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  • 愛に時間をⅠ

愛に時間をⅠ

最終更新:2023年07月07日 03:07

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だれでも歓迎! 編集

愛に時間をⅠ ◆LXe12sNRSs




  その男は、傲岸不遜で命知らず。

  プライド高くて自己チューでしかも服装のセンスも悪い。

  けど、不思議と頼りになるっていうか……まあ、一緒にいる分には頼もしい奴かもね。


  ■語り――結城奈緒



 ◇ ◇ ◇


 積もり積もって巨を成すは、粉塵舞いし瓦礫の山。
 対ラダム用人型兵器や魔の大怪球が築き、王の一挙手によって仮初の牙城と化した。
 積み木のように脆くみすぼらしいが、これも一時高みに臨むための代替物にすぎない。

 英雄王ギルガメッシュは一人、瓦礫の山の頂点から空を眺める。
 日は昇り、これもあと幾時間で沈む。沈み、この地の日がまた昇ることはない。
 宣告されたタイムリミットを胸に抱きながら、崩れゆく世界の予兆を感じ取っていた。

「……〝王ドロボウ〟などと名乗りを上げておきながら、こうも容易く尾を返すとはな」

 山頂で佇むギルガメッシュの手には、盗難にあっていた鍵剣が戻っていた。
 悪夢のパーティーの主催役すら盗み取ってやると豪語してみせた少年も、やはり縋るしかない身の上なのか。
 翻弄する凡百共の私情を窺えば、どうにもこうにも、道しるべがないと進めないらしい。

「〝綴り手〟に〝壊す者〟、〝魔界の王子〟……いずれも〝英雄王〟の威光を欲さんとする輩にすぎないのか」

 ギルガメッシュの周囲には、誰の存在もない。
 つい先ほどまで群れを成していた臣下見習いたちは、王のご機嫌取りのために周旋を続けている。
 提示した条件をどうのみ、攻略するか。興味深く、しかし期待するだけ無駄な気配も漂っている。
 残りわずかとなった限界時間。彼らは王の助力を受けずして、どこまで戦えるだろうか……?

 ――『こっちには王子様がいることだしね。英雄王の助力を願うのは、万策尽きてからにするよ』

 そう大言壮語してみせたのが王ドロボウなら、その意に付和雷同してみせたのが魔界の王子とキングオブハートだ。
 王の名を冠さす三人の凡人と、綴り手に壊す者、彼らは彼らで拙い奔走を試みる。

 ギルガメッシュ抜きで。
 それが、彼らの選択だ。

 ギルガメッシュは王座に君臨する者として、座して待った。
 己が奮起するに値する機会、即ち本当の意味でのクライマックスを。
 その瞬間に至るまでは、不動。
 慢心ではない、誇りを起因とした余裕が、ギルガメッシュに安らぎの時を齎した。
 それだけ、彼らに期待している――とは、露とも考えず。

「……む?」

 そのとき、一陣の風が吹いた。
 逆巻く風に乗せられた砂埃が、ギルガメッシュの視界を歪め、その先。

「ほほう。まだ見ぬ顔があったとは」

 訪れた影は、ギルガメッシュの記憶にも存在しない、見るからにみすぼらしい様相の男だった。
 西部のカウボーイを気取ったような格好は、センスの欠片も窺えない。
 そういえばガッシュ・ベルも似たような衣装を纏っていたか、と記憶の端を手繰る。

 男はなにを見据えなにを目指しているのか、歩に宿った意志はどうにも弱々しい。
 一目見ただけで、ギルガメッシュは失笑を誘われた。

「……あん?」

 その失笑で、瓦礫の道を行く男もギルガメッシュの存在に気づいたのだろう。
 高々と聳える瓦礫の楼閣を、剣呑とした目つきで見上げる。まるで田舎の野良犬が如き視線だった。
 つまりは、礼儀に乏しい。これで視点が頭上だったならば、〝衝撃〟と〝不死身〟の不快な一件を思い出しそうだった。

「これ、無礼ではないか雑種。我の貴風は、下々の者に眼福を齎すためのものではないのだぞ」
「……んだぁ? いきなりおかしなこと言いやがって。テメェ、いったいなにもんだ?」

 チンピラのような目で、その男――生存者の内から消去法で辿るならば――カミナは敵意を飛ばしてくる。
 その仕草は、怒りを覚えるほどではない。田舎者の戯れと、笑って許せる程度のものだった。

 とはいえ……状況が状況だ。
 この期に及んで齎された新たな出会い、そこに意味を探ってみるのも一興だろう。とギルガメッシュは考える。
 死と隣り合わせの王道を、各々が各々のやり方で駆け抜けてきた。
 ギルガメッシュにとっての初対面、カミナははたして……どんな誇りを胸にかかげているのだろうか。

