一番鶏の鳴く声に、政宗は目を醒ます。
隣で寝ている元親を起こさぬよう布団から出ると、未だ閉じそうになる目を擦りながら、着替えを手に取った。
昨夜は、「どうしても一緒に寝たい」と、元親を自室に引き込んで、夜中までずっと喋り続けていたのだ。
普段では決して出来ない話題や、互いの持つ南蛮渡来の化粧や装飾の品定めや交換をしながら、政宗は本当に楽しいひと時を過ごしたのだ。
隣で寝ている元親を起こさぬよう布団から出ると、未だ閉じそうになる目を擦りながら、着替えを手に取った。
昨夜は、「どうしても一緒に寝たい」と、元親を自室に引き込んで、夜中までずっと喋り続けていたのだ。
普段では決して出来ない話題や、互いの持つ南蛮渡来の化粧や装飾の品定めや交換をしながら、政宗は本当に楽しいひと時を過ごしたのだ。
──長旅の疲れで、眠そうにしていた元親には、少々申し訳なかったが。
昨日、『竜の右目』という名の小姑を引き離してくれた礼にと、元親に与えた舶来の下着は、現在僅かな面積ではあるが、彼女の豊満な肢体を包んでいる。
布団をかけ直そうとしたが、昨夜元親が、何度も暑がって肌がけを蹴飛ばしていたのを思い出すと、政宗はそのまま放っておく事にした。
やがて、着替えを済ませた政宗は、未だ安らかな寝息を立てている元親を残して、静かに部屋を抜け出すと、厨房へ向かった。
布団をかけ直そうとしたが、昨夜元親が、何度も暑がって肌がけを蹴飛ばしていたのを思い出すと、政宗はそのまま放っておく事にした。
やがて、着替えを済ませた政宗は、未だ安らかな寝息を立てている元親を残して、静かに部屋を抜け出すと、厨房へ向かった。
君主自ら、というのは非常に珍しい事なのだが、料理を趣味とする政宗は、自作の品を客や、時には家来などに振舞ったりする。
だが、今日の相手はそのどちらでもなかった。
厨房にある小さな釜で飯を炊くと、夏ゆえの悪し(腐敗)を予防する為に、出来るだけ具財の水気を飛ばすようにして調理する。
「急がなきゃ。ボヤボヤしてたら、小十郎が畑から戻って来ちまう…」
自ら漬けた梅干を握り飯の中に詰めると、政宗は竹の皮にそれを包み、別の容器に入れたおかずと一緒にカゴに押し込んだ。
「…よし」
食べ物の入ったカゴを抱きかかえる様に表へ出た政宗は、見張りの目を掻い潜りながら馬房に辿り着くと、繋いでいた愛馬に跨り、極力音を立てずに走り始めた。
だが、今日の相手はそのどちらでもなかった。
厨房にある小さな釜で飯を炊くと、夏ゆえの悪し(腐敗)を予防する為に、出来るだけ具財の水気を飛ばすようにして調理する。
「急がなきゃ。ボヤボヤしてたら、小十郎が畑から戻って来ちまう…」
自ら漬けた梅干を握り飯の中に詰めると、政宗は竹の皮にそれを包み、別の容器に入れたおかずと一緒にカゴに押し込んだ。
「…よし」
食べ物の入ったカゴを抱きかかえる様に表へ出た政宗は、見張りの目を掻い潜りながら馬房に辿り着くと、繋いでいた愛馬に跨り、極力音を立てずに走り始めた。
幸村が去った後、密かに彼の足取りを黒脛巾(伊達の隠密)に探らせていた政宗は、彼らに教えられた幸村の滞在先へと辿り着いた。
粗末、とまではいかぬが質素極まりない設えに、政宗は、半ば目を丸くさせながら宿の敷地に入ると馬から下りる。
「おい」
声を掛けられた宿の使用人は、政宗の姿を認めると、驚愕の声を上げる。
「大声出すんじゃねぇぞ。この宿に、甲斐から来た男が泊まってるだろ?」
幸村の特徴を話しながら尋ねる政宗に、使用人は恐縮しながら頷く。
「どうせ、てめぇらの事だ。余所者のアイツにロクなメシ食わせてねぇんだろ」
「い、いいえ。決してそのような……」
「黙ってろ。いいからコレを、今日の朝メシにアイツに渡しとけ」
「は…?」
まるで引き摺られるようにして、物陰に連れ込まれた使用人は、目の前に差し出されたカゴと、仄かに頬を染めた政宗を交互に見やる。
「いいから、言うとおりにしろや。くれぐれも、俺の名前は出すんじゃねぇぞ。適当に差し入れだ、とでもしとけ」
「は、はあ…」
「言っとくが、今この宿の周囲は、伊達の人間が常に見張っているからな。アイツに粗相しようモンなら、ただじゃおかねぇぞ、コラ」
「わ、わ、わ、判りましたああぁ!ですから、どうか命だけはお助けをー!」
「Fu○k!だから、大声出すなっつってんじゃねーかよ!」
「そこに、どなたかおられるのですか?」
(──幸村!?)
