【僕とスパーダ 1】
スパーダ
「ああ~、なんかカッタりぃなぁ~」
ルカ
「あ、その…えーっと、
僕はどうすればいいのかな?」
スパーダ
「ああ?
独り言だよ、独り言。
いちいち反応しなくていいっつーの」
ルカ
「ああ、やっぱり?
多分そうじゃないかと
思ってたんだ」
スパーダ
「だったら無視すりゃいいじゃん」
ルカ
「でも、もし僕に話かけてたら
気を悪くするんじゃないかなって
思って…」
スパーダ
「お前、気に入らない事が
少しでもあったら、オレが暴れるとか
思ってねェ?」
ルカ
「…少し」
スパーダ
「ンだとォッ!」
ルカ
「うわっ! ご、ごめん…」
スパーダ
「おいおい、冗談だって。
怒っちゃいねェよ」
ルカ
「あ、ごめん…」
スパーダ
「だから謝るなって
ま、お前みてェな品行方正な
坊ちゃんなら、オレみてェな
不良にビビって当然だろよ」
ルカ
「…僕、不良っぽい人苦手だったから
今まで接触を避けてたんだ
だから不慣れな接し方で
不機嫌にさせてしまうかもしれない。
怒らせてごめん…」
スパーダ
「………。
わーったよ。
じょじょに慣らしていってやる」
ルカ
「お願いします」


【僕とスパーダ 2】
スパーダ
「イリアがこぼしてたけどよォ、
お前、家の様子を
見に帰ったんだって?」
ルカ
「ちょっと正確じゃないけど…、
でも家の近くを通っちゃったのは
事実だよ」
スパーダ
「ふうん…、ま、いいんじゃねェ?」
ルカ
「僕、君に怒られると思ったよ。
だって、「最後まで筋を通せ」って
凄まれちゃったし」
スパーダ
「イリアのヒステリーなんかに
付き合ってやる必要はねーって。
コーダから話も聞いてるしな」
ルカ
「コーダ、どんな風に言ってた?」
スパーダ
「ああ、なんか
美味そうな匂いだったってよ」
ルカ
「………」


【僕とスパーダ 3】
スパーダ
「なあ、ルカ」
ルカ
「ん? 何?」
スパーダ
「お前、イリアの事、
どう思ってんだ?」
ルカ
「え? え? なぜ?
そんな事を…」
スパーダ
「だってお前、
しょっちゅうイリアを
見てんじゃねーか」
ルカ
「そ、そんな事ないよ!
たまたま…、イリアのいる方を
見てただけじゃないかな?」
スパーダ
「ふ~ん…?
だったらまあ、いいけどよォ」
ルカ
「スパーダって、まさか…。
い、いや、思い過ごしだよね…?」


【僕とスパーダ 4】
イリア
「ぶしゃしゃしゃしゃ!
…もぉ~、何言ってんのよ、
スパーダったらぁ。
あ~、おかしい…」
スパーダ
「おいおい、笑いすぎだろ?
でもま、実際オレも大爆笑だったぜ。
フヒャヒャヒャヒャ!」
イリア
「それでそれで?」
スパーダ
「ああ、それがだなァ
お? ルカ、どうした?」
ルカ
「あ、いや、
なんだか楽しそうだなって…」
イリア
「ちょっと聞きなさいよ!
スパーダったらね!」
スパーダ
「おい、内緒っつったろ!」
イリア
「あらぁ? 聞いた以上は
誰かに話さないとね~!!」
スパーダ
「あっの女!」
ルカ
「………」
スパーダ
「どうした、ルカ?
なんか暗いぜ?」
ルカ
「スパーダとイリアって
仲良さそうだね…」
スパーダ
「ああ、まあな。
割と話してて面白ェけどよ」
ルカ
「スパーダって、ひょっとして
イリアの事を…」
スパーダ
「ああ?
おいおい、勘違いすんなよ?
ただ話してただけだって」
ルカ
「でも、君もイリアも
楽しそうだった。
イリアは僕にあんな顔してくれない…」
スパーダ
「そんなの知らねェっての!
お前の頑張りが足らないだけだろ?」
ルカ
「そうだよね。
どうせ、僕なんて…」
スパーダ
「あ、お、おいっ!
………。
なにスねてんだ? アイツ…」


