「卿を、満足させられたかね?」
「…何の話?」
「…何の話?」
口の端を釣りあげて、松永は嗤った。
静かな笑いだった。
静かな笑いだった。
「魔王と呼ばれるほどだ。さぞ、卿の肉欲を満たしたことだろう…それとも、魔王の方が溺れたかね?」
「おだまりなさい!」
「卿には…情をあげよう」
「何を…っ」
「おだまりなさい!」
「卿には…情をあげよう」
「何を…っ」
ぱさり、濃姫の前に朱色の袱紗が投げ出される。
絹の袱紗は仕立てはいいが、いかんせん古ぼけているように見えた。
だが、濃姫はその袱紗の中央、かすれた紅に引き付けられた。
絹の袱紗は仕立てはいいが、いかんせん古ぼけているように見えた。
だが、濃姫はその袱紗の中央、かすれた紅に引き付けられた。
「体がうずくのではないかね?卿が眠っている間に飲ませた水、いつぞやあげた飴玉と同じもの
…あの時のように可愛らしい反応では済まないだろう」
…あの時のように可愛らしい反応では済まないだろう」
飴玉
琥珀色の
琥珀色の
一回、二回、釜を柄杓がかき混ぜて、一滴の滴をぽとりと落とす。
美しい茶器に注ぎこみ、完璧な角度で釜に戻した。
美しい茶器に注ぎこみ、完璧な角度で釜に戻した。
茶室の、薄暗い明り
上品な、空焚きの香
体の内にこもった熱が、じりじりと濃姫を追い詰める。
上品な、空焚きの香
体の内にこもった熱が、じりじりと濃姫を追い詰める。
「…誰が卿に肉の悦楽を教えたか、思い出せたかね?」
ようよう手に入れた、いや、取り戻したよ、蝮の姫君。