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  • ナイトメア・チルドレン(前編)

ナイトメア・チルドレン(前編)

最終更新:2023年04月15日 08:07

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ナイトメア・チルドレン(前編) ◆tu4bghlMIw



そもそも、前提からして何もかもが間違っていたのだ。

ルルーシュ・ランペルージは決して歴戦の戦士でも、屈強な肉体を持つ軍人ではない。
確かに彼は一つの"部隊"のリーダーである。
しかも"騎士団"を名乗る圧倒的な武力を備えたレジスタンス組織を掌握している。
だが、それはあくまで"駒"としての存在であり、彼自身は戦う力はほとんど持っていない。

純粋に殴り合い殺し合い撃ち合いに興じたとして、彼が圧倒出来る参加者などほとんど存在しないのが現実だ。
己の力のみで一対一のファイトを行った場合、彼のオッズはおそらく残りの全参加者のうちでもTOP5に入る程高い。
もちろん女や子供、全ての人間を含めた中で、だ。

彼には他人を圧倒出来る腕力などない。
彼には天変地異を巻き起こすような魔力などない。
彼には高層ビルを破壊するような馬鹿げた戦闘能力などない。
彼には数百メートル先の対象を正確に撃ち殺す射撃技術などない。

ルルーシュはまさに社会が産み出したもやしっ子の代表、結晶とも言えるような類の人間だ。
肉体労働は彼にはあまりにも不向きであり、頭脳を用いた策謀こそがその真髄、いやそれしか出来ないのである。

だが彼は肉体こそ貧弱ながら、経験豊富な軍人や戦士達の長――そして多方面から注目を浴びる部隊のカリスマ的指導者という側面も持ち合わせている。
では、彼の武器とは何なのだろう。 
彼を他の参加者と乖離させ、分水嶺となり、ある種の高みへと引き上げる神の見えざる手とも言うべき能力とは一体何なのだろう。


ブリタニアの少年、ルルーシュは二つの力を持っている。
一つはギアス。一つは黒の騎士団。

だがその組織力はこの《バトルロワイアル》という舞台において、決して生かされることはない。
黒の騎士団のメンバーで、ルルーシュ以外にこの殺し合いへと参加している人物は紅月カレン――いや【カレン・シュタットフェルト】ただ一人。
主戦力である《ナイトメア》を入手する手立ても未だおぼつかず、彼らの武力は非常に心許ない状況であると言える。

そしてギアス。その「絶対遵守の力」に掛けられた制限は各参加者の中でも最大級のものだろう。
ルルーシュ本人に掛かる強烈な負担。強制力の減少。
通常ならば何人もの人間を一度に自害させることさえ可能な王の力も、本来の姿とは程遠い。
特に一度に複数の人間に対して強力な命令を行った場合、彼はその身を裂かれるほどの激痛に襲われることになる……これが厄介だ。
ギアスを使用するたびに苦痛の末昏倒しているようでは、命がいくつあっても足りない。


それでは。

ギアスに制限を掛けられ、その組織力を失った彼はただ少しだけ不思議な力を持った非力な少年である――そう断定できるのだろうか。

答えは否。どのような角度から彼を分析してもそのような解答は不適格と言える。
彼には才気があった。他の人間を圧倒する類稀なる頭脳、そして目的達成のためには部下さえ切り捨てる非情さ。
狡猾な蛇のように人の心を見透かし、自らの野心を叶えようと邁進する人としての心の強さも持っている。


ルルーシュは王の力を与えられた人間と言えよう。
同時にこの空間において、誰よりも「帰りたい」と切望する人間でもある。
ナナリー・ランペルージ――彼の最愛の妹の名前だ。
ルルーシュは彼女のために、何よりも大切に思う彼女の下へ何をしても帰らなければならない。

そして彼にとって最良の友である――枢木スザクは死んだ。
呆気なく、枯れ花をへし折るように容易く。
何処で、どのような経緯で命を落としたのかルルーシュは知る由もなかった。
スザクが何を思い、何を感じ、最期に何をしたのか……それは永久の闇の中へと沈んでしまった。

事実は時間の流れのように淡々とそして残酷なまでに少年の心を変えていった。
いや、これは本来の結末と何ら変わりのない結果なのかもしれない。
そう、もしもルルーシュがこの《バトルロワイアル》に巻き込まれなかったとして。
結局彼は近い将来、同等の決意を固めることになったからだ。


季節が移り変わるように、当たり前のように、彼は堕ちていった。
加えて、糸色望の死亡によりルルーシュはようやく《ゼロ》としての自分を取り戻したと言える。
だが彼が「教員」として未来ある若者に託した願いはルルーシュに対して何の感慨ももたらさなかった。

