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手塚一郎

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ワードナの逆襲

812 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/09/03(日) 13:37:44
手塚一郎『ワードナの逆襲』(JICC)

知る人ぞ知る怪作RPG「ウィザードリィ」シナリオ4のノベライズ。
「ウィザードリィ」の小説はほとんど一ジャンルを形成していると言ってもおかしくないくらい数が出ているが、これはそのなかでも抜きん出ている。

原作は「ウィザードリィ」のシナリオ1のラスボスだった魔術師ワードナがLV1、HP1の状態で復活して、モンスターを従えて地上を目指すという内容の言ってしまえば逆転の発想で作られたシナリオ。
ちなみに敵キャラはほぼすべてワードナ討伐にやってきた冒険者である。ゲームとしての難易度は非常に高いが、「ウィザードリィ」シリーズ独特の不条理感溢れるテイストは一層パワーアップされており、摩訶不思議な世界が堪能できる。それとともにオカルト度も増している。

で、小説のほうはこういうゲームの特殊な性格を生かすべく、ホラータッチの
群像劇という形で仕上げられている。
怪奇色が強められている代わりに、ユーモアは捨象されている。
個人的には少し不満があるが、まあ仕方がないかもね。
でも、オックおばさんの聖なる手榴弾とトレボーの亡霊がカットされているのは悲しすぎる。

ワードナの視点からは物語は語られず、ワードナに殺されていく冒険者たちの思惑が序盤のほとんどを占めているのだが、どれも悲惨すぎて笑える。
レイプされている女性を暴漢から救おうとして逆に当の女性とセックスしてしまう、などというわりと酷い感じのエピソードも多い。

ちなみに冒険者たちのキャラ造形は作者オリジナル。
中盤から、原作の重要キャラであるドリームペインターとホークウィンドが登場するが、
彼らの行動の動機付けもほとんどオリジナルである。
このあたりは賛否両論ありそうだ。

元来WIZ小説というのは、ゲーム的な不条理さに対し、どう強引に理屈を付けているかを観るのが
醍醐味、というところがあったが、そのあたりの設定考証は練られていて良い。
D&Dが源流、というつながりでドラゴンランスあたりと読み比べてみても面白いかも。

特に、ラストのひとつ(そうそう、この小説マルチエンディングなのです)で明かされる、カドルト神の正体は秀逸。

また、含みを持たせた書き方をしているため、後半に行けば行くほど、叙述の密度が
意図的に下げられていくが、このあたりはかなり不満。
逆に安っぽくなっている。バラードの濃縮小説を研究して、もう少し工夫をしてほしい。
大司教ギズィと迷宮管理人ドワーフとの関係変化がやや唐突に思えたほか、キャラクターの背景の詰めが甘い気もする。
このあたりを書き足して、ハヤカワJAで復刊してほしい。
田中哲弥が入っているなら手塚一郎も入れていいのでは。

7点

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