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Freaky Styley

一流のアーティストに必要なモノのひとつに『インスピレーション』がある――というのが彼の持論だった。

根拠には乏しい勘、および、その勘に身を委ねる勇気。
テキトーな思いつきや気まぐれと区別する方法などないが、それでも、直感は大事だ。
普段は臆病と紙一重なほどに慎重な彼ではあったが、それでも時には自らの感性を信じて『跳躍』してみる。
思慮深さと奔放さの自然な統合、それこそが彼の目指す自らの在り方であり、日々試行錯誤している所でもあった。

――冬木市新都に建つ、冬木ハイアットホテル。
最上階スイートの一室から見下ろしながら、男は自らの『直感力』のもたらした成果に、密かに自信を深めていた。

窓越しの眼下、夜が明けて間もない街並みには、ホテルより一回り小さなお城のようなビルディングと――
薄く白煙の上がる、準備中のライブ会場、だった場所。

上半身裸で意外と引き締まった身体を晒す音石明は、遠くの物音に耳を澄ますような仕草を、ゆっくりと解く。

「……赤い鎧のバーサーカーは引いたみてーだ。
 燃える剣のセイバーと、二丁拳銃のアーチャー、それにアーチャーのマスターらしい小僧は、手を組んだ。
 なんか揉めてやがるけどな。報酬がどうとか……あァ?
 ライブに出るだァ? 女アーチャーがかよッ?!」

双眼鏡でも使わない限り、とてもこの位置からは現場の細かい様子は見えない。
にも拘わらず、青年は『まるで見てきたかのように』――いや、『間近で聞き耳を立てているかのように』語る。
その背中を頼もしそうに見つめるのは、未だ豪華なベッド上に横たわる、燃えるような緋色の髪の女。

「なかなか役に立つものですわね、マスターの使い魔の雷獣も」
「おうもっと褒めてもいいんだぜ、遠慮するな――
 だが『使い魔』でも『雷獣』でもねぇよ、何度言えば分かるんだ。
 おれ様の『スタンド』、『レッド・ホット・チリ・ペッパー』……最高にクールなこのおれの『分身』だ」

長髪を掻き上げ、音石はキザったらしく微笑んで。
純白のシーツを身に巻き付けた紅葉も、外見だけは完璧な微笑みを浮かべてみせる。

「そう、そんな名前でしたわね。『チリチリチリチリパッパッパー』」
「全然ちげぇよ! ボケてんのかてめぇーッ!」
「臆病で弱虫なマスターにそっくりな、コソコソすることにかけては天下一品の」
「せ、せめて『隠密性に長けている』と言え!
 それにな、『スタンド』の中ではパワーもスピードも悪くねぇ方なんだぞ!」
「そう、前にもそんなことおっしゃってましたわね。
 その時は私の張り手一発で吹き飛ばされてましたけど」
「あ、あんときはコッチも充電足りてなかったんだよ! 電気を集めればもっとだなぁ!」
「はいはい」

まるっきり台無しである。
聖杯戦争が始まってすぐの頃、音石明はレッド・ホット・チリ・ペッパーと紅葉とで力比べを試みたことがある。
それは自陣営の力を計るためには必要な作業。
スタンドがサーヴァント相手にどれだけ対抗できるかは、実際に確認しなければ分からない。
……そしてその結果といえば、チリ・ペッパーの惨敗であった。片手で転がされ、勝負にもならない。
音石としては、切り札である『地域全域の電気集中』をすれば十分ひっくり返せるのではないかと見ているのだが。
切り札であるだけに簡単に試す訳にもいかず、紅葉と音石の力関係はその時の勝負のままに固定され。
ようやくイイ所を見せられたかと思ったのにこの扱いだ。

(まあいいさ。こんな一晩の関係程度でどうにかなる相手とも思っちゃいない)

貞操観念なんてものには中指を突き立てるような2人だけに、その程度の絆への期待もあまり抱いてはいない。
紅葉の性格もイヤというほど知っている。
音石は気を取り直して、握りしめていた手紙に目をやる。

討伐令。

それは、ある二組の主従を討て、というルーラーからの指令書。
二人が安眠を妨げられたのも、眼下で3組の主従が争っていたのも、この手紙が全ての引き金だったのだろう。
自宅でもない高級ホテルに泊まっていた2人の所まで届いた、この手紙が――!