「ふっ……これだから、人の世もなかなかどうして、おもしろい」

 ギルガメッシュは瓦礫の山から降り、雄大な歩調でカミナに寄る。
 カミナも退かず、歩み寄ってくるギルガメッシュを正面から見据えていた。

「余興につき合え、雑種。もう間もなく終焉が訪れるのでな。品定めは早々に済ませておきたい」
「ザッシュだぁ? わけわかんねーことぺちゃくちゃ喋りやがって……俺はザッシュじゃねぇ! よぉく聞きやがれ!」

 天に人差し指を突き上げ、目には見えぬ天蓋を穿つように、

「でっけぇ天井ドリルは届かねぇ! 掘るもんなけりゃあ一生穴倉暮らし! んなもん俺ぁ認めねぇ!
 掘って掘って掘りまくって天を突く! 最後にゃでっけぇ穴も開くってもんさ……それが!」

 英雄王たるギルガメッシュの眼前においても、

「この俺、大グレン団の……カミナ様だっ!!」

 カミナは吼えた。


 ◇ ◇ ◇



  そいつは金のことしか考えちゃいない。貧乏だからだ。

  コミックの主人公だからって、全部が全部ヒーローとは限らねぇだろ?

  今日の晩飯のために銃握るカウボーイがいたって、別におかしな話じゃねえやな。


  ■語り――ジェット・ブラック



 ◇ ◇ ◇


 瓦礫の街々は、必要以上に見晴らしがいい。
 視界を遮る建造物は軒並み倒壊し、カーペットと化した。
 車道も崩れ、自動車を走らせるには難渋するが、人探しをするには逆に好都合だろう。

 スパイク・スピーゲル、鴇羽舞衣、小早川ゆたかの三人も、放送が終わってすぐ、目的の人物との合流に至った。
 視界に入ってきたオンボロコートの少年――ジンは信頼の置ける仲間であり、今後の苦難を乗り越えるには外せない人材でもある。
 彼が見定めた人物ならば、初対面といえどもある程度は信用できるだろう。
 ジンに随伴する幼児と思しき男の子、やたら男前な表情の眼鏡美人を目にしても、さほど警戒はしなかった。

(どこ行ってたんだジン……と言える状況でもねぇな)

 しかし――額に傷を負った、褐色肌の男は別だ。

 素人とは思えぬ立派な体格、近寄りがたい厳格な顔つきに、舞衣とゆたかは少女として怖気づく。
 一方、スパイクは警戒を通り越した敵意を、その瞳に宿していた。

(久しぶりだな……と挨拶を交わすような間柄でもねぇ)

 傷の男……スカーフェイスとでも呼べばいいだろうか。
 彼とスパイクは、初対面ではない。この地で一度顔を合わせ、それどころか拳すら交じ合わせた関係にある。

 思い出すのは、温泉地での一件だ。
 まだカレン・シュタットフェルトやルルーシュ・ランペルージが存命していた頃。
 黒の騎士団という荷物を背負わされるきっかけともなった騒動が、その憩いの場で巻き起こった。
 殺人鬼の襲来。
 その一件の犠牲者、糸色望と読子・リードマンの死の起因となっただろう男が、目の前のスカーフェイスだった。

 奈緒を埋葬している間にジンが新しい仲間を見繕ってきたというのなら、なかなか褒められた仕事ぶりだ。
 誰彼構わず、ともなれば手放しに称賛することはできないが、彼に限ってそれはないと信じたい。
 ともあれスパイクの注意はスカーに集中し、体は自然に、いつでも動ける体勢を保っていた。

「……さぁて、しばらくぶりの再会なわけだけど、つもる話もあるみたいだ。
 とはいえ主催役の人に急かされちまったからね。地道に友達から、ってわけにはいかない。
 話は短めに、因縁のつけどころは簡略に、友愛は即興でもいいからでっち上げるべきだと、オレは思うね」

 邂逅一番に睨み合うスパイクとスカーの間に入り、ジンが仲裁役を買って出る。
 残り十二時間――設けられたリミットは残酷にも止まってはくれず、だからこそ気持ちの整理は迅速につけなければならない。

 人の感情は、それほど簡単でないが。
 雁字搦めの人間関係も、長く尾を引くものだが。


 ◇ ◇ ◇



  茨の城……巨人兵……宇宙戦争……こっから連想するキーワードはなんだ、ミリア!?

  囚われのお姫様だね、アイザック!

  そうさ~! 囚われのお姫様は、いつだって王子様の助けを待ってるのさ!

  でもでも、肝心の王子様は悪い魔女に足止めされてるみたいだよ?

  そりゃ、あれだな……ええと、アレだよ、アレ!

  絶体絶命ってやつだね!


