「スチュワート・ヒル」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

スチュワート・ヒル」(2007/08/10 (金) 16:53:26) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*アイスマーク 赤き王女の剣 463 名前:名無しは無慈悲な夜の女王[] 投稿日:2007/07/11(水) 01:29:57 えー、本屋の棚というものはある日突然デジタル的にがらりと変わることはそう無い ことだと思うんだよね。どちらかというと浸透圧によるアナログ的な変化かなあと。 まあ新装開店したので足を運べば水色の棚が消滅していた、なーんてこともあるけど。 で、十年前には明らかに存在しなかった、ある棚が今は大抵の書店にあったりするわな。 大判翻訳海外ファンタジー小説の棚。「ポッター棚」と仮に呼びましょう。 ハリー・ポッターとか、ダレン・ジャンとか、エラゴンとか、サイズは小さめだけど ビックリマンチョコを彷彿とさせる造本のデルトラクエストとか。あの辺の本。 で、これらの本てSF板でもあまり話題になんないよね。別にアンケートをとった訳では 無いけど、本棚に置きたくない本なんて集計をしたら結構上位にきそうな気がする。 で、それにしてもあれだけ弾が出ていると思うわけだよ。中には当たりもあるよなって。 というわけで。 「アイスマーク 赤き王女の剣」スチュワート・ヒル ヴィレッジブックス おそらくは吹雪をイメージしているであろう結果ゴチャゴチャしすぎた表紙に キラキラと光る文字で題名が。更には「もののけの戦士たちよ、立ち上がれ!」と 購買意欲を削ぐことこの上ない帯。あまりのパワーに金原瑞人・中村浩美の訳に なってるけど金原教授名前貸しただけなんじゃあるまいなと疑ってしまいそうになる。 で、あらすじなんだが。 北欧を彷彿とさせる小国に南から帝国が攻めてきて、若干十四歳の王女が活躍する話。 で、内容なんだが。 ずばり戦争小説。モロに戦争小説。 主人公国であるアイスマークの文化レベルはよくある近世に片足突っ込みかけた中世。 味方の軍勢は剣・槍・盾・甲冑・大弓・投石器あたりを揃えてる。 敵国であるポリポントス帝国の文化レベルはキリスト暦で言えば17世紀中盤まで来てる。 鎧は兜と胸甲だけ。長槍・先込め銃・騎兵そして大砲。歩兵と騎兵と砲兵。 欧州で言うところのHorse&Musket時代ってやつ。「文明VSそれ以外」が本書の根幹。 マスケット銃をばかばか撃ちまくるファンタジー小説なら他にもあるけど 軍隊が数を揃えてて戦列歩兵が一斉射撃するファンタジー小説はそうそう見ない。 って言うか他には皇国の守護者くらいしか知らない。知っている人いたら教えてくれ。 で、こっからが面白いんだが。その帝国。人名がスピキオとかマルケルスとかアウレリアス だったりする。そう、モロにローマなんだね。元老院と市民によるローマ。帝国期の。つまりこの ポリポントス帝国とやらはローマが滅亡せずにマスケット銃レベルまで持ちこたえたような国。 それでいて重装騎兵はいないけど胸甲騎兵はいるわけね。このシルバーバーグかタートードブ あたりが書きそうな設定に心惹かれるわけですよ。どこまでもローマな短髪の将軍が 腰からピストル(先込め式)を抜いて働きの悪い兵隊を撃ち殺したりするし。 これ、頭のなかで帝国軍のコスチュームを想像するのがすごい大変だった。 ローマ軍そのまんまの記述と三十年戦争当時を思わせる記述が同時に存在してる。どんな服だよ。 二十世紀フォックス社が映画化するそうなんだけど美術面に期待します。頑張れフォックス。 で、当然こんな軍隊と正面からはとても戦えないのでまずは退却します。 て言うか中盤で約100Pくらいかけて遅滞防御戦やってます。 その後でひとまず落ち着いたヒロインの王女は援軍を求めます。 人狼軍(闇夜に数千の赤く光る目が迫りくる描写は秀逸)、吸血鬼軍、雪豹軍などなど。 豹は本当にパンサー。それもすんごいデカいやつらが三千頭ほど味方してくれる。 おお、やっとファンタジーらしくなってきた。 で、あとは激突なわけですが。軍事面は結構作者頑張ってる。 戦略面で大ポカが無いので戦術面でいくらかご愛嬌があっても安定している。なにせ 「アイスマークの値を吊り上げてやることです。敵軍に次々に損害を与え、武器を  どんどん使わせて、彼らが得られる土地よりも高くつくようにしてやるのです」なんて セリフがあったりする。 他にも帝国軍が越冬中に士気と錬度を保つために実弾で演習を重ねる場面なんてのがある。 将軍は少々兵が死んでもいいくらいの気持ち。こういう場面もあんまり見ない。 あとヒロインとその父親のモデルはクリスティナ女王とグスタフ・アドルフっぽいなと思った。 ガチのプロパーSFファンやファンタジーファンよりもローマと三十年戦争が好き! てな人へ特に推薦。 7点

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
記事メニュー
目安箱バナー