並んだ装飾品は、元就にはどのように身に着けるのかわからない物が多い。
複数の箱の中には、揃って手の平で転がすのにちょうどよさそうな大きさに加工された球体の石が並んだ物もある。
それらは様々な石があり、一つは透明な青、もう一つは縞模様のある赤い石、ととりどりの色だ。
深く考えずにただ手が伸びるままに触れた品は、ころんとした赤い珊瑚を二粒使って桜の実を模した物だった。
可愛らしいそれにどこか無邪気な妹姫を重ねていると、元親が「欲しいんならどれでも持ってきな」と言ってくる。
「いや、我は…」と否定しかけて考え直し、では、と手にしたそれをもらう事にした。
「結構可愛い趣味してんだな」
ひょいとまた背を屈めて近づく元親を避けて元就は彼の言葉を否定する。
「違う。これは、我の妹に似合うと思うて」
「妹さんがいんのか」
アンタの妹さんならさぞかし別嬪だろうと元親が続けて言う。元就は、その言葉に違和感を感じながら答えた。
「妹は…我には似ずに愛らしいが…やらぬぞ」
「は?」
「すでに嫁いでおる。それに、もうすぐややこも産まれるのだ」
あ、それはオメデトウゴザイマスと表面上の言葉を返した。これは妙な誤解を受けたもんだと元親は思う。
(自分には似ずに、ってどういう事だよ)という疑問は
(つまり、綺麗系の顔の自分とは違って妹さんは可愛い系って事か)と何となく納得した。
元親は、目の前の彼女自身に別嬪だと言ったつもりだったのが、どうしてか妹姫を狙っていると捉えられたようだ。
「アンタ、妹さんの事大事なんだな」
「血縁者を大切に思うのは当然であろう」
元就はといえば、先の彼の言葉に違和感を感じたままだった。
(我の妹なら、というのはどういう事だ?)と。確かに妹姫はこの珊瑚細工のように丸い目をした愛らしい顔立ちだ。
大人になった今は大層柔らかな雰囲気の美しい女人に成長したが、この自分に似て、とは露ほども繋がらない。
大体、四国のこの男が他国の姫をあらかじめ知っている、というのは無理がある。
と、いう事は。(いや、それこそあり得ない)この自分が別嬪だ、とでも言うのか、この男は。
複数の箱の中には、揃って手の平で転がすのにちょうどよさそうな大きさに加工された球体の石が並んだ物もある。
それらは様々な石があり、一つは透明な青、もう一つは縞模様のある赤い石、ととりどりの色だ。
深く考えずにただ手が伸びるままに触れた品は、ころんとした赤い珊瑚を二粒使って桜の実を模した物だった。
可愛らしいそれにどこか無邪気な妹姫を重ねていると、元親が「欲しいんならどれでも持ってきな」と言ってくる。
「いや、我は…」と否定しかけて考え直し、では、と手にしたそれをもらう事にした。
「結構可愛い趣味してんだな」
ひょいとまた背を屈めて近づく元親を避けて元就は彼の言葉を否定する。
「違う。これは、我の妹に似合うと思うて」
「妹さんがいんのか」
アンタの妹さんならさぞかし別嬪だろうと元親が続けて言う。元就は、その言葉に違和感を感じながら答えた。
「妹は…我には似ずに愛らしいが…やらぬぞ」
「は?」
「すでに嫁いでおる。それに、もうすぐややこも産まれるのだ」
あ、それはオメデトウゴザイマスと表面上の言葉を返した。これは妙な誤解を受けたもんだと元親は思う。
(自分には似ずに、ってどういう事だよ)という疑問は
(つまり、綺麗系の顔の自分とは違って妹さんは可愛い系って事か)と何となく納得した。
元親は、目の前の彼女自身に別嬪だと言ったつもりだったのが、どうしてか妹姫を狙っていると捉えられたようだ。
「アンタ、妹さんの事大事なんだな」
「血縁者を大切に思うのは当然であろう」
元就はといえば、先の彼の言葉に違和感を感じたままだった。
(我の妹なら、というのはどういう事だ?)と。確かに妹姫はこの珊瑚細工のように丸い目をした愛らしい顔立ちだ。
大人になった今は大層柔らかな雰囲気の美しい女人に成長したが、この自分に似て、とは露ほども繋がらない。
大体、四国のこの男が他国の姫をあらかじめ知っている、というのは無理がある。
と、いう事は。(いや、それこそあり得ない)この自分が別嬪だ、とでも言うのか、この男は。
元就が小首を傾げていると、元親が
「付け方わかんねぇか」と彼女の手の中の珊瑚細工を取る。裏に取り付けられた細い針で出来た金具を外す。
元就の左胸に寄せ、器用に絹の服に取り付けた。
「ブローチ、とかいう細工なんだと」
「ぶ、ろー…しかし、これでは、布が傷まぬか?」
聞いて元親は、確かに薄い絹では破れてしまうかもと気付き――それもいいな、等と不埒な考えを浮かべた。
よく考えなくても、これからモノにしようとしている女の胸元に触れたのだ。
彼女も大人しくされるがままになってる。
元親の喉の奥がむずりと疼く。
(待て待て俺。もう少し引き付けてからだ。まだ早い。くーるになれ…!)
