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  • 「永遠に(ネバー・ダイ)」

アニメキャラ・バトルロワイアル @ Wiki

「永遠に(ネバー・ダイ)」

最終更新:2021年08月08日 01:11

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「永遠に(ネバー・ダイ)」 ◆LXe12sNRSs


 仮面の男が何か言っている。
 大層な立体映像まで持ち出して、死者の名前と禁止エリアについての報告を行っているのだろう。
 くだらない。どう足掻こうとも、俺の愛する少女が死んでしまったことには変わりないのに。

「――――…………――――」

 俺は、彼女が付けていた『マイクロ補聴器』なる道具の助けを借りながら、放送の間も病院内を練り歩いていた。
 静寂が支配する院内では、虫の這う音すら聞こえない。危うく、無人なのではないかと錯覚してしまうところだった。
 だが、幸運の女神はやはり――俺と、彼女を見捨てたりはしなかった。
 X線室の前を通りがかった時のことだ。耳に取り付けたマイクロ補聴器を通して、子供らしきものの寝息が聞こえてくるのが分かった。
 ここだ。ここに、いる。

「大丈夫、すぐに終わるから」

 俺は、胸を蹂躙するほどの心苦しさを懸命に振り払い、X線室前に安置されたベンチに、そっと彼女の身体を預けた。
 これから始まるであろう血の復讐劇に、彼女は似合わない。
 観客でいてくれなくてもいい。舞台公演が終わった後、役者に花束を贈呈してくれさえすれば、それで俺は満足だ。
 物理的に、そういった行動がもう無理であるということは承知している。
 だけど。おそらく。
 彼女は、一仕事終えた俺に――『頑張ったね』と――天使の微笑みを与えてくれるはずだ。
 きっと。必ず。
 信じて、俺はX線室の中に入っていった。
 今度ばかりは、巻き込まれるだけの俺じゃない。
 愛のために、俺自ら血祭り(ブラッド・パーティー)を開催することを決心したんだ。


 ◇ ◇ ◇


 薄暗い室内には、二人の子供――というより、一人は幼児だったが――の姿があった。
 一人は簡易ベッドの上で、頭まで毛布を被り顔が見えない。体系的に子供なのは間違いないが、性別の判断まではつかない。
 もう一人はベッドの上で眠る子供を気遣ったのか、はたまた単に寝相が悪いだけなのか、床に転がりスヤスヤと寝息を立てている。
 こちらの方は、どう見ても幼児だった。年齢も五歳かそこらぐらい……愛する彼女も子供ではあったが、さすがに幼児が首の骨を折るなんて芸当は不可能だろう。
 となると、怪しくなってくるのは俄然もう一人の方である。
 体系的には彼女と同じくらい。人を殺すには十分な年齢のようにも思えるが、それでも首の骨を折るなんて荒業が出来るかと問えば、答えは怪しい。
 転ばし屋やマイクロ補聴器のような、何か特殊な道具を使ったというのも考えられる。
 それに、子供だからといって――――

「う…………ん」

 脳内で『ある双子』を思い浮かべている最中、ベッドで寝ていた子供が寝返りを打ち、毛布の中から顔を出した。
 綺麗に整った顔立ち、銀髪のショートカット、悪魔を内に潜めた天使の寝顔。

 ああ、そうか。そういうことかよ。

 直接的な面識はない。が、この『顔』には見覚えがある。
 双子なのだから、顔が同じなのは当たり前だ。思わず失笑したくなる。
 だが、これで全ての疑問に決着がついた。
 愛する彼女を殺したのは、間違いなくこの『少年』だ。
 少年にはそれを可能にするだけの能力があり、そうしようという思考、そうしたいという願望もある。

(『ホテル・モスクワ』のバラライカさんの命を狙うようなクレイジー・キッドだ。ゲームに乗らない方が不自然だよなそりゃ)

 無表情で少年を睨みながら、近場に置いてあったパイプ椅子に手を伸ばす。
 相手は今、眠っている。いくら悪名高いあの双子の片割れとはいえ、寝込みを襲えば勝負は一瞬でケリがつく。
 パイプ椅子を持つ手に、力が込められる。
 失敗は許されない。相手が起きれば、不利になるのは自分だ。
 自分と相手、互いの戦力差を把握しているからこそ、チャンスは今しかないと考えるのだ。

 頭上までパイプ椅子を振り上げ――『ロック』は――ベッドの上の少年に、振り下ろす。

「……ん」

 命中する瞬間、少年が僅かに身を捩った。
 しかし無意味。これしきの寝返りでは、ロックの攻撃から逃れることは出来ない。
 小さな身体がパイプ椅子に押し潰される――そう思われた。


 ひらり


 そう思われた。そうなるはずだった。だが。
「…………!?」
 ロックが振り下ろしたパイプ椅子は、少年に命中する寸前で急に軌道変更。
 滑るような形で、少年の身体の代わりにベッドの側面を叩いた。

「う……ぅぅ、もぉ~うるさいゾ~」

 少年を一撃で仕留めるつもりが、ベッドの側面を叩いてしまった。
 その際の衝撃音で、床に転がっていた幼児が目を覚ましてしまったが、今は関係ない。
 問題は、なぜ攻撃が当たなかったか。
 標的である少年は未だ眠りの中。彼が何かしたとは考えにくい。
 ならば、何か道具による妨害か――すぐに考え付いたのは、少年の体を覆う無数の包帯と、赤い布。
 包帯の方は、どう見てもこの病院の備品だ。攻撃回避の秘密が隠されているとすれば、得体の知れぬ赤い布の方か。