  ■語り――アイザック・ディアン、ミリア・ハーヴェント



 ◇ ◇ ◇


 頭部を持たず、胴体全てが『顔』とでも言い表せるような赤い機体が一機、発進を遂げようとしていた。
 狭いコクピットに寄り添うようにして座るのは、ヴィラルとシャマルの二人だ。
 上司の戦死、王の間接的な叱責、諸々を受け取り、今すぐにでも残りの参加者たちを血祭りにせんと戦意を高揚させる。

「これが最後の決戦になるかもしれん。シャマル、覚悟はいいか?」
「ええ。あなたとなら……どこへでも」

 戦士の形相で問うヴィラルに、シャマルも同じく戦士の顔つきで応える。
 密着した体はさらに寄り、戦地へ赴く意志を互いに高め合う。
 目指すは大怪球フォーグラー――彼らが黒いガンメンと称す、暗黒の太陽だった。

 そこにはおそらく、他の生存者たちも複数集っていることだろう。
 明智健悟のグループから端を発したあのマシンの胎動は、多くの者に影響を与えたはずだ。
 ある者ははぐれた際の集合地点として、ある者はその大いなる力を得ようとして、群がる理由は多々ある。
 道しるべをなくしたカミナも、とりあえずの目的地としてフォーグラーを目指すかもしれない。

「ではゆくぞシャマル。オレたちの勝利のために――!!」

 ヴィラルが猛々しく吼え、搭乗機たるガンメン――グレンを起動させる。
 他の参加者たちを根絶やしにするという決意に曇りはなく、シャマルも愛する者の意志に同調した。

 シャマルの懐、暴走する男女を観察するしかないクロスミラージュは……ただただ嘆いた。
 デバイスたる自身は、手足を持たない。カードの形態を取ったまま、所有者の意に反することは許されない。
 どれだけ高性能なAIを積もうとも、どれだけ立派な自我を育もうとも、機械の身分に自立行動は認められがたいのだ。

 変わってしまったシャマル、死んでしまったティアナやはやて、別たれたカミナ。
 触れ合ってきた人々に想いを馳せ、クロスミラージュは自分になにができるかを今一度考えた。

 ……その間も、グレンは鳴動をやめない。
 重量感溢れる一歩を大地に叩き込み、攻撃対象を探して南へ進む。
 シャマルへの忠言は意味を持たず、光の明滅で感情を示しても彼女らは歯牙にもかけない。

 まるで囚われのお姫様だ、とクロスミラージュは人間のように自嘲した。


 ◇ ◇ ◇



  作家に求められるのは、なによりもまず創作意欲です。

  ううん……なにをやるにしたって、意欲がなければ成功しません。

  やってやる、って心の底から叫べば――きっと上手くいきますよ。


  ■語り――読子・リードマン



 ◇ ◇ ◇


 太陽が照りつける日中の空の下、一同は大怪球を背景に会議を始めた。
 出席者は、全部で八名。
 菫川ねねね、スカー、ガッシュ・ベル、ジン、ドモン・カッシュ、スパイク・スピーゲル、小早川ゆたか、鴇羽舞衣。
 各人、ここまで生き延びてきたこともあってそれなりに広い面識を持っていたが、中にはまったくの初対面であったり、因縁の再会を果たした者もいた。

(だからって、なにもこんな美味しい因縁残しておくなよな……)

 その最もな例が、スカーとスパイクである。
 ねねねの記憶にも新しい、温泉を舞台とした読子・リードマン殺害事件――スパイクは、その現場にいたのだ。
 厳密に言えば、読子殺害の瞬間に既に退避していたらしいのだが、スカーが温泉を襲撃した際、スパイクは彼と一戦交えたという。
 言いようによっては、読子を見捨てて今の今まで生き延びてきた男……それが、ねねねがスパイクに抱いた印象だった。

(……今さらねちねちと。性格わるいっつーの)

 などと、一瞬でも思ってしまった自分に嫌悪感を抱く。
 読子との死別は、ねねねの記憶から一生消えることはない痛い思い出だ。
 だからといって、いつまでもその件を引き摺ってはいられない。
 スカーに大見得切って許すと断言したのも、全てはこの闘争を乗り越えるためだ。
 スカーを許しておいてスパイクを言及するなどもってのほか。
 彼の物臭な態度は好印象とは言えなかったが、そこに読子の件は一切関わっていない。

(そんでもって……)

 スパイクのことを言えない物臭な瞳が、小動物のように小さな女の子へと向く。
 鴇羽舞衣と名乗った少女に寄り添うようにして座る、小早川ゆたかの身がそこにあった。
 ねねねとしては数時間ぶりの再会であり、昔を懐かしめばフォーグラーでの騒動を思い出さざるを得ない。
 あの一件で明智が死に、連鎖的に清麿も逝き、その引き金を作った少女は、自己責任に打ちのめされようとしている。
 ねねねと視線を合わせようとしないのは、申し訳なさの表れだろう。

