天龍無双ヴェルシュヴァイン
天龍無双ヴェルシュヴァイン(てんりゅうむそう-)は、かざね氏原作、株式会社YKKC(ゆとりはこれだから困るカンパニー)製作のTVアニメ。全51話。2009年8月17日から俺の脳内で放映されている。
天龍無双ヴェルシュヴァイン(てんりゅうむそう-)は、かざね氏原作、株式会社YKKC(ゆとりはこれだから困るカンパニー)製作のTVアニメ。全51話。2009年8月17日から俺の脳内で放映されている。
2003年製作のTVアニメ『龍王大戦ダイドラゴ』のパラレルワールドを舞台とした作品であり、共通した作品内タームも多い。2011年には劇場作品『天龍無双ヴェルシュヴァイン対龍王大戦ダイドラゴ 総龍激突!覚醒・真龍フィロソマ』が公開予定。
1 あらすじ
異界ヴェルシュヴァイン。
数多の龍が空を覆うこの世界では、古の時代より人と龍が争いを続けていた。
数多の龍が空を覆うこの世界では、古の時代より人と龍が争いを続けていた。
「大殲争」。
龍たちはただ、戦いの中でのみ生きる存在であるがゆえに。
人々はただ、今日を生き抜き明日を迎えるために。
龍たちはただ、戦いの中でのみ生きる存在であるがゆえに。
人々はただ、今日を生き抜き明日を迎えるために。
終わらない闘争が数千年も続いた頃、とある賢人が偉大なる龍の長・クラウンアンバーに取引を持ちかけた。
対話による争いの終結などとうに諦めていた人類は、彼の試みを嘲るだけだった。くだらない、次に奴の姿を見るとすればそれは龍の糞の中だ、と……。
百人が百人そう思うほどに、龍という生物は「分かり合えないもの」であった。
彼らを突き動かすのは身を焼くほどに荒ぶる本能。戦いの中にだけ己の存在価値を見出し、戦いがなければ生きられないほどに空虚な存在。それが龍という生物の本質だった。
その龍たちの長である「燐光宗主」クラウンアンバーは、虹色に煌く翼と銀色に輝く鱗を持つ最強の龍。ひとたび羽ばたけば大陸全土に疫病が蔓延し、息吹に巻かれれば魂ごと焼き尽くされる。身を守る鱗は朝焼けに燃え盛り夕闇で冷たく輝き、近付くもの全てを拒絶するという。
そんな規格外の生物と対峙するにあたり、賢人が手にしたのは剣でも魔導杖でもなく、ただ一本の酒瓶だった。
対話による争いの終結などとうに諦めていた人類は、彼の試みを嘲るだけだった。くだらない、次に奴の姿を見るとすればそれは龍の糞の中だ、と……。
百人が百人そう思うほどに、龍という生物は「分かり合えないもの」であった。
彼らを突き動かすのは身を焼くほどに荒ぶる本能。戦いの中にだけ己の存在価値を見出し、戦いがなければ生きられないほどに空虚な存在。それが龍という生物の本質だった。
その龍たちの長である「燐光宗主」クラウンアンバーは、虹色に煌く翼と銀色に輝く鱗を持つ最強の龍。ひとたび羽ばたけば大陸全土に疫病が蔓延し、息吹に巻かれれば魂ごと焼き尽くされる。身を守る鱗は朝焼けに燃え盛り夕闇で冷たく輝き、近付くもの全てを拒絶するという。
そんな規格外の生物と対峙するにあたり、賢人が手にしたのは剣でも魔導杖でもなく、ただ一本の酒瓶だった。
「龍の王よ、私がこの場に来たのはあなたと戦うためでも、ましてや食われるためでもありません。あなたと話すことがあるからこそ、ここまで足を運んだのです」
「人間よ。貴様、よもや知らぬわけではあるまい? 我々龍族と貴様ら人間族の関係を。我々は人間の敵だ。人間を滅ぼし、滅ぼされることしか出来ないし、そのこと以外に興味もない。そんな我々に「話すこと」があると?」
賢人に応えて瞳を鋭く光らせると、偉大なる龍は静かに口を開いた。その一声一声が濃縮な魔力とともに吐き出され、瞬く間に周囲の大気を魔術的に汚染していく。
しかし賢人は気圧される様子もなく、飄々とこう言った。