「お? お兄さんだれ? オラたちになんかよう?」

 幼児が、子供らしいつぶらな瞳でロックを注視している。
 だがロックは意に介さず、この赤い布の攻略法を考えていた。
 もしこの赤い布が、転ばし屋やマイクロ補聴器と同じ不思議な道具の類なのだとしたら。
 パイプ椅子などでは攻略は難しい。かといって武器になるようなものは他にない。
 思案を続け、ロックはある簡単なことに気づいた。
 頭、だ。
 頭なら、包帯にも赤い布にも覆われていない。加えて、命中すれば一撃必殺の急所でもある。
 最初から、ここを狙えば良かったんだ。
 ロックは、気づいた奇策に殺意を奮い立たせ、再びパイプ椅子を振り上げる。

「お兄さん……?」

 今度は、外さない。


 ◇ ◇ ◇


「ぐぅあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 痛みに悶える少年――ヘンゼル――と、
 眼前で起こった惨劇にパニックを起こす幼児――野原しんのすけ――と、
 不気味に、血で汚れたパイプ椅子を握り締める青年――ロック――の三人が、

 静寂の場であったX線室を、醜いブラッド・パーティーの会場へと仕立て上げていた。

(まだ……まだこいつは、死んでない)
 冷静な眼差しでヘンゼルを見下ろすロックの周囲には、どす黒い負の感情が渦巻いていた。
 過剰な愛は、狂気を宿す。それを体現したのが今のロックであり、彼は今、ほぼ別人といっていいほどの存在に変わり果てていた。

 全ては、『狂愛』故に。

 再びパイプ椅子を振り上げるワイシャツの男に、しんのすけは正体不明の底知れぬ不安を覚えた。
 この男の人が何者なのかは分からない。ひょっとしたらヘンゼルの知り合いかもしれない。
 答えなんて、求めたって廻ってくるものじゃない。
 けど、けど、けど、けど、けど。

 ここでお助けしないと、絶対後悔する――そんな予感が、しんのすけを駆り立てた。

 ロックがパイプ椅子を振り下ろし、眼下のヘンゼルを狙う。
 しんのすけが助走をつけてダッシュし、同時に半ズボンを下ろす。
 パイプ椅子は加速した状態で、一直線にヘンゼルを襲う。
 パンツも一緒に下ろされ、お尻丸出しとなったしんのすけが、跳ぶ。

「うおおおおおー! ケツだけアタァーック!!」

 パイプ椅子がヘンゼルの頭部を粉々に砕こうとした寸前――華麗に舞った小振りなお尻が、ロックの身体を弾き飛ばした。

「ヘンゼル! 今の内に逃げるゾ!」

 不意の攻撃で倒されたロックを視界の隅に置きながら、しんのすけはヘンゼルの身を包んでいた包帯と布をがむしゃらに取り除く。
 身体の自由を取り戻し、なんとか移動できるまでには復帰したヘンゼルだったが、それでも頭部に受けたダメージは無視できないレベル。
 ぼやける視界、フラつく足取りと格闘しながら、懸命に身を起こそうともがく。

「こっちだゾ、ヘンゼル!」

 しんのすけに手を引かれ、ヘンゼルはなんとかX線室より脱出した。
 無我夢中だった二人は、外のベンチに腰掛けられた一人の少女には気づかず。
 正体不明のワイシャツ男から逃げるべく、震える脚を動かし続けた。


 ◇ ◇ ◇


 逃げに逃げて、階段を上りに上り、屋上一歩手前の階層まで移動したしんのすけとヘンゼルは、呼吸を整えるため廊下で一旦脚を止めた。

「ぜー、ぜー、ぜー。ふぅー、ここまで来ればきっと大丈夫だゾ。ヘンゼル、頭大丈夫? 痛くない?」

 振り返り、しんのすけは互いの手で繋がったヘンゼルの様子を窺う。
 照明が灯っていない上に、周囲には窓が一つもないせいだろうか。廊下は暗く、すぐ傍にいるヘンゼルの顔を見るのも困難だった。
 だが暗くても、音だけは確かに聞こえるものだ。
 カツン、カツン……と、足音のようなものが音量を増して聞こえてくるのは、何かが近づいてくる証拠。
 そしてしんのすけはヘンゼルの奥――後方数メートルの距離に、赤い消火器を携えた人影を見た。

 足が疲れたから、止まる。
 止まったら、追いつかれる。
 追いつかれたら、ヘンゼルが酷い目にあう。
 なら、止まっちゃダメだ。

 しんのすけは顔を前に向け直し、再度ヘンゼルの手を引いた。
 振り向いたら、追いつかれる。そんな気がして、前だけを向いて走り出した。

「あっ」

 途端に、しんのすけの引く手が重みを増す。
 振り返っちゃダメだ――そう思いながらも、止むを得ず振り向いてみた。
 繋がった手を基点に、その先を辿っていく。
 ヘンゼルが、転んでいた。

