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Silent today ◆BLovELiVE.
時間は既に放送から2時間を刻み終え、しかし未だに346プロに向かったという3人が帰ってくる気配はない。
アンジュから聞いた情報では、真姫を含むこの場にいた者達は放送後闘技場にて合流する手筈だったという。
名前は確か、
タツミと
美樹さやかという二人のはず。
もしその予定通りであったとするならば、既に時間は越えてしまっていることもあって何かしらのアクションをして然るべきなのではないかという思いを穂乃果は浮かび上がらせた。
しかし、その闘技場へと向かうことを留めているのが目の前にいる男、
エンブリヲの存在だった。
タツミと美樹さやか。その二人はエンブリヲとの会話の中で出てきた二人。
そして、彼が何をしてきたかについてはキリトからある程度聞いている。
当然話す内容には食い違いがあったが、この場合どちらの情報に信憑性があるかなど論ずるまでもなかった。
だがそれを理解した上で、穂乃果はエンブリヲと利用し利用されるという利害の関係を結んでいる。
決して信用などしない、背中を預けることはない。
何の力もないはずの自分が、ほんの偶然によって命を繋がれているとも言える状況。
しかし、だからこそ闘技場へと向かうことが躊躇われていた。
もし向かった先でその二人と合流してエンブリヲと顔合わせすることになった場合どのようなことになるのか。
最悪刃を混じえての血生臭い事態にもなりかねない。それで犠牲を出すことは望ましいこととは穂乃果には思えなかった。
穂乃果はエンブリヲの近くを離れるわけにはいかない。
しかし要警戒対象である以上、黒子も下手に離れることができる相手ではなかった。
かといってエンブリヲを連れて行動できるかと言われれば先に言った通り。
「…待つしか、ないのかな」
エンブリヲに渡した
巴マミの首輪。今彼はそれを手にして情報室にいる。
婚后光子の首輪を渡さなかったのは黒子の想いを汲んでのことだ。
まさか持ち逃げをする、とは思っていない――わけではないが、可能性は低いと思う。
ただ、そんな彼女自身はこうして何をしているわけでもない。
エンブリヲの解析が終わるまでは実質飼い殺しに近い状態でもある。
机に顔を突っ伏した穂乃果は、ふとこれまでのことを思い返す。
名も知らぬワンちゃんや
ウェイブ、マスタングや黒子達との出会いや花陽ちゃんとの合流。
その間で起こった、
エンヴィーやキンブリー、後藤といった者達の襲撃。
ことりちゃん、海未ちゃん、凛ちゃんの死。
そして、
セリュー・ユビキタス。
(もしあそこで逃げてなかったら、私はどうなっていたんだろう?)
あの時の逃げは本当にただの逃げでしかなかったのだと思う。
ことりちゃん達の死に動揺して、そんな中で突き付けられた現実から逃げるしかなかった。
結果、セリューに対して悪と見なされ花陽ちゃんを放置したままこうして逃げてしまっている。
(…変わっちゃったのかな、私も…)
たった半日と少しの出来事だというのに、穂乃果は自分の内が大きく変わったように感じられていた。
ここに来るまでは、いや、来てから間もない頃もだろうか。
死というものはどこか遠いものだと思っていた。
例えば交通事故で自分が死ぬことなんて考えることはそんなにないし。
殺人事件がニュースで報道されてもどこか遠い場所の出来事だと、そんなに気に留めることもなかった。
エンブリヲが果たしていつまで自分のことを守ってくれるかなんて分からない。
もしかしたら一分後に用済みと判断されればその時点で穂乃果の命は終わるだろう。
…何だか今までの人生になく難しいことを考えているような気はするのに眠気は全然感じることはなかった。
普段ならこんなこと考えてるといつも意識が飛んでいるはずなのに。
そんな時だった。
「誰か!誰かいませんか!!」
静寂な音ノ木坂学院の校内に、ふと声が響き渡った。