たった一つ、
ただ一つだけ、
今確かな事があるとすれば。

ルルーシュ・ランペルージ……いや、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは彼の死によって、ようやく「王」としてのスタートラインに立った。

今彼の中に潜んでいるのは人間ではない。
修羅道に堕ちた鬼、人の心を失った魔物の方がまだ可愛げがある。
彼は螺旋王ロージェノムを撃滅することに対して、どのような手段を取ることも辞さないだろう。
それがたとえ――幾つもの屍を重ねることになっても、だ。


 □


「はぁはぁ……はぁ…ッ…くそっ!!」

疲労で筋肉が引き攣る。荒々しい息が口唇から漏れる。
疾走したりした訳でもなく、ただ歩いているだけなのにこの様だ。
せいぜい一時間と幾許と言った所だ。
足元のコンディションは最悪とはいえ、子供の山登りと変わらない距離と言えよう。


「ゼ――ル、ルルーシュ。本当に、大丈夫なの? 一度休んだ方が……」
「…………問題ないよカレン。まだ……大した距離は進んでいないからね。それより早く移動することの方が大切だ」
「……そう」


隣のカレンが心配そうな目で満身創痍の彼を見やる。
ソレに応えるため、ルルーシュは小さく笑みを浮かべた。
だが学園で自らを偽るために生み出した作り笑いも、この状況では妙に引き攣った笑いになってしまう。

説明するまでもないが、これは強がりである。
慣れない山道の移動によって、ルルーシュは疲労困憊に近かった。
膝はガクガク奮え、足の裏には鈍痛が走る。
日頃身体を全く鍛えていなかったツケが回って来た形だろう。

「ランペルージ。いくらお前がまだ青臭いガキだとはいえ、さすがにこの程度でへばっているようじゃ話にならん。
 大体、シュタットフェルトの方がよっぽど元気ってのは男としてどうなんだ」
「……スパイク・スピーゲル。ルルーシュを侮辱することは私が許さない。
 それに、名前の方で呼んで――さっき、そう……言ったはずだ」

剣呑な雰囲気が場を包んだ。
二人の数メートル先、先頭を歩くスパイクをカレンが冷ややかな目で睨めつける。

いや、スパイク本人には決してルルーシュに対して悪気がある訳ではないのだ。
いわゆる本来の気質から成る軽口の一種。
カレンへの発言を抽出してみても、それは見て取れる。
しかし、それでも見事に核心を突いたその発言にルルーシュの苛立ちは益々高まっていった。

(こいつら、どんな身体の造りをしているんだ? くそっ……まさかこんな事になるとは……)

カレンとスパイクだけならば、軽くジョギングをしてるかのような速度でこの山道を走破することが可能だ。
が、ルルーシュの平均的な移動速度から考えると、勿論ソレは異常である。
二人の姿を見失わないようにするので精一杯。
今はカレンが隣に付いていてくれているが、彼はこの瞬間も煮え滾るような憤怒をその胸中に押し隠しているのだ。

(突然の強行軍……とはいえ、地図だけではこの足場の悪さは予想出来まい。病み上がりにこの負担は……ッ)

心の中で悪態をついても後の祭りだった。
いや、例えルルーシュ本人がこの苦痛を予測していたとしても、彼らの方針が変わることはなかっただろう。
自らの身体能力の劣悪具合から最良と思われる判断を見過ごすほど、彼の指揮官としての精神は甘くはない。
状況に応じて最も適切な行動を取る――当然、自らに多少の苦痛をもたらす決定であっても同様だ。


三人が行くのはE-7の右方。マップの右端に位置するエリア、山岳地帯である。
鬱蒼と茂る森。ゴツゴツした岩場。普通に移動する場合、絶対に通過するはずのないルートである。
彼らは禁止エリアに設定されてしまったキャンプ場を捨て北上する最中だった。

当初は出来るだけ長い間、その場所に留まっている予定だったのだ。
しかし放送の前後で状況は大きく一変する。
特に大きかったのは、三回目の放送の直前に北西の方向、おそらくデパートがある地点から強大な光が会場を包んだこと。
そして放送。ルルーシュ達を逃がすために、盾役を買って出た読子・リードマンが死亡したとの報せ。
この二つだった。

禁止エリア、極光、南方の温泉で別れた仲間の死亡――それらの事実は彼らに北進を余儀なくさせた。
しかも性急に、加えて迅速な進行が求められる事態であった。
三人は光を目指して集まって来るであろう他の参加者との鉢合わせを避けるため、わざわざ森林、そして山岳地帯を抜けての北上を決定したのだった。


「そうだったか? すまんな、物覚えが悪くてよ。『シュタットフェルト』」
「――ッ!」
「おいおい、そんなに睨むんじゃねぇって。ジョークだよジョーク。少し落ち着けってカレン」


