戦国BASARA/エロパロ保管庫

ほのぼのエロ無2

最終更新:

7743

- view
メンバー限定 登録/ログイン
「似合いっこないよ、俺が付けたら笑われちまう」

そう言いながら簪を摘まみ、撫でては空に浮かせてその揺らぎを眺める手付きは
優しい。

「慶次」
「ん?」

草履を編む手を止めて、秀吉が肩を返す。寄り掛かっていた広い背中が動くので
仕方無しと腰を起して矢張り振り返った慶次の髪へ大きな掌を伸ばす。

「な、なに」

近い距離で髪に触れられどぎまぎと視線を揺らす慶次の手から簪を抜き取ると、
秀吉はその太い指に似合わぬ器用さでくるりと尾を垂らした髪を巻き取り、簪で
綺麗に止めて見せた。首から下は殆ど男装の其れだから、少し風変りな軽い髪の
結い方も浮く事なく簪の可愛らしさを溶け込ませる。

「うむ、似合うな。可愛いぞ」

勝手に髪を弄られて暫しぽかんと抜けた面を晒していた慶次は、褒められて漸く
我に返り、照れ臭さの勢いで思わず秀吉の胸を軽く突き飛ばした。本気でもなければ
体格差もあって、秀吉は背を少しばかり逸らしただけにすぎなかったが。

「ねねの方が可愛いんだろ、お前は!」
「ははは」
「おまっ、笑ってごまかすな!」

秀吉にとって、ねねも慶次も比べるものではなかった。どちらも等しく大事で
等しく愛おしい。思いの意味に違いがあるとしても、上下は無い。
自分が胸を叩いても笑うばかりの秀吉に半ば八つ当たりめいた力の強さも伴って
慶次は秀吉の体の向きを戻させる。存外大人しく先程手にしていた藁の束に向き
直る秀吉の背中に、今度は覆いかぶさる様にして肩越しに手元を覗く。

「ほら、さっさと終わらせちまえよ、ねねが待ってるぞ」
「お前が天気が良いからと、無理矢理外に連れて来たんだろう。我はわざわざ
藁束を担がされて来たんだ」
「だってあのまま家に居たら俺ねねの着せ替え人形になっちまってたよ」
「なればいいではないか」
「人事だと思って!」

神社の境内を明るく照らす日差しは心地良く、気の置けぬ友との会話は早くも
遅くもない、心地良い速度で交わされる。

「……秀吉」
「なんだ?」
「…………ねねの事、泣かしたらぶん殴るかんな」

ねねと秀吉を引き合わせたのも、慶次だ。
ねねは慶次の親友で、秀吉もまた、慶次の親友で。

肩に目元を押し付ける様にして顔を俯けたまま、ぼそぼそと喋る友の言葉に、
秀吉はゆっくり頷いた。

「ああ」
「……ん」

柔らかい日向に相応しい、優しい遣り取り。
こういう時間が、いつまでも、続けばいい。

秀吉は最後の結び目を絞りながら、静かに微笑んだ。




 ***

「時に慶次」
「なんだい」
「……胸が当たっているんだが」
「……秀吉の助平」
「いや、だから言ったんだろう」


―了―
ウィキ募集バナー