思わぬ声を耳にした政宗は、まるで不整脈を起こしたかのように心音をバクバクさせる。
「な、何でアイツ…未だ寝てると思ってたのに……」
「あ…あのお客さん、毎朝早起きで、宿の周囲を散歩してるんですよ」
「──それを先に言えよ、バカヤロウ!」
粗末、とまではいかぬが質素極まりない設えに、政宗は、半ば目を丸くさせながら宿の敷地に入ると馬から下りる。
「おい」
声を掛けられた宿の使用人は、政宗の姿を認めると、驚愕の声を上げる。
「大声出すんじゃねぇぞ。この宿に、甲斐から来た男が泊まってるだろ?」
幸村の特徴を話しながら尋ねる政宗に、使用人は恐縮しながら頷く。
「どうせ、てめぇらの事だ。余所者のアイツにロクなメシ食わせてねぇんだろ」
「い、いいえ。決してそのような……」
「黙ってろ。いいからコレを、今日の朝メシにアイツに渡しとけ」
「は…?」
まるで引き摺られるようにして、物陰に連れ込まれた使用人は、目の前に差し出されたカゴと、仄かに頬を染めた政宗を交互に見やる。
「いいから、言うとおりにしろや。くれぐれも、俺の名前は出すんじゃねぇぞ。適当に差し入れだ、とでもしとけ」
「は、はあ…」
「言っとくが、今この宿の周囲は、伊達の人間が常に見張っているからな。アイツに粗相しようモンなら、ただじゃおかねぇぞ、コラ」
「わ、わ、わ、判りましたああぁ!ですから、どうか命だけはお助けをー!」
「Fu○k!だから、大声出すなっつってんじゃねーかよ!」
「そこに、どなたかおられるのですか?」
(──幸村!?)
思わぬ声を耳にした政宗は、まるで不整脈を起こしたかのように心音をバクバクさせる。
「な、何でアイツ…未だ寝てると思ってたのに……」
「あ…あのお客さん、毎朝早起きで、宿の周囲を散歩してるんですよ」
「──それを先に言えよ、バカヤロウ!」
近付いてくる足音に、政宗は使用人にカゴを押し付けると、逃げるように走り去る。
どうにか、幸村に姿を見られず宿の外へ飛び出す事に成功した政宗は、馬を急がせながら、様々な想いに胸をざわめかせていた。
あの使用人は、ちゃんと幸村に渡してくれるのか。
幸村は、ちゃんと食べてくれるのか。
そして何よりも。
どうにか、幸村に姿を見られず宿の外へ飛び出す事に成功した政宗は、馬を急がせながら、様々な想いに胸をざわめかせていた。
あの使用人は、ちゃんと幸村に渡してくれるのか。
幸村は、ちゃんと食べてくれるのか。
そして何よりも。
(ホントはちゃんと、面と向かって渡したいのに……何でそんな簡単な事が出来ないんだよ、俺……)
こみ上げてきそうな涙をぐっと堪えながら、政宗は、小十郎に見つかる前に戻らなければならぬ事を思い出すと、懸命に馬を走らせた。
その後。間一髪で自室への帰還を果たした政宗は、自分が外に出るまでは肌蹴られていた筈の布団を、何故かすっぽりとかぶりながら、しきりに「暑い」とうなされている元親の姿を見る事になる。
その後。間一髪で自室への帰還を果たした政宗は、自分が外に出るまでは肌蹴られていた筈の布団を、何故かすっぽりとかぶりながら、しきりに「暑い」とうなされている元親の姿を見る事になる。