疲労困憊の身体を引き摺りながら歩くルルーシュを尻目に、未だ疲れが見えないカレンとスパイクの口論は続く。
これで一体何回目なのだろうか。
キャンプ場を出てから、今までに二人が衝突した回数はそろそろ片手では数え切れなくなってきた。

「お前という奴は……っ! よくこの状況でそんな台詞が吐けるものだな!
 読子という日本人はお前の仲間ではなかったのか。それに先程呼ばれたエドという名前も知り合いなのだろう!?
 何故そんなにヘラヘラしていられるっ!?」
「……カレン。さすがに少し、言い過ぎだ。それに、あまり大きな声を出すな」
「だけどっ……ルルーシュ!」

ルルーシュは凄まじい剣幕でスパイクを罵倒するカレンを宥める。
いくら何でもこのような状況で大声を出すのは不味い。
とはいえ、このスパイクの対応が彼女を刺激してしまうことは仕方ないことのようにも思える。
だがそれ以上に彼女の憤りはスパイクではなく、むざむざゼロを死なせてしまったカレン自身への叱責が多分に含まれているようにルルーシュには感じられた。

(やはり《ゼロ》を失ったことが相当堪えているようだな。とはいえ……皮肉なものだ)

既にゼロであってゼロでなくなってしまった己を呪えばいいのか。
それとも巡り合わせの悪さを嘆けばいいのか、ルルーシュは口元を歪ませる。
こんなに容易く《ゼロ》の価値が崩壊してしまうとは、思っても見なかったのだ。
彼のデイパックに収められているゼロの衣装にもう一度袖を通すことがあるのか、それさえ疑わしい。

とはいえ、わざわざ『シュタットフェルト』とブリタニア風の言い回しでカレンを呼称する――それは藪蛇というものだ。
彼女にとってソレは明らかな侮辱であり、敵意を生み出す種火と成り得る。
そして、今、カレンはスパイクの人物像をこう捉えざるを得ない。――日本人でもなく、仲間が死んでも悲しむ仕草さえ見せない非情漢、と。

「……そりゃあ、よ。悲しくない訳ねぇだろうが」
「だったら、それなりの態度というものがあるのではないかっ!? さっきから性質の悪い冗談ばかり言って……」

スパイクが深々と溜息をつきながら、一言。
そしてソレに応えるようにカレンが拳をグッ、と握り締めた。
キッ、と釣りあがった形の整った眉が歪む。眉間に皺を寄せ、歯をキツく噛み締める。

(馬鹿か……カレン。仕方ないとは言え……この男がどうしてこんな軽薄な態度を取るのか、何故分からない。 
 緩いように見えてコイツは相当の食わせ者だぞ!?)

ルルーシュは先頭に立つスパイクの背中を見つめる。先程から彼は一度もこちらを振り返ろうとしない。
背中、二人の言葉を全て背中で受け止める。
おそらく何もかもわざとなのだろう、ルルーシュはそう判断する。
スパイクはカレンの気に障る台詞ばかりを意図的に選んで発言している。
黒の騎士団に起こったゴタゴタを全て把握している彼は当然、カレンそしてルルーシュの心情も十分に理解している筈だ。
……表向きは。

特にカレンの状態は相当に深刻だ。
いかに代替わりを果たしたとしても、自らが心の底から信奉していた男の死は彼女にとって例えようのない衝撃だった筈なのだ。
こんな状況でなければ、時間が解決してくれる問題なのかもしれない。
だが「殺し合い」という切迫した事態においては、自ずと荒治療が必要になる。
悲しみで心を占領される訳にはいかない――一人で絶望を抱き締めることこそが最も不適切な対応と言える。

「カレンいい加減にしろ! ……スパイクさんもすいません」
「でもルルーシュ!」
「スパイクさんの気持ちが分からないのか!? 一度冷静に考えてもみろ。彼がどうして――」
「ランペルージ、それ以上は言わなくていい」
「……ですが」

カレンの意識を自分に向けさせることで、彼女が罪の意識を一人で抱え込むことを防ぐ。
同時に、新たに《ゼロ》という重責を背負うことになった少年に心の整理をさせる時間を与える――そんな所か。

「お前は、分かっているみたいだな」

その時、初めてスパイクがルルーシュ達の方を向いた。
彼の手は自然とポケットを探り煙草を探していた。
が、当然の如く彼の支給品の中にそれに順ずるものは存在しない。ホルダーに収納したデザートイーグルのフレームを指先が撫でる。

