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Hurt Voice

☆魔女

ある時、とある魔女が言った。

「ねぇ、スノーホワイト。この聖杯戦争の参加者の一人にさぁ、『直樹美紀』って子が居るよね?
「そうそう。まるで漫画みたいに日本人離れな髪色をした、ガーターベルトのエロい女子高生さ。
「あの子についてのクイズが二つほどあるんだけど、して良いかな?
「っていうか、良いよね。 じゃあ、するよ?
「さーてさてさて! 問題です!
「第一問!
「この聖杯戦争において、直樹美紀ちゃんが一番幸運だった事はなんでしょーか!
「シンキングターイム! チックタク! チックタク! チックタ――
「……………………。
「おいおい、なんだいその顔は。
「まるで、『こんな殺し合いに呼ばれた時点で、幸運も何もあったもんじゃないだろ』とでも言いたげじゃあないか。
「それともなんだ。問題があまりにも簡単すぎて、出題者のボクに呆れているのかい?
「そりゃそうだよねぇ。美紀ちゃんが一番幸運だった事なんて、考えなくても分かるもん。
「うんうん。
「答えは『ランサー――カメハメハ大王を召喚できた事』、だね。
「この聖杯戦争では、キャスターが他のクラスよりも比較的多く召喚されている。
「四体も居るんだぜ、四体も。
「多すぎでしょ。
「そんな中で、キャスターに有利なスキルである『対魔力』を持ったクラス――ランサーを召喚できたのは、これだけでもかなりのアドバンテージだ。
「三騎士に相応しく、あの王様はステータスもかなり高いしね。
「多分、総合ステータスは全サーヴァントの中で一番高いんじゃないかな?
「加えて、宝具もめちゃめちゃ強いしねえ。
「【大地の怒り、加護受けし者の槍を此処に(イヘ・ペレ)】だっけ?
「超高熱の溶岩の放出――文字通り、とんでもない『火力』の宝具だ。
「雪細工のように脆くて儚いボクなんかが食らったら、ひとたまりもないだろうねぇ。
「次に、カメハメハ自身の性格。
「こちらは何かと問題児が多い偉人にしては珍しく、優良極まりないと言えるだろう。
「歴史上の実際のエピソードを紐解いてみれば分かるけど、彼の人となりは人徳と慈悲に満ちたものさ。
「非戦闘員の保護を唱えた『ママラホエ・カナヴィ』なんかが良い例だね。
「強くて優しく、無力な人を守ってくれる戦士。
「女の子の憧れみたいな人だねぇ……。
「どう? やっぱ、スノーホワイトもそーゆー人がタイプだったりする?
「いつか出会えると良いね、そーゆー人に。
「もしかして、もう会ってたりするのかな?
「まあ、そんな事はさておき。
「続きまして第二問!
「さきほど、直樹美紀ちゃんが一番幸運だった事を聞きましたが!
「まーしーたーがー!
「ではでは? その次に、二番目に幸運だった事はなんでしょーか!?
「シンキングターイム!
「チックタク! チックタ――
「……………………。
「やれやれ、ノリが悪いと嫌われるよ? スノーホワイト。
「それともそのリアクションは、問題が難しいから答えられないって意味かい?
「仕方ないなあ。
「ま、たいていの場合、『二番目』ってのは認識されず、意識されない事が多いからね。
「どこぞの人喰い風に言うならば、『百点と九十九点の差は一点ではない。その間にはものすごい違いがある』って事かな。
「例えば、『人類史上最大の発見・発明を、一人目とは僅差ながらに、二番目に達成した人物』なんて、だーれも知らないだろう?
「日本人のキミにも分かりやすく、更に例を上げるなら、『日本一高い山は富士山だと知っているけれども、二番目に高い山はよく知らない』だね。
「つまり、この問題の難易度が上がるのは必然だったというわけだ。
「けどさぁ、それでも何らかのアンサーは欲しかったなあ。
「むぅ……。
「ま、いいや。そんじゃ、答え合わせー!
「カメハメハを召喚できた事の次に美紀ちゃんが幸運だった事――それはね、『女神ペレを無力な状態で呼べた事』だよ。
「意外な答えだろう? 一番幸運だったのが『力を持ったものの召喚』で、二番目に幸運だったのが『力を持たないものの召喚』なんてさ。
「しかし、これは紛れもない正解なんだぜ。
「たしかに、女神ペレが本来有しているはずの火炎と暴力の権能は、戦争において非常に役立つかもしれない。
「その一部がカメハメハの宝具として顕現している【大地の怒り、加護受けし者の槍を此処に(イヘ・ペレ)】だけでもあの威力なんだからね。
「けれど、それはあくまで力単体を見た場合での話だ。
「力の使い手が、あの脳内常夏パラダイスの女神様ってのが問題なんだよ。
「世界中、どの神話を読んでみても、大抵の神様は何かと『力を持て余している子供』じみた行動が目立つだろう?
「その中でも女神ペレは、トップレベルのチルドレンなのさ。
「気に入らない事があったらすぐにプッツンブチ切れて、火炎と溶岩を辺りに振りまくイカれた奴。
「自分の彼氏が妹に寝取られたら、二人をまとめて焼き殺そうとするヒステリーな女。
「嫌いな奴との喧嘩の為に、島ひとつ巻き込む大災害を起こすような神様。
「それが、女神ペレというキャラクターなんだよ。
「だからもし、あの女神様が火炎と暴力の権能を十全に有した状態で此処に呼ばれていたら――この街は一日足らずで溶岩の底に沈んでいただろうね。
「炎上都市 冬木になり、烏有に帰していたはずさ。
「そんな事は考えるだけで恐ろしい――震えが止まらないよ。ぶるぶる。
「……実を言うとね、女神ペレが現界したと初めて知った時、ボクはすぐさま彼女を潰し、この聖杯戦争から排除しようと思ったのさ。
「それほどまでに、女神ペレの力――性格(キャラクター)は危険すぎる。
「まあ結局、女神ペレはそこらの三流魔術師以下の無能状態で呼ばれていたから、討伐令を出したり、ルーラーやボクが直接出向いたりなんてことはせずに済んだんだけどね。
「どれだけ危険な性格をしていても、何も出来ないんだったら、放っておいても大丈夫だろう?
「いやぁ、よかったよかった。
「……しかしだね。
「それならそれで、一つ疑問に思う事があるんだ。
「一切の力も持たずに現界して、一体ペレは何が出来るのかなあ?」

