砕く。吐き出す。

「たぶん正体を隠す礼装か宝具かスキルがあるんだと思う」

「で、セイバーの方は?」

「焔を纏った鎧に剣、女騎士ってだけじゃ……なんとも」

 ウェイバーは眉間にシワを寄せて、もう一度戦場の方を盗み見た。
 赤い稲妻を纏った狂戦士に、あの恐ろしい女騎士は一歩も引かずに剣をぶつけ合っている。
 そう、剣――あの捻くれた異様なものは、剣以外にありえない。
 炎の剣。一瞬過ぎった余りにも安直過ぎる連想を「まさか」と振り払い、ウェイバーは言った。

「ぱっと思い浮かぶのはブリュンヒルデとかだけど……」

「私みたいに、伝わってる話じゃ男ってのもあるかもな」

「あ、ただ……いや、僕のカンなんだけど……」

「言ってみてよ、0ドルより1セントのがマシなんだから」

 ウェイバーが言い淀んだことを、アーチャーは無理やり引き出そうとする。
 口調こそは軽いけれど、まっすぐに此方を向いた瞳は狙いをつける時のそれと同じ。
 降参したウェイバーは「ホントにカンでしかないからな」と言って、幾つかの推論を伝えた。
 アーチャーは「は」と歯を見せて笑った。ウェイバーは馬鹿にされるかと思って身を縮こまらせた。

「上出来」

「――は?」

 代わりにかけられたのは、ひどく優しげで、そして愉快そうなものだった。
 思わず目を瞬かせたウェイバーに、アーチャーはにっと八重歯を見せて微笑んだ。

「ま、とはいえ勝った後の話だね」

 しれっとそう言ったアーチャーが、ガキガキと音を立てて両手の撃鉄を起こす。
 黒い鉄の塊。艶やかな色合いを放つそれが、アーチャーの白い小さな手に握りしめられている。
 ウェイバーはなんとも言えない表情でそれを見やる。

「なあ、アーチャー……」

「うん?」

 唇の端を吊り上げて、心底楽しいと言いたげなアーチャーの表情。
 勝てるのか? その言葉を、ウェイバーは唾と共に飲み込んだ。

「その銃じゃ効かないんじゃないか?」

「かもね? ま、弾は貫通してない。ってことは……」

 いつどうやってどのようにアーチャーが構えたのか、セイバーにもバーサーカーにもわからなかったろう。
 ウェイバーは、長く尾を引く銃声が響き渡った後にようやく気がついたほどだ。
 さっと椅子の陰から飛び出したアーチャーが、二丁拳銃を思う様にぶっ放したのだ。

「ハッハァッ! ビンゴ!」

 遅れて、ぶつっと何かが千切れるような音と共に、バーサーカーの背と口から濁った赤が噴き出した。
 体内に残っていた弾丸が、続けざまの連射で叩かれ押し出され、ついに体を食い破っていた。

「aAAaaaAaaaaAAAaaaa!?」

 さしものバーサーカーといえど、これには堪らず膝が崩れかける。
 それは英霊同士の戦いでは、致命的とも言える一瞬だ。

「セイバー、ぶっ放せ!」

「言われずともッ!!」

 高らかに唱えられる言葉は三度。

 sowilu! sowilu! sowilu!
「 死者の 神々の 太陽は輝く 」

 黒き炎が、セイバーの魔剣から噴き上がる。
 その恐るべきまでの高熱が天まで届き、鉛色の雲に穴を穿つ。
 炎の柱。燃える杖。輝ける剣。これこそまさに貴き幻想――英霊の宝具。

「……ッ!?」

 だが、ウェイバーが息を飲んだのはそこではない。
 その神威の如き豪剣を手にしながら、これほどの熱をその手に担いながら。
 セイバーの顔に浮かぶのは、喜怒哀楽が凍りついてしまったような、寒厳たる微笑。

「これなら貴様だけを焼き滅ぼすことができますね、バーサーカー」

 彼女にとって、この程度、なんてことはない(・・・・・・・・)のだ。

 ウェイバーのあずかり知らぬこと。これは百の権能、そのうちの十。
 主に負担をかけぬよう、自らに宿る魔力のみを燃やして生み出す、小火。
 そう、これは宝具でもなんでもなく、ただ目前の敵を滅ぼす最低限度の火力に過ぎない――……。

