結局の所、幸村と政宗は行き会った。
片や城に戻る者、片や城から出た者(絶叫つき)ならば、当然ではあるのだが。
非礼もはなはだしいが、叫ぶ幸村を黙らせる為に人気の少ない裏路地で政宗は書状を受け取った。
幸村はいつもの裸ジャケットではなく、胸当てをつけた、それなりの装いをしている。
ずいぶんまともに見えるが、当の幸村は暑苦しげな様子だった。
「――で、甲斐の虎の用件は?」
渡された書状を開かぬまま、知ってんだろ、と政宗は唇の端をゆがめた。
「内密のことながら、婚儀の用向きにござる」
内密の用件を大声ではきはきと喋るやつがいるか。
政宗は内心呆れながら、幾分顔を赤らめた幸村を見やった。
婚儀といえば同盟の申し入れも同じ。信玄は謙信との決着を邪魔立てされないようにしているのか、それとも海の幸ゆたかな伊達から塩でも仕入れるつもりか。
一呼吸の間に思案をめぐらし、悪くないと結論を出す。
「婚儀?武田に未婚の女がいたか?」
「お館様のご息女ではござらぬ。その、書状をみて下されば分かり申すがー」
「面倒だ。お前の口から聞く」
幸村はされば、と姿勢を正した。
「我が真田家の次女、ゆき――」
思わず政宗はヒュウ、と口笛を吹いた。
真田家は伝統も格も伊達とはつりあわないが、その勇猛さは折り紙付。
信玄の信頼もあつく、幸村の父がなくなってからは殆ど親代わりとも聞く。
信玄としては、娘を差し出すも同じ気持ちでいるだろう。
そもそも血筋を誇る、気位の高い姫が欲しいと思ったことはない。
真田に雪という姫がいたのは初耳だが、
「Snow White?いーい名前じゃねえか」
「す、すの?」
何か言いかけていた言葉をとぎらせて困惑する幸村に、政宗はひらりと手を振った。
整った幸村の顔を見れば、その半分程度の顔立ちだとしても十分だ。
「美人ってことさ。いいぜ、正室として迎えよう。正式な返答は改めて使者を立てる」
なぜか顔を赤らめた幸村に背を向け、政宗はひょいと馬に飛び乗った。
片や城に戻る者、片や城から出た者(絶叫つき)ならば、当然ではあるのだが。
非礼もはなはだしいが、叫ぶ幸村を黙らせる為に人気の少ない裏路地で政宗は書状を受け取った。
幸村はいつもの裸ジャケットではなく、胸当てをつけた、それなりの装いをしている。
ずいぶんまともに見えるが、当の幸村は暑苦しげな様子だった。
「――で、甲斐の虎の用件は?」
渡された書状を開かぬまま、知ってんだろ、と政宗は唇の端をゆがめた。
「内密のことながら、婚儀の用向きにござる」
内密の用件を大声ではきはきと喋るやつがいるか。
政宗は内心呆れながら、幾分顔を赤らめた幸村を見やった。
婚儀といえば同盟の申し入れも同じ。信玄は謙信との決着を邪魔立てされないようにしているのか、それとも海の幸ゆたかな伊達から塩でも仕入れるつもりか。
一呼吸の間に思案をめぐらし、悪くないと結論を出す。
「婚儀?武田に未婚の女がいたか?」
「お館様のご息女ではござらぬ。その、書状をみて下されば分かり申すがー」
「面倒だ。お前の口から聞く」
幸村はされば、と姿勢を正した。
「我が真田家の次女、ゆき――」
思わず政宗はヒュウ、と口笛を吹いた。
真田家は伝統も格も伊達とはつりあわないが、その勇猛さは折り紙付。
信玄の信頼もあつく、幸村の父がなくなってからは殆ど親代わりとも聞く。
信玄としては、娘を差し出すも同じ気持ちでいるだろう。
そもそも血筋を誇る、気位の高い姫が欲しいと思ったことはない。
真田に雪という姫がいたのは初耳だが、
「Snow White?いーい名前じゃねえか」
「す、すの?」
何か言いかけていた言葉をとぎらせて困惑する幸村に、政宗はひらりと手を振った。
整った幸村の顔を見れば、その半分程度の顔立ちだとしても十分だ。
「美人ってことさ。いいぜ、正室として迎えよう。正式な返答は改めて使者を立てる」
なぜか顔を赤らめた幸村に背を向け、政宗はひょいと馬に飛び乗った。