☆女神ペレ

「はっ――」

深山町の住宅街に位置するマンション。
その一室である、直樹美紀の部屋。

「――くしょん!」

そこで、女神ペレは盛大なくしゃみをした。
カメハメハの召喚物、すなわち霊的存在である彼女は寒さを感じず、くしゃみもするわけがないので、これはおかしな事である。
だが、

「誰かが私の噂でもしているのかしら? 主に、私から離れて寂しくなったであろうミーちゃんとかが」

と、くしゃみをした当の本人はそのような解釈をし、それに納得した。
ペレは両手を前に投げ出し、頭を顎で支えるようにして、テーブルに上半身を倒している。
『ぐうたらぐうたら』というオノマトペがよく似合う格好だ。
彼女の両肘の間――目と鼻の先に置かれていた空のプラスチックパックは、くしゃみに飛ばされ、テーブルの端から落ちて行き、床に当たると、カンッという軽く、物寂しい音が部屋に響いた。

「こんなに早く無くなっちゃうだなんて……完全に予想外だったわね」

かつては美味しい苺をこんもりと詰めていた残骸が落ちていったのを目にしつつ、ペレは残念そうに呟いた。
一パックに多くても精々十数個程度しか入っていない苺をひょいぱくひょいぱくと食べていれば、すぐに無くなるのは当たり前だ。
しかし、そんな因果なぞ知るもんかとばかりに、ペレはただただ不機嫌そうな顔をしている。
いや――彼女の機嫌が損なわれているのは、何も苺の在庫切れだけが原因ではない。

「それにしても、ミーちゃんはまだ帰って来ないのかしら?」

彼女を置いて外に出て行った直樹美紀も、その一因であった。
壁に掛けられた時計を見る――美紀が出て行ってから、まだ半時間も経っていない。
しかし、ペレにとってみれば、それは数時間に等しい長さだ。
彼女の気は、火の付いた線香花火の寿命よりも短いのである。

「まったく、この私を置いて出かけるだなんて……許せないわ!」

ペレは眉を吊り上げて、怒りの言葉を口にする。

「帰って来たらたーんまりと苺を強請ってやるんだから!」

たとえ美紀が出掛けていなくても、苺を食べ終えていたら、どっちみち強請っているであろうが、ともかくペレはそう叫んで、両腕全体でテーブルをババンッと叩いた。
まるで癇癪を起こした幼児のようだ。
その拍子に、テーブルの端に置かれていたテレビのリモコンが落ちた。
ガチャンッ――と。
プラスチックパックが落ちた先程よりも、重い音が鳴る。
と、同時に、室内に設置されているテレビが起動した。
どうやら、床にぶつかった際にリモコンのボタンが押されたらしい。
さっきまで真っ暗だった画面が、明るく輝いた。
その中では人が動き、喋っている。
突然の出来事に驚いたペレは、動きをピタリと止めた。

「えっ……と……そう、たしか、これはテレビって言うのよね。知ってるわ。ミーちゃんがたまーに見ていたもの。ええ……遠くの映像が見られるっていう……」


猫のように目を見開くペレ。
テレビに興味が湧いたのだろう。
さきほどまでの怒りはどこへ行ったのやら、突如発声能力を失ったかのように静かになり、食い入るようにしてテレビを見つめている。
やがてペレはソファから降りてテーブルの向こうのテレビの前まで行き、そこの床へ直に座った。
『テレビを見る時は離れて見てね!』というお決まりの文句を完全に無視したスタイルである。
しかし、テレビすらよく知らないペレにとって、そんな注意は知った事ではないのであった。