【僕とスパーダ 5】
ルカ
「僕…、スパーダに謝らなきゃ」
スパーダ
「ああ?
なんだよ?」
ルカ
「僕、以前、君にヒドい事言った。
憶えてる? イリアの事だけど…」
スパーダ
「あ~、アレか。
お前が勝手にヘコんでたヤツだろ?」
ルカ
「あ、うん…、ソレだけど…。
「勝手に」って、スパーダは
怒ったんじゃないの?」
スパーダ
「いいや?
ルカのヤツ、ヘコんでやがるなぁ
とは思ってたけどよォ」
スパーダ
「そもそもなんでオレが怒ったって
思ったんだ?」
ルカ
「だって、僕が落ち込んだのは
スパーダを怒らせたからだと
思ったから…」
スパーダ
「オレ、怒ってねェじゃん?
お前が落ち込んだから、なんだって
オレが怒んなきゃいけねーんだ?」
スパーダ
「全然わかんねェ」
ルカ
「…そ、そういえばそうだね」
スパーダ
「あのさ、お前、ビビり過ぎ」
ルカ
「ソレ、前にも言われたね」
スパーダ
「オレが不良だからビビってたんだよな。
でも今回は違ェよ」
スパーダ
「他人を怒らせちまったとか、
不快に思わせちまったとか、
いちいち気にしなくていいんじゃねェ?」
ルカ
「だって、嫌われちゃうじゃないか!」
スパーダ
「あのな!
お前にそこまで影響力ねーっての!」
ルカ
「そうだね。
僕なんてどうせ…」
スパーダ
「あ、イヤ、間違った!」
スパーダ
「…つまりお前の態度ってさ、
その、オレの感情を…えーっと…」
スパーダ
「とにかく、気にすんな!」
ルカ
「………?」
スパーダ
「えー、つまり…、
オレの事で、オレに内緒に
勝手にヘコんでんじゃねェって事だ」
スパーダ
「人間関係なんてよォ、
相手あってのものだろ?
オレに不満言やァいいんだよっ」
ルカ
「でも…、そんなの迷惑じゃ…」
スパーダ
「いいじゃねぇか。
ダチってなぁ、そういうもんなんだよ」
ルカ
「そういう…もの?」
スパーダ
「ああ、そうだ」
スパーダ
「なんならもう一回言おうか? ああ?」
ルカ
「い、いや…、わかったよ。
ごめん、スパーダ」
スパーダ
「謝んじゃねーって。
まったく、ホントにわかってんだか…」


【僕とスパーダ 6】
ルカ
「「ダチ」ってさぁ…、
「友達」って言うより
恥かしくないよね」
スパーダ
「なんだそりゃ?
お前、「友達」って言葉、
恥かしいのか?」
ルカ
「なんだか照れ臭くならない?」
スパーダ
「ならねェけど?」
ルカ
「じゃあ、なんで「友達」って言わず、
「ダチ」って略して言うの?」
スパーダ
「そりゃあ、お前、
短い方が言いやすいに決まってんじゃん」
ルカ
「それだけの理由なの?」
スパーダ
「ああ。
ンで、ソレがどーしたよ」
ルカ
「い、いや、なんでもない…」


【僕とスパーダ 7】
スパーダ
「んで、最近どうだ?」
ルカ
「??
調子は悪くないけど…?」
スパーダ
「バーカ、違ェよ!
イリアの事だってば」
ルカ
「ああ、うん、悪くはない…かな。
…でもスパーダと話す時みたいに、
イリアは楽しそうな顔してくれないんだ」
スパーダ
「そりゃ、仕方ねェだろ。
お前にユーモア精神が足らねェんだから」
ルカ
「ユーモア…か。
確かに僕、苦手かも」
スパーダ
「訓練だ。
何か言ってみな」
ルカ
「えーっと、えーっと…」
「ある男が王宮に向かって、
「王様のバカ!」と怒鳴り、
その場で逮捕された」
「罪状は二つ、不敬罪。
そして…」
「国家機密漏洩罪」
スパーダ
「タハハ…」
ルカ
「やった! 笑った!
僕の冗談が初めてウケた!」
「よぉ~し、イリアにも
試して来よう!」
スパーダ
「…まあ、「スベり受け」も
立派な笑いの技術だからなぁ」


【僕とスパーダ 8】
ルカ
「そういえば、ハルトマンさんって
どんな人だったの?」
スパーダ
「なんだよ?
ソレ聞いてどうすンだ?」
ルカ
「ただの興味本位だよ。
聞かせて欲しいな」
スパーダ
「ああ?あ~…、なんだ。
優しかったぜ?
家ではオレに味方がいなかったしな」
ルカ
「お兄さんがたくさんいるから、
…だったっけ?」
スパーダ
「ああ、ま、仕方ねェっちゃあ
仕方ねェんだけどよ」
「オレ、なまじ腕が立ったモンだから、
兄貴達の嫉妬が激しくてよォ」
ルカ
「嫌がらせでもされたの?」
スパーダ
「そりゃ、毎日すげェもんだった!
寝床に毒サソリ仕込まれたり、
メシにガラス片混ぜられたりな」
ルカ
「うわぁ…、ヒドいね」
スパーダ
「そんなイヤがらせの防波堤に
なってくれたのがハルトマンだった」
「ってか、じいがいなけりゃ、オレ、
兄貴の2,3人は地獄に
叩き落してたろうよ」
ルカ
「騎士って誇り高いものなんでしょ?
そんな人は騎士失格じゃないの?」
スパーダ
「こういうドロドロした陰謀戦も、
宮廷で生き抜くには必要なのさ。
どだいオレには向いてねェよ」
ルカ
「どうかな…。
ハルトマンさんだけは
信じてたんじゃないのかな?」
スパーダ
「だとしたら裏切っちまったな…」
ルカ
「そんな事ないよ」
「ハルトマンさんも言ってたじゃない。
「騎士としての立ち振る舞いが
重要」だってね」
スパーダ
「………」
ルカ
「家柄とか身分とか、
そういうものじゃなく、
騎士の本質をスパーダに教えたんだよ」
スパーダ
「…そういう考え方もアリだな」
「ケッ、兄貴どもめ!
兄弟で仲良く足の引っ張り合いでも
やってな!」
「オレはあいつらよりも立派な
騎士になってやるさ!」
ルカ
「ハルトマンさんの教育のおかげだね」


