「近々奥州に行くという話は、まことか」
「そんな事まで、いちいちアンタに話さなきゃいけないのかよ」
「そんな事まで、いちいちアンタに話さなきゃいけないのかよ」
四国を経つ数日前。
不意に自分の元を訪れた彼は、開口一番、元親にまるで詰問するかのように尋ねてきたのである。
「貴様は、我のものだ。行くな、とまでは言わぬが、我を差し置いて勝手な真似は慎んで貰おうか」
「名目上、だけだろ。アンタの欲しがってる新兵器の図面や製作過程なんかは、すべて
留守番の家臣に持たせてあるから、好きなだけ目を通してくれ」
後は、周囲の人間に怪しまれぬよう、せいぜい彼の前で、それらしい素振りを見せれば良いだけだ。
──他に何を望む。
鬼の大女を手篭めにした事実と、四国の兵器やその技術を手に入れた以上、アンタはそれで充分じゃないか。
彼を無視しながら支度を続ける元親の背後に、人影が迫る。
振り返った時には、既に元親の身体は、彼によって押し倒されていた。
「ぁ…」
襟元から胸へと滑り込んできた彼の手に、元親は『あの時』の恐怖が蘇り、ガタガタと身を震わせる。
咄嗟に拳を握り締めると、元親はギュッと目をつぶった。
それだけが、彼に対して出来る唯一の抵抗だからだ。
不意に自分の元を訪れた彼は、開口一番、元親にまるで詰問するかのように尋ねてきたのである。
「貴様は、我のものだ。行くな、とまでは言わぬが、我を差し置いて勝手な真似は慎んで貰おうか」
「名目上、だけだろ。アンタの欲しがってる新兵器の図面や製作過程なんかは、すべて
留守番の家臣に持たせてあるから、好きなだけ目を通してくれ」
後は、周囲の人間に怪しまれぬよう、せいぜい彼の前で、それらしい素振りを見せれば良いだけだ。
──他に何を望む。
鬼の大女を手篭めにした事実と、四国の兵器やその技術を手に入れた以上、アンタはそれで充分じゃないか。
彼を無視しながら支度を続ける元親の背後に、人影が迫る。
振り返った時には、既に元親の身体は、彼によって押し倒されていた。
「ぁ…」
襟元から胸へと滑り込んできた彼の手に、元親は『あの時』の恐怖が蘇り、ガタガタと身を震わせる。
咄嗟に拳を握り締めると、元親はギュッと目をつぶった。
それだけが、彼に対して出来る唯一の抵抗だからだ。
「……強情なヤツめ」
(強情なのは、どっちだ)
(強情なのは、どっちだ)
何の反応も返さない、木偶(でく)のような自分を、それでも飽きずに(あるいは意地なのか)抱き続ける彼に、元親は心の中で毒突く。
あの時。泣きながら何度も許しを請う自分を無視して貪り続けたクセに、以来彼は、元親をまるで壊れ物を扱うように抱くのである。
身体に必要以上の負担がかからぬ事は有難いが、逆に元親の心はささくれ立っていた。
あの時。泣きながら何度も許しを請う自分を無視して貪り続けたクセに、以来彼は、元親をまるで壊れ物を扱うように抱くのである。
身体に必要以上の負担がかからぬ事は有難いが、逆に元親の心はささくれ立っていた。
やめてくれ。そんな風に俺を抱くのは。
でなければ、俺は勘違いをしてしまう。
でなければ、俺は勘違いをしてしまう。
幾度かの挿入と摩擦運動の末、荒い息遣いと共に、元親の腹に熱い粘液がかけられた。
終わったのだ、と元親は深呼吸をひとつすると、倦怠感と共に襲ってくる睡魔に身を委ねようとする。
だが、直後彼女の耳を擽ってきた声に、元親の意識は現実に引き戻された。
終わったのだ、と元親は深呼吸をひとつすると、倦怠感と共に襲ってくる睡魔に身を委ねようとする。
だが、直後彼女の耳を擽ってきた声に、元親の意識は現実に引き戻された。
「…元親……」
それは、いつもの彼からは想像もつかない、切なく、か細い声だった。
眠っていると思っているのか、彼は元親の耳元に唇を寄せると、彼女の銀髪を何度も撫で上げてくる。
眠っていると思っているのか、彼は元親の耳元に唇を寄せると、彼女の銀髪を何度も撫で上げてくる。
なんで、そんな声で俺を呼ぶんだ?(どうして、そんな弱々しく私を呼ぶの?)
やめてくれ。(やめて。)
頼むから…(お願いだから…)
もうこれ以上、変な期待をさせないで……!
やめてくれ。(やめて。)
頼むから…(お願いだから…)
もうこれ以上、変な期待をさせないで……!
零れた自分の涙を拭う仕草すら優しくて、元親は心中で理不尽な感情を吐き続けていた。
「……い。おい!」
「はっ!?」
低い男の声に、元親は我に返る。
「お前が、畑を見たいっていうから、連れて来たんだろうが。眠いんなら、とっとと部屋に帰れ」
「ああ…ゴメン、大丈夫だから。コレ、それぞれのカゴに分ければいいんだろ?」
小十郎にそう返すと、元親は作業を再開する。
はじめは政宗の事もあったが、純粋に野菜の事に興味が深まった元親は、小十郎に頼んで、滞在中彼の手伝いをする事にしたのだ。
はじめは渋っていた小十郎も、元親が嬉々として作業に勤しんでいる姿を見ている内に、いつの間にか彼女に対する猜疑心が、薄れていったのである。
「はっ!?」
低い男の声に、元親は我に返る。
「お前が、畑を見たいっていうから、連れて来たんだろうが。眠いんなら、とっとと部屋に帰れ」
「ああ…ゴメン、大丈夫だから。コレ、それぞれのカゴに分ければいいんだろ?」
小十郎にそう返すと、元親は作業を再開する。
はじめは政宗の事もあったが、純粋に野菜の事に興味が深まった元親は、小十郎に頼んで、滞在中彼の手伝いをする事にしたのだ。
はじめは渋っていた小十郎も、元親が嬉々として作業に勤しんでいる姿を見ている内に、いつの間にか彼女に対する猜疑心が、薄れていったのである。
──もっとも長曾我部の者だろうか、時折背後に忍び寄る殺気に、完全に警戒を解く事までは出来なかったのだが。