☆輿水幸子

ローカルテレビ局――名前の通り、ローカルなテレビ局である。
正式には長ったらしい名前が付いているのであろうが、特に詳しく明かす必要もないだろうから、そのまま『ローカルテレビ局』と呼ばせてもらうことにする。
ここでは日夜、冬木市を中心とした県内各所の情報を発信しており、情報と共に人の出入りも激しい。
情報番組で人喰い殺人や連続窃盗についてそれらしいコメントを語る、なになにの専門家やら取材班などが良い例だ。
更に彼らの他にももう一つ、最近この施設に度々出入りしている人々がいる。
それはアイドル――血生臭い殺人事件や不気味な窃盗事件とは無縁な、輝かしい職業に就く少女たちである。
市内に事務所を構える442プロダクションに所属する彼女らは、とある理由から、最近ローカル番組に出演する機会が増えているのだ。
その理由とはずばり、『クリスマスライブ』。
来る12月24日に開催を予定している、442プロダクションの一大イベント――その宣伝の為、毎日何人かは事務所所属のアイドルたちが、テレビに出演しているのであった――。
さて。
12月23日の朝。
テレビ局内にある楽屋の一室には、三人のアイドルが居た。
皆それぞれ、煌びやかで華やかな、目立つ衣装に身を包んでおり、まるでパーティを控えたプリンセスたちのようである。
そんな三人のうちのひとり。
左右に外ハネの生えたヘアスタイルをしたカワイイ少女――輿水幸子は、普段よりも神妙な、しかしそれでもカワイイ面持ちで椅子に腰掛けていた。
彼女は冷や汗を流しながら、正面にある鏡の中に映る自分と、壁に設置された掛け時計を交互に見つめている。
どうやら、この後自分がする仕事――朝の情報番組への出演に、緊張しているらしい。
何せ、プロダクションに所属する全アイドルを代表して生放送へ出演するのだ――緊張するのも、無理はない。
その上、本日幸子が共演する人物には、同じ事務所のアイドルやニュースキャスターだけでなく、何故か突然442プロダクションクリスマスライブに興味を持ち、プロダクションのスポンサーになったという『トニー・スターク』まで居るのだ。
世界ランクで上から数えた方が早いほどの大企業のトップ――そんなビッグネームとの邂逅に向けて、緊張するなと言う方が難しいであろう。
幸子のそんな様子を見て、同じく楽屋内に居た他の二人の少女が、幸子の背後から心配そうに声を掛けた。
夜空に浮かぶ月のような金色の髪で片目を隠している少女の名前は白坂小梅で、銀色のロングヘアからぴょこんと長いアホ毛の生えている方の少女は星輝子と云う。
彼女たちの容姿は幸子に勝らずとも劣らず、世間の美的基準を十二分に満たしていた。

「さ、幸子ちゃん……き、緊張、し、してるの?」
「フ、フヒ……あ、ああ、安心するんだ……わ、私たちが付いてるぞ……」

励ます二人の方こそ、幸子以上に緊張しているように思われた――普段以上に声が震え、顔色はますます白くなっている。
まるで、脳の言語野が壊れてしまったゾンビのようだ。
なんて頼りない励ましであろう。
しかしそれを受け、幸子は逆に「こういう時はボクがしっかりしなくては」と気を引き締めた。
彼女の身体を蝕んでいた、冷たい何かがすうっと消えて行く。
よく聞く、『人間が一番しっかりするのは、自分よりダメな人間を見た時』という話は、どうやら本当だったらしい。
幸子は前傾していた背をまっすぐ伸ばし、自身の胸の真ん中に手を添えて、小梅と輝子の方を向いて立ち上がった。

「フフーン!」

幸子は室内に蔓延る全員の緊張や不安をまとめて吹き飛ばすように、大きな声で言う。
わざわざ大声で言ったのは、小梅と輝子は勿論、自分を鼓舞するためでもあるのだろう。

「小梅さん、輝子さん。ボクが緊張しているですって? このカワイイボクに限ってそんな事、あるはずがないでしょう!?」
「でも……膝が、震えてたよ?」
「あれは武者震いです!」

武者震いがカワイイ少女が言うのに相応しい言葉かどうかはさておき、幸子はそう言い切って、薄い胸を張った。

「そう! むしろ、今からの仕事が楽しみで楽しみで仕方がないんですよ、ボクは! 何せ、多くの人にボクのカワイさを見せつけられるんですからね!」

彼女の身体の構成物質が『水、カワイさ、自信』の三つであると言われれば思わず信じてしまうほどに威勢のいい――側から見れば虚勢や強がりを一切感じさせられないポーズを取りつつ、その上カワイらしいキメ顔まで加えて、幸子は高らかに言った。
彼女のスピーチを聞き、小梅と輝子はぽかんとした表情をする。
だが暫くすると、どちらからともなく小さく笑い出した。
くすり、くすくす――と、まるで森の妖精のような二つの笑い声が、室内に響く。

――なぜ急に笑うんですか!? 何か、おかしな事でも言ってしまったんでしょうか……。

ついさっき吹き飛ばしたはずの不安に、また別方向から襲われそうになった幸子であったが、彼女の心情を察したのか、小梅と輝子は「違う違う」と言いながら、片手で否定のジェスチャーを取った。

「ようやく、普段の幸子ちゃんに戻ったと思ったら安心しちゃって……思わず、笑っちゃったの」
「やっぱり……幸子ちゃんは、いつも通り自信満々な方が良い……カワイイな……」
「そ、そんな理由でしたか……」

安心したような、呆れたような顔をする幸子。
未だ口元に微笑みを残してる小梅と輝子を見つめつつ、しばし黙していた彼女であったが、やがて自然と頰が綻び、二人と一緒に照れ臭そうに笑い出した。
小梅と輝子が幸子を、幸子が小梅と輝子を――互いが互いを思いやれる自分たちの関係が、何だかとても愛おしく思えたからである。
それは小梅たちも同じ事を考えたのであろう、彼女たちの笑みもいっそう深くなった。
少女たちの笑い声と共に、カワイく、そして幸せな空気が室内の空間を埋め尽くす。
そこにはもう、緊張や不安なんてものは一ミリグラムたりとも残っていない。
この調子なら、彼女たち三人でかの大社長を前にしても、きっと普段通りに振る舞う事が出来るであろう。
そのまま幸子たちは、スタッフから番組開始の呼び出しが来るまで、一緒に笑い続けたのであった。