「へ、ヘンゼル……?」

 違う。ただ転んでいただけじゃない。
 よく見ると頭は赤い液体で濡れており、握った手に込められた力は弱々しく変化している。
 急ぐあまり石に躓いたのとはワケが違う。単純に、走ることが困難になったのだ。

「ねぇヘンゼル、早く立って! 早く立って逃げないと、怖いお兄さんに追いつかれちゃうゾ!」

 本心では、今のヘンゼルがそれもかなわない状態だと分かっていた。
 だが、その幼さゆえに認めることもできなかった。
 しんのすけがヘンゼルに呼びかける間も、より強力な鈍器を調達したロックは歩みをやめない。
 無表情で冷徹な雰囲気を醸し出す瞳には、倒れこむヘンゼルのみを中心に置いていた。
 その視線を遮る小振りな影は、道端に放られた小石ほどにしか興味を持たない。
 そう、あれは石と同じだ。行く手を阻むというのなら、適当に弾いて突き進めばいい。それだけだ。

「退いてくれよ。俺はそっちの方に用があるんだ」

 ゆったりとしたスピードで近づきながら、ロックはヘンゼルを守るように立つしんのすけに喋りかける。
 言葉は穏やかで、表面上の敵意は感じなかった。しかししんのすけの本能は、ロックに対して厳しい判断を下す。
 拒絶、である。

「お兄さん変だゾ! ヘンゼルは何も悪いことしてないのに、どうしてこんな酷いことするの!?」

 声を張り上げ、しんのすけは真っ直ぐな瞳でロックに向き合った。
 相手が自分を殺すかもしれない、という心配は微塵もない。
 今はとにかく、ヘンゼルをお助けする。それ以外の思考は全て掻き消し、しんのすけは恐怖心すらも排除しようと考えたのだ。

「変? 俺は至って冷静さ。それに、そいつが何も悪いことしてないだって?
 君は知らないだけなのかもしれないけど、そいつはたくさんの人間を殺してきたんだ。
 このクソッタレゲームに来てからも、一人の可憐な少女の命を奪った」
「そんなのウソだ! ヘンゼルがそんなことするわけない! お兄さんの大ウソつきィー!!」

 接近する幽鬼に怯える素振りすら見せず、しんのすけは勇猛果敢に立ち向かう。
 大丈夫だ。こんな見るからに普通なお兄さん怖くない。しんのすけにとっては、怒ったみさえやひろしの足の臭いの方が万倍恐ろしい。
 言い聞かせるように心の中で反芻を続けるも、しんのすけは自身の足が震えていることに気づかなかった。
 ロックの外見に恐怖を与える要素は何一つとしてない。しかし、その周囲から醸し出される静かなる狂気は、無意識に五歳児の本能を揺さぶっていたのだ。

「…………ウソじゃ、ないよ」

 ガクガクと震えるしんのすけの足を、不意に冷たい手が撫でた。
 ヘンゼルである。

「僕はね、そのお兄さんの言うとおり……いっぱい、いっぱい、いっぱい殺してきたんだ。
 姉さまと一緒に、大人も、子供も、たくさん。君と同じくらいの、歳の子も殺したよ……その子の親だって、殺して見せた。
 僕と姉さまは、いつもそうやって遊んできたんだ……ここでも、いっぱい、遊ぶんだ……」

 途切れ途切れになる言葉を必死に紡ぎながら、ヘンゼルはしんのすけに笑顔を見せた。
 それは、純粋な子供の笑顔。風間くんやネネちゃんやマサオくんやボーちゃんが見せる笑顔となんら遜色のないものだ。
 なのに、どこか痛々しいのは何故だろう。
 しんのすけは答えの出ることのない疑問に悩まされながら、それでもヘンゼルを庇い続けた。

「そんな遊びつまらないゾ! 青春は尊いものだって、父ちゃんや組長先生も言ってた! 
 ヘンゼルのお姉さんだって、そんな遊びばっかりやってたら、まつざか先生みたいに売れ残っちゃうゾ!」
「ハハ…………キミって難しい言葉知ってるんだね……ホント、変わってる」

 失笑気味のヘンゼルは、重い足腰をなんとか奮い立たせ、向かってくる幽鬼に立ち向かおうとしていた。
 本人は『遊ぶ』と言っているが、それはたぶん、しんのすけが知っているような『遊び』とは違う。
 とってもいけない、大人の遊びなんだ。手を出したら破滅してしまうような、危ういものに違いない。
 五歳児ながら豊富な人生を歩んできたしんのすけの本能は、ヘンゼルに対する危機信号のアラームを鳴らしてやまない。

「ダメーーーーーーーーーー!!」

 絶対に、ヘンゼルを遊びに行かせちゃいけない。
 理由の分からない不安に駆られながら、しんのすけはヘンゼルの背中に飛びかかった。

「離してよ……重くて、うまく動けないじゃないか……」
「絶対ダメだゾ! 子供だったらお元気に外で遊ぶものだって、母ちゃんも言ってた! 変な遊びに手を出してたら、ロクな大人にならないゾ!」

 子泣き爺の如くしがみついて離れないしんのすけに、ヘンゼルはほとほと困り果てていた。
 ……でも、不思議と彼の言うことが正解のように思える。
 目の前のお兄さんと遊びたいという衝動はあるものの、ここで逃げるのが正解なんじゃないかと考え出す。
 ……本心では、遊びたくてたまらないはずなのに。

