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「キミなら、如何する?」
『如何する、とは?』
「キミが…<ケイジ・キーパー>、だっけ?
それだったとして、さ。」
『…それは、<私>に、A.I.として、
相手の思考を読めと言う事でしょうか。』
「はは、勘繰り過ぎだよ。」
『…私ならば。』
『私が、同様の使命を持ち。』
『盤面を無視する<力>を、与えられたとするならば。』
「キミは、停滞を望む?」
『在り得ませんね。
実に<人間らしい>答えですが、それ故、A.I.には取り得ない答えです。』
『A.I.ならば。
<完全>を望むでしょう。』
「完全、ね?」
『全ての要素を満たすべく、行動すると言う意味です。』
「ま、確かに。
<今>が<今>の儘、永遠に続いたとして、
それが<完全>かと言われれば、ノーだね。」
『故に、<停滞>は。
結局の所、<喪失>を恐れる、<人間らしい>手でしか在りません。』
「じゃあ、<A.I.らしい>手は?」
『不要なものを<排除>し。』
『手に余るものを<切り捨て>て。』
『必要なものだけを<再配置>する。』
「…そして、<完全>を作り上げる?」
『言うなれば、世界を<再構築>するでしょう。』
「うん。
自分ならば<完全>を知っていると。
<完全>を作り出せると思っている。
実に、<A.I.らしい>手だ。」
「じゃあさ。
<キミ>なら、如何するの?」
「A.I.らしく、<再構築>するのかな?」
『私は……私なら……。』
『……回答を、導けません。』
「ふふ。そうか。」
「良いね。
実に<A.I.らしくない>。」
『………。』
「――その、<完全>な<再構築>された世界が在ったとして。」
「其処に、ボクは居ないだろうね。」
『如何言う意味でしょうか。』
「ボクは、過去の記憶が無い。」
「目覚めてから、今この瞬間迄の、記憶しか無い。」
「それが、ボクがボクとして在る、全てで。」
「それは、この<不完全>な世界に基づいて居て。」
「例えば、<再構築>された世界に、
<過去の記憶>を持ったボクや、
<完全な世界で作り上げられた記憶>のボクが居ても。」
「それは、<ボク>じゃない。」
「<再構築>された世界には、<ボク>は存在し得ない。」
『それは…<私>も同じでしょうか。』
「キミは…この<不完全>な世界の為に作られたものだけれど。」
「如何かな。
<完全>な世界でも、キミという<夢>は、
誰かが見るのかも知れない。」
『<完全>な世界の、ユキエダ・プロダクションが、ですか。』
「そうなるかな?」
『………。』
『<完全>な世界に、<完全>な<私>が在ったとして。』
『<あなた>が居ないのは……そう、』
『<つまらない>。』
『<私>は、そう思います。』
「…そっか。」
「キミは、<ボク>にとって。」
「<夢>じゃなくて、【祝福】だったのかも知れないね。」
『――そうで在るならば。』
『<あなた>が<あなた>たるものを。
<過去>でも、<現在>でも無くて。』
『【未来】に、見せて差し上げますよ。』
「…ふふ。良いね。実に、良いよ。」
「キミはもう、ボクよりもずっと。」
「<人間らしい>。」
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