☆女神ペレ

「誰よこのオジさん」

女神ペレは目の前のテレビの画面内に映るアメリカ人男性に対して、そのような感想を抱いた。
男の名は『トニー・スターク』。
米経済の影響を強く受けている日本において、超が付く程の有名人である。
画面内の彼は朝の情報番組(ニュース)に出演しており、微笑みと共に簡単な自己紹介を済ませた後、何やら語り出した。
語った内容は、彼が442プロダクションに興味を持った事や、今後同プロダクションのスポンサーになりたいといった事だ。
たかだか一都市に置かれた芸能プロダクション――そこへ、世界的有名企業の社長が経済的支援を行うのは、異例の事態である。
異常と言ってもいい。
ローカル番組どころか、全国ネット、世界規模で報道されてもおかしくないほどのビッグニュースだ。
けれども、スタークをオジさんと言っていることから察せられる通り人間世界の事情に然程詳しくないペレは、歴史的とも言えるその衝撃映像を、興味なさげに見ていた。
テレビが点いた当初の興味津々な態度は何処へ行ったのであろうか。
チャンネルを変える方法を知ってさえいれば、すぐさま変えているくらいの興味の無さっぷりを、ペレは見せている。
しかし、トニー・スタークの次に紹介される人物たちを見た瞬間、彼女の態度はまたも百八十度変わる事になるのであった。

☆トニー・スターク

トニー・スタークの戦いの幕開け、則ちニュース番組への出演は上々に始まった。
そんな確信を胸にトニーは演説を終え、自分の席に腰を下ろした。
座った彼と入れ替わるように、三人の少女が立ち上がり、彼女たちの方へカメラが向いた――トニーの視線も、それにつられる。
彼女たちこそが、トニーがこの番組に出演する事になったきっかけである442プロダクション所属のアイドルたちだ。

(外ハネが生えている少女がサチコ、金髪の少女がコウメ、長髪の少女がショウコ、だったか……)

トニーは三人の少女の言葉に耳を傾ける。
ライブの宣伝自体は一時間前の放送中に、昨年のクリスマスライブ等の映像を用いて行われたらしいが、アイドルが直々に出演して宣伝するのは、今日ではこれが初である。
少女たちの幼い声で語られる宣伝は、まるでクリスマスプレゼントのように魅力的で、開催が楽しみになるものであった。
聞いているだけで、他の誰よりも彼女たちこそが、そのイベントを一番楽しみにしている事が伝わって来る。
その様子を微笑ましく思いつつ、少女たちの楽しみをこれから自らの手で台無しにしてしまうという事実に、トニーは申し訳なさを感じた。

(しかし、そうでもしなければ、彼女たちは命の危機に晒される事になる……それだけは、絶対に避けなくてはならない)

トニーの脳裏に、数時間前にモニター越しで目にした映像が浮かぶ。
笑い声。振り下ろされる鉄パイプ。割れるフロントガラス。二人のピエロ――そして、銃声。
あの映像を見てから、トニーは442プロダクションとスポンサー契約を迅速に結び、テレビ出演もその日の朝に間に合わせたのだ。
忌々しい道化師共の魔の手から、アイドルたちを守る計画は着々と進んでいると彼は自負していたし、事実その通りと言えよう。
シールダーの生産能力とトニーの経済力と権力を持ってすれば、道化師共の凶行を食い止める事は、限りなく可能に近い。
しかし、だ。
残念な事に、トニーの計画には一つ重大な欠陥があった。
『いくら道化師達への対策を講じようとも、それ以外の参加者――例えば、道化師共と同じく討伐令を出された人喰い――がライブ前にアイドルを襲って来たらどうするのか?』
彼がその欠陥に向かい合うのは、これから数分後の事になる。


「そこの君。止まりなさい」

制服の上から防寒着を着込んだ警備員の男は、ローカルテレビ局の正面玄関に向かって来た白髪の青年――滝澤政道を正面から呼び止めた。
血まみれのローブに身を包んだ、どう見ても危険な不審者がやって来たのだ――警備員として、呼び止めるのは当然である。
しかし、声を掛けられた本人である滝澤はそれを無視し、歩みを止めなかった。
己の発言を無視された事で機嫌を悪くしたのだろう――警備員の男は警棒を取り出し、口を大きく開いて叫んだ。

「おいッ! 止まれと言って 『ズブゥッ』
「邪魔だ」

滝澤とぶつかった瞬間、行く手を阻む壁の如く立ちはだかっていた警備員の身体は、青年の片腕によってまるで豆腐のように易々と貫かれた。
生物としての生存機能を一瞬で失った警備員の男の膝からは力が抜け、彼はそのまま地面に倒れ伏す。