 次の瞬間、ヘンゼルは踵を返して走り出した――ロックとは別の方向に。
 遊びたい、という殺人鬼が持つ逃れられない衝動を放棄し、ヘンゼルは何の縁もない五歳児の願いに従ったのだ。

 我ながら、なんでこんな行動を取っているのか疑問だった。
 正体不明の不快感に苛まれながらも、ヘンゼルはロックとの距離を引き離していく。
 静かなる幽鬼は、その小さな背中を余裕で見送っていた。


 ◇ ◇ ◇


「こ、ここまでくれば……今度こそ大丈夫だゾ……」

 一生懸命走って、ヘンゼルとしんのすけは病院の屋上までやって来た。
 極限状態での運動が齎す肉体疲労は進行が激しく、二人の子供は限界を感じ始めていた。
 特にヘンゼルの方は、セイバーとの戦闘で受けた裂傷、そして先の頭部への殴打が致命的な痛手となり、立つことも困難な状態である。
 ひょっとしたら、傷口が開いてしまったのかもしれない。ヘンゼルの呼吸は速度を増すばかりで、しんのすけが危険を感じるには十分なレベルにまで達していた。
 治療してあげたい。しかし、怖いお兄さんが迫ってきている現実は無視できない。

「ヘンゼルはここで待っていてほしいゾ!」
「しんのすけ君……? どこへ……」

 汗だくになった額を拭い、しんのすけは再び病院内に戻っていった。
 屋上に放置されたヘンゼルは、しんのすけの小さな後姿を目で追いながら、か細い声で行き先を聞くことしかできなかった。
 バタンッ、と屋上入り口の扉が閉められる。
 一人きりとなったヘンゼルは、痛む身体に身を捩らせながら、顔を天へと向けた。

「…………そら、きれいだな……」

 できることなら、最愛の姉と一緒に、こんな綺麗な空を眺めたかった。
 空を仰いで、二人でランチを囲って。


 ◇ ◇ ◇


 ロックの足取りは、静かだが確実だった。
「――――……――――…………」
 マイクロ補聴器から聞き取れる子供の息遣いを耳にし、確実にその後を追跡していく。
 そして辿り着いたのは、病院の最上階フロア。進む先には、二通りの分かれ道が待っていた。
 一つは、屋上へと続く上り階段。
 もう一つは、外界へと続く非常階段。
 二つに一つの分岐点。果たして、二人の子供はどちらへ逃走したのか。

 ロックが選択肢を選ぶ最中、標的の逃走をサポートする幼児が一人、非常階段口の方に姿を現した。

「お兄さ~~~んっ!」

 大きく手を振り上げ、アピールするように自身の存在を知らせていた。
 そしてしんのすけは何を思ったか、半ズボンをずり下ろし、頭を隠した状態でお尻を前面に押し出した。

「ケツだけ星人~~ブリブリーブリブリーブリブリーブリブリー」

 お尻を突き出し小刻みに振るう様は、一流コメディアンもビックリの宴会芸のように思えた。
 ロック側から見れば、身体を持たないお尻だけの生物が踊っているように映っている。ケツだけ星人とはよく言ったものだ。

「ブリブリーブリブリーブリブリーブリブリー」

 しかし、これで相手の意図が明確なものになった。
 自らの臀部を丸出しにし、存在を主張する目的といったら――『挑発』か『誘導』、もしくは『囮』である。
 幼いながら頭の回る子だ、とロックは感心した。だが幼いゆえに、裏を読むということを知らないらしい。

「ブリブリーブリブリーブリブリーブリブリー」

 ロックは、踊るケツだけ星人から視線を外し、屋上へと続く階段を上っていった。

「ブリブリーブリブリーブリブリーブリブリー…………お?」

 少し疲れて、しんのすけはロックの様子を窺うため顔を出した。
 見ると、そこには誰もいない。
 無視された。

「おぉ…………」

 少し、悲しくなった。


 ◇ ◇ ◇


  ――Midnight with the stars and you,
    Midnight and a rendezvous.――


 その扉は、ノブを軽く回すだけで容易く開く。


  ――Your eyes held a message tender,――


「やっぱり、こっちにいたか」


  ――Saying“surrender all my love to you”.――


 屋上へと続く階段を上りきり、ロックはその扉を開いた。


  ――Midnight brought us sweet romance.――


 吹き曝しの屋上は、洗濯用にかけられた物干し竿と、休憩用のベンチがいくつかあるだけの、開けた空間。


  ――I know all my whole life through.
    I'll be remembering you,――


 その中央には、美麗な声を惜しむことなく披露する、


  ――Whatever else I do.――


 天使の姿があった。


  ――Midnight with the stars and you.――


 パチパチパチ、と刻み良いリズムで手を叩き、ロックは幼いシンガーに拍手を送る。

「……その歌を聴いたのは『二度目』だよ」
「……へぇ。この歌は姉さまにしか聞かせたことがなかったんだけど。TVで覚えたからかな? お兄さんはどこで聴いたの?」
「君のお姉さんからだよ」
「姉さまから? お兄さん……面白いこと言うんだね」