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そもそも、音石明はこの冬木市の舞台において仮初の住居を持っている。
一人で暮らすにはやや広い、だが二人で住むには正直狭い、深山町の片隅にある1LDKのアパート。
壁が薄いため、楽器の演奏がロクにできない他は不満のない部屋である――まあそれが最大の問題でもあったのだが。

そんな訳で、盗んだ金がたんまりあるのをいいことに、貸しスタジオに入り浸っていた2人。
その日、紅葉と思いのほか息の合ったセッションができたことで、音石の頭にある邪念が浮かんだ。

  ――これは、ひょっとして『ヤれる』んじゃねぇかァ~~?!

演奏の興奮のままに、うっとりとした恍惚の表情を浮かべる紅葉は、気持ちを掻き立てるのに十分な存在だった。
音石明は欲張りな男だし、行動を起こせないようなチキンな青年でもない。
ただ今夜キめると心に決めたなら、行動は確実に、そして大胆に、だ。
安っぽいラブホテルに連れ込むなど論外。
幸い、今なら金はある。
部屋を取るなら最高級、一番イイやつだ。

12月22日という日付も、音石に味方した。
翌日からはクリスマスイブ、クリスマスと続く大人気のシーズンだが、その直前の僅かな間隙。
『連泊する場合は部屋を移動して頂きます』と何度も念押しをされたが、最上階スイートは見事に空いていた。
いまいち意図が分からないままといった風の紅葉を連れ込み、最高級のディナーを楽しみ、そして……

いやまあ、結局のところ、最後には主導権は奪われてしまったのだけども。

ともあれしっかり楽しんだ2人は、早朝に雷と爆発、それに銃声のような音に叩き起こされ。
途中からではあったが、しっかり神話級の戦いっぷりを観察させて貰うこととなったのだった。

まさに偶然の賜物、だが音石にとってそれは、自らの『インスピレーション』に従ったことで得た戦果、なのだった。


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「しかし、すっかり真っ赤に染まっちまったなァ~~」

ウンコ座りの恰好で、音石明は手元に戻した『レッド・ホット・チリ・ペッパー』をしげしげと眺めながら首を傾げる。
二足歩行する恐竜のような、小柄な子供のような、彼のスタンド像。
バチバチと周囲に電気をまとうのは変わりなかったが――ただ一点。
黄色かったはずのスタンドは、赤一色に染まっている。
文字通り『レッド・ホット』な外見だ。

「どうやら『神秘』の力も帯びているようですわね。魔力も少し感じますわ」
「やっぱ『あの時』の赤い雷のせいかねェ……?」

3騎のサーヴァントの激突の現場のすぐ近くにまで、『チリ・ペッパー』を偵察に出した音石。
彼のスタンドは電気機器の中に潜んでいる限りにおいて、ほぼ看破不能なほどの隠密性を誇る。
これ幸いとライブ用の機材の中から様子を伺っていた彼であったが……
両陣営がさあ全力で激突するぞ、と力を大きく溜めた、その時。

赤い鎧のバーサーカーから放たれた赤い稲妻のひとつが、『チリ・ペッパー』の潜むスポットライトを直撃したのだ。

回避するだけの余裕はなかった。しかし飛んできたのは雷――つまり『電気』の塊でもあった。
反射的に音石はその攻撃を『吸収』し、すぐさまその場を離れ。
恐る恐る別の機材の中に戻ってきた時には、一連の戦闘は終わっていた。
最後に盗み聞いたのは、セイバーとアーチャー主従の短い戦後処理の相談。

「雷獣を戻してしまいましたけれど、もう偵察はよろしいのです?」
「ああ。
 セイバーは多分ライブ関係者、アーチャーの名は『ベル・スタァ』、アーチャーのマスターは『ウェイバー』。
 アーチャーの二人組は偽名かもしれねぇけどな。そしてアーチャーは明日のライブに出る気マンマン。
 これだけ分かれば十分だ。下手に深追いして勘付かれてもヤバい」

慎重過ぎるほどに慎重な音石は、それ以上の欲張りは危険だと直感した。
特にあのアーチャーは要注意だ。理屈抜きに分かる。
直接的な戦闘力は英霊としては低いようだったが、それでも持てる力を出し惜しみしていたような印象を受ける。
『レッド・ホット・チリ・ペッパー』に気づいていたとは思わないが、第三者の『視線』を意識しているような態度。
戦闘中の覗き見程度ならともかく、ああいうタイプをべったり尾行するのは得策ではない。
名前と大まかな行動方針が分かれば、他にも調べようはある。焦る必要はない。