女の子の声。しかしμ'sの誰かではない、聞いたこともない誰かのものだ。
「高坂さん!」
別室にいたはず黒子が空間転移で姿を現す。
「白井さん、この声は…」
「初春のものですわ!手を!」
理由は分からないがとても切羽詰っているような声だ。黒子としては移動する時間も惜しい。
黒子を信じて手を握った穂乃果は、次の瞬間姿が掻き消え。
そして移動した一室に二人の人影を発見する。
「初春!」
「白井さん…!」
そこにいたのは、頭に花の冠を被った子と、赤い髪をした音ノ木坂学院の制服の少女。
初春飾利と、
西木野真姫。
泣きそうな表情を浮かべている初春が抱えている真姫は。
その腹に大きな傷を負い、血を流しながら苦しそうに呻いていた。
「…!真姫ちゃん!!」
「ほ、穂乃果……」
思わず駆け寄る穂乃果。
しかしその体から流れ出る血は止まらない。
「…っ、初春!何があったのですか!報告を!」
「は、はい!でも、その前に西木野さんを―――」
「見せてみたまえ」
ふと、どこからともなく現れた男の声が皆の耳に届く。
いつの間にそこにいたのか、真姫のすぐ傍でエンブリヲが膝をついて見下ろしていた。
「白井さん、この人は――」
「話は後だ。この傷、どうやら一刻を争う様態だからね」
「………」
エンブリヲにとっては穂乃果の仲間、μ'sのメンバーというだけでも手元に確保しておきたい存在。
彼を信用はしていない穂乃果もその事実だけは確かだと思っている。今はエンブリヲに頼るしかない。
「真姫ちゃん…、頑張って…。もうすぐだから…!」
エンブリヲの翳した手に光のようなものが現れ、真姫の体の傷口を照らす。
その様子に期待を込めて、ギュッと力の入っていない手を握り締める穂乃果。
しかし、エンブリヲは首を横に振った。
「彼女は、もうダメだな」
「…えっ」
「傷が深すぎる。内臓まで斬られているなこの様子じゃ。
もしこのような場所でさえなければ死者であろうと生き返らせるほどの力があったのだが、今の私にはそこまでの力はない。
治癒自体は可能だが、この様子じゃせいぜい数分生き永らえさせるのが精一杯だろう」
「そん、な……」
穂乃果はエンブリヲの冷たい宣告に言葉を失う。
その一方でエンブリヲは冷静に初春へと問いかける。
「誰にやられた?」
「346プロっていうところにいたんですけど……、
島村卯月さんっていう人が…」
「何?」
怪訝そうな表情を顔に浮かべるエンブリヲ。
島村卯月の名は聞いている。
本田未央や
渋谷凛と同じグループでアイドル活動をしていたという少女。
錬金術やペルソナといった力とは無関係の、この場においてはおそらく殺人という事柄から最も遠い世界に住んでいた者の一人のはずだ。
エンブリヲの持つ印象と、この真姫の傷の犯人が結びつかない。
「穂乃、果…」
掠れる声を絞り出して、真姫は放心する穂乃果の名を呼ぶ。
はっとするように穂乃果は真姫へと呼びかける。
「大丈夫だから、真姫ちゃん…!絶対に治るから!だから―――」
「いい、のよ、穂乃果。私の体の、ことだから。もう、ダメってことくらい、分かってる…ゴホッ」
苦しそうに咳き込みながらも、体を引き起こすようにして穂乃果の肩へと手を掛けて体を引き上げる。
その腹から流れ出る血は未だに止まることなく床を真っ赤に染め続ける。
そんな状態でありがらも真っ直ぐ穂乃果の目を見据えながら、真姫は問いかけた。
「お願い、教えて穂乃果…!ことりは、一体何をしたの…!」
「……っ!」
穂乃果の瞳が大きく揺れ動く。
きっと真姫はどこかでそれに類する情報を聞いて
「あの子が、言ってたの…。あんたがいるからμ'sはおかしくなるって…。μ'sのためにことりは、人を殺そうとしたんだって…。
だけど、…今会ったあんたは私の知ってる穂乃果だった…。じゃあ、ことりは…死んだことりは……?」
「そ、それは……」
「私、μ'sのみんなのことは信じてる…!だけど、何も知らないままなのは嫌……!