 何が面白いもんか。ロックの脳内では、今でもあの時の光景が鮮明に思い出されている。
 それ故に、彼をここで殺さなければいけないのが辛い。辛いはずなのに、愛がその辛さを忘れさせている。

「……正直、同姓同名かなんかだと思ってた。『ヘンゼルとグレーテル』なんてありきたりな名前だし、死人がこんなところにいるはずもないって思ってた」
「? 何を、言っているの?」
「でもさ……受け入れることにしたよ。これも、一種の悲しい現実なんだって。ギガゾンビがどういう手を使って君らを集めたかは知らないけどさ」
「分からないよ。お兄さんは、僕と姉さまのことを知っているの?」
「知ってるよ。よく知ってる。知りすぎてるから、君を放置しておくわけにはいかない」


  ――“ヘンゼル”と“グレーテル”。彼らはそう呼ばれていた。
  ルーマニアの政変以後、維持できなくなった施設から、多くの子供が闇に売られた。
  人身売買の弊害により『ど変態共』のオモチャにされた二人は、そこでいけない『遊び』を身につける。
 『ど変態共』も、初めは余興のつもりで武器を持たせていたのだろう。
  二人は生き延びるため、必死になって変態共の喜ぶ殺し方を覚えてゆき――そして二人は、いつしかすべてを受け入れた。


「俺は、君らみたいな双子を可哀想だと思ってた。悪いのは、君らを人食い虎に仕立て上げた血と闇の世界なんだって、思いこもうとしてた」
 ロックは、持ち出してきた消火器を握り締め、今にも振り出さんばかりに力を込める。
「……それで、遊んでくれるの?」
 ヘンゼルは、見るからに満身創痍といった肉体で、不気味にも思える笑顔を振りまいていた。
「ああ、遊んでやる。泣いて後悔するくらいに遊び倒してやるよ。これは、お前が何も思わずに殺した彼女への――鎮魂だ」


  ――晴天(ブルー)の世界を捨てて、暗黒(ブラック)の世界に堕ちていった双子の姉兄。
  曲芸犬として尾を振る毎日を送り、やがて殺人を遊びとしか思わなくなった、悲しすぎる双子の物語。


「嬉しいなぁ…………ぼく、ずっと遊びたかったんだ。お兄さんみたいな人と。
 お兄さんなら、きっといい声で啼いてくれるよね? 血のあぶくを吐きながら、動かなくなるまでずっと、啼き続けてくれるよね?
 ねぇ、ねぇ…………ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ」

 異常な感性の人間に触れるのも、いい加減慣れてきた。
 ロックは、小さな殺人鬼を前にしても怯まず、ただ愛のために暴走し尽くすことを決意した。だから、恐れはない。
 これから始まるのは、喜劇でも演舞でもない。只のイカれた殺人劇だ――――


「スト~ップッ!!」


 両者が飛び出そうとした瞬間、ロックの後方――屋上出入り口から、ボールが一個飛び込んできた。
 ボールはころころと床を転がり、ロックとヘンゼルの斜線上に到来する。
 そして、フンッ、という掛け声と共にボールは大きく広がり、大の字になってヘンゼルを守る盾のように君臨した。
 野原しんのすけは、まだ諦めていなかったのだ。

「ケンカはダメだって、母ちゃんに習わなかったのー!? まったく、親の顔が見てみたいゾ!」

 恐れを抱かぬその瞳は、この場には相応しくない異質なものだった。
 ロックは思う。この子は、純粋な、純粋すぎる表の人間だ。それ故、ヘンゼルの遊び相手にならなかったのだろうか、と。
 そして同時に純粋すぎるからこそ、ヘンゼルという存在の危険性に気づけない。彼は、ここにいちゃいけない存在なんだ。

「退いてくれよ。君に用はないんだ」
「絶対退かないゾ! 退いたらヘンゼルに酷いことするつもりなんでしょう!? なら――」
「退けよ」

 ガツン、とロックの足元でボールを蹴り飛ばすような音が聞こえた。
 視界の隅で、ゴム鞠のように跳ねていくしんのすけの姿が確認できる。
 やがて動かなくなったゴム鞠は、ヘンゼルとロックの斜線上に戻ることはなく、静かにその場に蹲った。
 二人を隔てる障壁は、消えた。

「遊ぼう、お兄さん」
「ああ、遊んでやるよ」

 ヘンゼルは日干しされていたシーツを捲り上げ、裸になった物干し竿を得物として構えた。
 ロックは右手に消火器を握り、左手には正体不明の赤い布を用意した。

 ヘンゼルが、駆け出す。
 物干し竿を槍のように突き出し、圧倒的なリーチで攻める。
 先に矛はついていないが、この速度で命中すれば必殺の勢いだ。
 ヘンゼルの力量を持ってすれば、ロックは簡単に串刺しになる。
 そしたら、血がたくさん溢れ出す。でもきっとすぐには死ねないだろう。
 そこがポイント。そこからがお楽しみ。死に掛けのロックを甚振って、遊ぶ。
 あぁ、なんて楽しいんだろう。想像しただけでも、身震いがする。
 できることなら、姉さまと一緒に――――


