戦国BASARA/エロパロ保管庫

天女の羽衣2

最終更新:

bsr_e

- view
メンバー限定 登録/ログイン
あれから半刻後、元親の手で綺麗に化粧まで施された元就は、鏡に映った見慣れない己の姿に戸惑いつつ、後ろを振り返った。
「のう、元親」
さばきにくい裾を持ち上げ、肘まで覆う手袋をしたまま困惑した表情で彼を見上げる。
「これは何の衣装ぞ」
ぐい、と頭を覆う布を引っ張って剥がそうとするが、元親の手がそれを止めた。
「南蛮の花嫁衣裳なんだぜ、これ」
入手するのに苦労した甲斐もあったってもんだな、と満足げに頷く彼の言葉を反芻する。
「花嫁……ば、馬鹿者、我にはこのようなもの不要ぞ」
「あ、おい、暴れるなって」
無理に釦を引きちぎろうとするのを抑えると、元親は小柄な体をぎゅうっと抱きしめた。
「……揶揄うつもりならば即刻去れ」
我にこのような仮装をさせて何が楽しいのだ、と苛立った口調で答える元就を見下ろし、はぁ、と深い溜め息をつく。
「元就、左手を出してみろよ」
手を差し出して彼女を促すが、疑り深い眼差しでそれを一瞥すると、元就はぷい、と目を背ける。
「そのような事、何の意味が……」
「いいから、ほら」
渋る元就の細い手首を捉えると、それを覆っていた手袋をしゅるりと抜き、どこからともなく取り出した小さな金属の環をその薬指へとはめる。
「これは……何の呪いぞ」
日輪にかざせばきらりと光を放つ銀色の環を不思議そうに何度も眺める元就の短い髪を撫でるように、元親はぽすんと手を置く。
「俺がアンタを一生かけて幸せにしますっていう呪い」
「何、だと」
呆気に取られて返す言葉も見付からない元就の痩躯を抱え上げると、元親は庭へと降り立ち、空を見上げた。
「あの日輪サマに誓ってもいい、それならどうだ」
優しく微笑みかけてくる元親の端整な顔を見て、ほんの少しだけ元就の表情が和らいだ。
「……つくづく貴様は物好きな男よ」
「何とでも言え、俺は惚れた女に尽くす主義なんだよ」
「しかし話が急過ぎる」
我にも考える時間を与えてくれぬのか、と苦笑する声に、元親の隻眼は鋭く細められた。
「中央の動きが騒がしいからな」
そして、この機会を逃したら、いつ元就に会えるか分からねえ、と低く呟く。
黙って彼の告白を聞きながら、元就は掴んでいたその襟元を締め上げる。
「では、近く戦いを起こすというのも真か」
天下に興味などない、とは言っても、自国を守る為には様々な情報が必要だ。
互いに口に出さないが、両国の間でも間者を放って動向を探り合っていることなど知っている。
「ああ、そうだ、向こうがその気なんだから盛大にお出迎えしてやらねえとなぁ」
「たわけが」
ぺしん、と元親の鼻を弾くと、小さな掌でその顔を包む。
「おい、元就」
ひどい扱いだ、と文句を言いかけた彼の唇を塞ぐように口付ける。
数瞬おいて唇を離すと、琥珀の瞳でじっと瑠璃紺の隻眼を見詰めた。
「貴様は必ず生きて戻り、再び我の前で誓え……それ以外は許さぬ、良いか」
有無を言わさぬ口調ながら、その声は穏やかである。
「……ああ、わかった、きっと帰ってくるから待っていろよ」
それは彼女なりの心遣いなのだと思うと、元親の頬は自然と緩んでくるのであった。

(了)
ウィキ募集バナー