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「で、だ……肝心の『討伐令』について、だが」

二組のバーサーカー主従を討伐せよ、というルーラーからの示唆。
片方は人喰いコンビ、片方は双子のいかれピエロというろくでもない連中。
報酬はどちらも、討ち取った者に令呪一画分の追加。
実に魅力的な報酬だし、早朝から動き出す奴が出るのも分かるし、しかし実行はハイリスク。
実際にこうして動き出している他のチームを見てしまえば、自分たちも方針くらいは確認しておく必要がある。

「貰えるモンがあるなら貰ってはおきたい。
 けれど、上から命令されてハイ分かりましたって従うなんてのは――」

「「『ロック』じゃない」」

音石と紅葉の声が綺麗にハモる。
しゃがんだままニヤりと笑う音石、ベッドの上に身を起こし、こちらもニヤりと笑う紅葉。

「とはいえ、頂けるモノをむざむざ見逃して他所様に掻っ攫われるなんてのは――」

「「『我慢』ならない」」

今度は紅葉からの言葉に、音石が綺麗にハモらせる。
2人は悪そうな表情で視線を交わす。音石が立ち上がる。シーツをまとって紅葉もベッドから降りる。

「決まりだな。
 真面目に頑張って探したりはしねェ。真面目に頑張って先陣切ったりもしねェ。
 そういう仕事は真面目な『良い子ちゃん』たちにやって貰う。
 さっきのセイバーやアーチャーみたいな、な」
「けれど、こちらはいつでも臨機応変。
 何か騒ぎがあれば駆けつけて、標的の命だけ、戦果だけ横から素早くサクッと頂く――!」

確認するように呟くと、ガッ!と腕をクロスさせる2人。
すっかり息はピッタリである。

「それで、キャスター。
 美味しいとこだけつまみ食いするとして……おめーの『鬼道』とやらは結局どうなんだ?」
「やはり『死人の霊』は気配すらありませんわね。
 どこぞのファッキンキャスターが『何か』やらかしているのでしょう。
 あとは例の『虫の羽根をつけた異国の小人』や『異国の化け猫』ばかり居やがりますわね」
「フェアリーだかピクシーだか知らねェが、どいつもこいつも好きにやってやがるなァ……!」

本来であれば、情報収集において紅葉の鬼道は非常に有用なモノになるはずであった。
何しろ霊的な存在のほぼ全てを力づくで味方にできるのである。
特に殺人事件の捜査であれば、『当事者』に話を聞くのが一番。
そしてそれが紅葉にはできる――はずだったのだが。

蓋を開けてみれば、冬木市はどこを歩いても死人の霊など見当たらず。
日本には相応しくない、西洋風の妖精ばかりが散見されるという有様だった。

「あの小妖怪どもも、脅せば一回は言うことを聞かせられるでしょうけれどね……。
 それをすれば、確実に『あれを使役している者』に勘付かれますわ。そして対策を取られてしまうでしょう」
「そうすると妖精どもを脅すのは『最後の手段』だな。
 まだ使う必要はねェ。切り札は必要な時までとっておくもんだ」

情報収集の面では二手三手遅れているようだが、しかし他の陣営の行動の一端を掴めただけでも儲けものだ。
もうこの際、標的の発見まではそいつらに頑張ってもらうとしよう。
いざとなれば妖精を捕まえて締め上げて、強引に割り込みだ。


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「それで、マスター。『討伐令』はそれでいいですけれど、『あちら』はどうなされるのです?」
「『あっち』? あっちって何のことだ?」
「もう、嫌ですわ。『あれ』です、『あれ』」

紅葉は窓越しに眼下のステージを指さす。
いつの間にやらセイバーもアーチャー主従もおらず、一般人らしき男たちが慌てた様子で動き回っている。
そういやせっかく組み上げた舞台のセットも壊されたのだったか。朝からご苦労様である。

「ああ、三流アイドルどものライブか」
「アーチャーは参加するというのでしょう? でしたら、私も……」
「甘い、甘いぜ紅葉ッ!!! そいつはクソみてぇな発想だッ!!!」

バッ! と裸の肩に愛用のギターをひっかけると、音石はジャンッ!!!と掻き鳴らす。
アイデアをけなされた紅葉が少しムッとした表情を浮かべるが、音石はまるで構わず。

「他の誰かの舞台に! こっちから頭を下げて!
 後からお情けで入れてもらう、なんて発想は『ロック』じゃねぇッ!」
「…………ッ!!」
「ヤるなら真っ向勝負だッ! 向こうに負けない舞台を、おれたち自身の手で作り出すんだッ!
 そうだ、ゲリラライブだっ! アイドルどものライブの時間に合わせて、『路上ゲリラライブ』だッ!!
 あいつらのライブを見に行った連中が後から泣いて悔しがるくらいの伝説を、おれたちの手でブチ上げるんだッ!!」