 笑って許してやれれば話は早いのだろうが、ねねねとしては正直、げんこつの一つでもくれてやりたい気分だった。
 罪を言及しようとは思わない。だがみんなに迷惑をかけたことは事実であり、子供はそれを知る必要がある。
 ならば大人の務めとして――とも思ったが、ゆたかもゆたかで、既に誰かからの叱咤を受けたようだ。
 そうでなければ、そもそも生き延びてはいないだろう。自己嫌悪の泥沼から脱しているならば、ひとまずは合格点か。

「――と、これで大体の自己紹介は終わったかな。んじゃ、終幕の予鈴も鳴ったことだし、さっそく仕事の話を」

 ジン司会のもと、集った八人はそれぞれ名前や各人との関係を告げ、一通りの把握が完了する。
 詳細名簿等で事前に認識を深めていたねねねはともかく、スパイクや舞衣は明らかに認知が足りていないのだろう。
 しきりにねねねやガッシュの顔を窺い、品定めするような視線を送っていた。

 ジンの仲介があるとはいえ、殺し合いの舞台で初めて遭遇した相手になどそう気を許せるものではない。
 苦難を乗り越えるためには相応の信頼関係を築き上げる必要があり、期限があるからといって、それは即興で済ませられるものではなかった。
 ジンとて、頭では理解しているのだろう。ただ、悠長に事を構えている場合ではない、という考えのほうが強いのか。
 八方塞とも言える逆境の最中、ねねねがジンの進行に疑問を持ち始め、

「……といきたいところだけど、もうちょっと下地作りが必要かな。
 勇敢な挙手も上がっているようだし、お次は清算の時間といこうか」

 異議を訴えようとした寸前で、ゆたかの小さな手が、控えめな意思表示をしていることに気づいた。


 ◇ ◇ ◇



  人間は弱い。肉体的にも、精神的にも。あの女は特に脆弱だった。

  兄さんに守られることで生き永らえ、自分ひとりでは明日に対する度胸もない。

  そんな女の子が、兄さんの加護を失ってどう生きるか……フフフ、興味深くはあるがね。


  ■語り――相羽シンヤ



 ◇ ◇ ◇


 ――ここで黙っていたら、きっと後悔することになる。

 小早川ゆたかはそんな衝動に駆られ、気がつけば手を挙げていた。
 みんなが、ゆたかの挙げる小さな手に注目している。
 スカーやドモンの視線は鋭く、ジンはどこかにやついていて、スパイクは物臭で、ねねねの眼鏡の奥は……怖くて直視できない。
 それでも、正面を向いて言葉をぶつけなければならない。

 この手で命を奪ってしまったあの人へ謝罪するため。
 間接的にとはいえ運命を捻じ曲げてしまったあの人へ謝罪するため、
 自分の矮小な自尊心のせいで迷惑をかけてしまったこの人へ謝罪するため、

 そしてなにより、自分自身を戒めるために。

(舞衣ちゃんたちと話して、ちょっと楽になった。けど、それじゃ全然、解決になんてならないから……!)

 明智健悟や高嶺清麿たち……『戦術交渉部隊』の同じ生き残りとして、また破局の引き金を引いてしまった者として。
 ねねねとは、正面から向かい合わなければならない。

 確固たる意志のもと、ゆたかは晴天を仰ぐ。
 一度深呼吸して、気持ちを落ち着かせてから、よし、と小さく自分を鼓舞する。
 力を持たない自分は、せめて勇気だけでも一人前でいようと……口を開いた。

「私、菫川先生にお話しなきゃいけないことがあるんです」

 陳謝でも、懺悔でもいい。
 純粋な本能の赴くままに、思いつく限りの言霊を吐露できればそれで満足だ。
 その結果ねねねの叱責を受けようとも、蔑みの眼差しを返されようとも、全部受け止めてみせる。
 覚悟は速やかに、許容範囲は広く、決意は不動のものとして。
 ゆたかの表情は、さらに険しく強張った。

 皆の視線がゆたかに集中する中、ねねねは一人立ち上がり、黙して歩み寄ってきた。
 近づいてくる脅威にわずか竦み、それでも恐れたりはせず、ゆたかも立ち上がる。
 ちゃんとお互いの表情が窺える距離で、眼鏡の奥に秘められた瞳を見据えるために。

 同性にしても開きのある身長差が、密着しそうなほどに近づき合う。
 ゆたかは上目遣いでねねねの顔を見上げ、ねねねは眼下のゆたかを見下ろす。
 間近にすると、異様な緊迫感に首を絞め上げられるような心持ちがした。

「あ、あの! 菫川せん――ふぇ」

 勇気を振り絞り、ゆたかが声をあげた――途端、
 むにゅ、と頬をつねられた。

(ふぇ、ふぇ?)