「俺が通る」

滝澤の片手には、警備員の男の身体を貫いたついでに掴んだ臓物があった。
もぎ取られたばかりのそれは、赤い血を纏っており、実に新鮮な色味を放っている。
滝澤はそれを齧りつつ、先ほどまでと変わらぬ歩調で進み、テレビ局の中へと入って行った。
それから一分と経たない内に、テレビ局の一階フロアが警報と血と悲鳴に沈んだ事は言うまでもあるまい。

☆女神ペレ

「ライブ!? アイドル!? 歌!? ダンス!? ステージ!? しかも明日、近所で開かれるの!? 何これ楽しそーう!」

空に昇る太陽のように目をキラキラと輝かせながら、女神ペレはテレビ画面を見つめていた。
そこにはトニー・スタークに替わり、まるで楽園に住む妖精のようにカワイらしい三人の少女たちが映っている。
まずは三人の容姿、次に派手な衣装に目を奪われたペレであったが、少女たちが口にしたクリスマスライブにはそれ以上の興味を抱いた。
参考として流されたこれまでのイベントでのライブ映像では、何十人ものアイドルたちが歌って踊っていた。
その中には、(精神)年齢がペレと然程変わらないような女児も居れば、(肉体)年齢がペレと然程変わらないような女性も混ざっている。
画面内の彼女たちを、ペレは羨望の眼差しで見つめた。
先ほどまでの退屈そうな態度は、既に綺麗さっぱり消え失せている。
随分とテンションのアップダウンが激しい。
ダンスを司る事から分かる通り、この女神は――というよりも、神様全般に言えることだが――、お祭りごとが大好きなのだ。
身近で行われるお祭り(ライブ)に、このような反応を見せるのも仕方がない。

「良ーなー。 私もライブを見に行きたいわー……って言うか――」

ライブに出たい!
――と、女神ペレが最早お約束な、本企画2016年流行語大賞最有力候補である台詞を言いかけた時、テレビ画面から不快なノイズが響き、彼女の言葉を遮った。
ハンバーグを作る工程で挽肉を揉み潰す時に聞こえるような――文字で表すと『ギュジュリ』という感じの音である。
あまりの不快さに、ペレは脳内に広がるライブの妄想から現実に思考を戻し、テレビ画面に目を向けた。
そこには、先ほどの楽園のような映像とは打って変わって――地獄が映っていた。

☆輿水幸子

突然の出来事だった。
ドアを蹴破る騒音。それと共にスタジオに入って来た青年――滝澤政道を見て、その場に居た誰もが驚いた。
それは、滝澤の髪色が雪のように真っ白だったからと言うのもあるが、彼の全身が白とは真逆の赤――血に塗れていたからでもある。
要するに、滝澤のビジュアルはインパクト抜群だったのだ。
彼を見て、幸子は以前小梅に見せられたスプラッタ映画に出て来た殺人鬼を思い出した。
ドアの近くに座って居たアシスタントの男性が驚き、悲鳴と共に立ち上がる。
だが、彼が立ち上がる速度よりも速く、滝澤は右腕を突き出し、アシスタントの男性の頭をもぎ取った。
人の首の皮、肉、骨――それら全てが一瞬で力任せに分断される音が周囲に響いた。

「しィィー……静かにしろよ。カワイイカワイイアイドルたちが、撮影中だぜ?」

突き出した唇の前で人差し指を立て、物言わぬ生首と化したアシスタントの男性に向かって、滝澤はそのように呟いた。
スタジオが、水を打ったような静寂に包まれる。
カメラに向かってカワイイ笑顔と共にライブの宣伝を行わなければならない幸子たちも、引き攣った表情で息を呑んだ。
別に滝澤の注意に、全員が従った訳ではない――想像だにしないショッキングな光景を見た時、人は喋れず、動けなくなる物なのだ。
だが、それからはもう、蜂の巣を突いたかのようなパニックであった。
間を置いて誰かが上げた、ガラスを引っ掻いたかのように甲高い悲鳴を皮切りに、スタジオ内は絶叫に包まれた。
未だカメラが回っているにも関わらず、誰も彼もが逃げ惑う。
しかし、逃げられない。
飛ぶ肉塊。
撒かれる血飛沫。
「警備員はどうした!?」という、答えの分かりきった怒号が、何とも滑稽に聞こえた。

――何なんですか、何なんですか、何なんですかこれは!? もしや、ドッキリ!?

幸子は目を白黒させ、辺りを見回した。

――いやいや、ドッキリだとしても、アレはリアルすぎるでしょう!? どう見ても、人が、本当に、し、し、死んで……えぇ!?

恐怖と混乱で、幸子の脳はショート寸前であった。
あと一回でも人の首が飛ぶ光景を見せられれば、腰が抜けて、その場に座り込んで居たであろう。
しかし、その時彼女の肩を誰かが掴んだ。その感覚で、幸子の思考ははっと現実に引き戻される。
幸子の肩に乗せられた小さな手は、星輝子の物であった。

