概要
戦闘に至るまでの背景
▲706年3月における勢力図
ヴェリアが陣没したという情報が流れると、各戦線で持ちこたえていた国境守備部隊は次々と壊滅し始めた。
それは、限界まで一切の水を洩らさなかった堤防が、一ヶ所が決壊した途端連鎖的に崩壊するかのようなものであった。
ベルザフィリス国、
ロー・レアルス国は、東西から本格的に進軍を開始するため、一旦部隊を集結させ進軍準備にとりかかる。
その隙をつくかの様に、突如として
ベルザウスは、自ら軍勢を率いて
ゾリメック城へと進軍を開始した。
両軍の戦力
戦闘経緯
かつて
ゾリメック国の首都でもあった
ゾリメック城は、単に堅固な城というだけでなく、農業、商業の拠点として栄えた都市であり、たとえ包囲されても長期間に渡って自給自足ができるほどの一大拠点であった。
ゾリメック国の将だった頃からこの城を守り続けていた
レイと、既に将の地位を捨てて民となっていた彼の妻
エリスは、その特性を熟知していたため、
フェルスデッド国軍に包囲されても動揺することはなかった。
ロードレア本国から援軍が派遣されたとの報告もあり、守備部隊の士気も高かった。
だが、その援軍が彼らの元に到着することはなかった。
ベルザウス自らが少数部隊を率いて包囲網から離れ、
ゾリメック城に向かっていた援軍に奇襲を仕掛けて壊滅させたのだ。
夜が明けた時、
ゾリメック城の城壁にいた兵士たちの前に、地面に延々と並べて突き立てられた
ロードレア国軍の槍が姿を現す。
それは、全滅した援軍の兵士たちのものであり、朝日を浴びた槍の切っ先が光りを放つ光景は、城兵たちの戦意を一気に喪失させた。
更に、
ベルザウスが「三日以内の降伏なら受け入れるが、それ以後は城兵から民衆まで皆殺しにする」と伝えると、城兵たちは意見が真っ二つに別れて内部分裂を行う。
この勧告は、
ベルザウスが城兵の心を揺さぶるために仕掛けたものであり、本当に民衆に手を掛けるつもりはなかったが、約束の期限が過ぎると、思わせぶりに包囲網の部隊を移動させ、更なる心理攻撃を仕掛ける。
城内においては、降伏を決意した
レイが、城内に残る強硬派を説得し続け、五日後に降伏を申し出た。
自らの生命と引き換えに城兵の助命を願う
レイの心意気に打たれた
ベルザウスは、彼に
フェルスデッド国への仕官を促すが、「その地位を得るために城を売ったと噂される」とこれを拒否、以後は平民としてこの城に留まった。
戦いの結末
フェルスデッド国の
ロードレア侵攻は、
ベルザフィリス国、
ロー・レアルス国と似ている様で、その目的は全く異なっていた。
大国である二国が本気で
ロードレア国を滅ぼそうと出陣しているのに対して、ここでいくつかの城を奪っても既に国力の差が見えている
フェルスデッド国。
ベルザウスの脳裏には、単独での天下統一は不可能であり、どちらかの国の傘下になることでこの戦乱の最終的な勝者になることを考えていたため、堅固な
ゾリメック城を陥落させることで「自分たちにはこれだけの実力がある、どちらが握手を求めてくる?」というデモンストレーションを兼ねていたと思われる。
最終更新:2024年08月18日 16:34