「カレン、一つだけ言っておく」
「……何だ」

そもそも、カレンは当たり前のことを失念している。

親しい人間が死んで、悲しくない人間などいる訳がない。
悲しみを外に表し、涙を流し、肩を震わせることだけが――嵐のように荒れ狂う心の混沌を表現する方法ではないのだ。
そして、この男は立場上自分達の前で剥き出した悲哀の感情を見せる訳にはいかないと考えている。
少なくともルルーシュにはそう思えた。

「とりあえず、な。ルルーシュは良い《ゼロ》になると思うぞ」

この場でただ一人の『大人』である彼は、決して弱味を見せる訳にはいかないのだから。


 □


キャンプ場から脱出した際、ルルーシュ達はまず荷物の分配を行う所からスタートした。
カレンに支給されていた道具――しかし、未だ明らかにされていないものが二つあった。

一つがノートパソコン。
当然、フラッシュメモリを読み取る機能や携帯バッテリーなどが付属したモバイルタイプの機種だった。
時間が無かったため、ネットなどに接続出来るのかどうかは依然不明。
コレは情報機器に強いルルーシュが持つことになった。

もう一つが様々な化粧品やSFXの用具などが収められた道具一式だった。
説明には『高遠遙一の奇術道具一式』と書かれていた。

確か、参加者の一人だった筈だ。
手品に使うトランプやシルクハットなどが含まれていたことから、おそらく彼の職業はマジシャンなのだろう。
サーカスで使うような衣装から、いかにもと言う雰囲気を放つマスクなど利用価値は十分にありそうだった。
こちらは本来の持ち主であるカレンが持った。

武器はスパイクのデザートイーグルとカレンのワルサーP99のみ。
ルルーシュ本人は手ぶらになってしまうが、戦闘適正などを鑑みるに二人がそのまま持つのが適当だと判断した。


そして、最も大切な決まりごと。それが《ゼロ》の扱いについてだった。
このことに関して、ルルーシュは一つのプランを持っていた。
それ故、

「――ゼロはしばらくの間、封印する」

と、ルルーシュが告げた時カレンが見せた悲痛な表情は少しだけ彼の胸を打った。


そう、今ルルーシュは《ゼロ》の仮面とマントを着用していない。
それらの道具は彼のデイパックの奥にしまわれている。
基本的にゼロについての話題は控えるという取り決めも行った。

まず大前提として、《ゼロ》の姿はこの空間では逆効果にしかならない。
なぜなら参加者に等しく配布されている名簿に【ゼロ】という人物の名前はない。
顔と名前を隠すこと――それは明らかに怪しい人間、という扱いを受けて終わってしまうのである。

元々ゼロとは、正体を隠し偶像として民衆に接するため、ルルーシュが作り出した裏の顔である。
だが、少なくとも螺旋王の台詞を鵜呑みにするならば、この空間は『優れた螺旋遺伝子を持つものを選別する場』なのだ。
つまり参加している人間の大半が、何らかの技能を習得した特殊能力者である可能性が高い。
精神、肉体的にも習熟した者を相手に仮初の姿で接することは逆に自分の身を危険に晒すことになる。

だが、逆にゼロが効果を発揮する場面も必ず来る筈なのだ。
ギアスを有効活用するために、これほど最適な装備はない。

そう、ギアスを今後も軸として考えていく場合の話だが……



「ルルーシュ?」
「……ああ、カレンすまない。少し考え事をしていた」

隣を歩くカレンが不安そうな表情で俯いたルルーシュの顔を覗き込む。
彼女の白魚ような指先がルルーシュの背中を撫でる。
それは心の底から彼を心配した故の行動だったが、今のルルーシュにとっては何の感慨も生み出さなかった。

「お前ら……イチャつくのは結構だが、そろそろ森を抜けるぜ。用心しな」
「べ、別にイチャついてなんか――!」

カレンがスパイクの台詞に頬を赤らめ、またも怒鳴りつけようとする。
が、その時、


「――おねーさん、喧嘩は良くないんじゃないかなぁ」


三人の頭上から謳うようなボーイソプラノの声が響いた。

「ちッ――!?」
「下がって、ルルーシュ!」

すかさず反応するスパイクとカレン。
それぞれ得物を取り出し声が聞こえた方向、すなわち上方へと向ける。

この森は背の高い広葉樹が多く生い茂る非常に大きな森だった。
光も差し込まないような薄暗さながら、数本の枝木が葉を擦り合い立体的な空間を形成している。

(敵襲だと……! いや、ならば声を掛けて来る筈がないか。だが、こんな場所に他の参加者がいるとは……)

「――よっと」

まるで忍者のような身のこなしで一人の少年が姿を現した。
当然、現れる方向は上。軽業師も真っ青な動作で悠々と着地する。
ルルーシュ達は彼のその動きに唖然とならざるを得なかった。
軽く数メートルはある高さから飛び降りて無傷。その表情には余裕さえ見て取れる。