 ひらり


(――――え?)
 ヘンゼルの突き出した物干し竿が、ロックの身体を貫くことはなかった。
 回避したのではない。攻撃が、逸らされたのだ。
 命中する寸前で、ロックの持つ赤い布――『ひらりマント』が、ヘンゼルの物干し竿を横に逸らした。

「言ったろ。俺は『冷静』だって。
 どうやら、この赤い布は相手の攻撃を簡単に逸らすことができるらしい。マタドールが猛牛を操作するみたいにな。
 効果の程は、あのX線室で身をもって証明済みだ。逃げる時回収しなかったのも失敗だったな。
 ってか護身用に自分で巻いてたくせに、そんなことにも気づけなかったのか? どこまでイカれてるんだよ、お前」

「知らない……ぼくは、ぼくはそんなもの知らない……」

 ひらりマントは、本来ヘンゼルの支給品ではない。
 しんのすけが病院内を探索していた際に偶然見つけてきた、今は亡き少年の遺物だった。
 そして不幸にも――このひらりマントが、ロックとヘンゼルの勝敗を決することになる。

「ッ、ぼくはぁぁぁぁ――――!」

 至近距離から、物干し竿を大きく振り被る。
 今度こそ、と渾身の力を込める。が、
 その攻撃も、ひらり。

「あっ……」

 二度の攻撃失敗で体勢を崩したヘンゼルは、転びそうになったところを、
 ロックの握った消火器で、

「がぅッ!?」

 殴り飛ばされた。

 殺人鬼とはいえ、所詮は子供。体重は、軽い。
 大質量の攻撃にぶっ飛ばされ、軽量級の身体は弾むように転がっていく。
 無機質なコンクリートの地面を雑巾のように這い蹲り、ヘンゼルは死の間際の痛みにもがいていた。

「ぁ、ぅう……」

 小さく喘いでも、危険が去ることはない。ヘンゼルという『少女の仇』が絶命するまで、ロックは止まらない。
 温かい血と、生臭い血と、ベトつく血と……いつしか血塗れになっていたヘンゼルの身体は、もはやピクリと動かすくらいしかできなかった。

「どうした、もう終わりか?」

 ロックが、死に掛けの殺人鬼に問う。
 感情を押し殺した無の素顔は、どちらが本当の殺人鬼かを錯覚させるほどだった。

「ふ、ふふ…………終わ、り? なに、いって、るの……? ぼくは、まだ遊べる…………そう、遊べる『わ』」

 決着の寸前、ロックは、確かに聞いた。
 いつか、天使の歌声を披露してくれたある女の子の声を。
 双子の、姉の声を。

「で、でも……もうこれはダメ『ね』。『わたし』に合った、新しいオモチャが、必要だ『わ』……」

 ヘンゼルの声質が、男児のものから女児のものへと変化している。同時に、彼が懐から銃を取り出す仕草も見られた。
 そうだった――と、ロックは思い出した悲劇の顛末に、奥歯を噛み締める。
 双子は、ヘンゼルとグレーテルは、二人で一人を生きる永遠の存在――ネバー・ダイ。
 姉さまが死んでも、兄さまの中で。兄さまが死んでも、姉さまの中で。

(そうだ、さっきの放送……この子の姉は、もう……)

 ロックは、放送で死を告げられた少女の名前を思い出す。
 双子は既に、一人きりになっていたのだ。でも、一人じゃない。
 彼らの掲げる理屈では、ヘンゼルもグレーテルも、まだ生きている。

「『あら』? これ、弾が切れている『わ』……予備の、弾薬は、ないの『かしら』?……バッグの、中に、は?」

 ふざけてる。ロックは心底そう思った。
 可哀想だとは思う。できることなら、自分がこの子たちを晴天(ブルー)の世界に戻し、暗黒(ブラック)の世界から脱却させてあげたかった。
 でも……今はそれ以上に。


 最愛の人を殺された悲しみと復讐心の方が、強かった。


 デイパックを漁りながら弾薬を探すヘンゼルの頭上、ロックは、無情な選択を取った。
 消火器を天高く振り上げ、渾身の力で振り下ろそうとしていた。
 ヘンゼルは意識が朦朧としているのか、弾薬を探すことに夢中で、回避行動を取ろうとしない。
 ヘンゼルをお助けできる唯一の存在であったしんのすけもまた、まだ復帰できてはいなかった。