「a……a,A……」

 その姿を。

 劫火を輝かせる魔剣を。

 両手で構え、振りかざし。

 約束された勝利を手にせんとする、女騎士の姿を。

「FAAAaaaaAaaAaThHHhhhheeeeeEEeeeEeEeeeerRRRrrrRrrRrrRrr!!!!!!!!!!!!!!」

 狂戦士は、どう見たのか。

「う、うぁ……ッ!?」

 稲妻が甲高い音を上げて踊り狂い、ウェイバーの網膜を焼いた。
 赤を通り越して白に近い閃光は、竜の如くのたくり、会場内を蹂躙する。
 金属製の椅子がバチバチと音を立てて帯電し、引き寄せられるかの如く浮かび上がる。
 バーサーカーが両手でその大剣を握りしめ、振り上げる。振りかぶる。
 赤い雷は忠実なまでに狂戦士の動きに従って、王の武威を伝えんが如く圧力を高めていく。

 原初の焔と紅雷の激突する、その刹那。

 ウェイバーは眩さに塗り潰された視界の中、泣き叫ぶ、金髪の少女の姿を―――




 辛い。苦しい。痛い。怖い。悲しい。寂しい。悔しい。父上。父上。




 一人の男の話をしよう。
 我々からウェカピポの妹の夫と認識されている男だ。

「っ、がぁあぁぁああぁぁぁ……ッ!」

 バーサーカーを偵察に送り出しベッドに潜り込んだ彼は、恐るべき苦痛と共に覚醒した。
 それは痛みが遅れてじわじわと襲い掛かってくるなんて、チャチなものじゃあなかった。
 体中の水分を気化冷凍によって末端から凍結されていくかのような苦しさだった。
 何を言っているのかわからないと思うが、魔力の消耗に初めて直面した以上、どう説明して良いものか。

「バーサーカー……! っ、止めろ! 止めろと言っているんだ、聞こえないのかこのクソカスがッ!!」

 いずれにせよ、不可視の力で捻じ曲げられた操り人形のように悶え苦しむ彼の心にあるのは、たった一つ。

 ――――なんで俺がこんな目にあわなけりゃァならないんだ!?

 それだけだった。
 全てはウェカピポのせいだ。ウェカピポの妹のせいだ。そしてバーサーカーのせいだ。

 ウェカピポの妹の夫は、苦痛で朦朧とする意識の中、自分の手に刻まれた印へと目を向けた。
 令呪――赤く輝くそれは、この聖杯戦争に於ける参加権であり、三画だけの絶対命令権。
 これを用いてバーサーカーを撤退させれば、この苦しみからは逃れられる―――……

「馬鹿にするんじゃあないッッ!!」

 ウェカピポの妹の夫は叫んだ。叫び、令呪の浮かび上がった手を握りしめた。

「そんな不確かなものに、命を掛けられるわけがあるものかァッ!!」

 ウェカピポの妹の夫の頭脳は今、生存するために全力で動き続けていた。
 成人男性が一日で消費するカロリーは約2000キロカロリー。
 その中で脳が用いるのは、なんと400キロカロリー! 実におよそ1/5!
 チェスや囲碁の達人が、対局後に1キログラムも痩せていたという逸話がある!
 戦いにおいて脳を働かせることは、それほどまでのエネルギーを用いるということなのだ!
 それほどのエネルギーを費やさねば、勝つことはできない!

 ――思考しろ! あのバーサーカーを制御する方法を! 使いこなす道を! 

 ――犬コロが棒っ切れを追いかけるように、あいつが何を求めているのかを考えるんだ!

 あのサーヴァントは何者なのだろう?

 サーヴァント、英霊を召喚する方法。
 その一つは英霊に関わりのある触媒を用いること。
 もう一つは自身と英霊との縁を頼りにすること。

 ではあのバーサーカーは、ウェカピポの妹の夫の先祖なのか?

「――いいや、違う!」

 もしもあのバーサーカーが彼の先祖であるならば、武器は鉄球であるはずだ。
 剣ではない。誇り高く、伝統ある鉄球でなければならないッ!!

 ならば彼とバーサーカーの間には、何か類似している点があるはずだった。

 誇り高き血統か? そうだろう。あれは騎士のはずだ。自分は政務官の息子だ。
 戦士か? その通り。騎士は戦うからこそ騎士だ。自分も鉄球の業を受け継いでいる。
 では何故戦う?
 そう考えれば、答えはたったひとつしかないッ! 
 自分が命を掛けて戦いに挑んだ理由ッ!
 今此処にこうしている理由ッ!!