「男二人に女一人のぶらり旅? とはいえ仲はあまり宜しくない、と」
「……名前は?」
「俺? 人に名前を聞く時は先に自分が名乗るもの……そんな野暮なことは言いません。
 俺はジン。見ての通りイタイケで純情なただの――ドロボウです」


スパイクが銃を構えながら問い掛けた質問にペコリ、とお辞儀をしながら応える。
ブワッ、と一瞬で場の空気が変わったことをルルーシュは肌で感じた。

現れたのは袖にうずまきマークの付いた黄色いコートを羽織った少年。
ハリネズミのような黒々とした髪の毛を逆立て、不敵な笑みを浮かべている。

「……信用できねぇな」
「あれ、そう? どんなお宝だって盗むけど、人の命だけは盗むつもりはないんだけどな」
「……ガキならガキで年相応の態度ってものがある。お前は……異様だ」

それはスパイクの直感だった。
明らかに目の前の少年、ジンの仕草は外見から想像出来る年齢(十代中盤から後半と言った所か)とは掛け離れている。
「ドロボウ」という肩書きを抜きにしても、彼が油断ならない人物であることは確かだろう。


「お褒めの言葉を預かって光栄だね。ただ異様とまで言われるのは少しだけ意外かな。
 参考までに、どうしてそう思うのか教えてくんない?」
「ペラペラとよく回る口だ。銃を向けられてその立ち振る舞い。普通、一朝一夕じゃ身につかねぇ。
 ドロボウなんてチンケな言葉は似合わん」
「そう、母ちゃんがくれた自慢の口だから。それに俺は王ドロボウ。主催者サマに辞任していくためには何だってやる訳さ。
 パーティ会場が血生臭くちゃ、ご来賓の皆様もしかめっ面だろ?」


対峙するジンとスパイク。
その少し後ろでルルーシュを守るように銃を構えるカレン。
この状況において、最も安全な場所に居るルルーシュはジン、と名乗った少年について必死に分析する。

「さて、どうすれば信用して貰えるかな? 今だって同行者の皆さんに無理言って一人で出て来てるんだよね。
 こう見えても最高に多忙だったりする訳さ。
 消えた身体の帰りを待っている頭(ブレーン)のためにも、あくせく働かなきゃいけないんでね」

ジンの特徴的な言い回しは続く。
しかしこの時、ルルーシュは彼の言動がある一つのシンボルを差していることに気付いた。
つまり、彼に有力な仲間がいる、と。

(信頼出来る仲間を持っている……ということか。そしておそらく頭脳派の人間……
 どの程度まで考察を進めているのか不確実だが、接触してみる価値はあるな)


「――もっとも」
「ん?」
「『オジサン』達の脳味噌が疑惑でサラダボウルになってるってなら……軽くお遊戯に付き合うのもOKだよ。論より証拠、ってね?」


ニヤッ、と笑いながらジンが両腕を上げファイティングポーズを取る。

――戦って自分が殺し合いに乗っていないことを証明する。
一見矛盾しているようにも思えるやり方だが、ある意味筋が通っているとも言える。

なぜなら、戦いとは個人のありとあらゆる能力の複合結晶体であるからだ。
特に一対一、生身の戦いとなると各々の性格が如実に発揮される。
剣を振るうタイミング、身のこなし、間合いの詰め方、銃の照準、全体的な視野……
久遠の時にも似たその邂逅は同時に理解の場所でもある。
打ち出される一発の正拳、斬撃、射撃。その一つ一つが磨き上げられた精神と意志から放たれるものだ。

優秀な戦士となるためには様々な能力を必要とし、幻想は一切存在しない。
戦いの空気を通じて、心が惹かれ合うことも決してフィクションではない。
武道家などが口にする「拳と拳で分かり合う」という言葉は根拠のない妄言ではない訳だ。


「ガキを甚振るのは趣味じゃない。が……一番性に合ってるやり方だ。泣いても知らんぞ」
「ソイツは奇遇。実は俺もすこーしだけ嫌なことがあった訳で……ね。遊び相手が欲しかったりして」


そして、変わる空気。
スパイクは手にしていたデザートイーグルをしまうと、脇を締め、軽くステップを踏み始める。
――ジークンドー。
彼が尊敬する格闘家であるブルース・リーが生み出した独自の拳法だ。
様々な中国拳法に空手や柔道、サバットなど国境を越えた武術を組み合わせて誕生した複合格闘の総称である。
元々チャイニーズ系であるスパイクにとって、近接格闘は銃撃戦と同様に得意とする分野なのだ。