「幸子ちゃん……に、逃げよう……!」

今までに見た事がない程に鬼気迫る表情をしている輝子は、近くにあるもう一つの出入り口を指差して、そう言った。
提案を受け、幸子は輝子の向こう側に居る小梅に目を向ける。小梅は同意の意思を示すように、青白い顏を上下にコクコクと振っていた。
白髪の殺戮者を見ると、彼はまだスタッフたちの殺戮に勤しんでいる。あの様子だと、幸子たちの所に来るのは、まだ時間が掛かるであろう。
しかし、時間が掛かるとは言っても、それは一分にも満たないたかだか数十秒の話。今すぐ逃げ出したとしても、滝澤の凶手から逃れられるかは定かではない。
けれども、ここで逃げなければどっちみち屠られるのだ――ならば、すべき行動は一つしかない。
意を決した幸子は輝子に向かって首を縦に振ると、出入り口の方を向いた。幸子が先頭になって、まるでRPGのパーティのように三人一列で行動する形になる。
と、その時、幸子はある事に気が付いた。
先ほどまでゲスト席に座っていたトニー・スタークの姿が見られない。
先に逃げたのだろうか? それならついでに幸子たちの事も一緒に連れて行って欲しかったのだが……。
そのような思考の所為で、幸子の歩みは一瞬緩んだ。
その瞬間。
幸子の鼻先すれすれを、『何か』が高速で飛来し、横切って行った――もし、幸子がペースを緩めずに進んでいれば、その『何か』は彼女の頭にクリティカルヒットしていたであろう。
遅れて、『何か』が飛んで行った方向から『ギュジュリ』という醜悪な音が鳴る。
見ると、女性の生首がガラス張りの壁に叩きつけられて潰れ、蜘蛛の巣状に浮かんだヒビの上に血と脳漿と肉片をぶちまけていた。

「ひっ」

と、小さな悲鳴を漏らす幸子。
女性の頭部が飛んで来た方角を見るべく、首を横に百八十度、恐る恐る回転させる。
そこには投擲を終えたピッチャーのようなポーズを取っている滝澤が居た。

「おいおいおい、逃げんじゃねぇよ。メインディッシュは皿の上で大人しくしとけや」

殺害予告と受け取れる発言。
滝澤から向けられた純度の高い殺意に、幸子は思わず失禁しそうになった。
何で自分がこんな目に合うのか。あんなイカれた殺人鬼に自分たちが狙われる理由なんてないだろうに。
幸子の脳内では、WHYがワルツを踊って居た。
小梅と輝子も同様らしく、冷や汗をかき、膝をガクガクと震わせ、怯えている。
もうダメだ、おしまいです。カワイイボクたちは此処で訳も分からないまま殺されるんですね――幸子がそう思ったその時。
赤い風がスタジオを横切り、滝澤へと衝突した。
否――それは風などではない。
あまりの速さに風と表現してしまったが、その正体は全身をアーマーに包んだトニー・スターク――アイアンマンであった。

☆トニー・スターク

討伐令のリストで見かけた人喰いの殺人鬼による突然の襲撃を受けてから、トニーがアイアンマンのパワードスーツを着るまでの僅かな時間――その間に、一体何人の人が殺されたのだろうか。
そのことを考えると、トニーの心は締めつけられ、苦しくなった。
もっと速く行動することは出来なかったのか。そもそも、この襲撃を予見し、阻止する事は出来たのではないか。
後悔が身体にのしかかる。守るべき人々を守れなかった悲しみをトニーは感じた。
しかし次の瞬間、その感情は目の前の人喰いへの怒りへと変換される。
死んだ者たちを弔う暇はない。今はこの憎っくき怪物を倒さなくては――方針を定めたトニーは、衝突の勢いを乗せた右腕に力を込め、滝澤の顔面を思いっきり殴った。
普通の人間ならば頭蓋が陥没するほどの衝撃を受けた滝澤は、そのままアイドルたちが居るのとは逆方向に飛んで行く。
小型化しているとは言え、アイアンマン・マークⅤの力は人の限界を超えた物だ。青年一人程度を殴り飛ばす事ぐらい余裕である。
滝澤は機材やカメラに派手な音を立ててぶつかった。
ただの人間ならば、それだけで全治何ヶ月か、あるいは即死する程のダメージを受けていたであろう。
しかし、滝澤は人間ではない――半喰種だ。
彼は何事もなかったかのようにすぐさま立ち上がり、崩れた機材から立ち籠める埃の中から、猛スピードで飛び上がった。
放物線を描きつつ、滝澤はトニーへと向かって来る。
先ほど受けた奇襲の意趣返しであろうか。上空からの衝突の瞬間、滝澤はトニーの身体を踏みつけた。
トニーはクロスさせた腕を構えて、飛来物を受け止める。

「オッほぉぉ!!!マジかッッ!!! 止めやがったッ!」

一体何が面白いのか、滝澤はそう叫んだ。
ミシリ――と、アイアンマンのパワードスーツが俄かに悲鳴をあげる。

(抑えきれなっ……! このままではマズい!)

そう判断したトニーは、腕を横に振るうようにしてガードを解き、その勢いで滝澤を弾き飛ばした。
彼我の距離が取れたその僅かな隙に、トニーはアイドルたちが居た方向に目をやる。
そこには既に誰も居なかった。無事逃げ出せたのであろう。
その事に安心し、トニーは思考を再び滝澤へと向ける。
どういう理屈か知らないが、サーヴァントではない生身の状態であるにも関わらず、人喰いの殺人鬼はアイアンマンのパワードスーツと同等、あるいはそれ以上の怪力と敏捷を有しているようだ。
装甲の薄いマークⅤを着て、接近戦で彼に挑むのは難しい。

(ならば……!)