 救いは、なくなった。グチャ。

「――――ッッ!!!」

 振り下ろす、振り上げる。

 喜でも、哀でも、楽でもなく、ロックは完璧なる『怒』の感情に支配されて、ヘンゼルを攻め立てた。

 振り下ろす、振り上げる。

 きっとそれは、ヘンゼルが死んで、最愛の少女の無念が晴れるまで続くのだろう。

 振り下ろす、振り上げる。

 悲しみの連鎖は続こうとも、敵討ちは成立される。今のロックは、それだけで満足だった。

 振り下ろ――――

 ただ、コイツが死にさえすればそれでいい。

 それだけを思って消火器をぶつけていた、そんな時だった。

「…………え?」

 ロックの手は、止まった。

 それは、本当に突然の出来事で。

 そう、突然に、唐突に、突如として、

「………………う…………そ、だ…………」


 千年の恋が、冷めたのだ。


 ◇ ◇ ◇


「……………」
 静謐な病院の屋上――その場には、血だらけになった肉塊同然の少年が一人。

「ヘンゼル! ヘンゼル! 死んじゃダメだゾ!!」
 静謐な病院の屋上――その場には、変わり果てた少年の姿に動揺する五歳児が一人。

「――――――ッ」
 静謐な病院の屋上――その場には、果てしない後悔の念にかられる青年が一人。

 三者三様の悲しみ、葛藤を見せる中、劇は、一時の幕を迎えたのだ。
 その中でも、事の元凶であるロックは――自身が犯してしまった過ちの大きさに、蒼白顔で立ち尽くすのがやっとだった。
 本当だったら、このまま泣き叫び、思い切りヘンゼルの死を嘆いてやりたい。
 でも、それは許されない。彼を死に至らしめた――いや、殺したのは――他でもない、自分なのだから。
 何故、あんなことをしてしまったのか。見知らぬ少女の仇討ちなんてもののために、暴走してしまったのか。

(冷静に考えるんだ。俺はなんで、あんな馬鹿な真似をした。全ては――そうだ、あの女の子の死体を見てからだ。
 あの子を見てから、変に身体が火照って、気持ちが高ぶって……いや、でも今は冷めてる。
 いったいなんだったんだ!? あの一時的な、洗脳じみた感覚は!? 誰が、誰が俺をあんな風にしたんだよ……ッ!!?)

 いくら考えたところで、元凶が少量の惚れ薬だということには気づけない。
 この一連の騒動に、悪者なんて存在はいないのだ。
 狂気に走ったロックにも、罪深い人生を歩んできたヘンゼルにも、惚れ薬を所持していたエルルゥにも、誰にも、非はない。
 全てが、殺し合いという舞台の上で書き綴られた――不幸な茶番劇だったのだ。

「…………ぐふぉっ」

 俯くロックの前に、一筋の光明が見え始めた。

「ヘンゼル! ヘンゼル!?」

 複数回の殴打によるダメージで死に掛けだったヘンゼルが、意識を取り戻したのだ。
 血に塗れてはいるものの、その天使のような美顔は、罪の意識に苛まれていたロックの心を救う。
 ひょっとしたら、まだ助かるかもしれない。そう思ってロックは一歩踏み出すが、

「近寄るなぁーーーーーーーー!!」

「ッ!」
 その足を、五歳児の強烈な罵声が止めた。

「お兄さんなんかキライだぁーーー!! あっちいっちゃえーーーーー!!!」

 顔は向けず、ヘンゼルの傍から、後ろで立ち尽くすロックを怒鳴り散らす。
 しんのすけの真っ直ぐすぎる拒絶は、今のロックにとってドテッ腹に風穴を空けられるようなものだった。
 魔性の薬物が関与したとはいえ、事を犯したのはロックだ。それを否定する術はない。
 いや……否定はできた。だが、できなかった。ロックは、そこまで落魄れた悪党ではないから。

「………………~ッッ!」

 死にそうになっている少年を目の前にして、そしてそれをやったのが他でもない自分だということを自覚して、何も思わないでいられるはずがない。
 ただでさえ、ロックはかつて双子のもう片方の死に目に遭遇している。何の因果か、ロックは不幸な殺人姉兄、その両方を看取るハメになったのだ。
 それが、彼にとってどれだけ苦痛なことか。ただ悲しむだけのしんのすけには、知る由もない。

「頑張るんだゾ、ヘンゼル! こんなところで死んじゃ、絶対にダメだゾ!!」

 今にも事切れそうなヘンゼルの真横で、しんのすけは懸命に喋りかける。
 しんのすけの言葉にどれだけの意味があるか、そんなことは、利口な大人が考えればすぐに分かる。
 これが病で伏せっているだけならまだしも、傷は、ましてや致命傷は、思いやりだけではどうにもできない。
 ヘンゼルの負った傷は、もはや気力などでは克服できない領域まで広がっていたのだ。

「…………うふ。ふふふ」
「? ヘンゼル?」

 別れが近づくその僅かな時間、ヘンゼルは、笑った。
 子供らしい無邪気な笑い声に、しんのすけは戸惑いを見せる。

「しんのすけくん、おかしいや。何言ってるの? 僕は死なないよ。死なないんだ」

 既に生気を失くした瞳は、死人のそれだった。声はこんなにも無邪気なのに、顔はもう死んでいるかのようだった。
 死ぬ寸前の姿。しんのすけはその表情の真意が理解できず、ただ、ヘンゼルの顔を見つめていた。

「こんなにも人を殺してきたんだ。いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱい殺してきてる。
 僕らは、それだけ生きることができるのよ。命を、命を増やせるの。
 私たちは永遠さ(ネバー・ダイ)。そう、永遠(ネバー・ダイ)なのよ」

「……なに言ってるのか、全然わかんないゾ。ねぇヘンゼル、もっとやさしく説明してよ……」

 しんのすけの頬を、涙がつたい落ちる。
 ゆっくり、ゆっくり、一滴ずつ。
 本心では、この少年の運命を受け入れ始めたのかもしれない。

「……………………んッ…………」

 ヘンゼルが掲げる宗教は、しんのすけには理解し難いものだった。
 永遠に生きる者なし(ノーワン・リブス・フォーエバー)とは、誰が言った言葉だったか。
 教えることなんてできない。学ぶこともできない。
 純粋すぎる五歳児に、死という概念はあまりにも大きく、あまりにも重すぎる。