 右の頬と左の頬を同時に、ねねねが人差し指と親指で摘んで離さない。
 向かい合うねねねの顔は無表情で、じーっ、とゆたかを見つめていた。
 弾力のある頬が、伸ばされ、上下され、こねられ、ぐにぐにされ、むにゅむにゅされる。
 ねねねの奇異な行動にゆたかの決意は一蹴され、一瞬で混乱に至った。

「あ、あにするんへふかぁ~?」
「うっさい。あんたがアニタみたいなクソ生意気な子供だったら、ストレートに一発かましてやるところだけどね」

 呂律の回らない口ぶりでゆたかは抗議を訴え、しかしねねねは却下し頬を弄くり倒す。
 女の子らしい柔らかな肌がぐにゅぐにゅと歪曲し、赤みを増していく。
 ゆたかは力ずくで拒もうとはせず、あうあう、とされるがままでいた。

 しばらくして、ねねねはゆたかの頬から手を離した。
 解放されたゆたかは、頬を摩りながら瞳を潤ませる。

「……今のあんたにはそんくらいで十分でしょ」

 そう言って、ねねねはゆたかに満面の笑みを見せた。
 曇りのない破顔一笑の仕草は、語るべき言葉の代用品とも思えた。
 結局、ゆたかはねねねに話したかったことを話せていない。頬をつねられたせいで、機を逃してしまった。
 なのにねねねは、もうこの話は終わった、と言わんばかりにゆたかの頭をなで回す。

 ……気持ちの整理をつけるのが、そんなに容易いはずはないのに。
 申し訳なさを感じつつも、大人の懐の深さに嬉しくなってしまう自分がいた。

「清算の時間とやらもおしまいにしよう、ジン。時間は切迫してる。
 みんなも気にしてるみたいだけど、私はゆたかを許す。今日の菫川先生はすこぶる寛大なんだ」


 ゆたかの頭部をくしゃくしゃにしながら、ねねねはジンに会議の再開を進言する。
 議長役の少年は肩を竦め、嘲るようにこれを返した。

「まったく、ねねねおねーさんのプロフェッショナルぶりにはこっちが萎縮させられちゃうよ。
 でも、清算しなきゃいけないのはプリンセスが犯した若さゆえの過ちだけじゃない。
 こういうのは大人でも踏ん切りのつけにくいものだからね。小僧のオレとしては、そのへんが心配でもあるのさ」

 そうしてジンは、スカーの横顔を一瞥する。
 深紅の凶眼は見る者をたじろがせ、知らず知らずの内に警戒心を与えてしまう。
 その明かされざる経歴を知る者もいる以上、彼の言葉もまた、この場には必須と言えた。

「……次は己れが、言辞を弄する番か」

 褐色の肌に紅の瞳を併せ持つ異人――名を失った『傷の男』は、おもむろに立ち上がった。


 ◇ ◇ ◇


 お国によって顔の作りってもんは違うけどさ、僕はあんなに怖い顔の女の子を見たことがない!

 まあ、それだけ感情豊かな人間だと捉えることもできるんだけれど……んふふ。

 彼女の笑った顔は、さぞかし魅力的なんだろうねぇ~……ああ、勘違いしないでよ。趣味じゃないです。


 ■語り――ロイド・アスプルンド



 ◇ ◇ ◇


 傷(スカー)と呼ばれる大男が、ゆるやかに立ち上がる。
 自身がソルテッカマンの火力で壊したかもしれない瓦礫を椅子代わりにして、鴇羽舞衣はスカーの姿を見上げた。
 彼の風貌は、集った生存者たちの中でも特に際立っている。
 浅黒い、異人の証明たる肌。射抜かれるような赤の瞳。怖い顔。
 最後は人のこと言えないか……などと自嘲して、舞衣はスカーの言葉に耳を傾ける。

「己れは、この地で二人の命を奪った」

 スカーの不意の告白に、しかし驚きは薄かった。
 スパイクからも事前に聞いていたことだ。
 罰点傷の大男が、温泉でゼロの名を持つ男を殺した。
 スパイクの仲間も、おそらくは彼に殺害された。
 スパイク自身、殺されそうになった。
 傷の男には注意して然るべきだ――と。

(殺人者だから気をつけて、とか……まあ、そうなんだろうけどさ)

 顔がわずかに俯き、どこか己を戒めるような、虚ろな溜め息を零す。
 考えてしまう事柄は多々ある。
 だが今は、スカーの告白を親身に聞くべきだ、とまた顔を上げた。

「――死んだらどうする。死んだら、責任を取れるのか……己れが殺した男が残した言葉だ。
 この闘争の根幹に気づかず、ただ国家錬金術師への復讐心を糧として動いてきた己れだが……今ならわかる。
 己れは、責任を果たすべきなのだろう。菫川ねねねの師の命を奪った者として、許しを得た者として」

 淡々と告げるスカーの瞳には、力強い意志が灯っていた。
 血のように染め上げられた赤の瞳は直視に耐えがたいが、不思議と吸い込まれるように視線を向けてしまう。
 又聞きした程度では、ねねねとの間に起こった事情も、彼の心情も、共感するには至らない。
 ただ舞衣は、同じような境遇に身を置く者として、スカーの背負う重荷の影を垣間見た。