「勿論。知っていますよ」
咄嗟に答える言葉が浮かばなかった。生きる天災として同属にすら恐れられる存在であるクラウンアンバーにとって、このような態度で接されるというのはそれこそ数千年ぶりのことだったからだ。
「さ、まずは一杯。うちの実家で蒸留した極上の一本ですよ」
「……、良かろう。話すがいい、用件とやらを」
こうして彼らは杯を交わした。
これが後の世に「人龍交誼」として伝えられる歴史的な転換期の始まりだったとされる。
「人間よ。貴様、よもや知らぬわけではあるまい? 我々龍族と貴様ら人間族の関係を。我々は人間の敵だ。人間を滅ぼし、滅ぼされることしか出来ないし、そのこと以外に興味もない。そんな我々に「話すこと」があると?」
賢人に応えて瞳を鋭く光らせると、偉大なる龍は静かに口を開いた。その一声一声が濃縮な魔力とともに吐き出され、瞬く間に周囲の大気を魔術的に汚染していく。
しかし賢人は気圧される様子もなく、飄々とこう言った。
「勿論。知っていますよ」
咄嗟に答える言葉が浮かばなかった。生きる天災として同属にすら恐れられる存在であるクラウンアンバーにとって、このような態度で接されるというのはそれこそ数千年ぶりのことだったからだ。
「さ、まずは一杯。うちの実家で蒸留した極上の一本ですよ」
「……、良かろう。話すがいい、用件とやらを」
こうして彼らは杯を交わした。
これが後の世に「人龍交誼」として伝えられる歴史的な転換期の始まりだったとされる。
そして現代。「人龍交誼」を統歴元年とし、長い月日が流れた統歴732年。
かつての戦いの傷跡も癒えたこの世界で、人と龍は共存の道を辿っている。
人は毎日の生活の中で龍の力を借り、より困難な仕事をこなせるようになった。
龍は己の力を存分に振るう場所が与えられた。秩序だったルールの下、ただただ種の滅亡に近付いていた時代とは違った戦いの場だ。
かつての戦いの傷跡も癒えたこの世界で、人と龍は共存の道を辿っている。
人は毎日の生活の中で龍の力を借り、より困難な仕事をこなせるようになった。
龍は己の力を存分に振るう場所が与えられた。秩序だったルールの下、ただただ種の滅亡に近付いていた時代とは違った戦いの場だ。
龍闘(バハマス)。
それは利害の一致から生まれた。
龍が思う存分戦うことの出来る場というものは、実は古の時代にもほとんどなかったという。龍と対等に戦うことの出来る人間などほんの一握りであったし、龍同士での本気の戦いは禁忌と定められていたからだ。
だが、こと龍闘の場において、龍たちが己の力を振るうことに何の障害もない。
人間は富や名誉を求めて。龍は戦いの舞台を求めて。
龍が思う存分戦うことの出来る場というものは、実は古の時代にもほとんどなかったという。龍と対等に戦うことの出来る人間などほんの一握りであったし、龍同士での本気の戦いは禁忌と定められていたからだ。
だが、こと龍闘の場において、龍たちが己の力を振るうことに何の障害もない。
人間は富や名誉を求めて。龍は戦いの舞台を求めて。
幾多の者どもの夢や思惑を乗せ、今日も世界中で龍闘の幕が開く……。
2 用語解説
- 龍
かつての恐怖の象徴、現代では心強い隣人にして畏怖の対象。種族や生息地域によってその外見や能力は千差万別。
人間とは生物としての次元が違うほどの絶対的な力を持ち、その幼生体ですら村ひとつ滅ぼすのに半日とかからないという。
強さだけが彼らのヒエラルキーを決定付ける要素であり、自分以外の生き物全てに対しても強さを求める。言葉以上に強さこそが彼らとの対話の上で重要な言語なのだ。それは腕っ節の強さだけではなく、心の強さも意味するということを理解しているものは少ないが。
立場こそ違えど、人間たちと共存関係に結ばれていることは今も昔も変わらぬと言えるだろう。