「バーサーカー!」

 ウェカピポの妹の夫は叫んだ。声も枯れよと叫んだ。命をかけて彼は叫んだ。

「父祖にかけて、貴様の名誉はそこには無いッ!! 戻れッ!!」



 ――――不意に剣を下ろし、稲妻を収束させた狂戦士の姿を見た。

「……っ、う……?」

 残光が緑色に残る目を何度も瞬かせ、ウェイバーはそうっと様子を窺った。
 ライブ会場は――英霊三騎が激突したにしては、随分とマシといえる状況だ。
 ステージは無事だが、椅子はことごとくなぎ倒され、装飾類は破れ飛んでいる。
 其処此処に焼け焦げがあり、電飾はバチバチと火花を上げていた。
 そして無残に割れ砕けたスポットライト――ウェイバーは目を背けた。見なかった事にした。

「aaa……」

「…………来ないのですか」

 バーサーカーは、まるで叱られた子供のように肩を落として、そこに立ち尽くしていた。
 セイバーは表情を崩さぬまま、炎の剣を下ろした。枝についた火を消すような仕草で。
 もはや戦いの気配は失せている。アーチャーが「はッ」と小馬鹿にしたように隣で笑った。

「ありゃ、マスターに叱られたな」

「令呪……ってことか?」

「さぁね」

 セイバーがちらりと、忌々しそうに此方を見たので、ウェイバーはぎくりと身を強張らせる。
 彼女がアーチャーの笑みを気に入らないのは、なんとなくわかる。
 だから「おいアーチャー」とウェイバーは咎めるように彼女の小腹を肘で突く。

「あたっ。なにすんのさ!」

「良いから、ちょっと真面目な顔しとけよな……」

「しょうがないじゃん。私の顔なんだから、これ」

 などと、気の抜けた会話をしていたせいだろうか。
 バーサーカーは一度戦場全体を見回すと、やがてスゥッと大気に溶けるように消え失せた。
 霊体化――したのだろう。セイバーがふぅ、と呼気を漏らし、ウェイバーはどっと息を吐く。

「どうやら終わったようです……ね」

「撃退成功。ま、万々歳ってとこだな」

 にんまり顔のアーチャーが、ポケットからくしゃくしゃになった煙草の箱をひっぱりだした。
 唇で挟んで抜き取るとフィルターを噛みちぎり、「ん」とウェイバーへ、キスをねだるように突き出す。

「……お前な。僕はライターじゃないぞ」

「と言いつつ火をくれるとこ、好きだよ?」

 親指に灯した火を差し出したウェイバーが「な」と赤くなったのを無視し、アーチャーは旨そうにたっぷりと煙を吸い込んで、吐いた。

「例の契約については色々と詰めたいとこだけど……」

「……時間がありませんね」

 セイバーが渋々といった様子で、報酬の支払いを許容した答えを返す。
 どうやらやっぱり、生真面目な性質らしいとウェイバーは思う。
 あの火力ならこの場で二人を薙ぎ払って「なかったこと」にだってできるだろうに。

「こんだけ大騒ぎしたんだ。すぐに保安官どもが来るよ。お互い、長居もできないね」

 言葉通り、既に遠くからはパトカーか消防車か救急車か全部か、ともかくサイレンの音が近づいてきている。
 周囲の空気もざわざわと騒がしく、ほどなく野次馬たちも集まってくるだろう。
「わ、わ、わ!?」と慌てるウェイバーを他所に、アーチャーはしごくのんびりと煙草を吹かす。
 官憲に追い掛け回されるのに慣れているのだろう。あるいは、パット・ギャレット並のやつはいないと高を括っているのか。

「で、どうするんだ、報酬は?」

「……用意しましょう。幾らがお望みですか。あまり馬鹿げた額を提案されても困りますが」

「いや――…………」

 に、と。
 悪戯好きの猫のように、にまーっと目を細めたアーチャーを、ウェイバーはきっと止めるべきだったのだろう。

「――――どうせなら、私もライブに出たいな」

「は――――?」



「ふぅー……ッ! これはちょっと、『しつけ』が必要なようだなァ……」

 ウェカピポの妹の夫は、全身を襲う虚脱感にベッドへ倒れ込みながら、勝ち誇った笑みを浮かべた。
 あのひと声を叫んだ途端、力の流出はぴたりと収まった。つまり彼はバーサーカーに勝利したのだ。
 シャツは汗でべっとりと濡れて貼り付いているのが不快だが、今はシャワーを浴びる気力も無い。
 朝になったら使用人に命じて入浴の準備を整えさせ、朝食にはちょうど良い具合の半熟卵を食べよう。
 ウェカピポの妹の夫はそう考えながら、鉄球の鍛錬として教わった、先祖伝来の深呼吸法を始めた。
 呼吸を整えることで、体内の血流を整えるのだ。東洋の仙道で言う所の、調息というものだ。