「……あたしは、六人殺した」

 スカーの告白を遮り、舞衣が呟く。
 か細いが芯のある言霊は、皆の注意を掻っ攫うには十分な、意志の強さを秘めていた。

「ロイドさんと、パズーくんと、名前もわからない男の子と、神父さんと、会長さんと、ゆたかちゃんの先輩。
 激情に駆られて、辺り構わず喚き散らして、このへん一帯壊して回ったのもあたし。
 過去が咎められるっていうんなら、スカーさんよりあたしのほうがよっぽどだって……」

 スカーに倣い、親交の浅いねねねやガッシュを対象として、舞衣の清算が始まる。
 過去を戒め、悔い、未来の自分と向き合うために、今一度。

 シモンが死に、奪われる辛さを思い知らされ、男の子を絞め殺した。
 ソルテッカマンという強大な力を得て、調子に乗り、ロイドを蒸発させた。
 力の振り翳し所は一人の研究者に留まらず、声をかけられただけの純心な少年を撃ち殺しもした。
 精神が極度に堕ち切ってしまっていた頃、爆発した炎の感情が、救いを齎そうとした神父を焼却したことも覚えている。
 そしてもちろん、頼まれたからとはいえ、柊かがみを焼いたのも鴇羽舞衣の咎には違いない。
 静留や奈緒の散り際も鮮明に覚えているし、シータから突きつけられた憎悪も忘れることはないだろう。

 それらを全部抱え込み、清算する。
 罪を許してもらおうとは思わず、されど生きることがそれに繋がるのなら。
 味方になりうる者同志でいがみ合う気もなく、舞衣はスカーに向けて手を差し伸べた。

「なんか、調子いい上に青臭いかもしれないけどさ。これでチャラにしときましょうよ」

 自嘲気味に苦笑いを浮かべ、舞衣は自ら進んで、破壊の象徴と言われるスカーの右腕を掴み取った。
 だからといって、どうということはない。
 スカーに破壊の意志などはなく、表面上は舞衣の行動に動揺している風だったが、そこが可愛くもある。

 奪う者、奪われる者、どちらの側に立つか――もう、そんなカテゴライズはたくさんだ。
 舞衣の想いに賛同するかのように、繋がれた手の上にそっと、小さな手が重なる。

「私だって、明智さんを……明智さんを殺したのは、私です。高嶺くんだって、私があんなことをしなければ……」

 ゆたかも、自身を戒め明日を見据えるために、舞衣とスカーに手を重ねた。
 ギルガメッシュなどが見れば、傷の舐め合いと小馬鹿にしたかもしれない。
 ただそれでも、鴇羽舞衣や小早川ゆたかは乳臭さの残る〝乙女〟なのだと――自嘲せず、受け入れる。

「おいおい、あんたらまで辛気臭くなってどうすんだよ」
「ウヌウ、舞衣もゆたかも元気を出すのだ」
「スカーも困惑しているようだぞ」

 などと、深刻に受け取っていたのは咎を背負う者たちだけだったのだろうか。
 ねねねは失笑まじりに、ガッシュは困った顔で、ドモンは穏やかな表情で、手を重ね合う三者を見ていた。
 周りとの空気の温度差に、舞衣が気恥ずかしさを覚え、ジンが追い討ちをかけるように言う。

「前科持ちの人間であったとしても、運命を打開する輪に加わる理由は十分にあるって話。
 そもそも前科ってんなら、オレなんて現役のドロボウだし。かといって通報される気は微塵もない」

 集った一同、咎を負う者ともそうでない者とも、等しく視線を交わしながらジンが足を運ぶ。
 舌を滑らせながら足が向いた先は、唯一押し黙ったままでいるスパイクの元だった。
 スパイクは顎に手をやり、周囲に呆けた顔を晒していた。
 舞衣はその物臭な態度に脱力し、肩を竦める。

 この話は、紐を解いてみれば実に単純明快だ。
 明智健悟の下、菫川ねねねがスカーに対してそうしたように。
 スパイクがスカーを許せば、それで円満解決となる。

 もちろんそれだけで後の光明が切り開けるわけではないが、必須要項ではあるだろう。
 ラブアンドピース――夢想人が唱えた愛と平和。
 くだらない負のスパイラルを脱するためには、友愛を築きあげることこそが悲願への一歩なのだ。

「で、みんなの眼差しはいつの間にかスパイクに集中しているわけだけど。そこんとこ、どーだい?」
「あー……とりあえずな。おまえらに言いたいことは山ほどあるんだが……まあ、とりあえずだ」