一般的な龍とは違い、龍騎士と組んで龍闘に参加する龍は騎龍と呼ばれる。
人間とは生物としての次元が違うほどの絶対的な力を持ち、その幼生体ですら村ひとつ滅ぼすのに半日とかからないという。
強さだけが彼らのヒエラルキーを決定付ける要素であり、自分以外の生き物全てに対しても強さを求める。言葉以上に強さこそが彼らとの対話の上で重要な言語なのだ。それは腕っ節の強さだけではなく、心の強さも意味するということを理解しているものは少ないが。
立場こそ違えど、人間たちと共存関係に結ばれていることは今も昔も変わらぬと言えるだろう。
一般的な龍とは違い、龍騎士と組んで龍闘に参加する龍は騎龍と呼ばれる。
- 龍騎士
騎龍と共に天を駆ける戦士たちの通称。龍に認められるだけの強さ、龍と戦うだけの胆力、そして何より強運がなければ就くことのできぬ花形職業である。
「全龍協会」に属し、あくまで仕事として龍闘(バハマス)を行う公認龍騎士(サーキットライダー)が一般的だが、その一方で協会に属さず、野良で龍騎士として龍闘を行う遍歴龍騎士(アウトライダー)も多く存在する。
公式試合への参加で賃金を得る公認龍騎士に対し、遍歴龍騎士は野良の龍闘(時に「自主的な」大会への参加。サーキットライダーは勝ち負けに関係なく一試合ごとに一定額のファイトマネーを得る形で生計を立てるが、アウトライダーは賞金だけが大会でペイされる見返りとなる)で金品を賭け、ある時は強奪する形で糧を得る。全てのアウトライダーが蛮行に至るわけではないが、やはりその絶対的な力をいいように振るうイメージの強いアウトライダーたち全体に対しての群集のイメージは悪い。
野良の龍闘それ自体が禁止されているわけではないので、サーキットライダー同士が腕試しを兼ねた龍闘を行う姿も多々見られる。
「全龍協会」に属し、あくまで仕事として龍闘(バハマス)を行う公認龍騎士(サーキットライダー)が一般的だが、その一方で協会に属さず、野良で龍騎士として龍闘を行う遍歴龍騎士(アウトライダー)も多く存在する。
公式試合への参加で賃金を得る公認龍騎士に対し、遍歴龍騎士は野良の龍闘(時に「自主的な」大会への参加。サーキットライダーは勝ち負けに関係なく一試合ごとに一定額のファイトマネーを得る形で生計を立てるが、アウトライダーは賞金だけが大会でペイされる見返りとなる)で金品を賭け、ある時は強奪する形で糧を得る。全てのアウトライダーが蛮行に至るわけではないが、やはりその絶対的な力をいいように振るうイメージの強いアウトライダーたち全体に対しての群集のイメージは悪い。
野良の龍闘それ自体が禁止されているわけではないので、サーキットライダー同士が腕試しを兼ねた龍闘を行う姿も多々見られる。
- 龍闘
「バハマス」。人と龍との共存の形。
長い歴史の中で徐々にルールの変遷があり、かつてはどちらかの龍と龍騎士両方の命を完全に奪うまで決着がつかないものだったが、現代では「騎龍と龍騎士、どちらかを戦闘不能にすること」が勝利条件となっている。
具体的には「戦意を失わせ降参させる」、「飛龍の翼を千切る」、「龍騎士を高空から落下させる」など様々で、その基準は明文化されていない。
例えそれが命を奪う結果となっても不可抗力であるとされている。龍闘に参加する以上、龍にも龍騎士にも命を奪われる覚悟、そして奪う覚悟が要求されるのだ。
長い歴史の中で徐々にルールの変遷があり、かつてはどちらかの龍と龍騎士両方の命を完全に奪うまで決着がつかないものだったが、現代では「騎龍と龍騎士、どちらかを戦闘不能にすること」が勝利条件となっている。
具体的には「戦意を失わせ降参させる」、「飛龍の翼を千切る」、「龍騎士を高空から落下させる」など様々で、その基準は明文化されていない。