 ――しかし、それにしても……。

 長く息を吸い、そして吐き続けながら、ウェカピポの妹の夫は、ふと自分の手へと目を落とした。
 令呪――英霊に対する絶対命令権。
 今後も、あの狂戦士と共に戦って生き延びることを考えるなら、これの使い所を考えねばならない。

「クソがっ! 主人の言うことも聞かないとは、とんだ駄犬を引当てちまったもんだぜ……」

 あれと自分のどこに縁があるのか、ウェカピポの妹の夫は苛立たしげに親指の爪を噛んだ。
 この聖杯戦争の主催者という奴も気が利いていない。
 どうせ自分を招くならば、もっと完璧な状態で身体を治しておけというのだ。
 鉄球の技術はともかく、この治癒したての肉体では不完全も良いところ。
 そこにきて、あの狂犬だ。
 偵察に出ろという言葉を聞いたあたり、まるっきりのド低能ではないようだが……。

「だが腐れ脳味噌には違いない……!」

 ひどく苛立たしかった。
 絶対の切り札とも言える令呪を保有しておきながら、迂闊にこれを切る事はできない。
 彼は自分に残された手札が限りなく少ないことを、正確に把握していた。
 ウェカピポの妹の夫という人間は、暴力的であるが、しかし別に犯罪者というわけではない。
 彼の行為は全て『許されている』から、『正当な権利』だから行われているのだ。
 正しい理由のもとで権力を使うことを良しとする彼にとって、その権力の使用が禁じられる事は『悪』でさえある。

「……いや、待てよ」

 逆に考えれば良いのではないか。
 三画しか使えないというのではなく、逆に使ってしまっても良いやと考えては、どうだ。
 そう、たとえ令呪がなくても、あのバーサーカーが命令を聞くようにすれば良いのだ。
 そのために令呪を使うのであれば――……。

「…………」

『絶対服従しろ』などというバカみたいな命令に使っちゃあいけない。
 そんな事は、ランプの魔神に「願いを増やしてください」などと言うようなものだ。
 アホ丸出しの行動をして死ぬのはゴメンだ。
 もっと限定的に、かつ効果的なものを考えなければならない。
 そう、例えば――例えばだ。

「俺の暴力には絶対に抗わず、受け入れろ」

 これならば、どうだろうか。
 限定的、局所的、効果的。
 その上で相手の心をへし折るのは、それこそ鉛筆を折るほどに容易い。
 ウェカピポの妹の弟は、何度だってそういう事を繰り返してきた。
 あの日、決闘で敗北するまでは。

「……ウェカピポの野郎ッ!!」

 ウェカピポの妹の夫は、呼吸を整えながらも掌の上に鉄球を転がした。
 音もなく回転を続けるそれを用いて、相手の感覚を狂わせる恐るべき技も彼には受け継がれている。
 人間には効くだろう。だが魔術師には? あるいはサーヴァントには……?

 ――俺の技が鈍っているかどうか、サーヴァントに通じるかどうか、『試す』には持って来いだ。

 そう、聞き分けのない犬をひっぱたくように、鉄球をバーサーカーへぶつけてやるのだ。
 どんな馬鹿な犬でも、殴られ、蹴られれば誰が主かを覚える。
 否ッ! そうしなければ犬は自分の誤ちに気づかず、主人を理解することもできない!
 そして何よりも、自分の犬を『調教』し、『始末』をつける事こそが主人の務めではないか。
 それにもし、あの無骨な甲冑の下が女であるというのならば――……。