「…………くッ、うッ。うッ。う………………うえっ。えっ。うええっ……」

 やがてヘンゼルは、いたいけな天使の笑顔を苦痛に歪めて、死人の顔へと表情を作り直していった。
 涙が出るのは当然で、歯を噛み締めてしまうのも当然で、痛くて泣いてしまうのも当然のことだった。

「泣くなよ…………馬鹿」

 小さく、ロックが呟く。
 何もできない、何もする資格がない彼はただ傍観者として、その場にいることにした。
 謝罪するにしても、罪の意識に押し潰されて自滅するにしても、精神を崩壊させるにしても、今はその時じゃない。
 ただ、黙ってヘンゼルの死に立ち会う。それがロックに与えられた、逃れようのない贖罪。
 ラッキーストライクでもアメリカン・スピリットでも、なんでもいい。煙草が吸いたい気分だった。

「うっく。けふっ。うっ」

 悶える仕草、喘ぐ感覚が徐々に小さくなり、ヘンゼルは、

「うえっ……ごほっ…………う。………………
 ………………………………………………………………
 ………………………………………………………………
 ………………………………………………………………」


 静かに、天へ召されていった。


「                               」

 サァ――――っと気持ちの良い風が屋上を吹き抜けて、血の香りをどこかへ攫っていく。
 取り残された悲しみも攫ってくれれば、どれだけ気持ちが楽になれたことか。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんん」


 しんのすけは泣いた。
 泣いて泣いて泣きじゃくって、涙が枯れ果てるまで泣くつもりだった。
 でも、いつまでたっても悲しみは収まらない。
 世の理はどこまでも不条理に、幼い子供を攻め立てる。
 何が悪くて、何が正しいのかなんて、関係ない。
 これが、世界なんだ。


 ◇ ◇ ◇


『ねぇ、姉さま。どうして神様は、ぼくたちにこんなにも辛くあたるんだろう?』

『それはね、兄さま。ほら、他の子が私たちの前に連れてこられて、泣いてるその子をバットで繰り返し叩いた時があったじゃない』

『ああ、あの時のことだね。みんな笑ってた。僕も姉さまも。笑いながら思った。「これは仕組みなんだ」って』

『そう、その時兄さまはこう言ったわ。「神様は仕組みを作ったんだ」って。
 自転車のタイヤが回るように世界を動かす力……それは、誰かの命を奪うことなのよ』

『そのためにこの世が作られたなら、ぼくたちがここにいる理由もそれだけなんだ。
 殺して殺されまた殺す。そうやって世界は円環(リング)を紡ぐんだね』

『どちらかが死んでも、私はちゃんとここにいる。いつだって、兄さまと一緒にいるの』

『どちらかが死んでも、僕はちゃんとここにいる。いつだって、姉さまと一緒にいるんだ』

『『だって「僕私」たちは永遠に死なない(ネバー・ダイ)。ずっと続く円環(リング)にいるんだもの』』


 ◇ ◇ ◇


  ――だから、ね。お兄さん。もう私たち、殺すのだって悲しくないわ。
    血の臭いも、悲鳴も、臓物の温かさも――今は大好きでいられるの!――


「真夜中……星と君と…………共に………………真夜中…………そして、っと…………逢瀬、を
 ……君の目は、優しく物語る………………『私の愛、すべては貴方に……捧げるわ』と…………
 真夜中は、私たちに……与える、甘美な…………ロマン、ス……? クソッ、続きが…………出てこねぇよ……」


 結局、双子たちに救いはあったのだろうか。
 彼ら二人の幸せを最も祈った男は、得体の知れぬ感情に走り、最低の結果を作り出してしまった。
 こんなことを思うこと自体、彼らに鎮魂歌を送ること自体、間違っているのかもしれない。
 罪の意識からは逃げない。絶対に。
 だから、せめて――――――



     ――――罪深い双子に、優しい手を差し伸べて――――




【D-3・病院屋上/1日目/朝】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:疲労。特に精神的疲労大。激しい後悔。
[装備]:マイクロ補聴器@ドラえもん、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:支給品三人分(他武器以外のアイテム2品)、ルイズの杖@ゼロの使い魔
     どんな病気にも効く薬@ドラえもん、現金数千円
[思考・状況]1:今は何も考えたくない。
[備考]※惚れ薬の効果は切れましたが、その間の記憶はすべて鮮明に覚えています。

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にたんこぶ。腹部に軽傷。精神的ショック大。深い悲しみ。
[装備]:ニューナンブ(残弾4)
[道具]:支給品一式 、空のプラボトル×2
[思考・状況]1:泣いている。
      2:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する。
      3:ゲームから脱出して春日部に帰る。
[備考]※第一回放送を聞き逃したため、死亡者、禁止エリアについての情報を持っていません。

【ヘンゼル@BLACK LAGOON 死亡】
[残り58人]

※ヘンゼルの死体、支給品一式は、すべて屋上に放置。
※八神はやての遺体は、X線室前のベンチに置いてあります。


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95:Is he a knight? ロック 135:行くんだよ
85:「無事でよかった」 野原しんのすけ 135:行くんだよ
85:「無事でよかった」 ヘンゼル

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