例えそれが命を奪う結果となっても不可抗力であるとされている。龍闘に参加する以上、龍にも龍騎士にも命を奪われる覚悟、そして奪う覚悟が要求されるのだ。
- 長命種
「エルダー」。齢五千年を数える頃、老龍は等しく長命種と呼ばれるようになる。その力は数多存在する龍たちの中でも特別で、これは龍が長き年月を経て元々の種族そのものの特性などを踏み越えた進化を遂げ、最早細分化出来ぬほどに個性的な特徴を持つようになることから生まれた、尊敬と妥協の入り混じった呼称である。
- 龍輝宝
「レリック」。長命種がとある条件下で生み出すとされる秘宝で、武器の形を取るもの、防具の形を取るものなど種類は様々。
共通するのは「その騎龍を駆る龍騎士が扱うに相応しい宝具である」という点で、一説には龍が己の龍騎士を真に信頼したときに作り出すのだ、と言われる。
有名なものではヤマト国最強の騎龍「牙王」アラガレを駆る龍騎士紅狼院アヤメの<天貫剣>シャダイ、フェルドナド銀龍戦騎団長を務める「華麗なる白銀」ノヴァスターの龍騎士バルロック・トワイライトニングが持つ<輝扇剣>シルフィードなど。
共通するのは「その騎龍を駆る龍騎士が扱うに相応しい宝具である」という点で、一説には龍が己の龍騎士を真に信頼したときに作り出すのだ、と言われる。
有名なものではヤマト国最強の騎龍「牙王」アラガレを駆る龍騎士紅狼院アヤメの<天貫剣>シャダイ、フェルドナド銀龍戦騎団長を務める「華麗なる白銀」ノヴァスターの龍騎士バルロック・トワイライトニングが持つ<輝扇剣>シルフィードなど。
3 騎龍と龍騎士たち
- 「天駆ける迅雷」ゼルドナーシュ、龍騎士エノク=ヴァーティゴ、龍輝宝<閃槍>ライトニングオーパス
物語の主人公たち。強力な力を持つ長命種であるゼルドナーシュが、エノクと出会ったところから物語は始まる。
公認龍騎士の採用試験に「度胸 3点(100点満点中)」の烙印を押され落選となったエノクは、それでも龍騎士への憧れを捨てきれずに龍具職人(龍闘に用いられる乗龍器具や武器防具の類を製造する職種)の道を選び生計を立てていた。
度胸は無くとも龍への憧れや知識、そしてその情熱が群を抜くものだったエノクであるから、程なくして龍具職人としての腕は超一流となった。そんなエノクの姿勢を笑うものもいたが、ほとんどの者は彼の暖かい人柄に触れ、彼が抱く夢を応援するようになった。「いつの日か龍騎士となって空を駆ける」……その夢を。
度胸は無くとも龍への憧れや知識、そしてその情熱が群を抜くものだったエノクであるから、程なくして龍具職人としての腕は超一流となった。そんなエノクの姿勢を笑うものもいたが、ほとんどの者は彼の暖かい人柄に触れ、彼が抱く夢を応援するようになった。「いつの日か龍騎士となって空を駆ける」……その夢を。
齢八千年の長命種ゼルドナーシュは退屈していた。自分よりも強い龍などそうそういないし、長い人生……いや龍生の中で実力差を分からせてきた周りの龍たちは、今や自分に挑みかかろうともしなくなった。
弱いものと戦うことも飽いた。血湧き肉踊る闘争、そんなものは遠い記憶となっていた。
そんな折、ゼルドナーシュは一人の人間と出会う。人間という弱小種、その中でも特に貧弱な個体。それでも彼はどこか他の人間と違っていた。
抗い続ける意思、挑み続ける熱情……。彼はとてつもなく弱いが、決して諦めると言うことを知らないのだ。それに気付いたゼルドナーシュは彼のことが何故か気になり、一般的に人里では滅多に目撃されぬ長命種が連日目撃されるという事態となった。
そうだ。この人間は確かに弱い。しかし、自分には無いものを持っているのだ。
ゼルドナーシュが忘れていたものを呼び起こしてくれるその人間の名は、エノク=ヴァーティゴといった。