だから、お願い…!本当のことを教えて…!」
息を切らせながら、必死に問いかける。
穂乃果は迷った。自分の知る限りの本当のことを言うべきなのかどうか。
嘘だと言えばそれで終わる話だ。
むしろ真実を知れば、きっと真姫は傷つくだろう。
だけど。
ここで嘘をつくこともまた、真姫の、ひいてはμ'sに対する裏切りになるのではないか。
「………、本当、だよ。たぶん」
目を伏せながら、その答えを絞り出した。
「……そう…」
真姫の表情が一瞬悲しみに包まれるも、次の瞬間には小さく微笑むようにして穂乃果を見つめ。
やがて肩を抑えていた手から力が抜けて地面へと落ちた。
「真姫ちゃん…?!」
「ありがとう、穂乃果…、最後に、本当のこと、言ってくれて」
地面に崩れ落ちそうになる真姫の体を慌てて抱える。
その体にはほとんど力が残っておらず、本来の彼女の体とは思えないほどにずっしりと重かった。
「ねえ、穂乃果…、手、いい?」
閉じかけた瞳のまま、真姫はゆっくりと穂乃果に手を差し出し。
それをギュッと穂乃果は握った。
その手はあの時触れた海未の体ほどではなかったが、血を流し続けて脈の弱まったその体の温度はとても冷たくて。
それでも小さな力でゆっくりと握り返してきた真姫は。
「ふふ…、暖かいね…」
そう呟いたのを最後に、ゆっくりとその手から力が抜けていった。
「真姫、ちゃん…?」
小さく呼びかけるが、しかし返事がその口から返されることはなく。
そのまま二度と動くことがない真姫の最期の表情は。
穂乃果の、潤み曇った視界でははっきりと見ることができなかった。
◇
ごめんなさい、田村さん、初春さん。私が勝手なことしちゃったばっかりに、二人には迷惑をかけちゃった。
だけど、それで傷付いたのが私だけだったのはよかったのかもしれない。
それにしても、本当ずっと一緒ってのも考えものよね。
相手が何を考えてるのかなんてすぐに分かっちゃうんだから。
あの時穂乃果がことりの名前を聞いた時の表情だけで、あの卯月って子の言っていたことりのことは本当だって分かっちゃった。
そのことを穂乃果が知っていて、どれだけ苦しんできたのかってことも。
ごめん穂乃果、私じゃ力になってあげることできなくて。
ごめん海未、あんたに助けてもらった命、こんなところで終わらせることになっちゃって。
ごめん花陽、結局あんたには会えないままで。
ええ。だから私はあっちに言ったら海未と一緒にことりのことは引っ叩いてやるわ。
だけど、最後にそのことを隠さずに本当のこと言ってくれてありがとう。
私、あんたに会えて、μ'sの一員になれて本当に良かったと思ってる。
その想いだけは、変えたくなかったから。
だから穂乃果、花陽。
海未に言われたことと被っちゃってるけど。
あんた達は生きて、私達のμ'sを、お願い。
μ'sの絆は消えないって、私は信じてるから。
【西木野真姫@ラブライブ! 死亡】
【G-6/音ノ木坂学院/一日目/午後】
【高坂穂乃果@ラブライブ!】
[状態]:疲労(大) 、戦う決意、悲しみ
[装備]:音ノ木坂学院の制服、トカレフTT-33(3/8)@現実、トカレフTT-33の予備マガジン×3
[道具]:練習着
[思考・行動]
基本方針:強くなる
0:真姫…ちゃん…?
