日本と欧州の装備の差異


背景

 最前提のこととして全体的な形で見ると個々の戦力としては装備を除けば、実力は同レベル帯と目される退魔師がエクソシストを上回ることがほとんどである。

 日本の退魔庁と民間、欧米地域を管轄するC.A.A.C.E.で、それぞれ退魔師エクソシストが淫魔や妖怪、魔物などを駆逐する役割を担っているが、二つの組織(他にも存在するがこの説明では割愛する)において、大きく異なるのが駆逐・討伐する際に本人たちが装備する武器や防具である。
 民間退魔師は基本的に自分で購入したものや、事務所で用意した対魔処理を施した武器・防具を装備している。
 主に刀剣やハンドガン、呪符や護符などがこの範疇になる。防具は同じように処理を施したスーツやジャケットなどを装備して仕事を行うが、武器を優先して防具が疎かになっている退魔師もいなくはない。その点、民間退魔師であってもSクラスである水鏡 雷奈は武器を失ってしまうと戦闘手段がなくなるが、そうならないために様々な武器を扱えるよう鍛錬しており、同時に多大な資金を使って軽量かつコンパクト、そして有効性のある装備の数を揃えている。
 それに対して退魔庁などに所属する公職退魔師は、基本的にライセンスのクラスに関係なく一定以上の質を持った武器や防具を支給される。もっとも、武器の方は得手不得手がそれぞれ違うため基本支給品から好みのカスタマイズしたり、そもそも武器を持たない退魔師もいる(いい例が朝霧 神奈ら格闘系の退魔師)。
 ただ、防具系の制式スーツは自分好みにカスタマイズしてる人間もいるが、1課の面々や東雲 明日香らのようにほぼそのままという面子もいる(デザインはある程度の調整はされる)。

 一方、C.A.A.C.E.においては、まずC.A.A.C.E.正規兵団「スクード」では一部の指揮官やハイクラスのエクソシストは鎧装と呼ばれるアームド・スーツを装備していることが多い(ただ、現団長のレオナルド・アミエバは任務を継いで間もないことと、本人が必要としていないためということで鎧装を所持していない。その代わり後述する軍用タイプの装備をいくつも組み合わせている)。
 一般的レベルのエクソシストや一般兵士らは「討伐や防衛」の際は、防具は軽量で耐性のある多重構造の軍用系装備をメインとしたもの支給されており、エクソシストたちには個人にあった武器種を支給、それらを自費でカスタマイズを行っている。この点では日本の民間退魔師と一般エクソシストはあまり変わらない部分もあるが、組織に支給されるという前提があるためにカスタマイズにかけられる費用の差は大きい。
 場合によってはV.A.M.P.S.(Variable-Additional-Magic-Powers-System/可変式魔力付与機構)という強化ガジェットを搭載させたものにカスタマイズする者もいる(当然コストは高い)。
 そして、C.A.A.C.E.の最上位機関である「円卓」に所属する面々の装備である鎧装は、さらに大きく性能が上回るアームド・スーツである。
 C.A.A.C.E.と提携組織であるCCCNO社によって完全にワンオフで設計・製造された鎧装。武器もV.A.M.P.S.を搭載。しかも、ワンオフV.A.M.P.S.で専用の武器を用意されている(一部を除く)。
 基本的に装備をするのは代表であるソフィア・エルドレッド・キサナドゥをはじめとする物理戦闘を主にする面々(魔術系や非戦闘員は所持していない)であるが、事情によってワンオフV.A.M.P.S.を所持しない、させてもらえない者もいる。
 しかし、そんな超強力なアームド・スーツであっても朝霧 神奈が全力で殴りにくればさすがに壊れる。力 is Power.(?)

場所の問題

 トップレベルほど装備に大きな差異がある日本とC.A.A.C.E.圏内だが、原因になる決定的要素の一つが「任務の場」「戦場」の違いである。
 日本は妙神岩によって、東京湾を中心に淫魔や妖魔、妖怪の発生することになった。
 が、裏を返すとほとんどが東京近郊の天震災が原因で廃墟になった地域や沿岸地域の建物など割と「空間が狭い範囲」である。さらに淫魔らが隠れるために屋内戦闘の発生率が圧倒的に多く大きな武器や大火力を用いることが困難という事情がある(建物が崩れるなどの問題)。
 実際ニコル・ダルザスレイン・カルナティオの大型装備を持つ者が想定した場所にいた場合、満足に戦うことができないのは容易に察せられる。