音石明は断言する。
決して、『アーチャーの後から言っても二番煎じだしなァ、インパクトねぇよなァ』とは言わない。
決して、『女の子アイドルのライブに参加なんかしたら紅葉が主役になっちまうじゃねーか!』とも言わない。
思っても口には出さない。
その代わり、堂々と詭弁を口にする。なんだか言ってるうちに自分でもできそうな気がしてきた。きっとイケる。

クリスマスの夕刻、颯爽と現れた謎のギターリストによるスペシャルライブ。
そこから始まるスーパースターの伝説!
束にしてナンボのアイドルどもの定例ライブなんぞハナにもかけないような大盛り上がり!
噂を聞いて押しかけた観衆の歓声が耳に浮かぶようだ!!

音石明は自らの幻視と幻聴にうっとりとした表情を浮かべる。紅葉もまた、同じような表情を浮かべる。

「ああ、旦那様……! 流石ですわ……! 演奏はクソみたいですけど発想のスケールがBIG……ッ!」
「おう、もっと褒め称えていいんだぜ……って、んあ? 『旦那様』?」

なんだか聞き捨てならない単語を聞いたような気がする。
気のせいだろう。あるいは言い間違いか。
まあいい、今は紅葉も路上ライブというアイデアにヤる気十分、そのことが一番大切だ。

「そうと決まればそのギターを私に……」
「そうと決まれば、まずは場所探しだ! どこでやれば人が集められるのか、こういうのは下見が肝心なんだ!
 演奏の曲目だって考えなきゃならねぇし、衣装だって用意しなきゃならねェぞォ……!」

何やら紅葉が言いかけたのを遮って、音石は綿密なプランを考え始める。
場所はどこがいいだろうか。このホテルの前か、爆破されたセンタービル前か、それとも。
何にせよ『伝説(レジェンド)』の始まりだ、念を入れ過ぎて困るということはない。

「さっさと服を着ろ、すぐに出かけるぞ!」

刮目せよ! 世の中のボケども! 未来のスーパースターの出陣だッ!!!


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【新都 冬木ハイアットホテル最上階スイート/1日目 早朝】

【音石明@ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]こだわりのギター
[道具]携帯電話、財布など
[所持金]盗んだ現金(そこそこ)&盗んだ貴金属類(たっぷり・ただし換金手段のアテなし)
[思考・状況]
基本行動方針:美味しいトコを掠め取りつつ聖杯戦争で勝利を。ついでに伝説開始
[備考]
1.討伐令には真面目に取り組まないが、チャンスがあれば美味しいとこだけ横取りを狙う
2.442プロのライブの時間に合わせて『路上ゲリラライブ』を決行する! そのための準備だ! まずは場所探し!

※深山町の片隅にアパートがあります。
※バーサーカー(モードレッド)、セイバー(スルト)、アーチャー(ヴェルマ)の戦闘を途中から観戦していました。
 セイバー(スルト)とアーチャー(ヴェルマ)主従の同盟を確認しました。
※スタンド『レッド・ホット・チリ・ペッパー』は、バーサーカー(モードレッド)の赤雷の余波を少量吸収しました。
 スタンドの色が黄色から赤へと変化し、僅かに神秘の力と魔力を纏っています。

【キャスター(紅葉)@史実(10世紀日本)】
[状態]健康、魔力補給十分、お肌ツヤツヤ
[装備]紅葉琴(ギター型)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:美味しいトコを掠め取りつつ聖杯戦争で勝利を
[備考]
1.討伐令には真面目に取り組まないが、チャンスがあれば美味しいとこだけ横取りを狙う
2.442プロのライブの時間に合わせて『路上ゲリラライブ』を決行ですわ! そのための準備です!

※バーサーカー(モードレッド)、セイバー(スルト)、アーチャー(ヴェルマ)の戦闘を途中から観戦していました。
※冬木市に死者の霊が居ないことに気付きました。何らかのキャスタークラスの干渉を疑っています。
※キャスター(パトリキウス)が斥候に放った妖精たちの存在に気付いています。
 1回に限り脅して支配権を強奪できると読んでいますが、実行すると確実にパトリキウスに察知され対策されます。

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最終更新:2017年03月26日 13:12