弱いものと戦うことも飽いた。血湧き肉踊る闘争、そんなものは遠い記憶となっていた。
そんな折、ゼルドナーシュは一人の人間と出会う。人間という弱小種、その中でも特に貧弱な個体。それでも彼はどこか他の人間と違っていた。
抗い続ける意思、挑み続ける熱情……。彼はとてつもなく弱いが、決して諦めると言うことを知らないのだ。それに気付いたゼルドナーシュは彼のことが何故か気になり、一般的に人里では滅多に目撃されぬ長命種が連日目撃されるという事態となった。
そうだ。この人間は確かに弱い。しかし、自分には無いものを持っているのだ。
ゼルドナーシュが忘れていたものを呼び起こしてくれるその人間の名は、エノク=ヴァーティゴといった。
当初は三流以下の龍騎士だったエノクは、ゼルドナーシュに助けられる形で敵を打ち破っていく。
しかし元来のセンスやゼルドナーシュとの信頼関係が強まるうち、強大な敵にエノク自身の力で立ち向かっていくようになる。否、エノクとゼルドナーシュの「相互の」力で、だ。
戦いの中で龍輝宝を授けられたエノクは、旅の果て、世界最強の龍と謳われし存在に挑むことになる……。
しかし元来のセンスやゼルドナーシュとの信頼関係が強まるうち、強大な敵にエノク自身の力で立ち向かっていくようになる。否、エノクとゼルドナーシュの「相互の」力で、だ。
戦いの中で龍輝宝を授けられたエノクは、旅の果て、世界最強の龍と謳われし存在に挑むことになる……。
ちなみにゼルドナーシュはメスの龍で、一人称は「わらわ」であるということも付け加えておく。
エノクは僕っ子、その龍具職人としての腕には見合わぬ程に幼さの抜けきらぬ風体の十四歳なので、まあ有体に言えばなんだか卑猥な感じの関係なのだ。俺に良しなのだ。
エノクは僕っ子、その龍具職人としての腕には見合わぬ程に幼さの抜けきらぬ風体の十四歳なので、まあ有体に言えばなんだか卑猥な感じの関係なのだ。俺に良しなのだ。
4 ストーリー概要
- 第一部 1~13話「旅立つ君のひとみは、いつも美しい」
エノクとゼルドナーシュの旅立ちから、浮遊帝都エレジアで行われる龍闘大会の顛末まで。
ひょんなことから始まった二人旅。龍騎士になる夢が叶い、エノクは意気揚々と空へと飛び出した。……直後に、目を回した。龍の背から眺める下界の風景にビビったのだ。
龍騎士の看板を背負いはしたものの、生来のヘタレぶりのお陰でなかなか理想の龍騎士像に近付くことが出来ないエノク。龍闘の場においてはチート性能のゼルドナーシュの力により負け知らずだったが、そんな戦い方はエノクにとって到底龍闘とは言えない代物だった。
「強くなりたい」。そう願うエノクに対しゼルドナーシュは答える。龍に種族の違いによる得手不得手があるように、人にも生まれ持った才能というものがあるのだと。成り行きとは言え曲がりなりにもアウトライダーとして龍騎士人生を送り始めた自分を否定されたように感じ、密かに負けん気の強かったエノクはゼルドナーシュに反発するようになる。
彼女としてはエノクを励ましたつもりだったのだが……。人間の気難しさに頭を捻るゼルドナーシュ。夜な夜な行われるエノクの秘密特訓を遠くから見つめつつ、やはりこの人間に何か惹かれるものがあるのだと再認識するのだった。
そんな日々が続いたある日、二人は洋上で浮遊帝都エレジアに遭遇する。統歴以前より人間たちの拠点として機能していたこの機動都市は今なお決まった停留地点を持たぬ流浪の国家であり、そこでは定期的に大規模な龍闘大会が執り行われているのだという。
ゼルドナーシュに龍騎士としての自分を認めてもらうべく、大会への参加のためエレジアに上陸するエノク。そこで出会ったのは、幼馴染の龍騎士カナタ=アストライトだった。