 手団扇をあおぎ、スパイクは皆の視線を鬱陶しそうに払い除ける。
 所作だけではどうにも伝わらないようなので、ややあって言葉を添えた。

「……命狙われた相手に背中を預けろってんなら、そりゃ御免こうむる。
 だけどな、別に顔を合わせただけでどうこうしようとは思わねぇさ。なんでかわかるか?」

 スパイクの問いかけに、ゆたかと舞衣が逸早く反応してみせる。

「どうしてですか?」
「メンドーだから?」
「おまえらなぁ……」

 正鵠を射ているかと思われた返答が、しかし不満なのか、スパイクはぼりぼりと頭を掻いた。
 依然、眼差しの集中砲火がやまぬ最中、スパイクは面倒くさそうに言葉を吐き捨てた。

「一文の得にもならねぇからだよ」

 カウボーイが懸賞金ゼロの賞金首追ってどうするよ、と添えて、そっぽを向く。
 スパイクの生き方や普段の暮らしをよく知らぬ者からしてみても、その言葉には不思議な説得力が詰まっていて、舞衣も妙に納得してしまうのだった。

 スパイクとスカーの関係については、周囲の取り越し苦労だったのかもしれない。
 それでも、罪を知らない者が罪を知り、秘匿としなかっただけでも、ある程度の友愛を築く役には立った。
 舞衣も、随分と気持ちが楽になったのを自覚していた。おそらくはゆたかもそうだろう。スカーはわからない。

「さあ、これで清算の時間は終了かな。とりあえずの下地も整ったってわけだ」

 各々が、スパイクの態度に含み笑いを見せる中で、ジンが声高らかに注目を集める。
 狂言回しを得意とする俳優のようにして、司会役を買って出た王ドロボウはなにを唱えるのか。

「これからを生きるにあたって、オレから一つ提案がある。さっきも言った〝仕事〟の件だね。
 ねねねおねーさんあたりはタイムリミットを気にしてるようだけど、十二時間ってのは案外長い。
 やるべきことは膨大で、されどやれることも膨大ってわけさ。
 そこで、まずオレたちが一丸となってやらなきゃならないことは……転職、かな」

 難解な言説を弄ぶジンに、誰もが疑問符を浮かべた。
 迂遠な言い回しの裏に潜む意図は、はたして――と考えて、ジンが続ける。

「しがない王ドロボウが、ちょいと軍師を気取ってみたくなりまして。みんなには、駒役を買って出てほしいのさ」


 ◇ ◇ ◇



  結局、彼はなんだったんでしょうか。

  魔法使いの杖のようで、蛮勇の矛でもあって、けれど友達にはなってくれなかった。

  言葉を交わせる友人に出会えていたとしたら、私の進む道も、ある程度は明るかったのかしら。


  ■語り――リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ



 ◇ ◇ ◇


 舞衣が身に纏う戦装束、《炎綬の紅玉》の象徴は、本来ならばこの次元の彼女が手にすることはなかったはずの力だ。
 無数に存在する多元宇宙の中で、舞衣はHiMEとは別種の異能を得るのだが――この場では語るべくもない。
 舞衣の装束、通称バリアジャケットは彼女のイメージの顕現であり、HiMEの高次元物質化能力が魔力の循環を司るデバイスと化学反応を起こし生まれた、偶然の産物にすぎない。

 寡黙なる槍、ストラーダは此度の闘争に対して冷静で実直だった。
 マッハキャリバーやクロスミラージュ等、同時開発されたデバイスの中では『一番の饒舌』とまで言われた彼が、この地では沈黙に徹したのだ。
 所有者であるエリオ・モンディアルの手元を離れていたというのもあるが、これはしばらく冷静に事を見極めた結果だろう。
 己はアームドデバイス――魔導師の武器にすぎないと厳しく律し、シータの凶行にも逆らうことをしなかった。

 望む者にはバリアジャケットを与え、槍としての存在価値を提示する。
 そうやって過ごしてきたこの闘争も、ついに最終局面を迎えるようだ。
 一撃離脱を信条とした突撃槍の使い手とは巡り合えず、しかし自身は鴇羽舞衣の手元で任を果たしている。

 ――必要とあらば、『現在の』所有者と意思疎通を図ることもありうるか。

 ですぎた真似は自重し、英雄王に使役されるマッハキャリバーにも対して感応は見せなかった彼が、状況を再度見極める。
 大いなる壁に挑もうとする者たち。主を失った槍は、彼らや彼女らの助力となりうるのだろうか――考える。

「ここに集った人間は、全部で八人。いま生き残ってるのは、十二人。ここにいないあとの四人ってのは、さて誰だろうね」

 ジンという名の少年が、そんな謎かけを放る。
 見た目にも飄々としていて、リーダーというにはどこか頼りない。というのがストラーダの分析だ。
 組織としての役割を任ずるなら、参謀か首魁の懐刀か……腹の底では大番狂わせを企てているタイプの人間にも思える。