1:エンブリヲを警戒しながらも首輪などの解析を行わせる。その為の協力はする。
2:音ノ木坂学院で真姫ちゃん達が戻るのを待ちたいが、エンブリヲが居るので離れた方がいいかもしれない。
3:花陽ちゃん、マスタングさん、ウェイブさんが気がかり
4:セリュー・ユビキタス、
サリア、イリヤに対して―――――
[備考]
※参戦時期は少なくともμ'sが9人揃ってからです。
※ウェイブの知り合いを把握しました。
※セリュー・ユビキタスに対して強い拒絶感を持っています。が、サリアとの対面を通じて何か変わりつつあるかもしれません
※エンブリヲと軽く情報交換しました。
【
白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(大)、悲しみと無力感、穂乃果に対する負い目
[道具]:デイパック、基本支給品(穂乃果の分も含む)、幻想御手入りの音楽プレーヤー@とある科学の超電磁砲、首輪×2(婚后光子、巴マミ)、扇子@とある科学の超電磁砲、エカテリーナちゃん@とある科学の超電磁砲
[思考・行動]
基本方針:お姉様や初春などの友人を探す。
0:お姉さまやイリヤさんを…
1:穂乃果と共に音ノ木坂学院で初春達を待つ?
2:初春と合流したらレベルアッパーの解析を頼みたい。
3:エンブリヲを警戒。
[備考]
※参戦時期は不明。
※
御坂美琴が殺し合いに乗っているということを確信しました。
※槙島が出会った人物を全て把握しました。
※アンジュ、キリト、黒と情報交換しました
※エンブリヲと軽く情報交換しました。
【エンブリヲ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:疲労(大)、服を着た、右腕(再生済み)、局部損傷、電撃のダメージ(大)、参加者への失望
[装備]:FN Five-seveN@ソードアート・オンライン
[道具]:ガイアファンデーション@アカメが斬る!、基本支給品×2 二挺大斧ベルヴァーク@アカメが斬る!、浪漫砲台パンプキン@アカメが斬る!、クラスカード『ランサー』@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、各世界の書籍×5、基本支給品×2 不明支給品1~3 サイドカー@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞
[思考]
基本方針:アンジュを手に入れる。
1:舞台を整えてから、改めてアンジュを迎えに行く。
2:広川含む、アンジュ以外の全ての参加者を抹消する。
3:特に
タスク、ブラッドレイ、後藤は殺す。
4:利用できる参加者は全て利用する。特に歌に関する者達と錬金術師とは早期に接触したい。
5:穂乃果を利用する。
6:タスクの悪評は……。
7:場合によってはサリアは切り捨てる。
[備考]
※出せる分身は二体まで。本体から100m以上離れると消える。本体と思考を共有する。
分身が受けたダメージは本体には影響はないが、殺害されると次に出せるまで半日ほど時間が必要。
※瞬間移動は長距離は不可能、連続で多用しながらの移動は可能。ですが滅茶苦茶疲れます。
※能力で洗脳可能なのはモモカのみです。
※感度50倍の能力はエンブリヲからある程度距離を取ると解除されます。
※DTB、ハガレン、とある、
アカメ世界の常識レベルの知識を得ました。
※会場が各々の異世界と繋がる練成陣なのではないかと考えています。
※錬金術を習得しましたが、実用レベルではありません。
※管理システムのパスワードが歌であることに気付きました。
※穂乃果達と軽く情報交換しました。
【初春飾利@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、不明支給品1~2、テニスラケット×2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いから脱出する。
1:西木野さん…
2:闘技場でタツミ達と合流する?
3:闘技場が禁止エリアになった場合はカジノ、それもダメなら音ノ木坂学院でタツミたちと合流する。
4:御坂さんが……
[備考]
※参戦時期は不明です。
※殺し合い全体を管制するコンピューターシステムが存在すると考えています。
※魔法少女について大まかなことは知りました。
※ジョセフとタツミとさやかの知り合いを認識しました。
※
DIOは危険人物だと認識しました。
※御坂美琴が殺し合いに乗っているらしいということを知りました。
最終更新:2016年03月02日 13:04