「殴りながらヤりまくるのも、いいかもしれねぇしなァ……」

 窓の外からは夜明けの薄明かりが差し込み始めている。
 今日はまた、ずいぶんと忙しくなりそうだった。



「お前なあ、何考えてるんだよッ!?」

「そう怒るなって。悪い取引じゃあなかったろ?」

 怒鳴るウェイバー、にへらっと笑うアーチャー。
 ライブ会場を後にした二人は、ぶらぶらと歩いて帰路についていた。
 多少とはいえ魔力を消耗したウェイバーは途中、コンビニを訪れて栄養ドリンクにカルチャーギャップを覚えながら幾本か買い込んだ。
 店員が何か意味深な目つきをしていたのは、はなはだ不本意である。

「マスターに黙って勝手に進めるなよな! それにあの、名前とか……!」

「まあまあ。つまり明日の夜まではあのセイバーから撃たれる心配はない、ってことなんだし」

「でも一時的な休戦は……」

「前提だけど、それより確実。あ、一本もらうよ?」

「……良いけど」

 疑問形だが答えを聞くよりも早く、アーチャーはビニール袋からペットボトルを抜き取った。
 エナジードリンクのキャップを捻り、彼女はこくんと喉を鳴らして中身を煽る。
 ホントはビールかウィスキーが良いんだけどね、と僅かな笑い。

「ま、得るものは大きかったろ、ウェイバー?」

「それは否定しない。……けどやっぱり、お前弱いなぁ」

「あははははっ。そうだねぇ」

 しみじみと溜息を吐いたウェイバーを、自分の事だというのにアーチャーはけらけらと笑って受け流す。
 もとより初めからわかっていたことだ。
 19世紀末の、ちょっと大暴れした程度の犯罪者が、神代の英霊と真正面から戦えるわけがない。
 その事実を再確認し――なら正面から以外で戦えば良いとわかったのは、十分な収穫だ。

「やっぱ銃だね、銃。ウィンチェスターライフルが欲しいよ。1873モデル、ウィンチェスター73」

「銃砲店は確かあったと思ったけど、でも確か日本だと買うのめちゃくちゃ手続きいるぞ?」

「最悪、盗んじゃえば良いじゃない。どうせ他にも強盗がいるんだから、そっちにおっかぶさるでしょ」

「僕の良心の問題だよ! 真っ当に買えって言ってるんだ!」

「そこはそれ、ウェイバーの暗示術に期待ってことで」

「お前なぁ……。……良いけどな」

 横で「お?」とアーチャーが目を丸くしているのを無視して、ウェイバーは苦甘い栄養ドリンクを煽った。
 どっちみち、火力はあった方が良い。それもなるだけ長射程の――ライフルは。
 なにしろアーチャーは「アーチャー」なのだ。
 超遠距離からの射撃能力を有すれば、それだけでどれほどのアドバンテージになるだろう。
 足りないものは他から補えば良い。
 それは魔術師としての鉄則、基本中の基本だった。

「あとは、衣装かなぁ。あ、歌も考えなきゃだな。まあ別に私ならその場で合わせられるけど」

「お前、ホントに出る気かよ?」

「パンフ見たけどカエデって女はなんでも25歳らしいじゃない。私は21歳だよ? いける、いける」

 確かに欧米人にしては小さく小柄だ。ハイティーンといっても通じるかもしれない。
 身振り手振りも大きく今後の展望を語るアーチャーを横目に、ウェイバーは苦々しげに考える。

 ――何でそのくせ僕より背が高いんだコイツ。

「あ、それとも……あー、そっか、そっか」

 と、不意にアーチャーが、にやにやとチェシャ猫のように目を細めた。

「着飾った私を他のやつに見せたくないんだろ?」

「違う!」

 ウェイバーは顔を真赤にして怒鳴った。
 そんな気持ちが1%くらい無いではない事は、絶対に否定しなければならなかった。



「たぶん、セイバーはこのライブの関係者なんだと思う」

 真剣な面持ちで、けれど自分でもどこか疑ってかかるような慎重さで、ウェイバーはそう口にした。

「僕らは例の討伐令を受けてすぐ動き出した。一番かはわからないけど、初動は早い方だった。なのにセイバーはここにいたんだ」

「マスターはいなかったな。その分、私たちより速かっただけじゃないの? あとは拠点が近く、とか」

「うん、でもさ、考えてみろよ。僕らは『戦場になるかもしれないし、他の組が来るかもしれないから偵察しよう』で出たんだぜ?」

 だったら。

「――――なんでセイバーは、ここで他の陣営を待ち構えていたんだ?」

「同盟狙いか、ライバルを減らすつもりか、それとも気が早かったのか」

 アーチャーはちらりと椅子の裏から戦場を観察しながら、思いつきをそのまま口にするかのようにポンポンと案を放る。
 顔をしかめたウェイバーは、手元に目を落として空薬莢を弄びながら、顔をしかめた。