 C.A.A.C.E.の主力圏内であるドイツ、スイス、イタリア、リヒテンシュタインの間にヘヴンズ・フォールの際に出現したストーンサークルを中心としてドラゴン庭園と呼称される場所は整備されている道路や街もあるが、基本的に森林や平野、山地など人が居住していない開けた土地がメインである。
 そのため日本に比べると、同時に出現する魔獣や魔物の数も多いことや、開けた場所であることで正規兵団「スクード」が対魔物兵器・銃火器などである程度の規模の防衛や行うのが大前提となる。この時点で「場所の狭さ・広さ」の差が顕著となる。
 同じようにC.A.A.C.E.上層機構「円卓」でも、対多数を想定した装備や大幅に加速して大打撃を与える攻撃する武器などが大前提となっており、対比してみれば、やはり「狭い場所」で戦うにはかなり不向きである。もっともこれは後述する「敵のタイプ」による要素が非常に大きい
 もちろん、刀剣の類で戦うものもいるがやはり「戦い方」や「動作」の問題で狭い場所を得意としていない面々が多い。例外としては元退魔師である神威 美空は、日本時代と同じ狭い場所での戦いは得意という点であるくらいか。

敵のタイプ

 これは前述した「場所の問題」に付随する要件である。
 日本において淫魔や妖怪は、あまり広い場所での戦闘になりづらい。
 ただ、妖怪や中型種などは林や池などに巣食うために屋外でそれらと戦闘を行うことになることもある(行方不明になった天都姉妹は実際にミズチに敗北している)。
 しかし、それらは逆にテリトリーを持っている形が多く、広範囲に活動というわけではない。
 特に淫魔は狭さを活かした戦い方で退魔師との戦いを有利に運ぼうとするモノたちがかなりおり、フロアイミテーターなど肉塊タイプやスライムなど無形タイプといった淫魔は、特にこの形で優位を取ろうとする。
 もちろん、退魔師もそれを前提に戦うので武装が比較的取り回しや小回りが利きやすい物になっているのが実情といったところである。

 一方、欧米などを管轄するC.A.A.C.E.圏内ではどうかと言えば、地形的に支障がある場所でなければ前述したとおり「開けた場所」での戦闘が基本となる。
 対峙する魔物たちも当然その環境に合わせた形で具現しているため、ある一定の火力がある銃火器の使用や大型の近接武器などを用いて戦闘を行える状態になる。
 特に日本では数が少ない飛行型の魔物(ワイバーンなどと言った存在)がいるため、それらと戦うためにも必要な狙撃火力は必須であり、C.A.A.C.E.正規兵団「スクード」の人員的規模も含めて多く配備されている理由。
 その中でも大型種の魔物に関しては正規兵団「スクード」だけでは手が回らず、C.A.A.C.E.上層機構「円卓」のメンバーが対処することが多い。さらに、日本における特定淫魔・妖怪のような存在にあたる固有識別名個体は、日本のそれに比べれば出現頻度が高く、それらの対処も行わないといけないために強力な火力と防御力を備えた鎧装が必要となるのである。
 その中でも「魔力弾」を撃ちだせる強力な銃火器は研究・開発が難航したこともあり製作費自体が驚異的な高価格をしており、使用者は世界的に見ても5人にも満たない。

予算の問題

 そして、これらの差異においてもっとも大きな問題は、両組織におけるこの手の分野に扱える予算の差。
 日本一国の一省庁である退魔庁と、多国籍協力組織C.A.A.C.E.では資金面での格差は当たり前といえば当たり前である。
 しかし、高度な技術を持った武装が日本に存在しないわけでもなく、草薙重工をはじめとした国内企業による試作装備や制式装備は存在する。また科学研究部による新素材の開発や、CCCNO社の協力の下、退魔庁ないし民間退魔師にも短期間で性能が向上したものが多く提供されているのも事実である。
 ただ、C.A.A.C.E.が置かれる状況や管轄範囲の広さ、対峙しなければならない悪状況の多さから一般人である兵員を含めて動員人数が多いこと。
 それら、すべての装備を用意する必要がある点でも予算が多くなってしまうのは、裏を返せば環境がきついことの表れでもある。
最終更新:2025年09月29日 00:11