「ウヌウ、カミナがどこかに行ったまま行方知らずなのだ」
「そういや、ギルガメッシュはどこ行ったんだ? てっきりジンたちを探しに行ったんだと思ってたんだが」
「あの尊大な王様になら会ったよ。つっても、協力を求められる段階じゃないんでね。しばらく待ってもらってる」
「ギルガメッシュの出番は〝まだ〟ってことさ。オレたちはオレたちで、先につけなきゃならない始末がある」
「残りの二人というと、ルルーシュ・ランペルージの指揮で動いていたヴィラルとシャマルか」
「ルルーシュ……スパイクたちとは親しくしてたみたいだけど、やっぱあいつも本性隠してたのかな」
「そのルルーシュ・ランペルージとやらも死んだ。いま考えるべきは、ヴィラルとシャマルについてだろう」
「その二人は……まだ、殺し合いを続けているんですよね」

 ガッシュ、スパイク、ねねね、ジン、スカー、舞衣、ドモン、ゆたかが順に言葉を交わす。
 共有した情報に穴はなく、これまでの矛盾もある程度は解消されたはずだ。
 知恵者も多く存在するこのグループが、今さら虚偽の情報に撹乱されることはないだろう。

「そう。ゆたかの言うとおり、ヴィラルとシャマルはまだ螺旋王のパーティーをノリノリで楽しんでる。
 逆に言えば、楽しんでいるのは〝もう〟その二人だけってこと。できれば即刻退場を願いたい」

 その発言で、ストラーダはジンの評価を見直した。
 軍師を気取る、との前言どおり、作戦を提唱する彼は利の追求に走っているようだ。
 限られた時間であるからこそ効率的に、そして合理的に。
 脱出という大きすぎる理想に目を奪われていては、見落としてしまいそうな穴……それを、ジンはちゃんと見ていた。

「言うなれば、目下の敵はその二人だけ。カミナとギルガメッシュを迎えに行くのは、それからでも遅くはないと思うけどね」

 ――ジンの作戦はこうだ。
 未だに殺し合いを肯定する側におり、この先の脱出計画を進めるにあたって障害となる壁を、早々に除去する。
 ヴィラルとシャマルの討伐。殺害、と言ってしまってもいい。
 敵を敵と割り切り、邪魔が入らない環境を確保してから未来を案じるべきだと、ジンは考えたのである。

 しかしこの作戦に、ガッシュやゆたかは難色を示した。
 敵とはいえ、命を奪うということに抵抗を感じているのだろう。
 こればかりは、徹底しなければ崩壊を招きかねないほどの穴となる。
 無力化や捕縛などに留めては究極の安逸には至らず、後の後悔と直結するだろうことは明白だ。

 ヴィラルやシャマルとて、ここまで生き残ってきた猛者である。
 今さら考えを改めることもなければ、襲撃にも手を抜いたりはしないだろう。
 余計な犠牲が出る前に、脱出のための計画に支障が出る前に、害意は討つ――
 戦略を考案する者としては必須な、リアリストとしての性を、ジンは発揮していた。

「……私は、螺旋王が許せぬ」

 懊悩の時が流れ、しばらくしてガッシュが言葉を発した。

「あの者は王としての権力を悪用しているにすぎん。多くの悲しむ者たちを見て、嘲笑っておる。
 既に死んでしまった者たちの悲しみに応えるためにも、私たちは必ず、奴を王座から引き摺り下ろさなければならないのだ」

 ガッシュ・ベル――魔界の王を目指す最年少の子供は、この中でも随一の高潔な瞳を持っていた。
 ギルガメッシュほど尊大ではないが、かわりに傲慢でもない。真に民を思う、若き王の風格を感じる。
 死を憎むだけの、ただの平和主義者ではないようだ――とストラーダが分析したところで、ガッシュが賛成の意を述べた。

「戦わなければならん。それが必要な戦いだというのなら、私はジンの作戦を信じるのだ――!」
「わ、私も! そのヴィラルさんとシャマルさんという人が、どんな思いで戦っているのかは知らないです……
 けど、私たちだってここで負けるわけにはいかない! Dボゥイさんやかがみ先輩の分まで……なにより、私たちのために!」

 ガッシュに続いて、ゆたかも賛成の挙手をあげる。
 特に言葉は見繕わないが、他の者たちもジンの作戦に乗る様子だった。

 ……傍らで、ストラーダは思案する。
 残る敵対者二名、その内の一角であるシャマル。
 時空管理局機動六課に所属する彼女は、どんな思惑を抱き、闘争に参加しているのか。
 主たる八神はやてを失い、後輩たる六課前線メンバーを失い、なんのために……
 対話の機会を得たいとは思うが、しかしストラーダは寡黙を貫く。

 この地では、それが彼の生き方であったからだ。
 エリオの戦闘スタイルに合わせ製作されたデバイスが、余生をどう送るのか。
 考えても詮なきことだ、と結局一言の発言もなさずに、舞衣の手元でひっそりと明滅を繰り返した。


 ◇ ◇ ◇


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