開いた手のひらを滝澤に向けるトニー。
手のひらの中央から、一筋の光が放たれた。
指向性エネルギー兵器『リパルサー』――アイアンマンスーツ・マークⅤに唯一搭載されている武装である。
近距離戦で駄目なら、遠距離用の武器を用いれば良いという発想を元に、トニーはこれを使ったのだ。
太陽の光よりも更に眩い光線は、床から起き上がろうとしていた滝澤に見事命中――彼の腹を貫いた。

「ぐっ……げっ、がぁ……?」

信じられないものを見るような目で、腹に開いた拳大の大穴を見下ろし、滝澤は驚愕の声を上げた。
だがそれも、やがて彼の口から溢れて来た血によって止められる。
元から血塗れだった滝澤の身体は、初めて彼自身の血によって汚れた。
最早これ以上の戦闘行為は不可能であろう――そう判断したスタークは腕を下ろした。
だが、

「なぁ〜んて、この程度でやられるわけねぇだろがよ。余裕カマしてんじゃねえぞッ‼︎!!!」

ああ、何という事か。
滝澤の身体から、赤く、されど血ではない何かが湧いて出て、彼の腹に開いた風穴を埋め尽くした。
傷口はみるみる内に塞がって行く。

「並外れた怪力と敏捷に加えて、再生能力を持った人喰いだと? 一体どこのB級パニック映画に出て来るモンスターだ!」

ジョーク混じりの感想を呟きつつ、トニーは冷や汗を流す。
いずれも人の枠を超えた怪力に敏捷、耐久。リパルサーを食らっても、物ともしない回復能力。
ここまでのスペックを持った相手に、アイアンマンスーツ・マークⅤでの戦闘を続けるのは不可能だ。
ならば、取るべき行動はただ一つ――逃亡である。
しかし、それは同時に辺りに殺戮を振りまく狂人を放っておくという事だ。そんな事をトニーが出来るはずがない。
己の現状と良識に挟まれ、悩むトニー。
そんな彼が決断を下すのを滝澤は呑気に待ちはせず、回復直後に己の首元から無数の刃(ブレード)――赫子を生やした。
あんなもので攻撃されたら、トニーの身体は蜂の巣になってしまうだろう。

『マスター! 逃げてください!』

そこで突然、トニーの耳にシールダーの声が届く――念話ではなく、アイアンマンスーツに搭載させた通信機能によるものだ。

「逃げろだと!? 本気で言ってるのか、フライデイ! そんなこと――」

トニーの反論が終わるのを待たず、シールダーは鬼気迫る声で通信を投げた。

『ここで人喰いを放置するのに、抵抗があるかもしれません……!
しかし、生存者を逃した今ではマスター、あなたの命が最優先なのです! ここはどうか、お逃げください!』
「……!」

シールダーの言葉に、トニーは言葉を返せなかった。
何故なら――

「なァ〜〜〜にブツクサ呟いちゃってんですか〜〜〜〜ッッ!?」

滝澤の肩から生えた赫子――それが超高速で射出され、トニーへと襲い掛かったからだ。
目の前に広がる弾幕攻撃に、トニーは息を呑む。
その一瞬後。
苦渋の果てに意を決したのか、トニーはアイアンマンスーツのジェット機関を起動した。
ブーツの底から放たれるエネルギーによって、彼は赫子以上のスピードで後方に飛んで行く。
トニーは忌々しげに呟いた。

「……あぁ、分かった。分かったよ! ここは一時撤退だ!」

やがて、トニーは一面ガラス張りの壁に背中から衝突――勢いを殺さぬままそれを突き破り、地上から十数メートル離れた空中へと身を放り出した。
赫い弾丸群はなおもトニーを追い掛けてくる。だが、彼がジェット噴射によって身体をほんの少し上昇させるだけで、直線に進むだけのそれを避ける事は容易く出来た。
赫子はそのまま真っ直ぐ進んで行き、テレビ局の隣に立つオフィスビルのワンフロア――今日は休日というのもあって、幸いにも無人であった――へと、次々に飛び込んだ。
ガラスが割れ、デスクが砕けるけたたましい音を背中で聞きつつ、トニーは更に上空に向かって飛んで行った。

☆滝澤政道

時間を食い過ぎた。このままでは誰かがここに来るかもしれない。
撤退して行くトニー・スタークを目で追った後、滝澤政道はそう考えた。
いや、彼にとって、今更警備員や警察がやって来ようとも、別に然程問題ではない。
一般人が群をなして来たところで、全員殺して食うだけだ。
しかし、騒ぎを聞きつけてやってくるのが一般人ではなく、聖杯戦争の参加者――それも、サーヴァントであったら、それはマズい。
自身のサーヴァントであるバーサーカーを傍らに置いていない状態で、サーヴァントとの交戦は避けたい所だ。
故に、ここは手早くテレビ局から去るべきであろう。

「そういや、ちゃんバサの方はうまく殺ってんだろうなぁ?」

ふと思い出したかのように、滝澤は呟いた。
床に散らばっている『人だったもの』の一欠片を拾い上げ、それを口に運ぶ。
酸化した血の味は、時間の経過を何よりも雄弁に物語っていた。