エノクにとってカナタは近所の幼馴染のお姉さんというだけでなく、微かな恋心を抱いていた人物であり、将来を有望視される龍騎士のエリートとして憧れの存在でもあった。これまでのことを話し合い、昔に戻ったような思いの二人。龍騎士になったというエノクに対し、カナタは心からの祝福を贈った。
しかし時間の流れとは残酷なものだ。龍舎にて、長命種ゼルドナーシュに乗る幼馴染の姿に目を丸くするカナタ。可愛がっていたエノクとの六年ぶりの再会は、才能や生まれといったものを持ってしても絶対に埋められない物があるという事実を教えられる結果となってしまった。
「長命種の騎龍を得る」ということがどれほどの意味を持つのか? 若くしてエリート龍騎士として名声を得てきたカナタにとって、それは自分が持つ全てのアドバンテージを凌駕する決定的な差だった。
カナタの中で嫉妬の炎が燃えた。自分が望んでも決して手に入れられなかった物を労せずして手に入れ、しかもその幸運がどれほどのものなのか理解していないエノク。
「許せるわけないじゃない……!」
エレジア龍闘大会・決勝戦。ゼルドナーシュとの信頼関係を取り戻し、龍騎士として一歩成長したエノクと対峙する「花天」ハースニールと龍騎士カナタ。その目にはほんの僅かながらも、確かに芽生えた狂気の欠片が宿っていた……。
激戦の末、二人の戦いは遠くから飛来した砲火により中断された。砲撃の主はフェルドナド公国赤龍騎団長、「爆炎公」グランヴェズとその龍騎士スレヤ・エイルマットだった。
龍騎士の看板を背負いはしたものの、生来のヘタレぶりのお陰でなかなか理想の龍騎士像に近付くことが出来ないエノク。龍闘の場においてはチート性能のゼルドナーシュの力により負け知らずだったが、そんな戦い方はエノクにとって到底龍闘とは言えない代物だった。
「強くなりたい」。そう願うエノクに対しゼルドナーシュは答える。龍に種族の違いによる得手不得手があるように、人にも生まれ持った才能というものがあるのだと。成り行きとは言え曲がりなりにもアウトライダーとして龍騎士人生を送り始めた自分を否定されたように感じ、密かに負けん気の強かったエノクはゼルドナーシュに反発するようになる。
彼女としてはエノクを励ましたつもりだったのだが……。人間の気難しさに頭を捻るゼルドナーシュ。夜な夜な行われるエノクの秘密特訓を遠くから見つめつつ、やはりこの人間に何か惹かれるものがあるのだと再認識するのだった。
そんな日々が続いたある日、二人は洋上で浮遊帝都エレジアに遭遇する。統歴以前より人間たちの拠点として機能していたこの機動都市は今なお決まった停留地点を持たぬ流浪の国家であり、そこでは定期的に大規模な龍闘大会が執り行われているのだという。
ゼルドナーシュに龍騎士としての自分を認めてもらうべく、大会への参加のためエレジアに上陸するエノク。そこで出会ったのは、幼馴染の龍騎士カナタ=アストライトだった。
エノクにとってカナタは近所の幼馴染のお姉さんというだけでなく、微かな恋心を抱いていた人物であり、将来を有望視される龍騎士のエリートとして憧れの存在でもあった。これまでのことを話し合い、昔に戻ったような思いの二人。龍騎士になったというエノクに対し、カナタは心からの祝福を贈った。
しかし時間の流れとは残酷なものだ。龍舎にて、長命種ゼルドナーシュに乗る幼馴染の姿に目を丸くするカナタ。可愛がっていたエノクとの六年ぶりの再会は、才能や生まれといったものを持ってしても絶対に埋められない物があるという事実を教えられる結果となってしまった。
「長命種の騎龍を得る」ということがどれほどの意味を持つのか? 若くしてエリート龍騎士として名声を得てきたカナタにとって、それは自分が持つ全てのアドバンテージを凌駕する決定的な差だった。