「へぇ、独特な型だね。カンフーマスターに会うのは初めてだったり」
「減らず口もそこまでだ。言っておくが……俺は強いぞ」


このままでは両者の激突は避けられない。
端的に見てもそう結論付けがなされようとしたその時、

「そこまでだ、二人とも」 
「ん?」

動いたのはこの場で唯一、戦闘力を持たない彼だった。


「ル、ルルーシュ!? 前に出たら危ないわ!」


狼狽するカレンを尻目にザッ、と砂利を蹴り飛ばし睨み合うスパイク達の下へと歩を進める。
これは一つの賭けだった。
劣悪な環境に置かれた自身を表舞台へと復帰させるためのギャンブルのようなものだ。

(わざわざ貴重な戦力を目減りさせる訳がないだろう。
 どちらも十分に利用価値がある……むざむざ疲労させる必要性など皆無だ)

――俺は他の参加者から遅れを取っている。

これが先程からずっと、ルルーシュの中で拭い切れなかった思考である。
まず、八十二名もの人間がこの殺し合いに参加している以上、螺旋王を打倒しようと考える人間は少なく見積もっても三分の二程度はいた筈だ。
その中にある程度『頭の切れる人間』が含まれていることは明らかだろう。
おそらく、早い段階で有力な参加者同士が合流したケースがあってもおかしくない。

その点、自分は確実に運がなかった。
カレンやあの妙な猫、偽ゼロと言ったおめでたい頭の連中と遊んでいたせいで、時間を大いに浪費したのだ。
最初からスパイクのような、ある程度良識を持った人間と出会えていたならば状況は一変していた可能性が高い。


既にゲームが始まってから十八時間が経過している。
参加者の数もついに半分を割り込み、殺し合いは中盤戦に突入したと言ってしまっていい。
つまりある程度、螺旋王に達するための手掛かりを掴んでいる人間がいても不思議ではない。

加えて、こちらの姿を一方的に捉えながらわざわざ声を掛けてきたこと。
あくまで自身のスタイルを崩さずにコンタクトを取ってきたこと。
この両者からも、彼がある程度友好的な感情を自分達に抱いて行動していることが分かる。

(危険は、無いはずだ。最悪……ギアスを使えばいい。大丈夫だ、落ち着けルルーシュ)

更に一歩足を踏み出す。
尖った小石を踏み潰し、両脚に残る鈍痛を振り払う。
相手と一対一で向かい合う――最も大切なのは第一声だ。
揺るぎなく確固とした自我に裏づけされた言葉。それこそが他の人間を衝き動かすのだ。


「――ジン。君を、信用しよう」
「はぁっ!? おい、ランペルージ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ルルーシュ!」
「いいから。ここは俺に任せてくれ……スパイクさんもよろしいですね?」
「……チッ。分かった、ここは退いてやる――油断だけはするなよ」

ルルーシュはカレンとスパイクを退けるようにして、二人の前に立った。
対峙。ジンと一対一で向き合う形となる。

「ルルーシュ・ランペルージだ」
「ご丁寧にどうも。しがないドロボウやらせて貰ってマス。
 でも、まさか君が出てくるとは思わなかったよ。てっきり後ろにいるモジャモジャ頭のオジサンがリーダーなのかな、と」
「……俺はまだ二十代だ」
「スパイク・スピーゲル。ルルーシュの邪魔よ、黙っていて」
「……ヘイヘイ」

「オジサン」という言葉に反応したのか、スパイクが苦虫を噛み潰したような表情のまま唸り声を上げる。
そしてすかさずソレを咎めるカレン。スパイクは反論する気も失せたのか、気だるそうに頭を掻いた。
ちなみに彼の年齢は二十八歳。男としても最も油の乗っている時期である。

「ハハハ、女の子は怖いね。――彼女、ルルーシュの恋人?」
「違う。ただの……同じ学校の友人だ」
「へぇ、ソイツは珍しい。一つだけ忠告、同郷の仲間は大切にしておいた方がいいよ」
「……お前も誰か――」
「……さぁね。それにドロボウの過去は少しぐらいミステリアスな方が面白いと思わないかい?」

乾いた笑い。
サーカスのピエロか狂言回しのような言動を見せていた今までのジンからは、到底考えられないような真面目な表情。
一瞬だけ彼の顔が泣いているように見えたのは気のせいだったのだろうか。

「そうだな。ダークヒーローに隠された過去は欠かせない。
 それが重厚な鎖に縛られたものであればあるほど、彼らの行動は崇高な存在へと昇華される」
「イエス、ロマンは大事さ。永遠の灰色より一瞬でも輝く七色の方が美しい――ってね」

ルルーシュは己の中の《ゼロ》を見つめながら、小さく笑った。
そう、仮面を被るのは自らを象徴化させるためだけではない。
本来の素顔を隠し、偽りの自分を構築することが最大の目的と言える。

