【アンジュとリカルド 1】
アンジュ
「わたし、リカルドさんを雇えて
本当に良かったと思っているんです」
リカルド
「フン、俺など一山いくらの
凡百な傭兵に過ぎん。
感謝されるほど働いていないさ」
アンジュ
「謙虚なんですね。
その上、プロ意識というのでしょうか。
報酬への誠実さを感じられます」
リカルド
「…過分な報酬だった。
ならばサービスせねば、と
思っているだけだ
それに金じゃない。
セレーナと交わした契約こそが
俺の戦う理由なのだ」
アンジュ
「契約、ですか?」
リカルド
「殺しが好きで戦場に立つわけでもなく、
報酬で命を奪う拝金主義者でもない
契約を結び、依頼者との信頼関係を
築く事こそが、俺の傭兵としての誇りだ」
アンジュ
「わたしとの契約で、
一つの契約を反故させてしまいましたね。
あなたは誇りを傷つけられたのでは?」
リカルド
「金銭で俺を雇う者は、
損得勘定を愛する者が多い
違約金さえ払えば、依頼人は得をする。
俺に仕事をさせた以上にな。
依頼人を儲けさせたのなら何も問題無い」
アンジュ
「そうですか。
そう聞いて安心しました」
リカルド
「いや、まだだ。
セレーナを守る仕事は
これからも当分続く」
アンジュ
「そう…ですね。
ぜひわたしを守り抜いて下さい。
あなたの誇りを守るために」
リカルド
「了解した。
依頼人よ、俺に任せてもらおう」


【アンジュとリカルド 2】
アンジュ
「えいっ、やっ、とぉ~」
リカルド
「………」
アンジュ
「ハァ…ハァ…」
「リ、リカルドさん…、
早く声掛けてもらえません?」
リカルド
「…一体何をしているのだ?」
アンジュ
「見てわかりませんか?
短剣術の型をなぞっているんですよ」
「一応…」
リカルド
「そうだったか。
ひょっとしてそうか、とは考えたが
あまりに牧歌的だったのでな…」
アンジュ
「はいはい、おっしゃる通り、
わたしはひ弱で剣を振るう筋力すら
ありませんよ」
リカルド
「そもそもなぜ型稽古に
励んでいるのだ?」
アンジュ
「敵も強くなってきましたし、
前衛の方々も敵を抑えられなく
なって来ています」
「自分自身を守れる程度には
己を鍛えておかないと…」
リカルド
「ふむ、心がけは立派だ」
アンジュ
「ありがとうございます」
リカルド
「だが、やる気が伴われていない」
アンジュ
「やっぱりわかります?
やはり身体を動かすのは
どうも苦手でして…」
リカルド
「まず基礎体力をつけろ。
技はそれからだ」
アンジュ
「うう…、基礎体力…、
わたしの嫌いな言葉ランキングで
かなり上位の言葉ですね」
リカルド
「甘いお菓子は好きか?」
アンジュ
「わたしの好きな言葉ランキングで
かなり上位の言葉です♪」
リカルド
「少し控えろ。
そうすれば身体が引き締まる」
アンジュ
「うう…、一転して嫌いな言葉に
変わっちゃった…」


【アンジュとリカルド 3】
リカルド
「………」
アンジュ
「………」
リカルド
「………………」
アンジュ
「そ、そんな目で見ないで下さいな。
勝手にアルベールの元に行った事を
責めていらっしゃるのでしょう?」
リカルド
「…責めてなどいない」
アンジュ
「嘘です」
「ご自分も同じ事をなさったから、
言葉ではお責めにならないのでしょう?
でもその視線は…痛い、です…」
リカルド
「俺に相談しなかったのも、
ガキどもが俺達二人に見捨てられたと
思い込ませないように、という配慮だな」
「フン、小賢しい。
あいつらはちゃんとわかっていた。
事情があっての事とな」
アンジュ
「そう、だったのですか…」
リカルド
「その点が俺とは違う。
セレーナの人徳、というべきか」
アンジュ
「では、なぜ無言でお責めになるの?」
リカルド
「理屈では筋違いだとわかる。
だが、時として感情が追いつかない時も
あるものだ」
アンジュ
「あら、未熟者なのですね」
リカルド
「ああ、未熟者さ…。
だから全力を持ってお前や
ガキどもを守らねばならんのだ」
アンジュ
「ごめんなさい。
もうこれ以上、余計なお手間は
掛けさせません」
リカルド
「フン…、ならばいい」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年07月20日 11:38