註:姉貴達のようなムチャな飲み方を普通の人間がすると、かなりの高確率で救急車
のお世話になりますので、良い子も悪い子も決して真似をしないで下さい。
のお世話になりますので、良い子も悪い子も決して真似をしないで下さい。
停泊する長曾我部の船倉から酒を数本失敬した元親は、奥州に行く前に誂えた新品の碇槍『長槍・荒渦』を構えると、船から陸地へと器用に「十跳」で移動した。
酒瓶を落とす事無く着地した元親だったが、その衝撃で自分の手首に槍に絡まる鎖の端が触れた瞬間、ビクリと身を竦ませる。
あの時。重機を収める倉庫で彼に犯された元親は、その際、自分を拘束する為に使われた愛用の武器である『八流』を、恐怖から手にする事が出来なくなっていたのだ。
「…っ…」
どうにか自分の中で気持ちの整理をつけた元親は、右腕で碇槍を、左腕で酒瓶を抱え直すと、伊達の屋敷に続く道を歩き続けた。
酒瓶を落とす事無く着地した元親だったが、その衝撃で自分の手首に槍に絡まる鎖の端が触れた瞬間、ビクリと身を竦ませる。
あの時。重機を収める倉庫で彼に犯された元親は、その際、自分を拘束する為に使われた愛用の武器である『八流』を、恐怖から手にする事が出来なくなっていたのだ。
「…っ…」
どうにか自分の中で気持ちの整理をつけた元親は、右腕で碇槍を、左腕で酒瓶を抱え直すと、伊達の屋敷に続く道を歩き続けた。
(長曾我部の鬼女は、船の操舵をする際、自身の態勢が崩れぬよう、海賊の強靭な『懐刀』を、腰に『差し込んで』貰うらしいぞ)
(海賊の一員になる為には、航海術や戦術よりも、あの女を満足させられる『竿』が、何よりも重要との事だ)
(では、海の男共は、皆あの鬼の大女の『洞窟』に『帆柱』を突き立てた『兄弟』という訳か。なるほど、どうりで結束力が固い訳だ!)
(海賊の一員になる為には、航海術や戦術よりも、あの女を満足させられる『竿』が、何よりも重要との事だ)
(では、海の男共は、皆あの鬼の大女の『洞窟』に『帆柱』を突き立てた『兄弟』という訳か。なるほど、どうりで結束力が固い訳だ!)
心無い外部の揶揄に元親が傷付く度、幼い頃から元親の事を良く知る家臣や仲間達は、彼らなりの方法で気遣い、励ましてくれた。
ある時、育ち過ぎた自分の胸を少しでも小さくしようと、息が苦しくなるまでサラシで締め付けていた元親を、海賊達は次のように言って慰めてくれたのだ。
ある時、育ち過ぎた自分の胸を少しでも小さくしようと、息が苦しくなるまでサラシで締め付けていた元親を、海賊達は次のように言って慰めてくれたのだ。
『お嬢の胸が大きいのは、それだけお嬢の夢が、いっぱい詰まっているからですよ』
そして、その夢の為なら、自分達はいくらでも力を貸すと約束してくれた。
「そうだよな。俺には…私には、皆がいてくれる。それで充分じゃないか……」
薄く笑いながら、元親は自分自身を納得させる為に小さく頷く。
言いたい人間には、言わせておけば良い。自分には、本当に自分の事を理解し、慕ってくれる仲間がいる。
他に何を望もうというのだ。
他に、何を……
「そうだよな。俺には…私には、皆がいてくれる。それで充分じゃないか……」
薄く笑いながら、元親は自分自身を納得させる為に小さく頷く。
言いたい人間には、言わせておけば良い。自分には、本当に自分の事を理解し、慕ってくれる仲間がいる。
他に何を望もうというのだ。
他に、何を……
『…元親……』
自分の意志とは関係なく、突如脳裏に反芻された彼の囁きに、元親は弾かれたように首を振る。
違う。あれは、彼お得意の『策』の一種だ。
そうでなければ、彼のような男が、自分のような女を傍に置こうとする理由が、思い当たらない。
考えながら歩いている内に、いつの間にか政宗の部屋の前まで到着していた元親は、扉越しに小さく声を掛けると、彼女の名を呼んだ。
暫しの後、何処か間延びしたような返事がしたかと思いきや、開けて中に入ろうとした元親の鼻孔を、早くも大量の酒の匂いが刺激してきた。
「ちょ…政宗!俺が来る前に、どんだけ飲んでたんだ!?」
「アァン?おめ~がさっさと来ないのが、悪いんじゃね~かよぉ~♪」
違う。あれは、彼お得意の『策』の一種だ。
そうでなければ、彼のような男が、自分のような女を傍に置こうとする理由が、思い当たらない。
考えながら歩いている内に、いつの間にか政宗の部屋の前まで到着していた元親は、扉越しに小さく声を掛けると、彼女の名を呼んだ。
暫しの後、何処か間延びしたような返事がしたかと思いきや、開けて中に入ろうとした元親の鼻孔を、早くも大量の酒の匂いが刺激してきた。
「ちょ…政宗!俺が来る前に、どんだけ飲んでたんだ!?」
「アァン?おめ~がさっさと来ないのが、悪いんじゃね~かよぉ~♪」
それは、これまでの元親の心の喧騒を、「CRAZY STORM」か「PHANTOM DIVE」で吹き飛ばすかのような光景だった。
覚束ない舌で、ケタケタと返事をする政宗の頬は、夜目からも判るほど染まり切っている。
「落ち着いたら来いっつったの、お前じゃねぇかよ。あーあー、またこんなに飲み散
らかしやがって……」
既に数本畳の上に転がっている空き瓶を拾い上げると、元親はそれらを部屋の隅に置いた。
「遅い!」
「……悪かったよ。ちょっと、酒を取りに船まで戻ってたんだ」
「寄越せ!」
「──はいはい」
四国の地酒と、果樹園を栽培する領民から貰った酢橘(すだち)の酒を、元親は政宗に手渡した。
覚束ない舌で、ケタケタと返事をする政宗の頬は、夜目からも判るほど染まり切っている。
「落ち着いたら来いっつったの、お前じゃねぇかよ。あーあー、またこんなに飲み散
らかしやがって……」
既に数本畳の上に転がっている空き瓶を拾い上げると、元親はそれらを部屋の隅に置いた。
「遅い!」
「……悪かったよ。ちょっと、酒を取りに船まで戻ってたんだ」
「寄越せ!」
「──はいはい」
四国の地酒と、果樹園を栽培する領民から貰った酢橘(すだち)の酒を、元親は政宗に手渡した。




