頂きのハイペリオン

頂きのハイペリオン/いただきのはいぺりおん

アルフヘイムに存在する霊峰のひとつにしてダンジョン
フェルゼン公国を縦断する峻険な山脈の中で最も高く、巨大で、険しい。
標高は海抜8800メートルと地球のエベレストにも迫る。

公国首府の樹冠都市ブラウヴァルトを麓に擁する霊山で、
大陸の西から吹き付ける強烈な季節風や、運ばれてくる豪雪・雷雨から首府を護ってきた。
嵐を山肌に受け止め、水の恵みだけを山頂から湧水という形で麓へもたらす。
その巌かなれども都市に寄り添う威容から、当地では山岳信仰が深く根付いている。

ブラウヴァルトにおいて、世にあまねく全ての命は山に生まれ山に育まれるものとされる。
このため霊峰は崇拝対象であると共に、親慕の情を向ける先でもある。
故に、ブラウヴァルトに住まう者は、誰でも必ず山への愛と祈りを欠かすことなく生きる。

また、都市の住民は成人(当地では15歳)を迎えると、通過儀礼として霊峰を登る。
中腹までたどり着き、年中を通して生い茂る精霊樹の表皮に名を刻み、葉を一枚取って戻る。

この葉は枝から離れた後も萎れず、腐らず、形を保ち続け、ブラウヴァルトの市民権を示す証となる。
加えて、葉を持つ者は霊峰の加護を受け、風雪に耐える山肌のような外傷・病への抵抗力を得る。
この加護は、霊峰に恥じる行いをしない限り、絶えることなくもたらされる。

聖都エーデルグーテの神学者に言わせると、これは霊峰を対象に蓄積された「信仰の再分配」にあたるもの。
都市の住民が捧げた祈りは魔法に似た力となり、霊峰の葉を通じて市民へと還元される。
身も蓋もない表現をしてしまえば税金を支払って行政サービスを受けるようなものであるが、
ようは拾号高速祈祷炉におけるヒモロギ教の祈りを、より自然に即した形で実現しているのである。

また、中腹に生える木々はブラウヴァルト開闢の時代から全ての市民の名を刻んでいるので、
紙の帳簿よりよほど長持ちする市民名簿として時折首府の役人が参照しに来たりする。
公国はエルフを始め長命な種族が多く、往々にして寿命より羊皮紙の耐用年数の方が短いためである。

さらに、成形クリスタルをはじめ魔力資源に乏しい同国であるが、
霊峰の山肌には地脈の小規模な結節点がいくつかあり、マナシャードがある程度まとまって採掘できる。
採掘ポイントは中腹周辺に集まっており、首府から許可を得た採掘団が滞在している。

通過儀礼や諸々の用事で多くの市民が訪れる中腹は、長い年月をかけて整備されてきたことから、
大した強さの魔物も出ず比較的簡単に行き来することが出来る。
都市の外からやってきた者が市民権を得るために中腹登山を行ってもさして危険はない。

ただし、これが「中腹以降」となるとまったくの別世界と化す。
標高が2000メートルを超えたあたりから中腹までとは比較にならない凶悪な環境となり、
優しき御山は峻険な霊峰の姿を取り戻し、半端な覚悟で登頂を試みる者を容赦なく地獄へ叩き落す。

山道は分厚い万年雪に覆われ、至るところに切り立った崖が存在する。
崖は雪庇で覆い隠され、不用意に踏もうものならクレバスの底まで真っ逆様。当然助かるはずもない。
さらに天候は高頻度で移り変わり、猛吹雪になれば一寸先の視界すらおぼつかない。

そして、登山者に襲い掛かるのは過酷な環境だけではない。
フェルゼンの山岳を住処とするワイバーンや巨狼、凶悪な魔物が群れをなして押し寄せる。
また山奥には公国に恭順していない部族や「はぐれ」の精霊の類も存在し、それらの対処にも迫られる。
特にはぐれのノームは縄張り意識が強く、地形を操る能力を持つため何人もの旅人を谷底に落としてきた。

そんな『天空の地獄』とでも言うべき頂のハイペリオンであるが、
フェルゼン公国の精鋭部隊、群青の騎士への昇格は登頂が条件となっている。
地獄の登頂をそれこそ通過儀礼としてこなせなければ、人類の肉体の到達点は名乗れないのだろう。