「俺の方は初っ端から失敗したが……クソッ、あっちの方は上手くいっていて欲しいものだぜ」

予定外の出演者であったトニー・スタークに妨害を受けて失敗に終わったが、滝澤がテレビ局を襲撃したのは、そこで生放送撮影を行なっているアイドルを殺すためであった。
『アイドルを殺そうとするならば、事務所を直接襲えば良いのでは?』という疑問を抱く読者がいるかもしれないが、それは最後にやるべき事である。
今は、街中に散らばっているアイドルをじわじわと殺して行き、最後の最後で事務所を襲撃――そしてその時、そこに居るであろうあの毛玉のようなアイドルの心を折るのだ。
滝澤は、先ほどまでアイドルたちを映していたカメラに近づいた。
既にそれの電源は切られていた。滝澤の襲撃から暫くして、外部から操作されたのであろう。
しかし、それまでに掛かった僅かな時間の間、惨劇を伝える音や、それに怯えるアイドルたちの様子は街中に放送されたはずだ。
例え放送を見ていないとは言え、必ずいつかはあの毛玉のようなアイドルにまでその情報は伝えられるであろう。

「初回は失敗に終わった――が、次はこうはいかねぇ。いかせねぇ。見てろよ、もふもふ女。絶望はまだ始まってすらいないんだぜ」

誰に聞かせるわけでもなく滝澤はそう呟き、割れたガラス壁に近づいた。
そのまま、『たんっ』と床を蹴り、空中へと跳躍。
隣のビルの壁にへばりつき、そのまま地面とは垂直に走って登り、その後はビルの屋上からまたべつのビルへと飛び移るようにして渡った。
やがて、彼の姿は雪の中に消えて行った。

【新都 テレビ局/1日目 午前】

【滝澤政道@東京喰種:re】
[状態]健康 、腹部損傷(完治済み)
[装備] 無し
[道具] 無し
[令呪] 残り二画
[所持金] 学生並み
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残る。
1.奈緒を挫折させるため、殺意を抱かせるため、アイドルを全員殺す。
[備考]
  • 令呪を一画使用しました。
  • 人間を喰うことで少量魔力を回復します。
  • パワードスーツを着たアイアンマン(トニー・スターク)を確認、交戦しました。

【トニー・スターク@マーベル・シネマティック・ユニバース】
[状態] 疲労(小)
[装備]
[道具] アイアンマン・スーツ・マークⅤ’@マーベル・シネマティック・ユニバース(腕部損傷(小))
[令呪] 残り三画
[所持金] 潤沢
[思考・状況]
基本行動方針:街を、市民を守る。
1.442プロのアイドルと接触、アンドロイドと入れ替えて明日のライブを中止させる。
2.ジョーカー&バーサーカーの目論見を阻止する。
3.協力者を探す(あまり期待はしていない)。
[備考]
  • 滝澤政道を確認、交戦しました(彼がテレビ局を襲った理由は知りませんが、後の推理次第ではそれに気づくかもしれません)。また、アイアンマンスーツ・マークⅤでは滝澤に勝てない事を認識しました。
※アイアンマン・スーツ・マークⅤ’
 13.6kgのアタッシュケースに偽装されたコンパクトなアイアンマン・スーツ。
 携帯性に優れるが、武装・装甲ともに貧弱。とはいえ、車を蹴飛ばすなど超人的なパワーは健在である。
 シールダーにより生産されたため神秘を帯びており、サーヴァントやそれに準ずる存在とも戦闘行動が可能になっている。

☆女神ペレ

テレビを介してこの騒動のほんの一部分を見て、女神ペレは何も出来なかった。
『放送が再開されるまで、暫くお待ちください』というテロップの浮かんだテレビ画面を眺めているだけである。
ペレは先ほど画面に映っていた映像を思い出した。
血に塗れたガラス壁。恐怖に震える少女たち。幾人もの悲鳴。
その情報から察するに、カメラの後方では何者かが――それも、サーヴァントのように人外の力を持った存在が暴れていたのであろう。
長年神として生きていた彼女であっても、滅多に体験しなかった地獄絵図が画面内の情報から推測できた。
彼女はそれを純粋に怖いと思った。
しかしそれ以上に、そんな惨劇を起こしていた犯人が許せなかった。
果たして犯人が誰なのかは知らないが、アイドルたちを恐怖に陥れ――そして何より、ペレの幸せな妄想を邪魔した罪は重い。万死に値する。
端的に言って、今のペレは物凄く怒っていた。
激おこである。
もし、彼女の火炎の権能が制限されていなければ、漫画的比喩表現抜きで火を吐いて、怒り狂っていたであろう。そして、テレビ局までひとっ飛びして凶行の犯人を捕らえ、懲らしめていたであろう。
しかし何度も言うように、現在のペレにそんな力は無い。皆無だ。
無力な彼女が出来ることと言えば、テレビの前で地団駄を踏み、唇を噛む事ぐらいしかない。
ああ、なんと無意味な行為か。
世界に一切の影響を与えない行動の末、ペレは心の底から湧き上がった物を吐き出すようにして、叫んだ。

「絶対に、絶対に……ぜぇ――――――――――――――――――――ったいに、許さないんだからっ!」

しかし、その大声も室内のガラス窓をほんのすこしだけ震えさせただけであった。

【直樹美紀の部屋/1日目 午前】
【女神ペレ@ハワイ神話】
[状態]健康 、怒り(激)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:カッくんを手伝う。
1.442プロのライブが気になる。
2.アイドルたちの生放送を襲撃した何者かは絶対に許さない。

時系列順


投下順


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:錆びつく世界を、スキップでかけて 女神ペレ :Killing Crusaders

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最終更新:2017年05月27日 16:17