「……お前セイバーの言ったこと聞いてなかったのかよ」

「『この私に隠形は通じませんよ。聖杯を求めて集いし英霊であれば、堂々と姿を現しなさい!』だっけ?」

 覚えてるじゃないかと不平を漏らすウェイバーへ、アーチャーはついと指先を滑らせた。

「薬莢は捨てないでよね。あとでリロードするんだから」

「わかってるよ。……でさ、それ、守ってる側以外が言ったらおかしいセリフだろ。そうなると、さっきの言葉も意味が変わってくる」

「『会場を破壊するわけには行きません、引き離しましょう』?」

「今ここにいるの僕らだけだぜ? 高潔な英霊にしたって、そんなに気を使う必要ないじゃないか」

「普通なら、ね。……成程」

 アーチャーは「は」と歯を見せて笑った。ウェイバーは馬鹿にされるかと思って身を縮こまらせた。

「上出来」

「――は?」

 代わりにかけられたのは、ひどく優しげで、そして愉快そうなものだった。
 思わず目を瞬かせたウェイバーに、アーチャーはにっと八重歯を見せて微笑んだ――…………。



 朝一番でかかってきた電話は、ライブ会場で漏電事故と小火騒ぎがあったという連絡だった。
 驚いてテレビをつけると、朝一番のローカルニュースでそのことが取り上げられていた。
 幸い怪我人もなく、設備もスポットライトなど一部が破損していたものの、ライブ開催に影響はないらしい。
 スタッフの苦労を思いながらも、新田美波はほっと胸をなでおろし、しかし傍らに佇む執事姿の女性――セイバーを見上げる。

「ねえ、これって……」

「はい、ミナミ。聖杯戦争――サーヴァントと交戦しました」

「そう……」

「銃を使うアーチャーと、そのマスターである少年。戦った相手のバーサーカーは……その……良く覚えていないのですが」

 ついに始まってしまった。
 届けられた討伐令というものにも、街で引き起こされている事件の犯人として、二組の参加者の名前が上がっている。
 美波は物憂げな目線でそれを見つめると、一度くしゃりと丸めて捨てようとし、しかし溜息を吐いてその紙を広げ直した。

「ミナミ?」

「討伐令に参加するかはわかりませんが……。不審者がいて怖い、という事をプロデューサーさんに伝えましょう。これで、他の子も気をつけてくれるはずだから」

 新田美波はアイドルだ。彼女を守り、支えるために多くの人間が動いてくれる。
 それを彼女は自分の強みだと意識しているわけではない。
 ただ、友だちや仲間たち、アイドルを目指す彼女たちが危険に巻き込まれないようにと、思うだけなのだ。

 ――だからこそ。

 そう、召喚された夜にセイバーは言ってくれた。

「……さ、セイバー。今日はライブの前日よ。きちんと朝ごはんを食べて、練習しましょ」

「はい、ミナミ。すぐに準備をします」

 セイバーはそういって、てきぱきと執事服の上からエプロンをつけて台所に立った。
 美波は何となくその後姿を目で追いかける。綺麗だな、と思う。
 彼女自身はそう思っていないだろうけれど、胸はともかく、柔らかな肩から背中、腰、尻の線は魅惑的だ。
 大きさじゃないんだよ――とは、同じ事務所に所属するアイドルの言葉だが、至言だと思う。

「あ、ミナミ、その……」

「なあに?」

 そんな事をぼんやり考えていると、セイバーがひどく申し訳なさそうな表情で後ろを振り向いていた。
 美波は慌てて取り繕うように姿勢を正し、きりりと表情を引き締める。

「実は、アーチャーとの取引で、ライブに出させろ……と言われてしまいまして」

「ライブに?」

「勝手に取り決めをしてしまい、申し訳ありません。無理なら現金でとも、言っていましたが……」

 それは――非常識と言うべきか、それとも随分と優しいと言うべきか。
 命をかけた殺し合いでの手助けに対する代価として、どう評価して良いか、美波にはわからない。
 彼女はほっそりとした指を顎先にあて、うーんと考え込みながら眉を下げた。