「それにしても、ルルーシュ。そんな英雄に知り合いでも? 良かったら紹介して欲しいね。武勇譚を拝聴しに参上したい所だよ」
「残念ながら、ご期待には沿えそうにもないな。"何の力も無い"から、俺にはこうやって彼らの偉業を褒め称えることしか出来ない」
「『鳴かない猫は鼠捕る』とも言うね。そもそも、俺には君が爪も牙もなくした老猫にはとても見えないな」
「……どうだろうね」

少なくとも、先程スパイクと会話していた時と比べて大分マシな展開だった。
歳の近い二人の少年のやり取りは予想外なほど上等に進行した。

数分間に渡る対話で、最低限の情報の交換が行われた。
つまり、ジンに複数の仲間がいて彼らがこの先の山荘で"一人の参加者"を治療していること。
ルルーシュ達が褐色の肌をした大男に襲われたこと、などだ。

「あ、そうだ」
「どうしたジン?」
「今、俺の仲間が猫の看病をしてるんだよね。今はそれなりに回復した筈だけど。眼帯を着けた喋る猫……名前はマタタビだったかな」
「なッ――!」
「それって……あの時の猫かしら?」
「……あの妙に渋い猫か」

カレンとスパイクが小さく頷いた。
二人もクレア・スタンフィールド、八神はやて、マタタビの三名には接触している。
が、ただ一人。ルルーシュが覚えた感想は残りの二人とは明らかに違ったものだった。

(一人だけ生き残ったあの猫か……いや、しかし妙だ。奴には確実にギアスを掛けたはず。ならば……)


「ジン、お前の仲間はここから"北"の山荘にいるんだったな。彼から何か聞いたか?」
「ん? いや、別に? 山荘があるのはD-8の古墳の近くかな。三人と出会ったのは隣のエリアだけど。
 でも彼のおかげで俺はルルーシュ達に会えたんだから、実は幸運をもたらす招き猫だったりして」
「そう……か」


ルルーシュは半ば確信した。
鼓動が凄まじい勢いで身体をノックする。
全身の疲れが一辺で吹っ飛び、背筋に冷たいものが走った。

信じたくは、ない。
だがこの空間は明らかに異常だ。そして、自分達は悪魔の住む万魔殿のような空間に放り込まれたモルモットと酷似している。
様々な、そして不可解な制約が掛かる場所――そんなことは十分過ぎる程に理解している。


ルルーシュがマタタビ達に掛けたギアスの内容はこうだ。

『エリア中心部に行き、他の参加者に接触し、使えそうならば我々の仲間に誘う。我々に害を為すようなら排除する』

このギアスの内容が遵守されていれば、ある程度回復した身体を引き摺ってでもエリア中心部へ移動するだろう。
いや、そもそもD-8などというエリアの隅に未だ滞在していることが妙だ。
話によるとジンとそのマタタビを保護していた者達が遭遇したのが隣のD-7である。
明らかに、中心へと向かうコースからは外れている。

ならば既に他の参加者に接触し、仲間に誘った後である……という仮説はどうだろうか。
既にお役御免となったマタタビがフラフラとD-7にやって来たと考えるのは?

いや、これも在り得ない。
ギアスの効果時間は非常に長期に渡る。
少なくとも数ヶ月、この殺し合いが行われている間はほぼ切れることはない。そう思ってしまっても構わない筈だ。

命ある限り延々と命令を実行する筈。
加えて勧誘活動を一切行っていないことも明白だ。

これらの事象から推測出来る現状はただ一つ、つまり――


(ギアスが、切れている?)


 □


「ニアです! よろしくお願いします!」
「ブルゥァァァァァァァァァァアア!! ジィィィイイイン、キサマ!! このような小汚い格好をした連中をどこから連れて来た!?」
「ちょっと散歩してたら空から降って来てね。ああ、三人とも、そこの椅子に掛けてくれる?」
「ぬぅぁぁぁにが『空から振って来てね……』だ! スカしてんじゃねぇぇぇぇ!! ボぅぉケがぁぁぁぁぁああ!!
 お前が居ない間に私がどれだけ苦労をしたと思っているのだ!?」
「まあまあ、そのおかげで脱出のための優秀なパートナー候補を見つけることが出来た訳だし。俺も『偵察役』を首にならないで済む」
「ジンさん、パートナーってなんですか?」
「パートナーってのはね、ニア。君のアニキさん――カミナと、ビクトリームみたいないつもハッピーでディープでステキな関係のことだね」
「ダ、ダレがあんな奴とパートナーだと!? べ、別にグラサンジャックなど、どうなろうが私の知った事ではないわっ!!」


ジン、ニア、そしてビクトリーム。
少年と少女、そして『V』字型の謎の動く喋る物体。
三者による他の人間を寄せ付けない独特の時空に、部屋へと足を踏み入れたルルーシュ達は唖然とするしかなかった。

(こ、これは……まさか……また、なのか。頭に何かが沸いてるとしか思えない会話ッ……!! なんて……事だッ!!)