元親が体温を上昇させつつ彼女の翡翠色の絹に包まれた乳房に目を奪われていると、
彼女の細い指が珊瑚細工にかかった。
「取るのか」こくりと無言のまま頷いて慣れぬ手つきで小さな金具と格闘している。
見下ろす瞼を縁取る濃い睫毛が困ったように沈む。「やってやるよ」と元親が助けの手を伸ばしても、
「出来る」と少し苛立った声で痩躯を引いて避ける。その拍子に元就の脚が崩れた。
きちんと正座されていた脚が並んで左にずれる。上に重なった左足の指が床に押し付けられて曲がり、
そこからしなやかな曲線を描きつるりとした踵に到達する。浮き出たくるぶしと簡単に折れそうな足首。
「いいから、ムキになるなって」
助け半分、邪な心半分で伸ばされた元親の手が彼女のそれに重なった瞬間、ピン、と高い音を立てて金具が外れた。
元就の左手がするりと針を布地から引き抜き、金具にはめる。
得意気な瞳を元親に投げ、
「見くびるな」と微かに笑んだ。
「付け方わかんねぇか」と彼女の手の中の珊瑚細工を取る。裏に取り付けられた細い針で出来た金具を外す。
元就の左胸に寄せ、器用に絹の服に取り付けた。
「ブローチ、とかいう細工なんだと」
「ぶ、ろー…しかし、これでは、布が傷まぬか?」
聞いて元親は、確かに薄い絹では破れてしまうかもと気付き――それもいいな、等と不埒な考えを浮かべた。
よく考えなくても、これからモノにしようとしている女の胸元に触れたのだ。
彼女も大人しくされるがままになってる。
元親の喉の奥がむずりと疼く。
(待て待て俺。もう少し引き付けてからだ。まだ早い。くーるになれ…!)
元親が体温を上昇させつつ彼女の翡翠色の絹に包まれた乳房に目を奪われていると、
彼女の細い指が珊瑚細工にかかった。
「取るのか」こくりと無言のまま頷いて慣れぬ手つきで小さな金具と格闘している。
見下ろす瞼を縁取る濃い睫毛が困ったように沈む。「やってやるよ」と元親が助けの手を伸ばしても、
「出来る」と少し苛立った声で痩躯を引いて避ける。その拍子に元就の脚が崩れた。
きちんと正座されていた脚が並んで左にずれる。上に重なった左足の指が床に押し付けられて曲がり、
そこからしなやかな曲線を描きつるりとした踵に到達する。浮き出たくるぶしと簡単に折れそうな足首。
「いいから、ムキになるなって」
助け半分、邪な心半分で伸ばされた元親の手が彼女のそれに重なった瞬間、ピン、と高い音を立てて金具が外れた。
元就の左手がするりと針を布地から引き抜き、金具にはめる。
得意気な瞳を元親に投げ、
「見くびるな」と微かに笑んだ。
元親の心臓が一つ、音をたてて跳ねる。
右手で口を押さえ、呼吸を整えてから元親が言った。
「お前、……物凄く可愛いのな…」
右手で口を押さえ、呼吸を整えてから元親が言った。
「お前、……物凄く可愛いのな…」
「はぁ?」
今度は、元就の方が相手の思惟がわからず素っ頓狂な声を出す番だった。
今度は、元就の方が相手の思惟がわからず素っ頓狂な声を出す番だった。