「わからないわ。……たぶん予定に余裕はあると思うから、プロデューサーさんに相談してみる」

「すみません、お手数をおかけします。それと、もうひとつ……」

「何かしら?」

 セイバーは、どうも困りきってしまった子犬のような――期せずして美波と同じような――表情で、小首を傾げた。

「――――ミナミは、ベル・スタアをご存知ですか?」

「……はい?」

 西部開拓時代、"コルト・サンダラー"を手に荒野を駆け回った女ガンスリンガーの名前を、彼女は知らない。

 そしてもちろんセイバーも、それが偽名だなんて思いも依らなかったのである。



【442プロダクション前特設ステージ/1日目 早朝(6:00)】

※ステージで本日未明、漏電事故による小火が発生したというニュースが報道されました。
 これに伴うライブへの影響は今のところありません。

ウェイバー・ベルベット@Fate/ZERO】
[状態] やや疲労
[装備] 栄養ドリンク数本
[道具] 魔術的実験器具類一式
[令呪] 残り三画
[所持金] それなり(旅費+マッケンジー夫妻からの小遣い+アーチャーの稼ぎ)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜いて自分の実力を認めさせる
[備考]
1.討伐令については保留し、状況判断を優先するようです。
2.セイバー(スキールニル)、バーサーカー(モードレッド)を認識しました。
3.バーサーカー(モードレッド)を撃退しましたが、詳細識別に失敗しました。


ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム@アーチャー】
[状態] 健康
[装備] コルト・サンダラーx2
[道具] ガンベルト 予備弾多数 現代衣装多数
[所持金] それなり(ウェイバーからの小遣い+マッケンジー夫妻からの小遣い+自分の稼ぎ)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を楽しむ。
[備考]
1.セイバー(スキールニル)、バーサーカー(モードレッド)を認識しました。
2.バーサーカー(モードレッド)を撃退し、セイバー(スキールニル)に報酬を要求しました。
3.「ベル・スタア」を名乗ってライブに出演することを計画しています。


【スルト(スキールニル)@セイバー】
[状態] 健康
[装備] 万象焼却せし栄光の灰燼 焔の鎧
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:ミナミを守る
[備考]
1.ロキとの経験から、ジョーカーがライブ会場を襲撃するだろうと判断しました。
2.アーチャー(ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム)、バーサーカー(モードレッド)を認識しました。
3.バーサーカー(モードレッド)の撃退に成功し、アーチャー(ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム)にライブ出演を要求されました。
4.アーチャー(ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム)を「ベル・スタア」と誤認しています。


【新田美波@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態] 健康
[装備] 無し
[道具] 無し
[所持金] アイドルとしての平均的
[思考・状況]
基本行動方針:ライブを成功させる
[備考]
1.討伐令については保留し、対象の情報をアイドル達に周知、警告しました。
2.アーチャー(ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム)からライブ出演を要求されました。
3.アーチャー(ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム)を「ベル・スタア」と誤認しています。



【ウェカピポの妹の夫@ジョジョの奇妙な冒険第七部】
[状態] 疲労?
[装備] 剣・鉄球
[道具] 無し
[令呪] 残り三画
[所持金] 不明
[思考・状況]
基本行動方針:自陣営の戦力を把握する
[備考]
1.討伐令についての参加は保留し、状況の把握を優先します。
2.バーサーカー(モードレッド)の『調教』を決意しました。


【モードレッド@バーサーカー】
[状態] 軽傷
[装備] 王剣 不貞隠しの兜 騎士甲冑
[道具] 無し
[所持金] マスターに依存
[思考・状況]
基本行動方針:Faaaaatthhhhhheeeeeeeerrrrrrrrrrr!!!!
[備考]
1.ウェカピポの妹の夫の指示で偵察に向かいました。
2.アーチャー(ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム)、セイバー(スキールニル)を認識しました。
3.アーチャー(ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム)、セイバー(スキールニル)と交戦し、撤収しました。

時系列順


投下順


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:The Good, the Bad and the Ugly ウェイバー・ベルベット :[[]]
アーチャー(ヴェルマ・ヘンリエッタ・アントリム)

←Back Character name Next→
:The Good, the Bad and the Ugly 新田美波 :Aestus Domus Aurea
セイバー(スルト(スキールニル))

←Back Character name Next→
:The Good, the Bad and the Ugly ウェカピポの妹の夫 :[[]]
バーサーカー(モードレッド)) :To From

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最終更新:2017年03月03日 08:11