三人がジンに案内されたのはD-8エリア、古墳のすぐ近くにひっそりと佇むように建設された山荘であった。
山荘と言ってもそれほど大きな施設ではなくて、どちらかと言えば山小屋と称した方が適当かもしれない。
そこの玄関口のすぐ、応接間になっている場所の大きな机の上にルルーシュ達はやって来ていた。

「……私、夢でも見てるのかしら」
「心配するな。俺にもしっかりと『V』に見える」
「お前には聞いていない」
「……悪かったな。お節介が過ぎてよ」

ルルーシュは髪の毛を掻き毟り、頭を抱えて塞ぎ込みたくなる衝動を必死で押し殺す。
両隣ではカレンとスパイクが相変わらず言い争っているが、今はどうでもいいことだ。
ジンの言っていた仲間――それがまさか、こんな連中だとは夢にも思わなかった。

特にこの『V』の形をした物体が問題だった。
ジンからある程度、同行者の説明は受けていた。

一人、不思議な色の髪と瞳を持った厨房主任。
一人、喋るトラ猫。
そして最後の一人、あまりの華麗さに目を疑わざるを得ないとにかく凄い奴。

いや、というか「少しだけ驚くことになるだろう仲間がいる。いや、ちょっとしたサプライズさ」などと適当な説明をしただけだったのだ。
まさか、ソレが人でも、動物でもない謎の生物だとは思いもしなかったが。
今思えばこの時ジンは一言も『人』とは言っていなかったのだ。

(だが、それ以上に気に障るのは……『声』だ!)

ビクトリームの声、それはルルーシュの脳髄をガンガンと揺さぶる。
普遍的な視点から考察すれば、それは少しだけナイスミドルな妙に良い声――そのような評価で十分だった筈だ。

彼がルルーシュ、いや神聖ブリタニア帝国第11皇子にして第17皇位継承者であるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアでなければの話だ。

(まさか、ここまで『奴』と似ている声の人間がいるとは……忌々しい)

こんな偶然があっていいのだろうか。
世界には自分とそっくりの容姿をした人物が三人はいる、と言うが声に関しても当て嵌まるのだろうか。
彼の父親であるブリタニア皇帝――その声が眼の前で『ブルゥァァァァァアア!』などと吼える物体Xならぬ、物体Vと同じだろうとは。

(落ち着け、落ち着くんだルルーシュ。今何よりも優先すべきは情報の収集だ。奴との因縁はここから脱出してから考えるべき事象ッ……)

心を穏やかに。そして、冷静な頭を取り戻さなければならない。
ジンの口からは聞けなかった有力な情報を集めること。マタタビの状態について分析を重ねること。
必要なデータはあまりにも多い。


「一つ、いいかな。マタタビという猫はどこに……」
「マタタビさんでしたら、一度だけ意識を取り戻したんですが今は奥でお休みになっています」

ニアが快活な笑顔と共に応える。
キラキラと光る、まるで人工物のように色彩的なショートカットがサラリと揺れた。

「彼は、何か言っていましたか? 俺達の事なんかも……」
「何か……ですか? いえ、少なくともルルーシュさん達のことについて何も言ってなかったと思います。
 マタタビさんが喋られたのは……ご自分の名前と、あとは……『テッカマンエビル』ぐらいでした」
「……テッカマン……エビル?」
「はい、確かにそう呟いていました」

ニアがルルーシュの問い掛けに口ごもる。若干伏し目がちになりながら、視線が下がる。
ルルーシュには彼女の応答が少なくとも嘘は付いていないように思えた。
傍目にも分かる重傷を負っているのならば、本来ならば面会謝絶の状態に近いだろう。まともに会話が出来なくても不思議ではない。

(テッカマンエビルか……テッカマン……あの妙な格好をした戦士達のことだろうか。
 テックセッターという変身ヒーローのような掛け声とも名称に関連性が見て取れる。
 同時にギアスを掛けたはずのクレア・スタンフィールドと八神はやては死亡した……つまり、ソイツが奴らを殺したということか?)


「――あの、皆さん聞いて下さい」


考え込んでしまったルルーシュとの言葉の隙間を埋めるように、ニアが再度口を開いた。

「私には……ルルーシュさん達に話していないことがあるんです」

優しく隣のニアを宥めるジンの声に、ニアも小さく微笑んだ。
そして一瞬の間、実直な眼差しを携えその場の全ての人間に向けて彼女は語り掛ける。


「私がルルーシュさん達に黙っていたこと……それは螺旋王、いえ――私のお父様についてです」





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