群青の騎士候補生たちは、「薄暮の剣」と呼ばれる短剣一振りを支給され、
あとは着の身着のままで鎧すら身に着けず山頂を目指す。

体温を維持するために樹皮や枝葉で即席の防寒具を作り、獣を狩って焚火で調理し、
崖を登攀するためのロープすらツタや樹皮を撚り合わせて自作し、襲い来る飛竜や魔物を撃退。
これら全てを、たった一振りの短剣だけを用いてやりおおせるのである。

想像を絶する過酷な苦行に耐えられず、志半ばに山の中で朽ち果てる者も多い。
そうした者たちへの最期の慈悲として、薄暮の剣は自害の為の剣でもある。

生と死の境界を彷徨いながら、霊峰に住まう全ての命と対峙を重ね、
三週間ほどをかけて山頂へ辿り着く頃、候補生は比類なき強者、「群青の騎士」へと成長を遂げる。
アルフヘイムで最も高い場所から見下ろす世界は、この世のどんな絶景や名画よりも美しいという。

登頂を証明するものは何もなく、通過儀礼と違って得られる加護などもないが、
下山してきた群青の騎士の試練踏破を疑う者は誰も居ない。
その肉体と、世界の全てを俯瞰した双眸には、絶対の説得力が宿っている

群青の騎士は剣術、槍術、戦槌戦斧や弓に至るまであらゆる武器術に秀でているが、
その中でも最後に頼みを置くのは、霊峰で生死を共にした短剣術だとされる。

正式な昇格後も薄暮の剣は常に携帯し、騎士が死した時には亡骸の代わりに持ち帰られる。
そして、騎士の魂が霊峰へ『還る』ための道しるべとなるよう、山中に突き立てるのである。
中腹以降の山肌には、有史以来の歴代群青の騎士達の墓標として、夥しい数の薄暮の剣が突き立てられている。

これは完全に余談だが、こうした性質から薄暮の剣には群青の騎士の残留思念が残りやすく、
騎士の記憶や力を宿した古代遺物と化すことがある。
高値で売れるため霊峰に残置された剣を狙うならず者が少なからず存在するが、その末路は語るまでもないだろう。

ゲーム上では、3回に分けて訪れるダンジョンとして実装されている。
1回目は、ストーリーの舞台がアルメリア王国の外へ移った段階。
フェルゼン公国で活動するためにブラウヴァルトの市民権を得るべく中腹まで登る。

2回目はクリアに必須ではないが、『詩学の』マリスエリス関連のイベントで訪れることになる。
消滅してしまったマリスエリスのせめてもの形見として、狼咆琴を霊峰に還すため中腹以降に挑む。
詳細はサブイベント「最期の咆哮」を参照されたい。

3回目、これもクリアには必須ではないサブイベントの類であるが、
フェルゼン公国に所属したプレイヤーが群青の騎士になるために登頂を目指す。
終盤で解禁されるイベントだけあって、設定通りにこれまでとはケタ違いの過酷な道程となる。

支給された薄暮の剣以外にアイテムの持ち込みは許されず、あらゆる装備を山中で調達しなければならない。
ただでさえ凶悪なモンスターがうろつくなか、それらを短剣一本で倒さなければならない。
本作においても屈指の高難易度クエストであり、踏破率は1000万プレイヤーのわずか2割にも満たない。

とはいえ苦労に見合うだけの報酬が約束されることも確かで、
入手できる『群青の騎士』の称号は公国のあらゆるロケーションやクエストが一括で解禁される。
聖剣ランゲンフェルト天鎧フェアデフェルデといった国宝級の神代遺物について、
気の遠くなるような量の前提クエストを一切合切スキップできるのが最大のメリットであろう。
群青の騎士でなければ習得できない強力なスキルも存在する。

そして何よりも、アバター用コスチューム『群青の騎士セット』が入手できる。
透き通るような光沢をもった群青色の鎧はそのデザインやモデルの出来の良さから凄まじい人気を誇り、
これを着て街を歩くだけで他のプレイヤーからガン見される快感を味わうことができる。
スクショ撮りにワラワラ集まってくる連中の相手もそこそこに、思うがままリバティウムあたりを闊歩してやろう。

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最終更新:2022年02月22日 19:01