カナタの中で嫉妬の炎が燃えた。自分が望んでも決して手に入れられなかった物を労せずして手に入れ、しかもその幸運がどれほどのものなのか理解していないエノク。
「許せるわけないじゃない……!」
エレジア龍闘大会・決勝戦。ゼルドナーシュとの信頼関係を取り戻し、龍騎士として一歩成長したエノクと対峙する「花天」ハースニールと龍騎士カナタ。その目にはほんの僅かながらも、確かに芽生えた狂気の欠片が宿っていた……。
激戦の末、二人の戦いは遠くから飛来した砲火により中断された。砲撃の主はフェルドナド公国赤龍騎団長、「爆炎公」グランヴェズとその龍騎士スレヤ・エイルマットだった。
- 第二部 14~26話「公国の手先が、ここにもいたか」
フェルドナド公国との戦い。
5 ヴェルシュヴァイン観光ガイド
- フェルドナド公国
建国…統歴142年
現王…十九目代国王アディロード・フェルドナド
龍の生息傾向…西洋龍が満遍なく。中~大型の飛龍、翼龍などが特に多い
現王…十九目代国王アディロード・フェルドナド
龍の生息傾向…西洋龍が満遍なく。中~大型の飛龍、翼龍などが特に多い
人口6000万人。商業、軍事、学問の三分野において世界のトップに君臨するヴェルシュヴァイン一の大国、それがフェルドナドだ。
彩龍戦騎団(※1)と呼ばれる最強の五大騎士団を有しており、龍闘界は勿論、有事への対応を通じての国際的地位も非常に高い。
その歴史は長くないものの、初代国王ファーレンハイトの方針により龍闘を国家事業として推し進めてきた結果、龍闘からあらゆる富が発生する現代での地位が必然的に高まる結果となった(※2)。
ヴェルシュヴァインに存在する三つの大陸(*3)のうち、最大の面積を誇る中央大陸の実に七割を占める国土を保有するフェルドナドは名実共に世界を動かす大国と言えるだろう。
彩龍戦騎団(※1)と呼ばれる最強の五大騎士団を有しており、龍闘界は勿論、有事への対応を通じての国際的地位も非常に高い。
その歴史は長くないものの、初代国王ファーレンハイトの方針により龍闘を国家事業として推し進めてきた結果、龍闘からあらゆる富が発生する現代での地位が必然的に高まる結果となった(※2)。
ヴェルシュヴァインに存在する三つの大陸(*3)のうち、最大の面積を誇る中央大陸の実に七割を占める国土を保有するフェルドナドは名実共に世界を動かす大国と言えるだろう。
※1 彩龍戦騎団…「金龍」「銀龍」「緑龍」「赤龍」「紫龍」以上五色の龍のみをそれぞれ駆る龍騎士たちの部隊。
「黄金の衝撃」スペリオルゴールド、「華麗なる白銀」ノヴァスター、「大いなる深緑」ベノーマスエルトット、「爆炎公」グランヴェズ、「紫霜玉」オブシダンヴェインら最強クラスの龍が所属。
※2 ファーレンハイトの業績…フェルドナドの建国当初、龍闘はあくまで荒ぶる龍たちを鎮めるための神的行事のようなものに過ぎなかった。そこに人間の経済的側面を加えることで龍闘の規模、存在意義を高めたのは一重にファーレンハイトの業績であると称えられている。
「黄金の衝撃」スペリオルゴールド、「華麗なる白銀」ノヴァスター、「大いなる深緑」ベノーマスエルトット、「爆炎公」グランヴェズ、「紫霜玉」オブシダンヴェインら最強クラスの龍が所属。
※2 ファーレンハイトの業績…フェルドナドの建国当初、龍闘はあくまで荒ぶる龍たちを鎮めるための神的行事のようなものに過ぎなかった。そこに人間の経済的側面を加えることで龍闘の規模、存在意義を高めたのは一重にファーレンハイトの業績であると称えられている。
6 豆知識
本作が黒歴史トピの最後の黒歴史になっている(2010/03/07現在)。
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