【僕とスパーダ 9】
ルカ
「………」
スパーダ
「ンだよ、ぼーっとしやがって。
またイリアでも見てたのか?」
ルカ
「うん…。
女の子って、どうしてあんなに
カワイイんだろ?」
スパーダ
「そりゃ、お前、アレじゃねェ?
男がカッコイイのと同じ理由だろ」
ルカ
「…僕、カッコよくないんだけど」
スパーダ
「あ~…、そりゃ、アレだ。
え~」
「女にもカワイクねェのだって
いるじゃねェ?
つまりそういう事だ」
ルカ
「イリアはカワイイけど
僕はカッコよくない…。
こんなんじゃ釣り合わないよね」
スパーダ
「そんなのわかんねェじゃん。
第一、まだイリアの気持ちを
確かめてねーだろ?」
「とっととコクっちまえよっ!」
ルカ
「でも、今はそれどころじゃないし、
フラれたら気まずいし…」
「告白するなら、全部が終わって
落ち着いてからかなぁって思ってるんだ」
スパーダ
「気の長ェ計画だぜ…。
オレなら即コクっちまうのにな」
ルカ
「へえ? スパーダって、
告白した事あるの?」
スパーダ
「ったりめーよ!
なんでオレが不良っぽいカンジで
やってると思ってンだよ!」
「モテるからに決まってんだろ?
結構いるんだよ、「不良っぽい男」が
タイプって女がさ」
ルカ
「そ、そうだったのか…。
いいなぁ、モテるなんて」
スパーダ
「あ、ああ。
じゃ、話はコレで終わりって事で…」
ルカ
「あ、待ってよ。
何人ぐらいと付き合ったの?」
スパーダ
「ああ?
どーでもいいじゃねェか、
そんな事ァよ!」
ルカ
「教えてくれないの?
…なんだかズルい」
スパーダ
「ああ!?」
「あ~、その、な、なんだ…
よ、四人?」
ルカ
「四人も?
すごいね、経験豊富」
スパーダ
「あ、いや…、三人?」
ルカ
「………」
スパーダ
「いや…、二人」
「………。
ホントは一人だけだ」
ルカ
「見栄張らなくていいのに…」


【僕とスパーダ 10】
スパーダ
「なあ、ルカ。
手紙の書き方、教えてくれねェ?」
ルカ
「いいけど、誰に出すの?」
スパーダ
「そ、そんなの関係ねーだろ?」
ルカ
「関係あるんだよ。
目上の人に出すのかそうじゃないのかで
文面が変わったりするんだけど…」
スパーダ
「…実家だよ」
ルカ
「へ~、どういう風の吹き回し?」
スパーダ
「そう言われるのが
イヤだったんだよなァ。
ま、いいけどさ」
「実はよ、仕事の世話だけしてもらおうと
思ってな。
ボチボチ先の事、考えねェと」
ルカ
「どんな仕事に就きたいの?」
スパーダ
「比較的仲のいい兄貴の一人が、
海軍士官をやってんだ。
ソコにでも放り込んでもらおうかと…」
ルカ
「じゃ、海賊相手に大暴れだね!」
スパーダ
「オレ船旅、結構気に入ってんだよな。
だったら仕事にするのも悪くねェ。
そう思ってな」
ルカ
「スパーダにピッタリだよ」
スパーダ
「万が一出世する事だってあるし、
そうなったら、多少実家に
いい顔も出来る」
「んで、いずれはオレの屋敷に
ハルトマンを召抱えて、
子供の教育を任せてェんだ」
ルカ
「素敵な計画だね。
その事、手紙に書くと
ご両親も喜んでくれると思うよ」
スパーダ
「さあ、どーだか…。
ろくでなしの帰還に、
苦虫を噛みつぶすんじゃねェか?」
「…んで、手紙の書き方だけど」
ルカ
「ああ、まず頭語と結語を決めて、
それから時候の挨拶を入れて…と。
サラサラ…と、こんな感じかな」
「本文は家族宛てだから、
堅苦しくなくていいと思うよ」
スパーダ
「…ルカ、お前、微妙に字ヘタだな」
ルカ
「う、気にしてるのに…」
スパーダ
「ちゃんと清書しねェとな。
んじゃ、ありがとよ」
ルカ
「スパーダが、将来の事を
真面目に考えているなんて、
ちょっと不思議だなぁ」
「僕も旅の終わりを
見すえておかないとね」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年12月20日 15:55